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ミステリの祭典

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終りなき夜に生れつく

作家 アガサ・クリスティー
出版日1968年01月
平均点6.88点
書評数17人

No.17 9点 虫暮部
(2023/11/18 12:31登録)
 半ば過ぎまで普通の、と言うかミステリにならないロマンスを、自分が中だるみせずに読めたことがまず驚き。
 全身全霊こめて作った女神像を自ら落として粉々に砕く、みたいで、そこまでやるか。でも先が見えててもやるしかないんだろうなぁ。そこに嘘は無いんだよね。もうほぼ悲しみと安堵が綯い交ぜになった自殺者の心情なんじゃないかと思った。

No.16 7点 YMY
(2022/09/05 22:13登録)
本書の世評は、さほど高くないものの、著者の自選ベストテンに含まれている。
前半のロマンティックなラブ・ストーリーが悲劇によって暗転し、結末に至って恐るべき犯罪計画が浮上する構想も見事だが、事件が合理的に説明されるにもかかわらず、結局すべてはジプシーが丘にかけられた呪いのせいだったのかも知れないという含みもあり、犯人像の秀逸さと相俟って、宿命論的な物哀しさがいつまでも心に残る。
サブ・プロットの説明不足が惜しまれるものの、クリスティーの筆力の素晴らしさを示す作品といえる。

No.15 6点 いいちこ
(2021/01/04 10:50登録)
一人称での叙述も含めて、よく考えられた作品ではあるのだが、騙しの手数が少なすぎる。
この舞台設定・登場人物であれば、読者が客観的・合理的にさえ考えれば、この真相に辿り着いてしまう。
演出の工夫次第で、より大きなサプライズを生み出せたように感じる点で、もったいない作品

No.14 5点 Kingscorss
(2020/10/12 14:55登録)
なかなか事件が起こらず、最後の方まで淡々と少し変わった身分違いの恋愛話を読んでるだけな感覚に陥ります…

途中から多分○○○○なんだろうなぁと予想していたら、そのままその通りのひねりもないベタな展開で幕を閉じます。しかも最後の方の筆致は結構雑な感じ。

サラッと読めて、それなりなんですが、さすがに高評価をつけるには忍びない本だと思いました。(クリスティー自信は気に入ってる話らしいですが)

No.13 5点 ◇・・
(2020/09/05 18:52登録)
切なくも美しい、悲恋の物語が、恐ろしい真相に反転する。
犯行の状況が著しく具体性を欠いている。フェアプレイの問題を度外視し、物語の構図の鮮やかな反転を試みた作品。

No.12 6点 レッドキング
(2020/02/23 17:53登録)
下層階級に生まれつき、小器用に仕事とガールフレンドを渡り歩いてきた、飄々とした青年が出会った「運命の女」は、大資産家の娘だった・・・。
アガサ・クリスティー十八番の遺産相続プロットと人間関係トリックに、まさかの「あの」一発大ネタ再現、その上、操りネタまで付き、まさしく魅惑の集大成。ポアロは出てこないけど。
※あのネタはともかく、この作品、第一人称叙述が成功の勝因。第三人称だったら「どんな女でも魅かれる美青年」とか描写されてしまい効果薄れてた。

No.11 6点 青い車
(2020/01/13 10:23登録)
 アガサの優れたストーリーテラーとしての一面がよく出ている秀作だと思います。全体的に乾いた感じなのですが、旨み・コクのようなものが滲み出る文体が好きです。原題「ENDLESS NIGHT」を「終りなき夜に生れつく」とした訳も洒落ています。

No.10 5点 ボナンザ
(2019/06/19 23:51登録)
クリスティらしく読みやすく引き込まれる一方、最後の展開が投げやりな気がする。

No.9 7点 文生
(2017/11/08 09:54登録)
1967年の発表のクリスティ晩年の作品であり、あまり期待していなかったのですが非常に面白かったです。ミステリー要素はあまりないものの、恋愛サスペンス風なストーリーにぐいぐいい引き込まれていきました。タイトルも秀逸で皮肉なラストも印象深いものがあります。ただ、メイントリックが自著の使い回しだったのが残念。

No.8 10点 ALFA
(2017/03/21 10:41登録)
読み終えた感想は「ヤバい!これ反則でしょ!」だった。
「反則」は例のミステリの作法のことではない。作法でいえば私は「オリエント急行」も「アクロイド殺し」も「そして誰もいなくなった」もOKです。
反則とはこの作品が、ミステリの枠を超えて心にというよりミゾオチあたりに「悪を為す人の心」というダークなイメージを残したこと。
「悪」を為す心の弱さ、エゴ、やさしさ、悲しさをリアリティ豊かに、言い換えると意地悪く描き切ることで、読み手の心に自らのものとしてそのイメージが住みついてしまう。

読み手、読み方によってはその毒が効かない場合もある。その場合は純粋に謎解きを楽しむことになる。私の場合はかなり効いた。だからうかつに再読もできない。
普通のミステリは読み手のリアルとは切り離されているから、真相が開示されて解決し、あとは安心して寝るということになるが、この作品の場合そうはいかなかった。

No.7 6点 makomako
(2015/12/11 20:41登録)
 この作品は読者によってかなり評価がわかれるようです。クリスティーの最高傑作という方もおられるようですが、私はそれほどでもなかった。
 もちろんクリスティーなのですから悪いということはないのですが。恋愛小説風の書き出しで、しかもそれが当分続く。ところどころにちょっと引っかかるところがあるので、ただの恋愛小説ではなさそうと思っていたらやっぱり最後はやられました。
 どんでん返しというよりはだまされた感じが強く、自分としてはあまり面白くはなかったのです。

