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ミステリの祭典

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鉄鼠の檻
百鬼夜行シリーズ

作家 京極夏彦
出版日1996年01月
平均点7.31点
書評数59人

No.59 8点 斎藤警部
(2025/11/16 21:00登録)
「僕はまた明石先生に叱られたよ」

端緒の台詞の破壊力! 明らさまな告白擁した序章の魅惑。
これぞ大衆小説の桃源郷。 どっぷり浸かるが良い。

「まあ犯人じゃないのなら一杯どうぞ」

・箱根の或る村では、十数年前、深紅の振袖に身を包んだ童女が異様な唄を口ずさみ走り回る様が継続的に目撃され、その異様さ故に村内遍く口伝されていた。 ところが最近になって、昔と全く同じ容子の振袖童女が全く同じ唄を唄う様が見られるという。 この二人は “年を取らない童女” なる妖怪ではないかと目されている。
・同じ村に建つ豪壮な禅寺の僧侶が次々と、おかしな様相を晒した屍体で発見される。
・その禅寺は奇異にも檀家を持たず、宗派すら不明(!)。 甚だしくはその筋の生き字引、京極堂ですらその存在を見聞きした事が無い。
・東京から禅寺へと買取りの大仕事に参上した古物商は、彼を呼び寄せた僧侶当人が殺害された事を知る。
・禅寺は、東京の某大学から、禅僧座禅時の脳波を調査したいとの申し入れを受けたばかりだった。
中心に来る謎は何なのか。 禅そのものの謎に絡めとられそうになりながら、愉しい仲間や気難しい者共との交流の中、ずりずりじりじりと進行するお話である。

“トニー谷という芸人の七五調の和製英語は面白いとか云う話だった。”

‘揉み療治’ に揉んでもらう気持ちよさの書きようがもうほんとうに実に気持ちよさそうで、この気持ちよさは肩揉みのようすの描きっぷりのみならず、そのもおっと前からの文の筆づかいから繋がって来ているのだと悟った。

意味を定義すべき言葉、すべきでない言葉。
妖怪、怪異、科学的説明、合理的説明等々を定義するしないについての、禅からの見解(?)。

「塩に醤油をかけて喰うようなもんだ」

宿と寺、往復に労を要する二拠点に跨っての、情報時差と時系列攪乱。 これが実に、本格推理興味をだだ漏れにする。
警察の人々に求心された、やたらのおまぬけファルス、それもいつしかおどろなゆがみと靄に変容し、更には或る小さな悟りを経たかの様な振る舞いを見せるに至った。 そのまま物語は終局を迎えた。
物語の一葉一葉が漸次的に積み重なり、漸次的に終結に向かう、そんな線対称の構造ではなかった。 急襲する暴露クライシスから激震のクラッシュに至ったあげく、頓悟のような終結には呆気なさと凄みとが在った。

表題を知って 
鉄鼠の檻ってその通り なる駄洒落を思いついたものだが 本当に 
鉄鼠の檻ってその通り だった この小説は。(俺は、違うぜ。。?)

「京極だけじゃあ荷が重かろうと思ってね。 わざわざ待っていてやってのだーー有り難く思え」
「この先に面白い顚末はないぞ。 不愉快な結末があるだけだ」
「さあ、つまらないから僕は散歩して来ます」

連続殺人の動機は、●●ではないと思うのだが、如何でありましょうか。 それこそ冒頭の方にそれは明記されているような・・

「そんなことはここで云うことじゃない!」

ちょっと厄介な事象を理解する方便に、補助線的な何ものか(別個の対象物)が利用されるのは、日常よくある事です。
言葉と訣別する禅を語るのに古今膨大な言葉が動員されるのは、悟りに至る方便としての言葉が、補助点、補助線、補助面、補助立体、補助四次元立体、補助五次元立体(以下どこまで続くのか ・・ 脳感上無限か ・・ )として必要だからではないでしょうか。  最終的には瞬時転回で、点以前のマイナス次元に入り込むのかも知れません。

某有名●●映画の有名エピソードと、某新本格ミステリ有名作のメイントリック、その二つを裏返した上でお互い斜めに睨み合わせた様な、ショッキングな或る種の●●●●トリックには討たれました。
↑ 流石に具体的題名は書けません。

“こう云う事件がある度、私は妻に背徳(うしろめた)さを感じるようになっている。”

悟りは在る。 悟りを目指すことは出来る。
そう思うだけで勇気が湧くではないですか。 この書評を読んでくれたヤングのみんな!

