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ミステリの祭典

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過ぎ行く風はみどり色
猫丸先輩シリーズ

作家 倉知淳
出版日1995年06月
平均点7.67点
書評数45人

No.45 7点 雪の日
(2023/03/07 21:45登録)
かなり詰め込んだ設定ですね笑
個人的にハッピーエンドと言っていいのかわかりませんが、読後感は悪くないです。(悲しい)

以下ネタバレ
叙述トリックに気づかないもんですな

No.44 8点 斎藤警部
(2020/05/22 20:00登録)
この話は好きですよ。 泣けるねえ。 ロジックが整然として小綺麗(探偵がこんななのに!)、だけどトリック実行を考えるとやたら嘘くさかったりバカだったり。。それでも許せちゃう。謂わば逞しき机上の空論。 或る登場人物に纏わる事情と、それに拠った或るトリックについては、早い段階で自然と仮説が立ってしまいましたが、念のため何箇所か読み返してみて、あ、やっぱり違うのか、仄めかしのミスディレクションか。。なんて思ってたもんで、アレが明かされた時はちょっとアンフェアでないかとも感じたが、、それ以上にスッキリした気分になれたので大いに満足。衝撃とは違うけど、つまりソレだったって事はおそらく、或る登場人物を取り巻く未来もああなって来るんだろうなぁって嬉しい予感がキラキラし出して。。。。キラキラ感を醸し出す或るトリックにこそ包み込まれて守られた、それ自体は全然キラキラしてないチャチい◯◯◯◯偽装、という不思議な構造も面白い。 日本人ならではの曖昧なアレか。。。。 脳科学(?)とか、浅草の呑み屋とか、徒労に終わった発掘作業とか。。。。猫丸先輩も話が進むにつれどんどん魅力的になりやがるぜ。そうそう、彼がヤマっ気たっぷりのバイトに精出したりでなかなか現場に現れないってのが、実は。。。。 本作の大トリック成立に、ごく自然ななりで、大きく寄与してるわけですな。。 読み返してみれば、泣かせる伏線も所々にこっそり咲いていたんだなぁ。。’おみやげ’の件とか。。 ←そこのおかげで主人公(?)の存在感がやっと主人公らしくなった(笑)。逆に言うと、この主人公(?)の薄い存在感は読み返してみてやっと浮かび上がる、って事か。奥深いような、単にバランスおかしいだけのような。。。祖父から祖母への深い謝罪の思いの話もストーリーの中でさっぱり拡がらないし。。そうそう、真犯人が主人公(?)に罪をなすり付けようとしてるようにしか見えなかった流れも、パンチの効かない中途半端なダミーでどっかに消えたし。。 一家の大金持ち感はほぼ皆無だし。。 ほんとうに、詰めてないというかバランスおかしい要素が目立ち過ぎ!! 。。。 それでも、冒頭と終結を結ぶ、このまばゆい美しさが全てのアンバランスや不格好さを超えて本篇を感動の一作に仕立て上げたのではなかろうか。チャッカリしてやがらァ。 最後に、江守森江さんの書かれていた 「作品の肝であるトリックは、緑でなく『みどり』と平仮名表記なタイトルに滲ませている。」 。。 こんな泣かせる考えオチ書評がありますか。泣かせる叙述トリックそのものじゃないですか(ぁ言っちゃったか)。。  7.8点相当。

No.43 8点 ボナンザ
(2019/08/18 20:21登録)
全編通じてよく考えられている傑作だと思う。
あの仕掛けもそうだが、降霊術の際のトリックなども巧みだ。

No.42 6点 レッドキング
(2018/06/04 18:20登録)
表紙の絵変わったね 前の絵は露骨にネタバレだった 一番肝心なところが見当ついちゃったもん 挿絵画家それ以上に編集者考えろよとオモタ まあこういう救いのあるエンディングも悪くないな「暗いところで待ち合わせ」とか「ユリゴコロ」とか

No.41 9点 sophia
(2018/04/12 22:57登録)
視点人物が二人いることの必然性を考えると叙述トリックを疑いはしましたが、これは明かされるまで分かりませんでした。読み返してみると茶封筒の忘れ物の件や着物の帯の件など伏線もしっかり張られており感心しました。第2の殺人のやり方はちょっと難しいんじゃないかとは思いますが。

追記 皆さんの書評を読んでいて思いましたが、取り違えに気付いていたのは例の2人組だけですよね。誤解があるようなので指摘しておきます。

No.40 9点 ミステリーオタク
(2017/11/13 08:52登録)
まぁ固いこと言わずに肩肘張らずに読めば、適度なミステリアスとグリーニッシュな読後感を味わえる楽しい読み物でしょう。

