ジャンピング・ジェニイ ロジャー・シェリンガム |
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作家 | アントニイ・バークリー |
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出版日 | 2001年07月 |
平均点 | 7.16点 |
書評数 | 19人 |
No.19 | 4点 | 愚か者 | |
(2024/11/11 10:46登録) 技巧派ユーモアミステリというべきなのか。推理小説の「型」を知り尽くしたつもりでいる著者が、それを逆手に取りながら描いたドタバタ劇。 正直なところ、正統派ミステリ作家と読者を馬鹿にしているとしか思えなかった。一番情けないのは、プロットが読めてしまうところ。オチも想像通り。 |
No.18 | 9点 | みりん | |
(2024/04/26 16:25登録) 久々の倒叙ミステリですねぇ シェリンガムが殺人の証拠をなんとか揉み消そうとあれこれ奔走する作品。序盤は登場人物+扮装姿を覚えるのが辛く、30ページ進めるのに1時間かかりましたが、それを乗り越えると一気読みできるほど面白かったです。今作はシェリンガムが窮地に立たされる!?という展開もあり、検死審問では「こいつヘマすんなよぉ…」と願うほど、ハラハラさせられました。 全体を通してバークリー節が炸裂しており、オチだけでなく過程も全てアイロニカルです。これがロジャー・シェリンガムシリーズの最高作ではないかな? 次でラストか…『パニック・パーティ』の評点を心配しつつ(笑)、シリーズのラストをこの目で見届けることにします。 |
No.17 | 7点 | ミステリ初心者 | |
(2022/06/24 19:19登録) ネタバレをしています。 アントニイ・バークリーの本はまだ3冊目なのですが、明るい作風にユニークな設定が面白いですね。本作も非常に面白い設定でした。 探偵が犯人を庇って証拠を隠蔽したり、ミスが発覚して自分の首を絞めたり、たの推理小説では見られないような設定でした。もちろん、それとは別に、犯人がだれであるか?という検討も楽しむことができます。 また、海外翻訳物にしては非常に読みやすかったです! 最初のパーティーのシーンでは、多い登場人物に扮装もあり、読みづらさを感じました。しかし、ロジャーが椅子についての発見をしてからはかなり読みやすくなり、そこからは一気に読み終えることができました。 推理小説的要素について。 推理小説的には、やや薄味というか、犯人当てにはなってはいなかったです。私は、イーナが梁に登れるシーンから、自殺だと決め込んでいました(笑)。結末はあまり予想できるものではないですね。 ただ、ガチガチの本格推理小説としてではなく、広義のミステリーとして読んだ場合、大変楽しむことができました。 総じて、単純に読みやすく面白い本でした(笑)。イーナは自己顕示欲が強くて面倒な女性だったにしても、ややかわいそうな気がしますが(涙)。 |
No.16 | 8点 | 斎藤警部 | |
(2020/10/27 16:46登録) “すべて承知していることを気取られてはならないし、なおかつ危険を見くびらせてもいけないのだ。” 名サドゥンエンド(それだけで1点上げ!)が光る、新本格の雄バークリーが大昔に放った会心の一撃。 ミステリ思考実験をよくぞここまで大胆にこねくり回したものです。 最高の英国式ユーモアも絶妙に馴染んでいます。 「ぼくならもうすこしはっきり言うね。殺人であることは明白だ、と」 “事実を途方もない仮説として議論するというアイロニーを、ロジャーは楽しんでいた。かわいそうに、コリンにはこのアイロニーはわかるまい。” これ言うと一気にネタバレくさくなりますが、一風かわった登場人物一覧に、よく見ると真犯人の大ヒントがあるじゃないか。。。 “いずれにせよ、ロジャー・シェリンガムが殺人事件の容疑者となるという考えは、ロジャーを面白がらせずにはおかなかったのである。” ※弾十六さんがEVH追悼なら、私のは津野米咲追悼みたいなタイミングになっちゃったかな。。不謹慎な物言いですが。 |
