ウォリス家の殺人 |
---|
作家 | D・M・ディヴァイン |
---|---|
出版日 | 2008年08月 |
平均点 | 6.76点 |
書評数 | 17人 |
No.17 | 5点 | いいちこ | |
(2022/08/14 13:54登録) 犯人特定に至るロジックが非常に弱い。 特にアリバイの中核を成す事象は、不自然かつご都合主義的であり、その手がかりも納得感に乏しい。 真相解明の決め手は読者の盲点を突いている点で巧みさも感じられるところ、それだけに最終盤の運び、真犯人が明らかとなってから、その手がかりが指摘されるという手順はいま一つという印象が強い |
No.16 | 6点 | レッドキング | |
(2021/10/09 18:46登録) ディヴァイン第十三作にして遺作。ひとかどの社会的身分にありながら情緒不安定な男女、陰湿な感情起伏、緊張過多の家族・男女関係、クリスティーを三割方どぎつくしたWhoWhyパズル、ショボいアリバイ時間トリック・・ディヴァインは最後までディヴァインであった。「グリーン家」先例に従い「違うほう」を犯人と予想してしまった。 ※遺作なんで点数1~2点オマケ。ただ、第八作「Death Is My Bridegroom(死は我が花婿?)」のみ未訳・・・再来年あたり翻訳でるかな。 |
No.15 | 8点 | ぷちレコード | |
(2021/06/04 22:56登録) 大学教師のモーリスは、幼馴染の人気作家ジョフリーの妻から夫の様子がおかしいと言われ、ジョフリーの邸宅を訪ねた。 近所に住むジョフリーの兄ライオネルとの確執、妻の不倫、編集者との意見の対立とさまざまな問題が露見する中で、ジョフリーが殺される。犯人としてライオネルが逮捕されたものの、新たな証拠や動機が発見され、いくつもの可能性が浮上してくる。 邸宅に出入りする全員に動機があり、全員が何かを隠していて、しかも全員がはっきり言って嫌な人間であり、誰が犯人でもおかしくない。巧みな伏線を張り巡らし、衝撃の真相へと導いていく手腕は素晴らしい。 |
No.14 | 7点 | ミステリ初心者 | |
(2021/04/20 19:45登録) ネタバレをしています。 解決編前の、モーリスが電話が警察へ電話をかけるところで読むのを止め、事件の再検証をしようかと思いましたが、それまでに同様に2冊の"解決編前止め小説"が重なってしまったため、面倒になり読みました(笑)。まあ読み返してもわからなかったでしょう(笑)。 事件が起こるまで少々時間がかかり、やや読みづらかったです。しかし、ウォリス家のドロドロとした展開や、スレイター家のモーリスとクリスの物語、ジョフリーの隠し子と遺産問題など、ツボを突いた物語に厚みがあります。伏線とミスリードも多く、巧妙に犯人が隠されていて、それでいて解決編には読者に納得させられる論理的な犯人断定もあり、本格推理小説として満足度が高いです。フェア度が高いアガサ・クリスティー作品のようでした。 難癖点を挙げるとすれば、物語の厚さに対しての、アイデンティティが薄いです。この小説ならではの大仕掛けはありませんでした。論理的な解決を目指すと、どうしてもそうなりがちなのですが、ロジックな要素はほぼ1点であり、あとは伏線回収で終わっています。クイーンのようなパズラーと比べても、クリスティーのどんでん返しと比べても、どちらにも劣るかもしれません。 また、犯人のアリバイが主観の主人公による勘違いだったのは、私にとっては想像しづらかったです(笑)。私の知能が低いからなのかもしれませんが。 いろいろ文句を言いましたが、完成度が高い本格推理小説だとおもいました。 |
No.13 | 7点 | バード | |
(2021/03/17 07:30登録) 翻訳が上手かったのか、非常に読みやすかった。 構成についてはヴァン・ダインの『グリーン家』が頭をよぎった。上記同様意外な犯人で魅せる作品だが、作中で言及されている点から犯人を推測することができるので、意外性だけでなく、パズルのピースが綺麗にはまる感覚も楽しめる佳作。 |
No.12 | 6点 | クリスティ再読 | |
