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ミステリの祭典

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日曜の夜は出たくない
猫丸先輩シリーズ

作家 倉知淳
出版日1994年01月
平均点6.72点
書評数36人

No.36 6点 みりん
(2023/04/16 16:45登録)
居酒屋・公園・孤島・劇場・博物館・カフェとどこにでも現れる猫丸先輩のロジカルでユーモアな推理が楽しめる短編集でした。
【ネタバレあり】

空中散歩者の最期 3点
落下の衝撃は位置エネルギーで計算されるはずだから結局釜谷ビルの15mの高さから落下した計算になるのでは…?

約束 7点
純粋な麻由の独白に胸が締め付けられる。

海に棲む河童 6点
人間浮き輪にカニバリズムというかなり際どい話。読んでるだけでおしりむずむずした。

一六三人の目撃者 5点
良いタイトル。猫丸先輩のアドリブ力すごい。

寄生虫館の殺人 6点
やはりこの作者の得意分野はロジックか…

生首幽霊 7点
なぜ犯人は死体をバラバラにしてから故意に発見させたのかが肝。

日曜の夜は出たくない 5点
タンメン食べ出す医者の例と惚気話イジリ好き

「星降り山荘の殺人」でも感じたけれど、キャラクターの何気ない会話がユーモラスでクスッと笑える。
それとは別に読者を楽しませてくれる仕掛けが随所に施されており、短編集といえど一気読み推奨。

No.35 5点 虫暮部
(2022/05/20 14:54登録)
 ♪日曜の夜は出たくない/日曜の夜は外に出たくない/死体になりたくない(「かなしいずぼん」たま)
 と言うのが表題の元ネタ。
 このシリーズも最初はなかなか鋭かったなぁと再認識。猫丸先輩のキャラクターが鼻に付かないし、ユーモアが意想外のところに潜んでいてちゃんと笑える。

 但し「生首幽霊」は何か変だ。
 ネタバレするけれど、バラバラ殺人を決行した主犯男と共犯女。この共犯女の役割は何か(“殺す際に手足を押さえる” 等の作中言及されていない事柄は考えないものとする)?
 ①被害者を部屋に引き止め、酔った被害者が騒がぬように、殺す頃合いまで監視する。これは “被害者と親しい同性” でないと難しい。②主犯男が死体切断をしている間に、切り取った部分を車に運ぶ。――これだけ。
 ②は主犯男一人でも出来るよね。そして①→被害者を部屋に引き止めて殺したのは、犯行現場を警察に誤認させる為だ。犯行現場を誤認させたかったのは、共犯女のアリバイ工作の為だ。
 すると、“アリバイ工作の為に共犯女を引き入れ、共犯女の為にアリバイ工作をする” と言うおかしな状況になって来る。共犯女って必要?
 主犯男は自身のアリバイは確保していない。それは “被害者とのつながりは水面下のものだから、それを辿って自分に捜査の手が伸びることはない” と高をくくっていたから。ならばトリックを弄さずに通り魔的に殺して逃げるのが最も安全なのである。
 作者のミスの仕方が寧ろ面白かったりして。

 「空中散歩者の最期」について。アレは数値のミスであって、だから大目に見ると言うわけではないが、それを以てしてアイデア自体が不可と言う程でもないと私は思う。

No.34 6点 ぷちレコード
(2021/11/20 22:55登録)
生活感漂う日常パズラー連作短編と思ったら、最後でひっくり返り長編としての筋が一本通るタイプのミステリ。
トリックの弱さを凝りに凝った趣向でカバーする。各編ごとに語り口を変えて、最後はアクロバティックな多段落ちできれいに締める。主人公の猫丸先輩は、外見のほのぼのとしたムードと裏腹に突き放した冷たさが魅力的。