No.15 | 8点 | 弾十六 | |
(2020/10/14 00:25登録) 1933年10月出版(5月、7月説もある)。国書刊行会の単行本で読みました。再読のはずなんですが、全然覚えていなかった… 本当に再読なのかなあ、と思うくらい。 実にバークリーらしいひねくれ方、でも割と素直なので初心者にもわかりやすい。ストーリー展開の妙が素晴らしい。結構な綱渡りだと思うけど、作者は悠々と言う感じ。読書の途中で何度も唸りました。キャラ付けも非常に良い。 コメディですね。ちょっとズレるかもだが、ヒッチ『ハリーの災難』のテイスト。 英国の離婚事情とバークリーの実人生の知識があると、なお興味深く感じられると思うので、ジジイ心ながら簡単に解説。 まずは当時の英国離婚事情から。参考文献として田中和夫「イギリス離婚法の沿革」(1974)がお薦め。学術的かつ楽しい素晴らしい論文。1920年代、1930年代の英国探偵小説好きなら必読! ものすごく簡単にまとめると、当時、EnglandとWalesでは(Scotlandは例によって法律制度が別。調べてない)、離婚の訴因としては不貞のみが認められており(1937年に改訂)、離婚を訴えた側(原告)は綺麗な手(自分は不倫してない)であることが原則(1930年の判決によると、あらかじめ自分から、こーゆー理由で私も不倫しちゃいました、と告白しておけば事情によっては認められる場合もあり)。そのため、調査官King's Proctorがそこら辺を調べる。探偵を雇うような事例も。色々調べて離婚しても良いだろうと裁判官が判断すると、まず仮判決が出て、世間からの異議がないか6ヶ月程度様子をみた後(情報がKing's Proctorに寄せられ、怪しいとなると、様子見期間が中断され審理再開)、最終的に離婚確定となる。そーゆー制度なので、例えば愛人が出来た夫が離婚したければ、妻に訴えてもらう必要がある。アガサ・クリスティ(1928年離婚成立)もそーだったのだろう。(離婚及び結婚無効件数の統計を見ると1928年4018件、1929年3396件、1930年3563件、1931年3764件、1932年3894件。1929年の一時的な落ち込みは不況の影響かも) さて作者バークリーも実人生では離婚経験者だ。最初の妻Margaret Fearnley Farrar(アイルズ『殺意』1931年2月出版を献呈)と1931年に離婚し、1932年にHelen Peters(アイルズ『犯行以前』1932年5月出版を献呈)と再婚している。Helenはバークリーの著作権代理人A.D. Petersの元妻(1931年離婚か)。このA.D. Petersにバークリーは『第二の銃弾』(1930年10月出版)の序文で謝意を示している。でも前述の通り離婚には訴えから確定まで時間が結構かかるから、親しげな序文を書いてる時は、裏で不倫進行中だったのでは? (バークリー夫妻とPeters夫妻の離婚裁判では、それぞれ誰が原告だったのか、非常に気になる) 本作は、こーゆー作者自身の経験が反映されているのでは、と想像する。 歴史的な犯罪者のネタが沢山あるので、最初の数ページは脚注だらけ。単行本の解説には詳しめな解説あり(文庫版は未確認)。これ訳者の「前説」としてくれた方がありがたい。私は、解説はネタバレ危険物件なので絶対最後に読む派なので… (あっ、今、巻末の若島正「バークリーと犯罪実話」をチラ見したらネタバレ多数物件のようだ。もー!ちゃんと注意書きしてほしい。「●と●未読の方は…」とかね。とは言え、犯人や重要トリックをバラして無いから良いもんね、という感覚の人もいるから困る。一番良いのは一切読まないこと。なので、私は面白そうな評論や評伝も読めません。エドワーズのデテクション・クラブのやつも買ってあるけど封印中。まーこーゆーのは自己責任で。とりあえず、皆さま、ご注意) 原文は入手が難しいようだ。トリビアは少しずつ書きます… (以上2020-10-14記載。