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ミステリの祭典

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ねじれた家

作家 アガサ・クリスティー
出版日1957年01月
平均点6.00点
書評数16人

No.16 4点 バード
(2023/03/18 12:02登録)
正直期待外れでした。犯人の意外性もそれ程だし、探偵役のきらりと光る推理の見せ場も無い。ねじれた家の人々の醸し出す人間の嫌な部分を観察して楽しむのが、本書の面白い読み方なのかな?

過去に4点を付けた『オリエント急行の殺人』よりは上だが、他のクリスティ既読作品よりは下という位置付け。

No.15 6点 人並由真
(2021/12/10 06:15登録)
(ネタバレなし)
 マザー・グースを巧みに取り入れというから、王道の見立て連続殺人かと思いきや、ただの(中略)ですか、そうですか。『そして誰もいなくなった』の類似作と錯覚させたかった早川の商魂、見え見えだ。

 真犯人の文芸設定については以前から、どっかで聞き及んでいたつもりだったので、ネタバレ承知の上の消化試合のつもりで読み出した。そうしたら前情報(?)が中途半端だったらしく、終盤で結構なサプライズを味合わされた。
 
 トータル的に、読み物としては結構、面白かった。クリスティーが自作のフェイバリット・ワンにするまでの感興は見出せないが、独特なクセのある作品だということには異論はない。

 読み手の踏み込み方、咀嚼の仕方でかなり評価が変わる作品だと思う。正直、本サイトの先行の方々のレビューにも色々と思う、感じるところはあるが、まあそれは。
 
 得点的な部分だけ拾うとかなり高い評点をつけたくなる長編だが、一方でその波に乗って高評を授けたくなる間際で、でもそれじゃ、とか、とはいえそういう方向の作劇をするならば……とか、色んな不満や不整合を覚えてしまう作品。
 エピローグの余韻も含めて、個性的な味があるのは認める。

No.14 8点 斎藤警部
(2021/10/05 20:50登録)
短い最終章、最後の台詞に大真相のほのめかしが宿る。そう、真犯人意外性より大真相の異様さで圧倒する小説。真犯人がものすごーーーい後になってやーっと暴露される構成も、この真相あってこその必然性、並びに演出有効性。まるでコンクリート打ちっぱなしの店のように露骨に晒された伏線ならぬ大ヒントの数々。探偵役不要(?!)の物語ながら、ある種の探偵役は主人公父親の警視庁副総監か。⚫️⚫️⚫️な真犯人が⚫️⚫️⚫️される結末も衝撃的。ちょっとアンチミステリな趣向も見え隠れ。なーんか探偵役らしき人物がずーっとふわふわしててピリッとしない筋運びだなー(そのくせ面白い!)、マザーグース感、館モノ感まるで無いし、と思ってたら、、そういう真相に繋がったってわけですか。。!! そこんとこ、真相分かってみればもはや不要だったんじゃないかと錯覚する大きなミスディレクションとしても充分成立していたんですね。際立って特殊な物語構造が魅惑の源泉です。本作もまた、アガサらしい堂々の企画一本勝負と言えましょう。(若い頃ほど露骨でないのも味がある)

No.13 6点 E-BANKER
(2020/03/28 21:27登録)
クリスティ自身が気に入っている作品として挙げている作品。
個人的にも、ポワロもマープルも出てこないシリーズ外の作品を読むのは初めて(だと思う・・・)。
1949年の発表。原題“Crooked House”

~“ねじれた家”に住むねじれた老人が毒殺された。根性の曲がった家族と巨額の財産を遺して・・・。状況は内部の者の犯行を示唆し、若い後妻、金に窮していた長男などが互いに疑心暗鬼の目を向けあう。そんななか、恐るべき第二の事件が起こる。マザーグースを巧みに組み入れ、独特の不気味さを醸し出す女史十八番の童謡殺人~

これは評価の分かれるのも理解できる。そんな読後感。
そして、確かにこれならポワロもマープルも出せなかったんだなーと納得。
どなたかも書かれてますが、登場人物の誰もが薄々真犯人に気付いていると思われるのだ。
そんな事件にポワロが乗り出そうものなら、一瞬にして真相に至るだろう。

ただ、だから本作=駄作などということでは決してない。
むしろ逆。こんなミステリー、円熟期の作者でなければ書けない、いや書かない作品ではないか。
決して少なくない登場人物。特に“ねじれた家”の住人たちの書き分けは見事の一言。
読み進めるほど、一族の間に漂う不穏な空気を感じることになる。