No.33 6点 蟷螂の斧
(2021/04/12 17:10登録)
①空中散歩者の最期 6点 10mのビルから墜落死。しかし20m以上から落ちたようだ。合理的説明だが、物理的には?マーク
②約束 7点 少女とおじちゃんのメルヘンチックな出会い。約束したのに何故自殺?。意外なものがヒントで解決へ
③海に棲む河童 7点  昔話の謎を解く。予想に反し結構グロです
④一六三人の目撃者 4点 舞台で毒死。毒を入れるチャンスは?。これは2点ほど設定に無理があり、著者に丸め込まれた感じ(笑)
⑤寄生虫館の殺人 6点 一階の受付嬢が三階で殺害されていた。上へ上がっていく彼女は目撃されていない。目の付け所はいいがクイズのよう
⑥生首幽霊 6点 集金員はアパートの部屋で生首を発見。幽霊?。アリバイ工作としては手が込んでいる
⑦日曜の夜は出たくない 5点 彼氏が切り裂き魔?背格好も似ているが・・・

No.32 6点 パメル
(2021/04/12 08:56登録)
作者のデビュー作で7編からなる短篇集。
猫みたいなまん丸い目、小柄で童顔なので30代にはとても思えない。また定職に就かず、フラフラした生活。興味を持ったことには何でも首を突っ込み、達者な口先三寸で周囲を煙に巻く。時には失礼だったり、後輩に威張ったりするが、なぜか憎まれないキャラクターの猫丸先輩が中心となるストーリー。
「空中散歩者の最期」新都心のベッドタウンで発見された墜落死体。物理学的にどうなんだろう。推理に無理があると思うが。
「約束」小学二年生の麻由は、公園で出会ったおじちゃんと意気投合し、毎日会うことに。ミステリというよりもハートウォーミングな話。
「海に棲む河童」民話や昔話には、教訓めいた意味合いがあると思うが、この具体的な行動の解釈には驚いた。
「一六三人の目撃者」舞台で上演中、俳優の鍵山が死亡。舞台というのも一種の密室状態。その中での犯行は鮮やか。解決への糸口も秀逸。
「寄生虫館の殺人」固定観念を利用したトリックだが、少し無理があるのでは。
「生首幽霊」投げつけられた灰皿が原因で怪我をした八郎は、仕返しのため蛇のおもちゃを持ってアパートへ向かった。そこには生首が。真相はなるほどと納得させられる。
「日曜の夜は出たくない」日曜日にデートする恋人は、家へ送ってくれた45分後に電話を掛けてくる習慣。しかし、近所では切り裂き魔事件が頻発し、ふとしたことから彼に疑惑を抱くことに。真相は予想できてしまうが、可愛らしくて爽やか。
7編の中で、猫丸先輩が推理した通り犯人が逮捕されたという記述があるのは「生首幽霊」だけ。それ以外は妄想スレスレの推理が繰り広げられるだけというのもユニーク。キャラクターが魅力的なので楽しめたが、逆にいえば猫丸先輩でなかったら、ここまで楽しめたとは思えない作品。

No.31 6点 ミステリーオタク
(2020/08/30 17:36登録)
日曜の夕方・・・ペーソスに浸れるよなぁ
ましてやそれが8/31だったら・・・懐かしい子供の頃の胸の痛み・・

そんなことはともかく本書の第一作「空中散歩者の最期」は、指摘されている方もいるとおり明らかにトリックが理論的に間違っている。
「星降り」「過ぎ行く」といった素晴らしいエンターテインメントを書いている倉知さん、本作ももう少し物理を勉強しなおしてから書いてほしかった。
いや、でも全体的には読みごたえのある佳作集だと思う。

No.30 7点 ボナンザ
(2019/07/06 01:08登録)
本格要素とコミカルな作風がうまくマッチした短編集。最後のどんでん返しも見事。

No.29 7点 sophia
(2019/04/16 00:21登録)
このシリーズは長編の「過ぎ行く風はみどり色」しか読んだことがありませんでしたが、創元推理文庫の新版が出たのを機に、短編集にも手を出してみました。泡坂妻夫の亜愛一郎シリーズのような描き方ですかね。島田荘司ばりの大技物理トリックもあり、センチメンタルな話もあり、昔話の謎解きもあり、バリエーション豊富で飽きさせません。中でも「一六三人の目撃者」が秀逸でした。そして最後のサプライズ。あの話やあの話で感じた違和感はこのためだったのかと感じさせられました。残りの短編集も読むのが楽しみです。あ、「海に棲む河童」の最後の標準語訳は不要だったと思います。あれは冷めました(笑)