その後若干訂正あり) p5 W. N. ラフヘッドに「思い出——とても愉快な」♣️献辞。訳者解説にある通りWilliam Roughhead (1870-1952) スコットランド人。英国の犯罪実話や裁判記録に関する著作多数(アマゾンでも著書Classic Crimesなどが入手可能)。本書のスコットランド人コリンのモデル? p17 ジャンピング・ジャック♣️「訳註 手足や胴についている紐を引っ張ると人形が飛んだり跳ねたりする人形」jumping jack toyで検索すると見られます。Rolling StonesのJumpin‘ Jack Flashはこれのことではないらしい。 ここのイメージはスティーヴンスン『カトリアナ』(1893) 第3章から。 p20 パーティ♣️英国の社交生活の重要要素。この小説はパーティの感じがよく出ていると思う。(時代は違うがパーティというとゴダール映画Pierrot le fouの冒頭を思い出す。ligne jeune!) ところで、私はMurder Partyがいつ始まったのか?とここ数年思っている。(今のところ、バークリー『第二の銃弾』(1930)以前の例を見つけていないのだが…) p25 離婚の仮判決♣️「訳注 期間内に相手方の異議がなければ確定判決となる」としてるけど、上述の通り「相手方」だけではない。匿名の手紙などで「原告が不倫してまっせ…」とチクられ証拠が見つかれば、離婚判決は出ない。 あくまで原則は、神の前の結婚は聖なるもので永遠、という概念で、裁判官が「確信を持って」離婚やむなしとするなら例外的に認める、という制度である。この原則がやっと変わったのは1969年のこと。 p27 国王代訴人♣️上の英国離婚制度で触れたKing's Proctorのことだろう。ここら辺の結婚論はバークリーの本音っぽい。 p29 元ミセス・ストラットンと未来のミセス・ストラットンが同席♣️Mrs Berkeleysでこーゆー情景はあったのだろうか。作者の理想だったようにも思う。 p34 大きなラジオ・セット♣️現代のテレビ並みのでっかい床置きのがあった。radio set 1930などでググると一家団欒の写真が結構出てくる。 p35 ジャズ♣️ベニー・グッドマンが有名になったのは1935年ごろ。ベイシーもまだ。当時は初期のルイ・アームストロング(Hot Seven)のニューオリンズ系が全盛。 p36 ズボンは彼女には大きすぎた♣️ここはクリッペンの愛人のネタ。 p39 シャレード♣️訳註 ジェスチャーで言葉などを当てるゲーム。ここの主催者の定番のパーティ余興。ここのシャレードは、二つの組に分かれて、一方が答えの言葉を三幕の芝居に仕立てて演じ、他の組に当てさせる、ものらしい。「三幕の芝居」とはWilliam Archer(1856-1924)がPlay-making(1912)でthe rhythm of growth, culmination, solutionと表現した演劇要素のことか。「設定 (Set-up)—対立 (Confrontation)—解決 (Resolution)」と定式化されたのは1979年。4世紀ローマ帝国のAelius Donatusはprotasis, epitasis, catastropheと書いていたようだが、古典劇では長らく五幕構成(prelude, protasis, epitasis, catastasis, catastrophe)が主流だった。 p40 ロナルドは黒髪で、デイヴィッドは金髪♣️原文はdark/fairだろう。 p52 ピーター・ウィムジイ卿♣️リレー小説“Ask a Policeman”(1933)で共演してるので、ここに登場したのだろう。 p61 ラグビーのフォワード♣️私は全然詳しくないのだが、これで肉体的特徴がパッとイメージされる筈だ。(調べたらbigger, stronger, and slower ladsとのこと。アメフトのラインメンで良い?) p64 アパッシュダンス♣️こーゆーのは某Tubeで見るのが一番。