No.58 10点 密室とアリバイ
(2023/05/03 09:52登録)
このシリーズにミステリを求めてはいけない。
百鬼夜行シリーズでこれが1番好きという方に会ったことがないが…好き

No.57 6点 ROM大臣
(2021/07/08 13:55登録)
禅宗をテーマに、重厚な構成とペダントリーと舞台設定がありつつ、トリック自体も大仕掛け。同時にユーモアがあり、登場人物が多彩に書き分けられている。しかも人物が決して切り絵的にではなく、性格的に動く。
スタイルや叙述、ボキャブラリー、様々なモチーフを重ねていく手腕も申し分ない。
京極堂と榎木津のダブル探偵にして、殺人も殺し係と死体遺棄係が別になっている。寺にはでっち上げの貫首と本当の守主がいて、登場人物は徹底して二重化されている。
それなりに書き込んであって、誠実だという気もするが、長くなければならない必然性はないと感じる。小説を長くすること自体が目標なのだろうか?

No.56 6点 クリスティ再読
(2020/09/20 10:50登録)
今回は禅の話。純粋にミステリと見たら、空前絶後のバカ動機+バカ見立て殺人ということになるんじゃないかな...読むのが二度目のせいかもしれないが、描写がなかなかマンガっぽくて喜劇的に思う。山下警部補の自信喪失エピソードとか、カワイイものじゃん。あまり深刻になって読む作品ではなくて、娯楽で笑いながら楽しんで、禅の雑学が得られるお得な作品、というくらいで楽しめばいいと思うよ。
この作家、禅みたいなややこしい話をわかりやすくまとめる能力はなかなか、あると思う。でもねえ、明慧寺に初めて訪れるまで全体の1/3を費やすとか、描写が全体に冗長なのは....今風なのかな。情報密度が薄いからサクサク読める。皮肉で言う気はないけども、読者の負担が軽くて「なんか読んだような気にさせる」能力は高いと思う。ま、そうでもなければ、ベストセラー作家にはならないか。
レギュラー陣は頭数ばっかりで結局傍観者だし、ミステリ的に怪しい人の事情が最後まで言及なしで伏せられているとか、やや構成に難があるとは思わなくもない。京極堂の推理は、実質推理じゃなくて「手元の隠し札をオープンする」ようなもので、ホントは「推理の物語」のミステリじゃない....まあ「明かされる驚愕の事実」がファンタジーとして成立すれば、エンタメとしてはOK、なのかもね。

とはいえね、敦煌で唐代の禅関連資料が発見されて、いわゆる北宗の教えの実態も今は解明されているようだ。南宗と大きな差はなくて、荷沢神会による一種のクーデターの際に、自分と系統が違う北宗攻撃のためにことさらに「漸悟」とレッテル貼りをした...という何とも興ざめな結論に、今は傾いているそうだよ。評者「六祖壇経」の六祖恵能のカッコよさに痺れたクチなんだが、これも歴史的には「偽書」に近いものらしい。

なかなか、ロマンというものは、難しいものだ。

No.55 7点 じきる
(2020/08/23 18:32登録)
豊富な禅の蘊蓄だけでも随分と楽しめる。
キャラクターも相変わらず魅力的。

No.54 8点 雪の日
(2020/04/14 13:41登録)
禅に関するうんちくがおもしろかった。

No.53 5点 モンケ
(2019/09/28 08:55登録)
この作品に、借り物でよいので大技トリックが一つと、宝探し暗号解読ネタが一つあれば、仏教版「薔薇の名前」になってたのに残念ですねえ。

No.52 10点 mediocrity
(2019/02/22 00:11登録)
もう素晴らしいの一言。面白すぎて2日で読了。長すぎるどころかもう少し読んでいたかった。
魍魎の匣も10点にしましたが、個人的にはこちらの方が上です。
あの1行は十角館のあの1行よりも驚きました。声が出てしまった。
ただし魍魎の匣以上に「全く面白くない」という人がいるのも納得できます。

No.51 4点 レッドキング
(2018/05/31 21:54登録)
つまるところ どこがミステリだったんだ?動機か?死体か?建物か?

(2021/4/12 追記)「どこがミステリだったんだ?」って言ったって、ちゃんとフー・ホワイミステリしてるじゃん。ただ、解明が単なる経緯説明なのがツマランてだけで。 

No.50 5点 羊太郎次郎吉
(2016/10/21 06:59登録)
益田の聞き上手ぶりに見惚れた。(読み惚れた?)

