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ミステリの祭典

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天使のナイフ

作家 薬丸岳
出版日2005年08月
平均点6.90点
書評数21人

No.21 9点 猫サーカス
(2021/11/29 19:05登録)
カフェ店の店長である桧山は、刑事の訪問を受ける。刑事は四年前、妻の祥子が殺された時の担当だった。犯人は十三歳の少年三人で、十四歳未満のために刑事責任は問われず、そのうちの二人は林間学校の合宿程度の拘束しか与えられない児童自立支援施設への送致だった。人一人殺して、その程度なのか。何よりも見事なのは、テーマである少年法を多角的に捉えていることだろう。厳罰にすべきなのか、それとも子供の人権を守り、更生に期待を寄せるのか。そんな厳罰派と保護派との相克を、桧山がつぶさに検証する。本書の最大の魅力は、この倫理の煉獄ともいうべき境地が、関係者たちの隠された肖像とあいまって一段と深まることだろう。決して理想に走らず、かといって総花的にもならずに主題を追求する。ストーリー展開は二転三転し、終盤はどんでん返しの連続。まさにミステリ的興奮がみなぎっている。伏線の張り方は周到で、人物像にも陰影がある。デビュー作とは思えないほど目配りがよく、細部が充実している。

No.20 8点 パメル
(2021/04/27 08:36登録)
少年による凶悪犯罪が目立っている。彼らの多くは少年法に守られ、大人と同等の刑事処分を受けることはない。数年の矯正期間を経て社会復帰した少年が、本当に更生したといえるのか。被害者や家族の人権は。加害者が成人であろうが未成年であろうが、失ってしまったものには変わりはない。なぜ未成年者に殺された瞬間から、被害者の命の価値は軽くなってしまうのか。
江戸川乱歩賞を受賞した本作は、少年犯罪問題に真っ向から取り組んだ社会派小説でありながら、謎解きも楽しめるミステリでもある。主人公はコーヒーショップのオーナーの桧山。愛する妻を惨殺されるが、捕まった犯人は三人の中学生だった。少年であるがゆえに刑事責任を問われない。桧山は無念の思いを抱えながら生きていくしかない。
ところが四年後、犯人である少年の一人が殺される。そして、思いも寄らなかった過去の事実が次々と明らかになる。ストーリーはに二重三重に謎が仕掛けられている。だが、終盤近くになってもその謎ははっきりしない。意表を突く展開となり、思いがけない真相が明かされる。と同時に真の更生とは何かという問いと、その答えが提示される。
緻密なプロット、巧みな伏線、そして何よりも重いテーマと真摯に向き合った作者の誠実な姿勢が心に残る。

No.19 7点 take5
(2019/06/29 23:52登録)
乱歩賞受賞作、作者の熱を感じます。
文庫版解説によると、作者は書き上げ寸前に会社を退職しているとか。
それほどまでする思いが少年法や贖罪、被害者救済など社会的問題の描き方に表れている名作です。
400ページちょっと、二時間半で一気読みしてしまいました。

No.18 6点 メルカトル
(2015/09/23 21:47登録)
乱歩賞受賞作の中では、優れた作品だと思う。何人かの方が書かれているが、本格的な社会派ミステリでありながら、根底にエンターテインメントがしっかり息づいているのが素晴らしい。さらに言えば、重いテーマを扱っているにもかかわらず、ある種娯楽作として楽しめるように出来上がっているので、毛嫌いせずに読まれるのもよろしいかと思う。
ただ難点もあり、偶然にしても少年犯罪があまりに多発しているのは不自然であろう。それを除けば、単純に見えた主人公の妻の殺害事件が、意外に複雑な展開を見せる辺りのサスペンスや、少年法の是非を問うべき永遠のテーマなど、読みどころ満載である。

No.17 7点 名探偵ジャパン
(2014/09/18 08:53登録)
「社会派」と銘打ってはいるが、エンタテインメント性に優れたミステリだと思う。諸氏語られているような偶然の連続も、娯楽作品ならではの展開で、いい意味で、社会派の皮を被ったミステリに落ち着いている。
ただラストに向けての展開は、色々詰め込みすぎと感じた。賞の応募作ということで、とにかくすべてを出し切ろうとしたのかもしれないが。
個人的には、事件の原因のひとつとなった、過去に登場人物をナンパして悪の道に引き込んだ連中に対する処遇が記載なく、あのまま無罪放免になったらしいことが不満。エンタテインメントなら、連中もしっかり殺さなければ(笑)
読み始めに受けた印象と、読後の感想がかなり違い、これまたいい意味で予想を裏切られた。本格ミステリファンにも、「社会派」と嫌ったりせずに読んでもらいたい。

No.16 7点 蟷螂の斧
(2012/03/26 10:10登録)
同じような境遇の人物登場に関しては、作者の物語構成の意図(よく練られていて面白い)であり評価します。ミステリーというより、小・中学生の学校の先生や親に読んでもらいたい作品と思います。いじめ問題、少年法、死刑制度等を考えさせられますが、江戸時代の仇討制度や「目には目を」の精神が希薄な現行の法制度では、問題が起こらないように教育に期待するしかないのでしょうか。