(2020/03/14 14:12登録) 反核デモとか話が出てたから、出版年度を確認したら1981年だそうだ。ディヴァインでも最後の作品か。作品舞台は1962年のようだから、20年も前の時代設定で書いていることになる。何か事情があるのかな。 歴史学者の主人公は、血縁はないが兄弟同然で育った流行作家の招待に応じて、その家を訪れた。主人公は成功した天才肌の流行作家ジェフリーに対して、劣等感のようなものを感じて疎遠だったのだが、その息子とジェフリーの娘とが結婚する話が持ち上がり、その収拾とジェフリーの抱える別な問題を相談したい、という思惑をジェフリー夫人のジュリアは持っていたようだ。ジュリアは結婚には大反対、しかもジェフリーのトラブルは兄ライオネルがジェフリーの秘密を握っていて、恐喝などをしているようなのだ...はたして、ライオネルの家で格闘の跡と銃弾・血痕が見つかり、ジェフリーとライオネルは姿を消した! と古典的ファミリートラブルの話。狭い範囲の人間関係で事件が展開するからフーダニットにおあつらえ向き。でディヴァインらしく人間関係を丁寧に膨らませて描いているので、小説としての読みごたえがある。別れた妻に引き取られて、元妻にあることないこと吹きこまれた息子に対する、主人公の対応などなかなか小説的な興趣がある。また作家ジェフリーの過去を追う調査小説としての展開の妙のあって、少なくとも退屈はしない。でその中に、細かい矛盾を突いて犯人を抽出するようなフーダニットが仕込んである。 しかしそれでもね、この小説的な仕掛けとフーダニットがちゃんと連動する、という話ではないので、そこらへんで印象が地味になっているようにも思う。地味で篤実なのはいいのだが、それ以上の「すごい・面白い」がないのが芸風なのかな。 |
No.11 | 6点 | 青い車 | |
(2020/03/05 21:56登録) 伏線の細かさはその他の作品群より一歩譲ると思いますが、やはり読み応えのある小説としての面白さには安定感があります。蓋を開けてしまえば真相はそれほど珍しいパターンではありません。しかし、読者は知らないうちに作者の術中にはまってしまいます。そういう意味ではアガサ・クリスティーに通じるところがあるかもしれません。 |
No.10 | 7点 | 斎藤警部 | |
(2020/03/05 20:21登録) 「 『違う方だった』 ってさ。 『そう言えば、分かるから』 って 」 地味な導入展開と文章。本格なりのおとなしいサスペンス。だがこれは他ならぬディヴァインなんだから、と心理の担保がはたらく。うむ、やはり小説味と本格ミステリの薫りがする。絞り過ぎず拡げ過ぎずの容疑者配置も魅惑の源泉。指紋の機微はまずまず(「災厄の紳士」ほどのインパクトは無いが)。 真犯人、そこにいたのか。。。 露骨でないが故に無意識を揺さぶるミスディレクションが本当に良く効いている。 エンディングはなかなか沁みる。 日本人なら10人に7人は「ノリスケの殺人」と聞き違えるので、電話注文の際は注意を。 しかし、クリケットの時間と来たか。。。 【↓ ネタバレ】 またしても。。「私」が犯人ではないかとうっすら疑惑を抱かせられた。。 上手いなあ、ディヴァイン。 |
No.9 | 7点 | ボナンザ | |
(2015/11/23 11:00登録) これまた傑作。悪魔はすぐそこにと似たような犯人像でありながら、見事に決めてくれる。 |
No.8 | 8点 | あびびび | |
(2015/03/15 12:06登録) こういうタイプの、イギリス的本格モノは好み。アガサ・クリスティを思わせる仕掛けと意外性は、読んでいて飽きがこない。疲れ気味の時に読めばちょうどいい感じである。 しかし、「勘違いした。ちがう方」というミスリードは、微笑ましくもあり、勘違いでは済まされない切実さもあった。 |
No.7 | 6点 | 臣 | |
(2014/02/12 11:19登録) 人気作家として成功したジョフリー・ウォリスと、彼を脅迫していたジョフリーの兄ライオネルとの関係はもちろん、ジョフリーを取り巻く複雑な家族、友人、仕事環境もミステリーの舞台設定として申し分なしです。 殺人が発生してからは、殺害された人物が出版する予定だった伝記を、その友人である歴史学者が引き継ぎ、その日記をもとに過去を探り始める・・・。 この流れはミステリーとして常套な展開とはいえ、その流れに沿って気持ちよく読み進むことができます。 しかも人物描写は匠の技。序盤の60ページほどの人物紹介だけでもわくわくします。その人物造形のうまさと、ていねいさがミソ、と思いながら読み進めましたが、犯人は当てられませんでした。 一方、地味すぎ、暗すぎは難点です。ドロドロ感が出すぎの感もあり、嗜好の分かれるところでしょう。一歩間違えれば、安っぽくもなってしまいそうです。 犯人当て物としては、無意識のうちにいろいろと推理していたことから考えても、楽しめたのだと思いますが、真相の解法はあまりすっきりしません。難易度が高いとうことでしょうか。それとも読み込み不足でしょうか? 総合評価としては、平均以上の佳作でしょうが、登場人物を魅力たっぷりに描いた、派手な「五番目のコード」や、騙しのテクニックを駆使した、地味な「兄の殺人者」にくらべると、すこし落ちます。 語り手だけでもすっきりとしたキャラにしておけば、ちょっとは違ったかな、という気もします。 |
