検察側の証人 戯曲 |
---|
作家 | アガサ・クリスティー |
---|---|
出版日 | 1980年05月 |
平均点 | 7.22点 |
書評数 | 23人 |
No.23 | 7点 | みりん | |
(2024/07/21 00:01登録) 読んでる途中に話の大枠を思い出しちゃった。法廷ミステリーとして想定内のどんでん返しに納まっている感もあるが、コンパクトに纏まっているゆえ疑念が生じる前に意表を突かれる(のではないか?) 演技力が大きく関わってくる内容だからこそ演劇で見てみたい。戯曲版だけでなく、短編小説版があるそうで、そちらも読んでみたいなと。 |
No.22 | 7点 | レッドキング | |
(2022/07/19 19:08登録) 愛する妻の証言は、眉に唾つけられるが、憎むべき情婦の「暴かれた証言」は、決定的な証拠として認められ・・・ 「死の猟犬」に収められた短編小説は素晴らしかった。先方より売り込まれて来た物よりも、嗅ぎ出して分捕ってきた物の方に価値を見出す探偵心理が、この戯曲ではイマイチ欠けて、さらにあのラストがくどくて、2点ほど減点。 |
No.21 | 7点 | 弾十六 | |
(2022/04/30 06:59登録) 1953年発表。早川クリスティ文庫で読了。翻訳は堅実で調子が良い。 短篇版(1925年1月、米国雑誌初出)は夫アーチーに裏切られる前に書いたもの。なので、とてもロマンチックな結末だと感じた。短篇を書いた時には想像もしていなかっただろう、アガサさん自身が14歳年下の男と結婚するとは!(戯曲版発表時のアガサさんは63歳) 自伝で、戯曲版のためにバリスタやソリシタからたくさんの助言をもらった、と書いており、法廷シーンは充実している。でも映画ワイルダー版を見た後で考えると、まだまだ法廷もののメリハリの利かせ方になっていない感じ。作者序文では、大勢の登場人物が必要になるので大変ね、と心配している。確かに劇場の舞台で映画の法廷シーン並みの迫力を出すのは大変だろう。 以下トリビア。原文が得られなかったので、主な項目だけ。 作中現在はp29、p120、p131から1949年なのだろう。 p21 アドルフ・ベック◆ Adolf Beck caseのこと。真犯人スミスが捕まってベックが釈放されたのは1904年7月29日。 p23 二、三ポンドの貯金◆英国消費者物価指数基準1949/2022(37.65倍)で£1=6061円。 p25 軍隊に行ったんでちょっと調子が狂った p29 十月十四日◆金曜日(p86)、1921年、1927年、1932年、1938年、1949年が該当。前述の「軍隊」を考慮すると戦後間もない1921か1949が適切か。 p34 家政婦 p54 きみの今後の発言は…◆英国では昔から米国のミランダ警告っぽいことを言っている(レストレードも言っていた)。Miranda warningは1966年の判例から。 p56 陪審員十二人のうち九人までは、外(よそ)の国の人間は嘘つきだと信じ込んでいる p75 共産圏 p78 お優しい神父さん p108 紹介所から来る住み込み家政婦とは違うんです p115 年下の男 p120 国民健康保険… 毎週4シリング6ペンス… 補聴器◆英国National Health Serviceは1946年創設。4s.6d.=1364円、月額5911円。映画でも同じ金額、こちらはNational Insurance Act 1946による年金と雇用保険を合わせたような給付制度の掛金のようだ。 p129 O型の血液… 42パーセント p131 一九四六年 p132 証言する資格 p148 ブリッジ p148 ネコブラシ p159 イチゴ・ブロンド ------------ 映画(1957)は法廷シーンが素晴らしい。米国と違い、検事職という専門の官職は存在せず、国が検事側弁護士としてバリスタを雇う、という形式(だったと思うが実はよく調べていません…)。ところで私は映画の法廷ものの傑作『ある殺人』(1959)はペリー・メイスンのTVシリーズ(1957年から)が当たったので作られたのかな?