No.39 2点 ねここねこ男爵
(2017/11/12 21:04登録)
自分のミステリの嗜好がマイノリティであることは重々承知していたつもりだが、アンフェアどころか大ポカをやらかしている本作がここまで高評価なのを見ると、2000年代のミステリは読まない方がよいかもと悩んだ。正直読み終わった瞬間は0点をつけたくなったが、しばらく自分の中で寝かせてこの評価で。

自分語りはこのくらいにして、以下ネタバレを含む書評。


ぶっちゃけるとこの時期流行った叙述トリックものなのだが、ソレの悪い点を凝縮したような本。

そもそも、『取 り 違 え に 周 囲 は 気 付 い て い た と 明 記 さ れ て い る の に、何 故 取 り 違 え た 人 物 の 証 言 を 証 拠 と し て 採 用 し た の か ?』ここが決定的な作者のミス。それから、「コレを書いたら読者にバレる!でも上手く書く力量がない!だから後出しジャンケンになっても書かない!」が多すぎ。

①最大のネタに充分な情報提供がなされているとは思えない。例えば皿に盛り付けられたのを見て初めて「お、今夜はカレーか」→カレーなら匂いで分かる。よって発言者の嗅覚は弱い、とか「色覚に異常があって画家を諦めた」→色盲、とかなら万人が納得する伏線と言えるだろうが、本作は…。本作のキモは『ここにしかない』ため、それを悟られないためご都合強引な隠蔽工作をしていて萎える。
②①に反論する向きも多いだろうから、一つ例を。「同じ人物でも人によって評価が違う」→「評価者の片方が取り違えをしていた」ってねぇ。一行で矛盾してるじゃん。
③無関係な語りが長すぎる。モノローグは意味があるから良いとして、会話シーンが無駄。伏線として必要ではあるのだが、機能させるにしても一部で充分で、何回も長々やらんで良い。繰り返すことで取り違えに説得力を持たせたい意図が丸見え。あとどうもこの作者は「空気読まず延々喋る人物=個性的」と思っているフシがある。他作品でも顕著。
④③と絡めて、第二の被害者の情報を隠蔽しすぎ。あれだけ長々被害者について涙ながらに語っておいて、解決編でいきなり「実は被害者はこんな事もできる、昔やっていた。だからコレができた」とドヤ顔でぶっ込んでくる。ナメんな。(口の方じゃなく身体能力の方)
⑤いくら真っ暗で音楽がかかっていても、隣の人がテーブルに乗ったら分かります。まして手が触れてるのに。
⑥「偶然そうなった」はやめましょう。なんでもありになります。苦しいのを誤魔化したでしょ?
⑦実は第一の殺人後の記述から「殺せるのこいつしかおらんやん、あとはアリバイ崩し」ってのはすぐ分かってしまう(その意味ではフェアかも)。
⑧「自己紹介の仕方から取り違えた」あの自己紹介で取り違える奴はいないし、初読時(何だこいつら…?)と思ったぞ。クドいが、取り違えに説得力を持たせたい意図が丸見え。
⑨「気を遣って言わなかった」作中で気を遣わない、と断言されている人物がいるのになぜ会話中で指摘しない?

叙述トリックは比較的お手軽に謎を作れるだけに取扱いには細心の注意を払うべきです。本作はそれに依存しすぎかつ隠蔽がアンフェアすぎ。おそらくこの時期先行する作品群に影響を受けたのでしょうが数段落ちる。衝撃さえあれば矛盾しまくっててもいいよという人だけ読んでください。

No.38 6点 take5
(2017/08/14 23:07登録)
まずタイトルが秀逸です。
そして叙述トリックとしてもなかなか読ませます。
しかし、私にはエンターテイメント性が高すぎて、
逃亡の仕方とかもうびっくり…です。
終盤、胡散臭いおじさんの人間をしっかり書いてくれようとしていて、
好感が持てるのですが、
もっともっと人物描写に走って欲しかったです。
リーダビリティーが高い分、
厚みが欲しかった。

No.37 7点 名探偵ジャパン
(2017/08/08 19:59登録)
最初は「冗長だなぁ」と思っていました。「もっと短くまとめられないのか」と。
特に、「ある人物の一人称視点での記述」は、「出来の悪いポエムもいいところで、こんなのいちいちいらないだろう」と、ちょっと辟易していました。ところが……。
全てはメイントリックへ向けての布石でした。騙されましたよ。見事に。
確かに、トリックを成立させるために多少は不自然な設定はあります(あの二人組の紹介の仕方とか。あの人物が、あれを黙認し続けるとか)。でも、ミステリですから。密室トリックの脱出方法も、大変な綱渡りですが、ありです。だって、作中で実際に出来ちゃったんだもん。
あとは、猫丸先輩が大変いいキャラクターです。一緒に酒を飲みたい(彼は下戸か)名探偵ナンバーワンですね。