Apache danceで検索すると1930年のキートン、1935年のチャーリー・チャン映画の一場面、1934年の本場フランス・スタイルなどが見つかった。ええと… 虐待だよね。最後はジャイアント・スラロームでぶん投げて締め。 (ここまで2020-10-16追記) p78 車♣️このページに4台登場しているが、メーカーや車種の記載は一切なし。ディテールをあまり描写しないのがバークリー流。 p79 ラジエーターを一杯にしているあいだ♣️自動車は全然詳しくないのだが、水を継ぎ足すらしい。車庫に給水設備があるのだろうか。 p79 玄関の掛け金♣️夜中だけ施錠するのか。お客がまだいるので施錠していないだけか。 p99 ジェイムズ一世時代風の暖炉♣️Jacobean era(1603-1625)。しばらくjamesianで虚しく検索してしまいました… 検索はJacobean fireplaceで。Elizabethan fireplaceも見てみたが、区別出来る自信は全くありません… p122 昔からおなじみの決まり文句… 自殺したいという人間で実際にしたやつはいない♣️結構古い言い伝えなのか?起源が知りたいところ。 (ここまで2020-10-18追記) p175 五ポンド対六ペンスの賭け♣️200対1の賭け。英国消費者物価指数基準1933/2020(72.04倍)で£1=9518円。47590円対238円の賭け。 p181 検死審問♣️この小説では二日後に、当の屋敷で開催する予定。不審な死の発見後48時間以内に開催、とWebで見たが、当時も同じルールかは不明。場所はある程度広いところならどこでも良いのか? p187 チョークとチーズ♣️different as chalk and cheese 外見は似ているが本質は全く異なる物の例えに用いられる。製品のチョークではなく白亜の岩(natural chalk)の外見が似ているということか。 p206 四月♣️何年かは不明だが、この事件は4月に発生。 p217 昼食の銅鑼♣️広い屋敷には必須のもの。 (ここまで2020-10-19追記) (蛇足の蛇足) 本書再読のきっかけはエディ・ヴァン・ヘイレン追悼。JumpからJumping Jennyというわけ。Beat Itのギター・ソロで知ったので、そっちで何かないかなあ、と考えたがアル・ヤンコビッチしか思いつかないよね。エレキ・ギターの神様はJimiだが、エディは永遠のギター小僧だと思う。 |
No.14 | 6点 | レッドキング | |
(2018/10/05 21:42登録) 「殺されちまったほうがスッキリする被害者」が出てくる話の結末はこうでなきゃな、「オリエント急行」もいいが。に比べて我が国のその手のは変にカタくてさ、「犯人の心情は分かるが、法は法だ。裁かれなければ・・」式になるから鼻白む。 |
No.13 | 8点 | ボナンザ | |
(2017/12/07 21:49登録) シンプルながら凄まじい展開と、効果的なラスト。変に盛り込むだけがマニア向けじゃないことを教えてくれる傑作。 |
No.12 | 7点 | いいちこ | |
(2016/09/28 13:09登録) 明かされた真相や、そのためのお膳立ては至って平凡であるが、探偵が真相の隠蔽に奔走し、多重解決形式を採用した騙しのテクニック等、変則的なプロットの妙を評価 |
No.11 | 7点 | 風桜青紫 | |
(2016/07/12 23:58登録) 素直に楽しめる馬鹿話だった。ロジャー・シェリンガムのなんともいえない投げやりぶりがいい。バークリーが面白いのは、新本格での麻耶雄嵩と同じく、正当派からひねったところをどう面白がらせるかという術を心得ていたからではないかと思う。アンチ・ミステリがどうとかいう意見もあるが、そもそもこれが書かれた時分には『虚無への供物』はおろか『黒死館殺人事件』と『ドグラ・マグラ』すらなかったことを頭に入れておいてほしいものだ。 |
No.10 | 7点 | 青い車 | |