No.28 4点 ねここねこ男爵
(2017/11/01 23:30登録)
評価高いですが、自分はイマイチでした。
一話目で「あん?」と思ってしまったからかもしれませんが…探偵役がさかんに数学は苦手、とアピールするのは、トリックの強引さは重々承知しているから見逃してくれ、という作者のエクスキューズでしょう。そもそも数学じゃなくて物理だし。
日常の謎を扱った話はよく出来ているかと。
猫丸先輩に好意的な評価が多いですが、個人的には「人間的にはどうかと思うが推理力だけは突出してる変人」というありがちな名探偵キャラに過ぎないように思います。

No.27 7点 青い車
(2016/11/23 21:39登録)
 作者が意図してバラバラな内容にしたということで、一冊で多くの味が楽しめる、悪く言えば統一感のない短篇集になっています(猫丸先輩の自由奔放な言動は共通ですが)。不可能興味、感動路線、猟奇的なもの、など色々ありますが、中でも表題作が地味ながら心に残りました。他の可能性がいくらでも挙げられるのに疑心暗鬼に陥ってしまう、という意味では誰にでも起こりうる事件といえます。『生首幽霊』のリアリティはともかくとしても本格らしい謎解きも好ましいです。ただ、巻末のメッセージはヒントが弱くて気付ける人はまずいないでしょう。

No.26 5点 いいちこ
(2016/09/20 19:14登録)
各処で指摘されている「空中散歩者の最期」におけるメイントリックの破綻はご愛嬌として、各短編とも水準には達している。
ただ、著者の作風である「真相の飛躍と、その論理性・納得感の高さ」において、代表作(と私が勝手に評価している)「猫丸先輩の推測」には遠く及んでおらず、この評価。
読了順が逆だっただけに、後日の作者の飛躍を感じさせる印象

No.25 8点 mohicant
(2013/08/03 22:29登録)
 短編集だけど、話ごとに、「同じ人が書いてんの!?」ってくらい文体が違う。贅沢な一冊。

No.24 7点 まさむね
(2013/07/28 12:53登録)
 猫丸先輩のデビュー連作短編集。
 いやぁ,最後の最後まで楽しめましたね。
 さらに特筆すべきは,決して「最後」に頼ることなく,バラエティに富んだ7短編それぞれが単独で十分に面白いこと。(特に「海に棲む河童」と「163人の目撃者」が良かったかな。)
 お買い得…というか「お読み得」な作品と言えましょう。

No.23 7点 メルカトル
(2012/12/12 21:48登録)
再読です。
これ程バラエティーに富んだ連作短編集は他に類を見ないのではないだろうか。
しかも、それぞれの短編が水準以上を保持しているのは素晴らしいと思う。
『約束』のメルヘン風も悪くないし、『海に棲む河童』の猟奇的な奇想も面白い、また『空中散歩者の最期』の島荘のようなスケールの大きい仕掛けも良いね。
とても変化に富んだ作品が並ぶのだが、その中で何一つ変わらないのが猫丸先輩の名探偵ぶりである。
飄々としながらも、事件の情報が揃うと、瞬く間に真相を見抜いて披露する。
見事である、しかも反論されようが、突っ込まれようが全く動じない辺りはさすがとしか言いようがない。
本作の魅力の半分は猫丸先輩が担っているといっても過言ではないと思う。
それにしても猫丸先輩は神出鬼没だなあ。
また、最後二章の捻りと着地はまずまずだろうが、まあ「蛇足」かもしれないね、残念ながら。趣向は悪くないけど。
近日中に『過ぎ行く風はみどり色』も読み返さなければいけないんじゃないかな、これは。