No.36 8点 青い車
(2017/02/24 19:26登録)
 あるひとつの仕掛けが明らかになることで事件の謎が氷解するのがよく出来ています。かといって強引な力技感はなく、タイトルの爽やかさからの印象を裏切らない、軽やかに決まった秀作です。殺人が起こる割に不必要な陰惨さがなく、よけいなサイド・ストーリーをほとんど挟まずすっきりわかりやすいプロットになっている所も好ましいです。暖かみのある読後感も手伝って、まさに倉知淳の代表作に相応しいと言えます。

No.35 6点 パメル
(2016/02/08 01:39登録)
叙述トリックと心理トリックを駆使した猫丸先輩シリーズ
特に心理トリックの解明が鮮やか
超常現象・霊能力といった非科学的なものを柱において
ストーリーが組んであるため随所に織り込められているそれらが
見事に効果を発揮している
ただ登場人物の印象が変わりすぎところに不満が残る

No.34 8点 505
(2015/10/29 14:01登録)
傑作。
人を食ったように飄々と生きる猫丸先輩の長編推理小説。法月綸太郎曰く〝天然カー〟というのは思わず膝を打つ巧さがあり、オカルティズムに不可能状況の組み合わせが、本家のカーを彷彿とさせる。オカルト絡みの連続殺人ながら事件自体に暗く壮絶な雰囲気は漂うことなく、作者の倉知淳特有な『ロジック&ユーモア』な筆運びで魅力を引っ張っていく力強さがある。

事件の大枠自体は不可能犯罪がメインでありながら、事件の真相はシンプルの一言に尽きる。降霊会のトリックや毒殺トリックはよく練られている上に、〝傍目八目〟的な要素も欠かさないので、1つの事象が有無を言わさず明かされた際に、連鎖的に犯人像が浮かび上がるカタルシスがある。それらを根幹として支えているのが、ミスディレクションとして効きつつも、巧妙に張り巡らされていた叙述トリックのバランスがあるからこそ。その叙述トリックが、混ざり合っていたアリバイトリックを支えることで、不可能状況をシンプルに構築する。
勿論、そのミステリとしての仕掛けが、探偵役の猫丸先輩によって瓦解する様も、呼応するかのようにシンプルに力強く崩れるので無理のないもののように思える。
メイントリック自体は、大胆不敵かつ綱渡り的なトリックであるにしても、人物の行動原理や心理描写を考慮すれば、それ相応の説得力がある。また、細かい部分にもアイデアが組み込まれており、独特な空気感の中にも、技巧が光るのは天然なのか作為的なのかは判然としないが、恐ろしいまでの意匠を感じさせる。

本家カーのようなおどろおどろしさは皆無であり、やや超然的な趣きが否定できないが、この味わいこそが倉知節だと言えるので、〝天然カー〟というのは正鵠を射てるのだろう。
解決篇以外にも至る所に、登場人物の印象がガラッと変わる仕掛けや記述があるが、猫丸先輩の言うように『それはそれで一面性』でしか無いものである。何事も多面性を含むことは、宿命的なものと言えるだろうが、読後に爽やかな余韻を齎す本書の『一面性』は絶対的なものである。文句なしの傑作であり、倉知淳の代名詞と言える作品と言って大袈裟ではないだろう

No.33 8点 ロマン
(2015/10/21 14:54登録)
密室となった離れで第一の殺人が、降霊会の最中に第二の殺人事件が起きる。天然カーと称されるだけあって、本格のガジェットに彩られながらもおどろおどろしい感じはなく、軽妙でさわやかなのは作者らしい筆致と猫丸先輩のキャラクターゆえか。トリックは意外性はもちろん、推理の要になっているところが秀逸。タイトルの意味がわかるさわやかな読後感もよい。

No.32 7点 いいちこ
(2015/02/23 10:41登録)
提示される謎の不可解さは強烈。
メイントリックは複数の材料を組み合わせたもので、幸運に支えられたご都合主義、ある登場人物の言動が釈然としない、解明の手がかりが少ないといった難点はあるものの、ミスリードとしては巧妙。
一方、犯行自体は無計画かつ突発的なもので、綱渡りのトリックが犯人を隠蔽している中、2番目の犯行が犯人を特定する決定的な材料となっており、プロットとしては脆弱と言わざるを得ない。

No.31 9点 mohicant
(2013/08/03 22:35登録)
 倉知淳の作品の中でも一番本格度は高いと思う。長い割に飽きずに最後まで読ませるリーダビリティーの高さも魅力。