(2016/02/20 15:28登録) 今回は刑事コロンボや古畑任三郎みたいに、最初に誰が殺したのかを半分ばらした珍しい形式になっています。探偵が真相をねじ曲げたり、あわや犯人にされかけたりと、バークリーらしい一筋縄ではいかない展開は健在。そしてアンフェアぎりぎりの種明かしをする結末には愕然となりました。ただし、アンチ・ミステリーとして意義ある内容ではありますが、変格的な内容で素直に楽しめたかというと疑問が残るので極端な高評価は控えます。 |
No.9 | 8点 | ロマン | |
(2015/10/21 10:59登録) シェリンガム・シリーズで最高傑作と言われる作品。病的な虚言や自殺を仄めかす発言を繰り返し、ヒロイン気取りで顰蹙を買っていた女が死んだ。自殺としか思えない死体状況だがそこには椅子が置いていたために殺人の疑いが。まずは死んだ女に皆共々、ウンザリしていたシェリンガムが自殺を装わせて椅子を置いていたり、裁判で皆に自殺を証明するように打ち合わせたりしている場面に探偵の良心に唖然とさせられる人も居られるだろう。でも私は死ぬ勇気もないのに「死んでやる」と連発する輩は縊り殺したくなる程、嫌いなので皆を幸せにした結末に拍手。 |
No.8 | 8点 | あびびび | |
(2015/04/28 23:34登録) 探偵役のシェリンガム…。これだけ迷走する探偵も珍しい。しかし、この作品は最後の最後で救われた、そんな感じの流れ。 いつも自分本位で、場を乱す。100人いれば100人が嫌いになる女が殺された。それをいかに正当化?するか…が、焦点。言わば、誰が犯人でもいい。警察が「自殺」と判断してくれるのなら! しかし、いかんだろう、殺人者を見逃しては!というもやもや感をさっと取り除いてくれた「真の犯人」。そこまで相手が言えば、当然、『エエーイ!』となってしまうだろう。 ある意味、爽快。最後にプラス1点。 |
No.7 | 6点 | mini | |
(2014/03/31 09:56登録) 先日に原書房からアントニイ・バークリー「服用禁止」が刊行された 原書房のヴィンテージ・ミステリ叢書と言えば、国書や論創社などと並んでハードカバー版海外古典ミステリー叢書の代表格の1つだったが、暫く鳴りを潜めていた ところが今年になって復活の狼煙を上げた、監修はもちろん森英俊氏のようで、今後もヴァル・ギールグッド、ヴァージル・マーカム、ブルース・グレイムといったかなりマニアックなラインナップが予定されている ヴァージル・マーカムのもかなりな怪作らしいが、ブルース・グレイムのはなんと警察官が過去の時代へタイムスリップしてエドウィン・ドルードの謎を解くのだが指紋を決め手にしようとしたらその時代には指紋を証拠に使う習慣が無いので狂人扱いされるというトンデモな怪作らしい 今回出たバークリー「服用禁止」はシェリンガムシリーズが打ち止めになった後のノンシリーズ作で、元々は懸賞小説で読者挑戦状も挿入された完全なパズルミステリーらしい 「服用禁止」はシェリンガム打ち切り後のノンシリーズ作だが、シェリンガムシリーズの最終作「パニック・パーティ」の一つ前の作が「ジャンピング・ジェニイ」である 「ジャンピング・ジェニイ」はある意味最もシリーズらしい作で、おいおいシェリンガムよここまでやっていいのか?って感じで、この後の「パニック・パーティー」を最後にシェリンガムが退場するのも無理無いかなと思わせる ここまでくるとそもそも探偵役という存在・役割とは何なのかと問いかけてくるようだ バークリーは別名義のフランシス・アイルズ名義でも戦後の犯罪小説ジャンルへの先駆的役割を果たしているが、「ジャンピング・ジェニイ」も探偵役が一応推理を披露しながらも、犯罪小説へ一歩踏み出しているという点で興味深いものが有る 野球の投球に例えるなら、走者一塁で牽制球ばかりで打者になかなか投げず、ようやく打者に投げたのが直球ど真ん中見逃し、打者も次は打つぞと意気込んだらまた牽制球で一塁走者タッチアウトみたいな感じか |
No.6 | 7点 | あのろん | |