No.22 6点 seiryuu
(2010/08/29 09:58登録)
猫丸先輩のキャラは面白い
本編7編も楽しめた。
「誰にも解析できないであろうメッセージ」はまあ好き。
「蛇足ーあるいは真夜中の電話」で読後感が悪くなってしまった。

No.21 6点 E-BANKER
(2010/04/22 20:35登録)
作者の処女短編集。
猫丸先輩シリーズ。
①「空中散歩者の最期」: 真相で出てきた図を見ても、今ひとつ納得できなかったんですけど・・・
②「海に棲む河童」: 趣向は面白い。しかし、猫丸先輩は神出鬼没ですねぇ・・・
③「163人の目撃者」: 短編らしい作品。この中では割と正統派な作品。
④「生首幽霊」: タイトルは恐ろしいが、謎自体はやや陳腐な感じ。取り違えはすぐに気付くと思うのですが・・・
⑤「日曜の夜は出たくない」: 恋人が実は殺人者? というよくある趣向。あまり感心はしない。
というわけで本編7作はまあまあという水準。
ただ、この作品のハイライトはこの後の「オマケ」・・・
でもさすがにそれは気付かないよなぁ・・・ 
それに気付く人がもしいるなら素直に尊敬します。

No.20 8点 白い風
(2009/06/10 20:38登録)
全編登場する猫丸先輩のキャラは面白いですね。
それだけでも単純に7編は楽しめました。
ただ、この本の面白さはその後の「誰にも解析できないであろうメッセージ」と「蛇足ーあるいは真夜中の電話」だと思う。
メッセージでは7編に隠されていた作者のお遊びが面白いね(読者が看破するのはまず不可能とは思うけどね)
そして蛇足では、作者の秘密も暴いていきます。

No.19 7点 江守森江
(2009/05/22 15:32登録)
この作品を読んだ後しばらくの間、猫丸先輩口調になって困った。
当時、友人が寄生虫館の職員だったのでビックリした覚えがある。
賛否両論あるが、巻末の2章は、当時から現在まで(特にデビュー)短編集にお約束の捻りで、東京創元社の伝統になっている。

No.18 7点 Tetchy
(2009/03/15 19:16登録)
倉知淳のシリーズ探偵猫丸先輩のデビュー作で、同時に倉知氏自身のデビュー作でもある。
本作も若竹七海や西澤保彦の某作品と同じ、各短編に散りばめられたミッシングリンクが最後に明かされる趣向の短編集になっている。

ただ最後で判明する隠されたメッセージなどはあまりに凝りすぎて読者が見つけ出せるレベルの物ではない。驚愕とか感心とかを通り越して呆れてしまった。

さて本作で探偵役を務める猫丸という人物。その後シリーズ化されているが、確かに面白いキャラクターだ。
一番面白かったのはやはり4編目での猫丸だ。他の作品とは違うきびきびとした振る舞いにニヤニヤしてしまった。

各編の趣向は島田荘司風ミステリあり、ハートウォーミングストーリーあり、ロジックのみを追究したミステリあり、サスペンスありと様々だ。
個人的には表題作がベストだった。

No.17 7点 マニア
(2009/01/10 00:44登録)
皮肉たっぷりで小憎たらしくもり、どこか愛らしく優しくもある猫丸先輩の魅力溢れる作品集。バリエーション豊富な短編集で、倉知さんの引出しの多さが窺える。

一番お気に入りなのは「海に棲む河童」。どこにでもあるような昔話にあのような解釈を与えるのは脱帽!でも、真相は猫丸先輩シリーズにしてはかなり猟奇的・・・。

全編に渡ってユーモアのセンスがほどよく効いていて飽きずに楽しめる。表題作「日曜の夜は出たくない」は結構シリアスだったけど・・・それにしても八木沢がかわいそう(笑)

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