幻の女 |
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作家 | ウィリアム・アイリッシュ |
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出版日 | 1962年01月 |
平均点 | 7.51点 |
書評数 | 47人 |
No.47 | 2点 | 愚か者 | |
(2024/11/11 11:04登録) 大都会の詩情を包んだサスペンスの原型ともいうべき作品で、その点は評価できる。いわゆるタイムリミットサスペンスで、妻殺しの罪で死刑を言い渡された無実の主人公を親友が救出すべく、幻の女の行方を追う物語。 幻の女は結局は〇〇〇〇にいるというご都合主義にはあきれた。真犯人に対しては文句はない。世評と自分の評価がかけ離れているだろうと思った作品の一つ。 |
No.46 | 7点 | ミステリ初心者 | |
(2024/08/27 22:53登録) ネタバレをしております。 かなり昔に、ドラマ古畑任三郎に幻の女の最初の展開に近いものがあり、この作品のあらすじは知っておりました。非常に興味を引かれる面白いものでしたが、長い時間読んでおりませんでした。先日、泡坂作品を読んだときにふと本作品を思い出し、本の山から持ってきて読みましたw 推理小説というよりも2時間ドラマ的な趣が強いです。しかし、どんでん返しがある展開で、推理小説の醍醐味である騙された感を味わえる作品です。そのため、ミステリファンでも満足できるのではないでしょうか? クリスティーでもこういう作品が多いですしね。 ただ、途中、私の苦手な警察小説のような捜査をするシーンが多いページが続きます。どんでん返し的にも必要だと思いますが、私的にはすこし退屈に感じ、目が滑ってしまいました;; 幻の女の正体については、小説的にも無理もない感じでよかったです。ただ、なんだか寂しいような悲しいような読後感となりました; 全体的に、名の知れた名作にふさわしい内容でした! 証言者が次々に死んでしまうのに違和感を感じましたが、まったく真相を当てることができませんでした; 私は平和ボケしすぎているのかもしれません; |
No.45 | 4点 | レッドキング | |
(2023/11/11 06:01登録) 「いつか採点しよ思ったまま数年過ぎた」作品その四。「青い鳥はいつも傍にいた」ならぬ「黒い悪魔はすぐ隣にいた」落ちサスペンス。オープニング ” 夜は若く、彼も若かった(シビれるぅ)・・”と、女が被っていたカボチャ帽子のインパクトだけに、この点数あげちゃう。ミステリとしては、うーん・・・ |
No.44 | 5点 | みりん | |
(2023/05/04 22:56登録) 海外古典の傑作と名高い「幻の女」 最初から魅力的な謎が提示され、全体に漂う雰囲気も素晴らしいので最後まで一気に読ませる力がある。 しかし個人的にはイマイチハマりきれなかった。真相が明らかになった時、帯に書かれていたどんでん返しが期待していたほどの衝撃はなく、この作品の一般的な世評と少し乖離している印象を受けたせいかもしれない。 ただ、翻訳されてもこれほど魅力的な文章であるから原文はもっとカッコ良さそう…英語が読めて、海外文化の教養がもっとあればこの作品の評価が変わるのだろう。 |
No.43 | 9点 | zuso | |
(2022/01/29 22:23登録) 殺人犯と間違われた男が潔白を証言してくれる女を必死に探す。発見できなければ、主人公は死刑台に上がらなければならない。 刻々に迫る死刑の時刻を逆表示することで焦燥感を倍加する。大都会の詩情で包んだ傑作サスペンス。 |
No.42 | 9点 | バード | |
(2021/10/10 15:31登録) (軽くネタバレあり) 非常に面白かった。目的は一つ、謎の女を見つけて証言させる事。物語の筋が分かりやすくとても読みやすい。 読者に示されるアリバイがなぜか否定されるという興味深い謎が示される序盤、あと一歩のところで関係者が次々と亡くなってしまう先が気になる中盤、読者予想の裏をかくための素晴らしいギミックが組み込まれ、更にサスペンス的盛り上がりも高水準な終盤。 序盤、中盤、終盤全てにおいて隙の無い面白さで、人気があるのも納得の作品である。 満点でない理由は、話を進めるためにご都合主義なところが散見された点。例えば、キャロルの追っていた側では犯人は動いていないのに人が死に過ぎな点など。ミスリードに必要だったのは分かるが、作者側の都合で話を転がしたんじゃ読者は納得しないぜ。 |