と思っていたのだが『情婦』とレイモンド・バーは同年だった。 ロートンは心筋梗塞で入院していた、という設定だろう。私も経験したので凄く親近感。(あんなに太ってはいませんよ…) 原作のキズを納得のいくように補正していますが、ほぼ忠実な映画化。原作の一番大きなキズは戯曲上演時に弁護士たちが一様に異をとなえたという「裁判はもっと長くかかるのです!」というところ。映画ではきちんと三日間にしている。ワイルダーは、ロートンのバリスタ役にスポットを当てていて、これは正解。誰がメイン?が物語では非常に重要だ。短篇のスポットは容疑者の妻寄り、戯曲版ではオバチャンにも当たっていて、だからあの結末なのだろうと思う。 まずは短篇、そして戯曲、最後に映画。この順番でもみんな面白く興味深かった。 (クリスティ再読さまのディートリッヒが襲われるシーンの考察を読んで、流石、と思いました。酒場のシーンにもあって、この繰り返しも意図的なもの?と思ってしまいました…) |
No.20 | 7点 | ALFA | |
(2022/01/27 14:56登録) 同名の短編を戯曲化したもの。 短編の結末にドラマティックな展開を付け加えている。演劇のエンディングとしては確かにこのほうが効果的だろう。 個人的には、最後のたった一行で構図が反転する短編のほうが好み。 ミステリファンならどちらも必読ですが、あまりスレっからしにならないうちに読んだほうがいいですよ。 |
No.19 | 7点 | ミステリ初心者 | |
(2021/02/06 18:54登録) ネタバレをしています。 小学生のとき以来の戯曲ですが、あまり覚えていないため、検察側の証人がほぼ初戯曲となります。この形式の文って、本当に読みやすいですね(笑)。もう全部の小説はこういう形式にしたらいいのに(笑)。発言者の名前が書かれていると混乱しづらいし、発言の文の途中に()で感情や行動などが書かかれているのもいいですね。 さらに、この作品は法廷モノです。テンポもいいです。 非常に読みやすい要素が多いですが、もしかしたらアガサ・クリスティーの文のうまさのなせる業なのかもしれません。 推理小説的には、結局レナードが犯人かそうでないかは論理的には判断がつかないので、犯人当てにはならない(というか登場人物も少なすぎるが(笑))です。アリバイトリックでもありません。しいていうなら、ローマインの真の狙いは何か?というところが考えるポイントでしょうか? 濃厚さはありませんが、アガサ作品らしいラストのどんでん返しが簡潔に楽しめる作品です。 しいて嫌いな点を挙げるとしたら、後味が悪いところでしょうか… |
No.18 | 7点 | じきる | |
(2021/01/23 23:31登録) ラストのどんでん返しが痛快。 |
No.17 | 8点 | 青い車 | |
(2020/01/13 10:29登録) 少ない材料でしっかりドラマとミステリ的サプライズを味わわせてくれます。終盤の逆転につぐ逆転にはやられました。錯綜した手掛かりや人間関係がない分、見る側を混乱させないところも戯曲として優れている傑作です。 |
No.16 | 7点 | いいちこ | |
(2019/01/04 15:13登録) そのプロットから着地点がある程度察せてしまうのは大きな難点であり、軽量コンパクトという印象は拭えないものの、全体として非常に完成度の高い作品と評価 |
No.15 | 6点 | クリスティ再読 | |