本作、どうしてもあの名作ミステリーとの共通性が気になってしまう。
ただ、個人的には想定外の遺産相続に絡む連続殺人事件という部分で、「犬神家の一族」などを想起させられた。
もちろんテイストは大きく異なる。日本だと、出自とか「血の争い」とか言いそうだもんなー
ただ、本作の静かだけど、独特の不気味さというのも捨てがたい魅力はある。
いずれにしても、さすがクリスティ女史。低い評価にはならないと思う。

No.12 4点 ことは
(2019/11/03 23:24登録)
これはだめでした。
中盤、クリスティー好み(?)の女優やらの尋問シーンなどがどうにも退屈。やはり私はクリスティーのキャラは性にあわないのだなぁ。
真相は意外かもしれないが、説得力はよわいし、視点が変わるから視点人物に感情移入する型でもないし……。
評価する人はキャラを楽しめる人なのかなぁ。

No.11 4点 レッドキング
(2019/10/07 21:54登録)
これまたマザーグース物の一つ。クイーンが「靴に棲む老婆」で描いた家族や、それ以上にカーの描くフリークな群像とは違い、クリスティーは英国女流小説風の人間描写から筆をすべらせない。それがひんやりとした、いかにもなミステリな雰囲気を醸し出して、それはそれでとても良いのだが、「マザーグース童謡」とはいまいちそぐわない。

No.10 6点 ミステリ初心者
(2019/05/22 22:39登録)
ネタバレをしています。

 自分にとって久々のアガサ・クリスティーです。やはり、非常に読みやすく、あまり時間がかからずに読み終えました。登場人物が個性的で、普段海外ものでは名前を覚えられない私でも読むのが苦になりません。
 ねじれた家の住民ではない、外部の人間である主人公が主観の物語で、主に動機の面で捜査しています。一見、関係がないような文章が読み返してみれば伏線であったり、思わせぶりなキャラクターの反応も真相をしるとまた印象が変わり面白いです。終わってみれば、無駄な点が非常に少ないという感想を持つのは、アガサ作品の共通したところだと思います。

 以下好みではなかった部分。
 他の方もさんざん指摘されていますが、この作品に似た本が存在します。にわかミステリファンの私も、さすがに読んでいました(笑) どうやら、某作品のほうが早く書かれているみたいですね? 同じタブーに挑戦していますが、それを小説として成立させ、より効果的に魅せているのは、某作品のほうが上だと感じました。家族がやや風変りなのも似ているかも?
 動機探しが主なストーリーですが、アリバイトリックや犯人当ての要素が好きなので、少しでも入っていたらもっと好きなのですが、犯人が犯人なので複雑なものはできないんでしょうね…。ブービー・トラップのヒントは面白かったです。

No.9 8点 saino
(2017/12/21 17:56登録)
某作と比較されがちだが、その進化系と言える部分が評価できる。
それは某作では犯人の人格描写や探偵との会話がほとんどなかったのに対して、
この作品はそれが豊富だという事だ。
「影の薄い犯人」は正直、アンフェア気味なので、
きちっとその辺が描写されている本作はフェア度の高い作品と言っていい。

推理小説としての出来が某作より落ちるのは事実ではあるが
まあ、ミステリというよりはスリラー・サスペンス小説寄りな感じではある。
犯人がわかってからのラストは感動的で良い。
犯人と心の交流があった主人公たちの心情は察してあまりあるものがある。

No.8 6点 りゅうぐうのつかい
(2016/06/12 11:55登録)
ねじれた家族に発生する、ねじれた殺人事件。
2件の殺人と1件の殺人未遂が発生するが、いずれも特別なトリックが使われているわけではないし、事件関係者の全員が犯行を行いうる状況であったため、アリバイに関する論議は一切なく、動機が主な議論の対象。犯人を特定する十分な手掛かりが与えられてはいないので、本格ミステリーとは言えない。伏線らしきものがいくつか見受けられるが、それも犯人を特定するようなものではない。
ポアロもマープルも登場しないのは、推理や捜査過程を中心に据えた物語ではないためだろうか。クリスティーが描きたかったのは、このねじれた家族関係そのものなのだろうか。
クリスティーの十八番、お金持ちの遺産相続をめぐる殺人事件で、シンプルな設定の人物配置、お互いの心理的関係の描写など、わかりやすく、読みやすい作品だが、あまり印象には残らない作品。
ちなみに、犯人は予想通り(予想以外の何物でもない)。