No.41 | 5点 | 虫暮部 | |
(2021/05/12 11:56登録) 一人の冤罪に対して、清廉潔白ではないにせよ極悪人と言う程でもない人たちが何人も亡くなる(バーテンダーは“事故”とされているが、なかなか悪質な追い詰め方だったと思う)。数の論理で言えば、おとなしく死刑になったほうがマイナスは少なかったわけで、サスペンスと言うより、思考実験めいたブラック・ユーモアの小説。 私は、人間関係の偶然については狭量なので、犯人があんな渡りに船の状況で事件に関わる展開には頷けない。 裁判で検察側が示したのは状況証拠ばかり。あれで死刑判決? 死刑囚との面会の描写(監房に直接入って二人きりになれる)は史実? |
No.40 | 8点 | 猫サーカス | |
(2020/07/24 16:41登録) 発端の不可思議性、中途のサスペンス、結末の意外性と三拍子揃っている。大都会を背景に独特の甘美で寂しいムードを漂わせ、不可解な謎に魅了される。アリバイがないための無実の殺人罪で死刑を宣告された男が、刻々と迫る執行日を前に、友人の努力で冤罪を晴らそうとするが、果たして刑の執行に間に合うのかというところにサスペンスが生まれる。主人公の運命がどうなるか、その焦燥感や不安感が読者の気持ちを捉えてはなさない。 |
No.39 | 7点 | クリスティ再読 | |
(2019/09/12 20:43登録) もし「名作」が後続の作家の「お手本」となるような作品のことだとしたら、本作は全然「名作」じゃない。本作は長編ミステリとしては弱点が多い作品なんだが、短編名手のウールリッチらしく、実のところ「サスペンス短編」としての珠玉の名作をいくつも「内包」した作品なんだと思う。だから本作の良さ、というのは本当に「ウールリッチだからこそ」なのであって、他の作家がやっても駄作にしかならない。ウールリッチだから、弱い部分もファンタジーみたいに許せるだけのことだ。 とくに「若い女性」の2つのパートなんて、奮いつきたくなるくらいの名作だと思う。評者なんて心臓バクバクでちょっとアテられるくらい。女性を能動的に動かしたら、ウールリッチのロマン味全開だもの。凄い。短編として独立して読んでもいいくらいだと思う。 長編として読んだときに、なかなかいいのは被害者マーセラのキャラクター。屈折した悪女、といった振舞いがいい。というわけで、やはり女性を描かせたら最強でしょう。女性は「化ける」というのをウールリッチは判っている。 あとやはりね、稲葉明雄の旧訳だけど、この人のセンチメントを隠したクールな明晰さと合った作品なのがベストマッチだと思う。というわけで、死刑ネタが「二都物語」と連続することになった。しまったな、次が「黄色い犬」の予定だったが、「男の首」にしたらよかった。 (死刑三連発は「アメリカの悲劇」になりました...) |
No.38 | 9点 | ねここねこ男爵 | |
(2017/10/29 04:11登録) サスペンスの大傑作。 魅力的な謎と設定、圧倒的読みやすさ、適度なミステリ要素、ロジカルな解決、どんでん返し。 導入を読むだけでワクワクし、それを裏切らない内容。 ほーんのちょっとだけ苦しさを感じる部分があるので満点にはしませんが、初読時は気にならないでしょう。 原文と翻訳が良くできていることもあって文章に古さを感じません。読まないと損です。 |
No.37 | 9点 | ボンボン | |
(2017/07/19 00:03登録) なんだこのカッコよさ。おしゃれだ。詩的な映画のよう。 余計なことを考えず、流れるようなサスペンスをたっぷりと堪能し、作者の思いどおりにびっくりし続けることができて幸せな読書だった。何度も上げては落とされ、また上げては落とされの繰り返しが延々と続くジェットコースター。キャロルの忍耐と献身が凄まじいのに、可愛らしさが薄れないのがお見事。 本当に詩のような、或いは芸術系の漫画(?)のような読み心地なので、どんなに突っ込みどころ満載でも、突っ込ませないコーティングがされている。傑作とは、こういうものを言うんだな、と思った。 ※黒原敏行訳の〔新訳版〕 |
No.36 | 7点 | パメル | |
(2016/10/02 12:08登録) 死刑宣告された主人公がアリバイを証明するために一夜限りの食事を一緒に した「幻の女」を探し出し刑の執行までに無実を証明出来るかという タイムリミットサスペンス 全体的に緊迫感に包まれている点やスリリングな展開そして当時のニューヨークの雰囲気が目に浮かぶように描かれていて好印象 ただ見ているはずの多数の人物が誰も見ていないと証言する真相が強引さを感じる |