No.6 5点 了然和尚
(2015/12/03 14:24登録)
<クリスティー作品ネタばれまくり>

この作品を評するにどうしてもこう書きたい
アクロイド殺し(1926 )+ ナイルに死す(1937) ー ポワロ
本作の前後においては
1965 バートラムホテルにて(マープル)
1966 第三の女(ポワロ)
1967 終わりなき夜に生まれつく
1968 親指のうずき(トミタペ)
と、年一作の時期において、あえてのノンレギュラー探偵ものでした。探偵を出すとやっぱり一人称のトリックが再利用と批判されるからでしょうか。出版当時の評価に興味があります。
アクロイドよりは物語として面白いと思いますが、ナイルに死すの方が本作よりは面白いと思います。
テレビドラマではマープルものになってました。「犯人はお前だ」はやっぱり欲しいですね。

No.5 9点 りゅうぐうのつかい
(2015/11/23 13:24登録)
クリスティーの著作を読むのはこれで30作品目だが、物語としての出来栄えに関してはこれまでで一番と言える。
事件はなかなか起こらないし、真相はクリスティー作品にありがちなもので、身構えて読んだ読者には予想しやすい真相と言えるだろう(私もこの真相通りに予想していたわけではないが、そのうちの一部の真相に関してはずっと疑いを持っていた)。
しかしながら、作品全体が醸し出す雰囲気や、人物配置の妙が素晴らしく、結末にも独特の味わいが残る。
人物では、マイケルの母親、建築家といった脇役の存在が光っている。
エリーの歌う「幸せとよろこびに生れつく人あり 終わりなき夜に生れつく人あり」という歌詞がもの悲しい。
結局、主人公は「終わりなき夜に生れつく人」であったということだ。

No.4 6点 nukkam
(2015/10/17 08:48登録)
(ネタバレなしです) 1967年に発表された、シリーズ探偵の登場しない本格派推理小説でマイケル・ロジャースの1人称形式で物語が語られます。クリスティー作品の1人称形式といえばエルキュール・ポアロシリーズのワトソン役のヘイスティグス大尉が登場する初期作品が有名だと思いますが、それと比べると何と人物描写の奥行きが深くなったことか。謎解きとしては過去作品に類似していて(二番煎じと言われても仕方ないと思います)、それを読んだ読者には真相が予想しやすいのが弱点ではありますけど、全体を覆う暗い雰囲気(ゴシック・ロマン風?)がこの作品を独特なものに仕上げています。余談ですが私の読んだハヤカワ文庫版の裏表紙解説では誰が死ぬのかを紹介していましたが、事件が発生するのは物語が半分以上進んでからなのでこれはフライングではないかとちょっと不満に思いました。

No.3 10点 クリスティ再読
(2015/04/05 21:30登録)
クリスティの最高傑作! 「オリエント」どころか「アクロイド」も「そして誰も」さえも凌駕する犯罪小説の本当の古典はこれだと思うよ。

これはクリスティ本人が本当に書きたかったんだろうな...と思わせるくらいに各シーンが印象的。まあ、ほぼ同プロットのスケッチのような短編があるのと、初期の短編で夢の家に関する印象的な短編があるわけで、たぶん「いつか必ず書きたい!」と念願にしていた内容ではないだろうか。

この作品の凄みは、「ロマンチックな恋愛」と「私利私欲の犯罪」とが同一人物の中で両立することができる...というのを描ききったことである。このテーマのために、よく指摘される例のトリックがあるわけだ。例の作品なんて、タダのダマしのテクニックに使っただけだから、この作品のようにプロットの必然として出てきたものではない。だからこそ、評者はこれをクリスティのベストワンに強く押す。

けど本当にどの登場人物も魅力がある(賛嘆!)。個人的には主人公と母との微妙な関係が心に痛い。そしてエリー。主人公はエリーを愛していたのは本当に間違いないことなのだ。しかし、というあたりがこの作品を最高の犯罪小説にしている。

付記:そういえばポアロ登場の中期の某人気作と、本作の真相はウリ二つなんだよね(例の作品の話ではない)。その中期の人気作のドラマ性に対するこだわりが、本作に結実したのかもしれない。併せて読むといいかも。

No.2 8点 蟷螂の斧
(2014/10/25 16:14登録)
(自薦ベスト10)裏表紙より~『誰が言いだしたのか、その土地は呪われた「ジプシーが丘」と呼ばれていた。だが、僕は魅了された。なんとしてでもここに住みたい。そしてその場所で、僕はひとりの女性と出会った。彼女と僕は恋に落ち、やがて…』~
著者の過去の作品のエッセンスを組み合わせ、恋愛小説風サスペンスに仕上げたという印象です。恋愛小説から後半事件に発展する瞬間は衝撃を受けましたね。映画化したら面白いと思ったら、既に映画化されていました(苦笑)。著者が自薦ベストにあげている理由は、「ファン(他の作品の読者)の裏の裏を斯いたのですよ」と言っているような気がします。このような大胆な発想がクリスティ氏らしいのかもしれません。

No.1 7点
(2009/08/03 22:19登録)
いわゆる「本格派」ではありません。なにしろ事件が起こるのは7割ぐらい話が進んでからで、それまでは微妙に不安を感じさせるところがあるとはいえ、恋愛から結婚が描かれる普通の小説なのです。『春にして君を離れ』の後にでも前知識なしで読み始めれば、これもまたクリスティーの非ミステリかと勘違いしそうなくらいです。
クリスティー自身が以前に書いた作品と同じアイディアを利用しているということがよく指摘される作品です。しかしそれを言うなら、有名な『ナイルに死す』だってよく似た意外な犯人のパターンは初期作品にありますし、さらに犯人の企みは…
むしろ、同じアイディアを使いながらも、以前の作品とは小説のタイプが全く違っている点こそ強調されるべきではないでしょうか。

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