敦子は見た目はお人形さんだけど中身は京極堂の女版なんだねえ。結婚したら旦那さん苦労しそう。というかこういうタイプの子は結婚しないほうがいい気がする。

No.49 6点 いいちこ
(2015/10/26 16:20登録)
禅に関する薀蓄の面白さはシリーズ随一とも言えるレベルにあり、読物としてはさすがのデキ映え。
一方、こうした衒学とプロット、とりわけ犯行の態様と動機にあまりにもストレートに直結していて、作品としての奥行きには欠けている。
舞台設定自体がご都合主義の産物というより現実味に乏しい点、犯行のフィージビリティがほぼ無視されている点、振袖の少女はじめ解明されない謎が存在する点など、本格ミステリとしては不満の残る仕上がり

No.48 5点 nukkam
(2015/04/16 12:01登録)
(ネタバレなしです) 1996年発表の百鬼夜行シリーズ第4作です。相変わらずの大作主義で、私の読んだ講談社文庫版は実に1300ページを超える厚さがありました。後に出版された分冊文庫版が全4巻になったのももっともで、価格は多少高くつきますがこれだけの分量なので読みやすさを優先して分冊版の方がいいかと思います。このシリーズの特色である京極堂による「憑き物落とし」(犯人探しはついでの位置づけになってしまいますが)は本書でも健在と言いたいところですがあまりにも宗教色が強く、その分妖怪色は後退しているところは評価が分かれそうです(巻末解説を宗教学者に書かせているほどです)。非常にユニークではあるけど万人が納得するとは思えない殺人動機など本格派推理小説の謎解きとしては前衛に走り過ぎではと感じました。

No.47 5点 ボナンザ
(2014/04/07 22:51登録)
この頃から蘊蓄の長さも手伝い、やや我慢の限界を超える。
ラストの展開も唐突。

No.46 5点 HORNET
(2013/05/06 19:16登録)
 禅の薀蓄はそれはそれで面白い。著者の博学、多方面に渡る造詣の深さに心から舌を巻く。事件の不可思議性も十分に魅力的なだけに、面白く読み進めたのだが・・・。
 あの長さを経て納得のいく結末とは言い難かった。過程の長さの楽しみはイコールそれを請け負うだけの結末への期待となる。今回でいえば、動機、そして見立て(?)殺人の意味というか必然。それがあまりにも簡単で短絡的であったのが残念。久遠寺翁など懐かしい人物の再登場などはうれしかったり、世に知られていない謎の巨刹という設定は面白かったりしたのだが、シリーズの中では評価の高いほうだけに読後は期待以上のものではなかったという感が強い。

No.45 10点 TON2
(2012/11/05 21:06登録)
箱根僧侶連続殺人事件。
禅宗に関するうんちくが満載で、個人的にはシリーズ中最も好きな作品です。
警察官が、山麓の旅館から山上の寺まで、毎日きつい階段を上り下りする繰り返しがたまらなくユーモラスです。

No.44 6点 mohicant
(2012/10/24 22:09登録)
禅についての解釈は面白かったが、それでも動機についてはいまいち理解というか納得できなかった。

No.43 4点 好兵衛
(2011/04/24 02:14登録)
ここまでくると、京極ワールドを味わいたいために
読んでいる。ワールドの魅力にはあがらえません。

宗教(仏教)の薀蓄が難しいはずなのに
やさしく吸収できる。
これも、京極氏の技なのか。

ミステリの謎については毎度のこと。
もう誰にでもできるんじゃないのか?なレベル。

以下評価参考
10~7 妖怪、ぺダントリー好き 京極氏のキャラクター
     話しの語り口、雰囲気が好き。
     京極氏ファン(もうやみつき)。

6~4  おどろおどろしい雰囲気を味わいつつ
     謎、殺人もおまけ程度に欲しい人。

3~1  筋の通ったトリック、オチ。論理的な解釈結末
     をこの作品にもとめてみる方。
     本格を読むつもりで見る方。

京極作品の中毒性にどっぷりはまる。
あの厚さが至福タイムに。
妖怪小説、小説としては、相当好みで面白い。

No.42 9点 brit
(2011/04/23 02:28登録)
ミステリーとしてどうかより禅問答の薀蓄が面白すぎて、読み終えてからそっちの知識を吸収したい欲に駆られてしまった。
百鬼夜行シリーズはいつも京極堂の薀蓄が楽しみである。

No.41 7点 ムラ
(2011/02/16 07:10登録)
これまでのシリーズの中では一番長かったが一番無駄が少なく読みやすかった。
幻想的であった寺がどんどんと現実の世界に引き戻されていく様は圧倒されました。
山下警部補の変わりようが中でも一番面白かったかな。探偵の飄々とした姿も相変わらず。
動機に関しては1000pもの説明がなければ正直納得できなかっただろうなぁ。
しかし結局あの鈴はなんで子供のままだったんだという疑問。

No.40 4点 itokin
(2010/07/06 18:17登録)
イヤー、長すぎだなア、読みきるのに1ヶ月かかった、仏教の宗派の抗争は難しくて理解不能。この本を面白いと感じる人は頭のいい人だと思う。俺には、合わない。

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