No.15 4点 いいちこ
(2012/03/06 20:02登録)
世評の高い作品だが基本的には少年法という注目度の高いテーマをミステリに仕立てたアイデアの勝利だろう。
性急に結論を求めるのではなく、双方の主張を丁寧に汲み取るようなストーリーテリングにも好感が持てる。
問題はプロットだが評価に値しない。
奇怪・非現実的な状況をどのようにして合理的に説明し、読者に納得してもらえるかがミステリの要諦である。
だから作者は舞台設定・人物造形をはじめプロットを練りに練らなければならない。
ところが本作は真相の恐るべき偶然に対して、何らの合理的説明、共感を得られるような舞台設定もしておらず、結果としてすべてが偶然で片付けられている。
ミステリとしては努力不足と言わざるを得ず、この評価

No.14 2点 ムラ
(2011/08/22 08:36登録)
良く出来た話、と思う一方、登場人物に感情移入が出来ず、少年犯罪などの問題に対する気持ちがあまり喚起出来なかったと言う感想。
一番の原因は、犯人が安っぽく感じた所為かと思う。
ついでに突っ込むと「大切な人を失う気持ちがわからないあんたなんて仲間なんかじゃない!」ってそれあんたが言っちゃダメでしょ。
それでも、上手く練った構成だと思うし、文章もすらすら読めたので楽しめた。
難しい要求だが、謎の構成よりも、これにプラス虐め問題を掘り下げてくれたら個人的には満足出来た気がする。

No.13 9点 ナナ
(2011/05/19 15:45登録)
初「薬丸岳」です。面白かったです。感動しました。一気に読めました。お勧めします。

No.12 10点 kenvsraou7
(2011/03/10 21:58登録)
題材が少年犯罪を取り扱ったものだったので
「さまよう刃」に通ずるところがあり
興味心身で読み始めたのだが見事にジャストミート。
これは面白い。
「さまよう刃」よりエンターテイメント色が強く
少年犯罪を基盤にしているものの
その背景にある深い暗闇のような事件に衝撃が走った。
この作者の情熱がこの文章のカッコよさを象徴していると
思う。この人の作品はこれからも読んでみたいと心から
思った。

No.11 8点 E-BANKER
(2011/01/16 16:58登録)
第51回江戸川乱歩賞作品。
確かに近年の乱歩賞受賞作の中でも出色の出来と言っていいでしょう。
~生後5か月の娘の前で妻は殺された。だが、犯行に及んだ3人は、13歳の少年だったため罪に問われることはなかった。4年後、犯人の1人が殺され、檜山は容疑者となる。「殺してやりたかった。でも俺は殺してない」。裁かれなかった真実と必死に向き合う男を描く!~

本作のテーマは「少年(少女)犯罪」・・・。
少年3人に最愛の妻を殺された主人公桧山貴志が、加害者が殺されていく新たな事件に巻き込まれながら、過去の妻殺しの謎に迫っていきます。
まぁとにかく「重いテーマ」ですよねぇ・・・「少年犯罪と少年法」といえば、例の山口県光市で起きた母子殺人事件が思い浮かびますが、権利を保護すべきなのは「未成年」なのか「被害者家族」なのか・・・たいへんに難しい問題ですし、立場変われば意見も変わるという見本のような気はします。
それはさておき、ミステリーとしても本作はなかなかのレベル。処女作ですから、もちろんいろいろとアラはあるのですが、割と静かに淡々と進んでいく前半部分から一変、後半は隠されていた構図が次々と明らかになり、怒涛のラストへ・・・という展開。息つく暇がありません。
過去の「少年犯罪」がここまで複雑に、そして偶然に絡み合ってしまうやりきれなさ、そして最後に知る驚愕の事実・・・というわけで作者渾身のプロットと言っていいでしょう。
「こんな偶然あるわけない!」というのは当然の意見かもしれませんが、それが本作のエネルギーになっているんだろうという気がしますねぇ・・・
(作者の拘りと熱い思いに敬意を表します。)

No.10 8点 ウィン
(2010/09/25 12:01登録)
この「天使のナイフ」の最後に掲載されている選評で乃南アサさんは「天使のナイフの一人勝ち」だと言っている。
俺は他の候補作を知らないから分からないが、この「天使のナイフ」を読んでみたところ、確かに一人勝ちだったのかもしれないと思ってしまった。
少年法問題という難しいテーマをミステリに盛り込み、さらにそのミステリ自体も意外な結末もあり、ちゃんとしたものに仕上がっている。
最後まで読んでみた思ったのは、少年法というのは難しいものだということ。
更正させるのが一番なのかもしれないけれど、厳罰を与えるべき者もいるかもしれない。
更正させるなんてこと、なかなかできるもんじゃない。
それならいっそ、少年法なんて作らずに普通に懲役や死刑を適用してみるのもひとつの手だと思う。