No.7 5点 ボナンザ
(2015/06/04 20:30登録)
確かにあの名作のパクリのようにも見える。
ただ、味わいはかなり異なるため、これはこれで一つの良作だとは思う。

No.6 9点 クリスティ再読
(2015/04/05 21:12登録)
評者はこの作品傑作だと思う。が、何か評判悪いなぁ。なのでこの作品の「本当に凄いポイント」を教えて進ぜよう。

この作品の犯人が誰か、というのを、実は読者の代理人である主人公以外の多くの家族・関係者がうすうす気がついている...という点なんだね。エピローグで主人公の父の副総監さえ、そう感じていた旨を告白していたりする。ただし、ある意味都合の悪い犯人であるために、一番「都合のいい」人を生贄の羊として差し出してしまい、誰も責任を取らないのでは...というような展開になりかけるところで、自己犠牲的な行動による破局が訪れるという結果に終わるわけだ。

引き合いに出されがちな某作品は基本的に「意外な犯人でしたね~~びっくりしました」で済まされるタンテイ小説(部外者の名タンテイ様が「裁くのは俺だ」までやっちゃう...おいおい)に過ぎないのだが、「ねじれた家」の場合は、当事者ではない名探偵ゴトキが安易に解決することはできない、家族の悲劇と再生の物語というあたりの作品なんだよね。

殺人、という事件のために、あらゆる状態が凍りつくなかで、ヒロインは家長の重みを背負わざるを得なくなるし、主人公との恋愛の行方も定かにはならなくなってくる...というあたりのドラマの妙を楽しむといい。全体にすべての登場人物にクセが強いんだけど、読み終わると妙に悲しみを感じるようなあたりが小説としてナイス。

付記:これって実は「ポアロのクリスマス」の書き直しのように思う...威圧的な親のイメージとクリスティ本人が折り合いを付けれるようになったあたりが、この作品の一番よいところなのではなかろうか...

No.5 6点 nukkam
(2014/10/20 10:00登録)
(ネタバレなしです) 1949年発表の、シリーズ探偵が登場しない本格派推理小説です。クリスティーのミステリーでは常に会話が重要な役割を果たしていますが特に本書では会話場面の占める割合が非常に高く、行動場面は少なくなっています。そのためか捜査が進展しない前半はサスペンスに乏しいですが、後半の劇的な盛り上げ方は(派手ではないけど)重い余韻を残します。このプロットなら人物描写をもっと深堀りして重厚な心理ドラマ路線を追求することも可能だったでしょうけど、作者としても読みやすさとの両立に苦心したのではないでしょうか。

No.4 8点 あびびび
(2014/06/08 00:56登録)
読後感は皆さんと同じ、某作家の代表作に似ていると言うことで調べてみると、あちらが1932年、そしてこちらが1947年の作と言うことで、後発の疑惑感ありあり。

でも、そんな作品をクリスティーほどの大作家が自分のベスト10に選ぶだろうか?自分はあちらの作品を知らずに書き、そのアイデアに自画自賛の方に一票入れる。あるゆるトリックを考えたクリスティーがそんな妙案を思い付いたという可能性の方が高いと思う。

No.3 6点 蟷螂の斧
(2013/05/20 19:53登録)
(クリスティの自薦10の一冊)相続がらみで、面白い展開だったのですが、やはり某有名作を思い出してしまい、高評価はつけ難いと言ったところです。

No.2 5点 好兵衛
(2011/04/23 16:22登録)
普通のミステリを読んだ。といった感じ。

どうしても、あっちの方を思い浮かべてしまう。
(某作品)
ねじれた家というタイトルは、もろクリスティーらしく
期待も大きかった分残念。

トリックやロジックもあまり・・・印象に残らなかったかな。
どちらかが、もっと突き詰めてあるか、斬新だったら
名作になっていたかもしれないが。
某作品の方がどちらの部分も上質だと自分は思うので。
どうしても比べてしまう。
もっと変えようがあったろうに。何であそこを似せたんだ?

No.1 5点 kanamori
(2010/12/28 18:11登録)
本書も、作者自身の評価と一般的な人気に乖離があると思われる作品。
Amazonのネタバレ書評を見ると、プロットと犯人の設定が某名作に類似しているとの指摘が多く、それも一因かと思いますが、同じ”ねじれた家族”の遺産相続ものというだけで雰囲気やメインのアイデアは全然異なります。
むしろ、このノン・シリーズ作品では、一応の探偵役となる青年に魅力がなく、感情移入できる人物が見当たらないのが要因ではと思います。

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