(2017/01/04 21:49登録) さて本サイトでは人気作だな。戯曲なのですぐ読めてお手軽なのかしらん。これは戯曲版が対象だが、「死の猟犬」所収の小説版、それに映画「情婦」まで含めて論評しよう。それぞれの関係は大体次の通り。小説版は割と若書きと言っていい時期の短編。それを円熟期になって戯曲化したのが本作、ですぐに舞台化されてロングラン。数年後ユナイトでビリー・ワイルダーが少々脚本をいじって映画化、という流れになる。 話の大筋は変わらないが、事務弁護士が狂言回しな小説版から、戯曲版は法廷弁護士をメインに据えてラストを少し追加し、映画はいろいろと細部を膨らませている。比較して見た感じとしては、やはり映画版が一番完成度が高い。戯曲でもちょっと観客の緊張をほぐすようなコミカルな場面を追加しているけど、それを映画版は全く採用せずに、オリジナルな造形になっている。これがワイルダーなので実にセンスがいい。 一貫している作品的ポイントは「愛妻のアリバイ証言は、たとえそれが事実であったとしても、法廷ではまったく説得力がない」というシニカルな視点である。どっちか言えば小説版はそのアイデアが生のまま出ている感じが強い。また、これは小説版からあって、評者はちょっと気になるところだが、「ドイツ女は冷たくて打算的だ」というような人種偏見的なニュアンスがある。まあだからこそ映画は彫像的な美しさを誇るディートリッヒ、という配役なんだよね(ちなみにワイルダーもドイツ生まれのユダヤ系なんだがな)。 あと、たぶんこれは戯曲が一番際立つと思うが、法廷での儀式めいた開会の言葉とか、証人の宣誓の言葉とかに、スペクタクルな感覚を持たせれるように感じる。映画で秀逸なのは、裁判のあとディートリッヒが群集のリンチに逢いかかるあたり。ワイルダーなので、この劇を密室劇というより、群集スペクタクルとして捉える視点を持っているようだ(逆にこれはクリスティには欠けているセンスだと思う)。 まあ、なので、本作のベストは映画「情婦」を見ること。ロートンの弁論のせりふ回しはそれだけで見る価値あり。 |
No.14 | 7点 | ボナンザ | |
(2014/06/07 23:42登録) 言わずと知れた脚本。 犯人は最初から一人しかいないわけだが・・・。 ラストのどんでん返しなど、屑男の本性が出て、クリスティらしい。 でも、彼女としては旅行の話を法廷で聞いた時点でおかしいと思わんかったのかな? |
No.13 | 5点 | TON2 | |
(2013/02/12 18:22登録) 早川書房 戯曲です。ビリー・ワイルダー監督の映画「情婦」の原作ですが、原作より映画の方が面白いと感じました。 |
No.12 | 8点 | 蟷螂の斧 | |
(2012/08/01 19:25登録) 1925年の作品を戯曲としたものらしいので、その時代を考慮すれば、法廷での細かい点はスルーしても良いと思います。非常によくできた短編(中編?)であると思います。この作品をモチーフにした作品を何点か読んでいるので、本筋(落ち)はなんとなく予想はできましたが、結末でのどんでん返しは、予想外で素直に参りましたと言いたいです。 |
No.11 | 7点 | ナナ | |
(2012/07/24 08:51登録) 普通小説を読んで映画を見るとがっかりするものですが、これに関しては映画のほうが面白かったです。もちろん小説が面白いからでしょうが。読みやすい作品です。 |
No.10 | 6点 | ミステリー三昧 | |
(2011/05/11 23:56登録) <ハヤカワ文庫>アガサクリスティの戯曲もの。 被告人の有罪・無罪を巡る法廷ミステリということで二転三転の展開と衝撃の結末がウリということですが期待ほどでもなかったです。私的には、何回ひっくり返ろうとどうでもよい。というのも、法廷ミステリでは当然あるべき自然なプロットであるため、予想内の範疇になっているし、また、有罪・無罪の判決には興味がなく、むしろその結論に行きつく過程が大事だと思っています。本書では、有罪・無罪を巡る二転三転の展開と被告人の妻の愛情と憎しみ両極端の感情をうまくリンクさせていた点が素晴らしかったですが、ほかは特になかったです。事件が単純で、また登場人物が少ない為、法廷劇を膨らませるのが難しく、被告人はやったのか、やってないのかに終始してしまう展開は仕方ないとは思いますが、それだけだと物足りないです。法廷ミステリの面白みは、さまざまな証言・物証が起爆剤になり、事件の様相に変化を与え、多くの登場人物を絡ませ複雑に混沌とさせつつ、ガタガタと形を崩し、誰も知らなかった本当の真実を形成していく過程であって、結果的に結末が衝撃的であればなお素晴らしいですね。 |