No.9 7点 STAR
(2010/02/18 15:33登録)
(ネタバレあり!)
乱歩賞受賞作なので、読んでみました。
殺害された妻の過去が徐々に明らかになっていくのは、おもしろい。内容もありえそうな設定。ただ過去に少年犯罪を犯した人が主人公の周りに多すぎるのがあまり現実的ではないような・・・。

No.8 7点 makomako
(2009/12/06 08:00登録)
作品が重いテーマではじめのうちは読んでいて憂鬱になるが、よく考えられたストーリー展開に途中からはひきつけられた。確かにあまりに同じ犯罪を犯した人たちがこんなに集まってくるのは不自然な感じはあるがまあよいでしょう。こういったテーマをあつかう小説はあまり好みではなく最初の部分を読んだときに読むのは止めようかと思ったが、途中からは一気に読んでしまった。社会の矛盾を訴えるような小説が好みならすごく感動すると思う。

No.7 7点 touko
(2009/12/02 22:59登録)
(若干ネタバレ要素あり)



少年犯罪見本市? と言いたくなるほど主人公の周囲に元少年犯罪者が集まっていますよね……そんなご都合主義はさすがに鼻につくものの、アップ・トゥ・デートかつセンセーショナルな題材、大衆のルサンチマンのすくい上げ方、加害者・被害者双方の立場への目配り、決着のつけ方等、大変バランスがよく、これは売れるでしょう~。

ただ作者の個性があまり見えてこなかったので、他作品も読んでみたいです。

No.6 7点 abc1
(2009/07/21 13:33登録)
リーダビリティが高いので一気に読めました。
結末あたりはかなり楽しめました。
ただ読後熟考すると、リアリティのなさが気になります。
以前『テロリストのパラソル』を読んだときの読後感と似てます。こんなにつながるものか?という。
そういえばあちらも乱歩賞でしたね。
乱歩賞はそこらへんのリアリティは軽視なのかな?

No.5 8点
(2009/07/16 19:30登録)
 「13階段」には劣りますが、それでも乱歩賞史上に残る傑作です。なにしろ、乱歩賞を満場一致で取ったとか。
 いろいろな方が指摘していますが、確かにこの作品は主人公の周りにいる人が、特別な人ばかりです。作者の都合よく書いている感じはあります。それでも最後の大ドンデンはめまぐるしいもので、僕は好きです。

 まあ、どんでん返しも程々に。ですけどね。

No.4 6点 シーマスター
(2009/07/10 23:57登録)
(ネタバレあり)

ryoさんが言及されているようにテイストは「13階段」に似ていると感じたが、全体的な感想はりんちゃみ先輩さんとほぼ同様。

少年法というものが社会的にどのような存在で、被害者遺族・加害者とその家族・関係者達の人生に何をもたらし、どう影響するのかを様々な角度から生々しく映し出し、底深く問題提起するという点においては「さまよう刃」や「殺人症候群」以上の小説といえる。

ただ「普通の人」である主人公夫婦、二人各々の悲運度はちょっと現実離れの感が強いよなー
夫は、何百人に一人の人間が一生に一度遭遇するかしないかという悲劇に(全く別個に)二度見舞われて両親と妻を失った。
殺された妻も生前(夫とは別に、やはり別個の)二つの殺人事件に関わってしまっていた。
まぁ、「夫の両親の件」以外は本作の「種」だから「これを否定したらこの話はない」ことになるが、主人公である夫は更に三つの殺人(および未遂?)に巻き込まれることになる・・・・・・・・これが本作の「展開」なんだけどね。

ミステリとしても・・・
いろいろ繋がりすぎ。
「おぉ、そう繋がっていたのかぁ!」と感嘆する類のものではなく、話を纏めるための御都合感が否めないタイプのもの。

しかし何だかんだ言っても、ストーリーの牽引力は流石・・・読み物として「かなりのもの」と評価せざるを得ないだろう。

余談に近いが、始めの方での「貫井哲郎」の嫌悪感溢れる人物像に驚き、描写が進むにつれ辟易さえした。が・・・・・・・・

No.3 5点 りんちゃみ先輩
(2009/04/30 20:39登録)
知らなかったのは主人公ばかりなり・・1人の人間の周りにこれほど犯罪に手をそめた人・そめる人が集まるのはあり得ないと思う。まあ推理小説だからと解釈すれば納得だが。所々参考文献の文章を強引に小説化したような説明調なところがあったり、女性のキャラが皆同じにしか感じられなかったり、会話にリズムがなっかたりして読み難かったりしたが、読み終えてしまえば、まぁ楽しめました。

No.2 6点 あびびび
(2009/02/13 10:34登録)
デビュー作でありながら「江戸川乱歩賞」を獲得。
しかも他の追随を許さないブッチギリの評価だったらしい。

一応少年犯罪がテーマだが、現代社会の深淵を垣間見せて
手に汗握る力作に仕上がっている。次の作品も読みたい。

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