No.30 8点 メルカトル
(2013/03/10 22:36登録)
再読です。
初読の際よりも一層楽しめた気がする。
それにしても、あの叙述トリックには参った。思わずえっと声に出してしまいそうになった。
この仕掛けはそうそう見破れまい。だが、伏線はところどころにしっかりと張ってあり、一概にアンフェアとは言えないだろう。
それでも、ほとんどの読者が作者の罠に嵌るのではないか。
そして、冒頭のエクトプラズムと言い、降霊会の最中での殺人と言い、まるでカーを思わせる雰囲気を纏っていて、とても読みごたえがある。
しかし、決して陰湿なムードではなく、どちらかというと爽やかささえ感じる。
あえて苦言を呈するなら、第一の殺人は動機が弱い、第二の殺人はいかにも無理がありすぎる、といったところだろうか。
それでも、最後に披露される猫丸先輩の謎解きはそんな些事を一掃させるくらいの勢いが感じられるし、それはまあ見事な推理ではある。
だが、この謎解きも苦渋の決断であり、猫丸先輩の苦しい胸の内が初めて明かされる貴重なシーンでもある。
後味もいいし、本作は倉知氏の最高傑作と言えるんじゃないだろうか。

No.29 8点 mozart
(2012/12/02 17:38登録)
ここでの皆さんの書評を読んで、地元の図書館にはなかったものの、何としても読みたくなり、他の図書館との「相互貸借」制度を利用して取り寄せてもらいました。
結果は・・・。予想通りと言うか、見事に騙されてしまいました。読後感も非常に良くて、とても楽しめました。あらためてこのサイトの皆様に感謝いたします。確かに、最初の事件の「動機」については若干不満が残りますが、適当に「脳内補正」することで、ほとんど問題はなくなるかと。

No.28 8点 E-BANKER
(2012/11/21 22:58登録)
1995年発表。愛すべきキャラクター・猫丸先輩登場。
猫丸先輩ものとしては、今のところ唯一の長編作品(貴重だね)。

~邪険な扱いしかしなかった亡き妻に謝罪したい・・・一代で財を成した傑物・方城兵馬の願いを叶えるため、長男の直嗣が連れてきたのは霊媒師。自宅で降霊会を開いて霊魂を呼び寄せようというのだ。霊媒のインチキを暴こうとする超常現象研究家までもがやって来て方城家に騒然とした雰囲気が広がる中、兵馬が密室状態の離れで撲殺されてしまう。霊媒は方城家に悪霊が取り付いているいると主張、かくて調伏のための降霊会が開かれるが、その席上で第二の惨劇が起きてしまう!~

久々に叙述トリックで「一本取られた!」という感じ。
叙述トリックの「見本」とも言えるし、切れ味だけならまさに一級品。
例えていうなら、読者はさしずめ「疑似餌に食いついた魚」というところだろうか・・・「ある登場人物」に対して最初から一定のガードをかけておいて、最後に更なるドンデン返しが待ち受けているのだ。
後で少し読み返してみたが、確かに伏線はきちんと張られているのだ。その辺りは「さすが倉知」というべき。

残りの密室やらアリバイトリックは単なるおまけ。
特にアリバイトリックは、叙述を成立させるためだけに存在しているだけで、取って付けたようなレベル。
あとケチを付けるなら、やっぱり動機かな。
ここまでのボリュームにしたのなら、せっかくだから動機ももっとそれらしいものがあっても良かったかなと思った。

まぁ、でも十分楽しめる内容だし、本格好きなら是非とも読むべき作品でしょう。
降霊会という舞台や密室殺人というと、J.Dカーの「プレーグコートの殺人」をどうしても思い起こしてしまうが、そこは猫丸先輩シリーズらしく、暗さや重々しさは全くないので、オカルト的なものは苦手という方も心配無用。
(降霊会での霊媒師の手口はちょっと無理があるような気がしたが・・・)

No.27 9点 ミステリ初心者
(2012/06/20 12:32登録)
ネタバレあります。


 一言で言うと最高 いろいろな意味で最高。
 叙述トリックのパターンのひとつだと思います。が、そのなかでも、かなり完成系に近いと思います。
 矛盾しているけど矛盾していない。主観が変われば印象も違う。ある作品にもこういうトリックが使われてますね。

 小説としても面白い話が多々あります。霊媒師の話は好きです。生きている人が救われる霊媒や占いなら、嘘でも構わないですね。金儲け過ぎはだめだけど。「あんた死ぬわよ」といっていた占い師は嫌いですが

 姉は、この人の作風から、犯人が想像できたそうです。

No.26 7点 Q-1
(2012/06/17 20:15登録)
本格+叙述トリックと言いたいところですが
殺人事件に関するトリックは偶然の要素が強すぎるので
メインは叙述トリックになるのでしょう。

所々に散りばめられた伏線を謎解き部分で一気に回収してゆく様は目から鱗でした。

しかし前作から感じていたのですが、
猫丸が島田荘司の御手洗潔と被ってしまいますw

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