No.35 | 8点 | いいちこ | |
(2016/08/20 18:42登録) 主人公が「幻の女」の特徴を全く記憶しておらず、犯行プロセスがリスキーかつチープであるなど、プロット・真相がややリアリティに欠ける点は難点。 ただ、叙述スタイルとプロットの高い親和性等を活かして、作品世界を反転させ、鮮烈な衝撃を演出した手際は見事。 翻訳物としては異例とも言える高いリーダビリティも評価 |
No.34 | 7点 | 青い車 | |
(2016/05/30 22:11登録) 現在の読者からすれば、真相及び殺害トリックなどは特に目新しいものではありません。フーダニットととしてもある意味ではありがちな手法で犯人を隠蔽しているので、気付いてしまう人もいるかも。しかし、特筆すべきはそのプロット。妻殺しの罪で死刑執行を待つ男、男と一緒にいたはずの謎の女、そして捜査で相次ぐ関係者の死とサスペンスとして申し分のない完成度です。変な余韻を残さず爽快に締めくくっているのも高く評価します。 |
No.33 | 8点 | メルカトル | |
(2015/12/28 21:56登録) どこをどう取っても優れたサスペンス小説、だと思う。 しかし、囚われの身となったヘンダースンが、「幻の女」の特徴や言動などを一切思い出せないというのがいかにも解せない。一晩一緒に過ごした女の容姿すら忘れ去ってしまっているのはやはりどうかしている気がするが。それを除けば、隅々まで神経の行き届いた、端正な名作なのではないだろうか。 後半、世界が反転する展開はおそらく当時としては、今でもそうだが、かなりセンセーショナルなものだったと思う。 ま、いずれにしてもこれだけ平均点が高いのも頷ける傑作に違いないだろう。 |
No.32 | 6点 | ミステリーオタク | |
(2015/10/23 22:38登録) 何なんだろうね プロットだけだったら今なら全然珍しいものじゃねぇもんな まぁこの手の先駆けということか 確かにいくつかのフレーズは心に残るけどな |
No.31 | 9点 | ロマン | |
(2015/10/21 14:58登録) 無実の罪で死刑を宣告された男を救うべく、真実を求めて奔走する人々。ストーリーの型も真相も、今となっては目を瞠るよう珍しさではないが、それでも最後まで惹き付ける力強さがある。何となく予想した結末だったにも関わらず、伏線を回収しながら読み返したくなる。雑然とした雰囲気の中、キャロルの凛とした、そして執念さえ感じる意志の強さが輝いて見えた。そしてちょっと気取った感じの文体や言い回しも素敵。冒頭の一文は言わずもがな、「“時”というものは、どんな男やどんな女よりも大きな殺人者なのだ。」ここも印象的だった。 |
No.30 | 7点 | haruka | |
(2015/07/23 23:56登録) 翻訳物はあまり好きではないのだが、友人の無実を証明するために奔走するロンバードの焦燥感が伝わってくるようで惹き込まれた。それゆえにラストのどんでん返しがより効果的に決まっている。 |
No.29 | 9点 | 斎藤警部 | |
(2015/06/09 05:39登録) こりゃあもう、ヤヴァいっすよねえ。 かなり若い時節、世評にほだされて読み、最後の最後、の直前、まで騙されました。直前にピン!と来た瞬間のスリルと来たら、こりゃただものでは無かったねえ。 清張もかくやの物語吸引力は凄まじく、だからこそ容易に真相を悟らせない。 古典力爆発の必読作。 |
No.28 | 8点 | アイス・コーヒー | |
(2014/07/11 17:35登録) 妻殺害の疑いをかけられた男が、アリバイを証明してくれるただ一人の人物「幻の女」を追っていくが…。 サスペンスとしては、ストーリーの完成度の高さ、タイムリミットが迫る中でのスピード感、そして都会的な雰囲気が調和してかなり面白いものになっていると思う。出版から半世紀以上たった今でもその魅力が褪せないというのは、一定の評価に値するだろう。 ミステリーとしての工夫は、よくあるもの。幻の女の正体も…。ただ、そこがまた皮肉の利いたラストに繋がっていて、本作の印象をより強いものにしている。 途中出てくるロジカルな推理もよく出来ていた。伏線も見事に回収され、結末にも納得。 未読の方には是非読んでもらいたい一冊。決して損はしないはず。 |