No.9 | 6点 | kanamori | |
(2011/03/31 18:28登録) 戯曲版は初読。傑作ミステリ劇としてあまりにも有名なため、このプロット&トリックに新鮮なサプライズを味わえなかったのは残念ですが、よく出来た法廷ミステリには違いありません。 ただ、古典ミステリで頻繁に使われる変装トリックが好きでないのと、アレが簡単に証拠採用される点に若干違和感を感じたのでこの採点です。 |
No.8 | 9点 | itokin | |
(2010/12/14 10:11登録) 短編ミステリーの教科書。物語の構成、展開、結末等どれをとっても秀逸です。映画ではデートリッヒが良かったなあ。 |
No.7 | 6点 | E-BANKER | |
(2010/12/04 18:42登録) クリスティの戯曲集の中では最も有名かつ秀作。 シンプルかつ短く、たいへん読みやすい作品と言えます。 他の方の書評では、ラストのどんでん返しが高評価の要因のようです。 確かに、それまでの事件の構図を一変させるラストは、「さすが!」と唸らせるものがありますし、戯曲らしく実に舞台栄えしそうな展開だと思います。 ただ、あのミスリード(あるいは変○)は普通気付かないですかねぇ? 舞台ではどのように処理されたのか気になるところです。 評価は若干辛めかもしれません。 気に入った方は、本書と小泉喜美子女史の「弁護側の証人」を読み比べてみるのも一興かと思います。 |
No.6 | 6点 | こう | |
(2010/08/09 00:20登録) 少しネタバレあります。 テンポ良く進み最後のどんでん返しと好みの趣向のはずなのですがアクロイド同様世評ほど楽しめなかった作品です。高校の頃この作品は立ち読みで済ませてしまった覚えがあります。 主要人物が2人しかいないせいかあまり驚きがなかった点、また変装は舞台映えはしそうですが伏線はあるにしろ実際にうまくいくかどうか、証拠として成立するかどうか疑問に感じた点が不満でした。作品としてはコンパクトでかつ上手いなあとは思いますが。 |
No.5 | 7点 | 江守森江 | |
(2010/06/12 18:54登録) 作者のノンジャンル短編集に収録された短編小説と戯曲脚本の両方を読み比べてみた(実践に時間を要さない&大概の図書館にあるのでオススメ!) 戯曲本の解説によると映画版「情婦」は戯曲脚本に忠実な結末らしい。 小説では情婦が真相告白する結末で終わるのに対し、戯曲では更に反転して劇的な結末を迎える。 シンプルかつ驚きで終わる小説版に比べ、戯曲は後味が悪いとの評価もあり、どちらが良いかは好みによる。 私的には、愛憎を利用した操りによる二転三転は劇的なので戯曲脚本を支持する。 戯曲脚本では配役案から作者が仕込んでいるのにニヤリとした。 ※ここからネタバレで弱点を指摘します。 実際の事件裁判ではなくミステリーの枠内での裁判な為に無罪を勝ち取り終了ではなく、真犯人を示して終了が前提になり、犯人たり得る登場人物が一人しか存在しない故に、ミステリー摺れした読者には展開が察せてしまう。 又、一事不再理ネタが法廷ミステリで多数用いられた事でも弱さが生じた(こちらは作者に落ち度はない) よって、満点(8点)から1点減点した。 それでも「アクロイド殺し」と同点で、どちらも一読の価値はある。 ※追記(12月11日) 先日放送された海外ドラマ「ボストン・リーガル」ファイナル・シーズンの1エピソードで本作のプロットがまんま転用(要はパクリ)されていて唖然とした。 日本も含め世界的にドラマ業界はパクリに寛容過ぎる気がする(そんなパクリドラマが大好きな私は何なんだ?!) |
No.4 | 10点 | りゅう | |
(2010/05/08 21:12登録) これはすごい! ラストの衝撃度では、今まで読んだ作品中で最高だ。 読みやすいし、短時間で読むことが出来るので、すべての人にお薦めしたい。 |