No.6 | 6点 | 蟷螂の斧 | |
(2011/12/19 20:33登録) フーダニットは、優れていると思いますが、大がかりなものはなく、物足りなさを感じました。作風だから仕方ないと思いますが・・・。謎解きを楽しむには良いと思います。 |
No.5 | 6点 | kanamori | |
(2011/04/18 21:01登録) ひとつ前に邦訳された「悪魔はすぐそこに」が非常によかっただけに、本作は個人的にはそれよりちょっと落ちる標準作かなと思います。 人物造形を丁寧に描きながら、相反するようにそれを逆手に取ったミスリードを得意とする著者の特徴は本作も出ています。ただ、館ミステリ風で多くの登場人物を最初からいやな感じに描いているのがディヴァインらしくないような気がします(これは好みの問題でしょうが)。真犯人を特定するクライマックス場面もあっさりしすぎで、盛り上がりに欠ける印象。 |
No.4 | 7点 | E-BANKER | |
(2011/03/05 00:04登録) 英国本格ミステリーの系譜を引き継ぐ作者の長篇作品。 翻訳物と思えないほどの読みやすさがGood。 ~人気作家ジョフリーの居宅「ガーストン館」に招かれた幼馴染のモーリス。最近様子のおかしいジョフリーを心配する家族に懇願されての来訪だった。彼は兄ライオネルから半年にわたる脅迫を受けており、加えて自身の日記の出版計画が人間関係に複雑な緊張をもたらしていた。そして、ついに・・・~ まさに、「ザ・本格ミステリー」というテイストたっぷりの作品。純粋なフーダニットが存分に楽しめます。 ただし、他の方も指摘されてますが、犯人特定のロジックは正直弱い。 アリバイにしろ、「動機」にしろ、真犯人を特定できるほどの伏線はないような気が・・・登場人物のほぼ全員を怪しくするために、いらない追跡劇などが挿入されてるのもちょっと冗長なかぁと感じてしまいました。 まぁ、全体的には満足できるレベルだとは思います。 ラストも、「(やや)意外な犯人」でサプライズ感も味わえますし、何より安定感たっぷりの筆致なのが一番のセールスポイント・・・ ということで、安心して手に取れる「佳作」という評価です。 (英国でも日本でも、本格ミステリーには「ドロドロした人間関係」というのは不可欠なんですねぇ・・・) |
No.3 | 8点 | nukkam | |
(2011/01/11 17:07登録) (ネタバレなしです) ディヴァイン(1920-1980)の死後の1981年に出版された第13作ですが文献によっては執筆されたのは結構早く、ずっと陽の目をみなかった作品とも紹介されています。未発表にしていた理由が思い当たらないほど優れた内容で、コンパクトにまとめられていますが完成度はとても高いです。個性的な登場人物が織り成す複雑なドラマと充実した謎解きが楽しめます。地味なプロットながらじわじわとサスペンスを盛り上げる手腕も見事で、第三部前半で容疑者たちがガーストン館に集結する場面の何ともいえない息苦しさがたまりません。ミスディレクションも相変わらず巧妙です。 |
No.2 | 6点 | ロビン | |
(2009/01/25 16:11登録) どうしても「本格」と名の付くものは、名探偵による謎解きを期待してしまうだけに、こういった結末は肩透かしをくらった気分になってしまう。そう、ロジックが欲しい。 ただ、犯人の正体は意外。かなり。完全にミスリードされていた。(ネタばれ→)正直、嫌な人間が多発するなか、彼女だけはと信じていました。 だけど、あれは日本人(現代人)にはわからないんじゃないかなぁ。 |
No.1 | 9点 | シュウ | |
(2008/12/09 01:30登録) 以前読んだ「悪魔はすぐそこに」よりも楽しめました。登場人物がすっきりとしていて純粋に犯人当てを楽しむことが出来たことと 個人的に館系のシチュエーションが大好きだということが理由でしょうか。「悪魔はすぐそこに」同様伏線もしっかり張られていて 真相を知った後に読み返してみると結構早い段階で犯人を特定できる箇所があったりして楽しめます。 人間関係が嫌な感じにドロドロしているのも同様でした。これがディヴァインの味なのでしょうか。 横溝作品のドロドロした感じが好きな自分としては他のディヴァイン作品を早く読んでみたくなりました。 |