(2014/03/04 17:01登録) 被害者は本当にイヤな奴!!!!! この表現力には舌を巻きます。 それにシェリンガムの迷走っぷりがとても楽しめました。 殺人事件としてはシンプルなものなのに、こんな結果になるとは…。 ラストのどんでんには苦笑してしまいました。 |
No.5 | 4点 | 蟷螂の斧 | |
(2012/04/27 16:48登録) 「第二の銃声」が面白かったので期待したのですが、本作は駄目でした。3作(毒入り・第二の銃声・本作)続けて探偵が犯人を特定できないなんて・・・。探偵が道化役になってしまい、仮説を立ててもどうせ間違っていると思ってしまい信憑性がありません(1,2冊ならアンチ探偵もので面白いかもしれませんが・・・)。本作の重要ポイントとなっている首吊り死体の下にある椅子の位置についてですが、自殺であろうが他殺であろうが、どうにでも説明はつくはずですが・・・。それを変にこねくり回してしまったという感じです。 |
No.4 | 7点 | E-BANKER | |
(2011/02/08 23:11登録) ロジャー・シャリンガムシリーズ。 バークリーらしい皮肉に満ちた作品に仕上がってます。 ~屋上の絞首台に吊るされた藁製の縛り首の女・・・小説家ストラトン主催の「殺人者と犠牲者」パーティーの悪趣味な余興であった。シェリンガムは有名な殺人者に仮装した招待客の中の嫌われ者、主催者の妹・イーナに注目する。そして宴が終る頃、絞首台には人形の代わりに、本物の死体が吊るされていた!~ という粗筋なのですが、ここから名探偵?にあるまじき、シェリンガムの迷走が始まります。 他の方の書評にもありますが、警察に真相を悟られないため、普通の名探偵とはまさに逆のベクトルで行動するなど、他のミステリーでは考えられないプロット! 「ある致命的な事実」を隠蔽し、警察をミスリードするため、「ああでもない」「こうでもない」と迷い続けるシェリンガムのキャラは、頼りなくもまぁ微笑ましく映るのですが・・・ 「結局本筋はどうしたんだ?」 と思っているうちに、ラスト1行で見事にオチが付いて、何か良質な「コント」でも見せられたような気にさせられました。 巻末の解説で、「バークリーの入門編として最適」とありますが、その評価が正鵠を得ているような気がします。 個人的な好みからどうかと聞かれれば、決して「ドストライク」とは言えませんが、重厚な本格物に飽きたら、変化球としてこういうのを読んでみるのもありだなぁという感じですかねぇ・・・ (被害者は本当に嫌なヤツですが、シャリンガムが「殺されて当然」と言ってるのは「オイオイ!」と突っ込みたくなります) |
No.3 | 8点 | kanamori | |
(2010/08/05 17:52登録) 迷探偵シェリンガム・シリーズのサイコー・ケッサク。 ある意味「アンチ・名探偵」テーマを極めています。探偵役が証拠を偽造したり、関係者に偽証を強いたりして、事件を解決しないように持って行ってますから。 スラップスティック・コメデイ風味が強く出過ぎていて、正統派の本格ミステリを求める読者には、失望を与えかねないプロットではありますが、最後のオチまでバークリーらしさが出ている代表作の一つと言えると思います。 |
No.2 | 7点 | こう | |
(2010/05/30 23:52登録) 久々に読んだシェリンガム物でしたがこれほど作品中の真相究明に成功するのか失敗するのかわからない探偵も珍しいですがこの作品ではまさか殺人事件の揉み消しを試みるとはびっくりです。構成としても論理の試行錯誤、最終章のひっくり返しとバークリーらしい作品に仕上がっています。 建物内での殺人そのものは大掛かりなものではないですしシェリンガム物はどれものんびりした印象のある作品ばかりですが個人的には海外物の古典にしては読み易くどれも水準作で楽しめます。 |
No.1 | 10点 | nukkam | |
(2009/01/20 10:48登録) (ネタバレなしです) 1933年発表のロジャー・シェリンガムシリーズ第9作の本格派推理小説である本書は最後の一行のインパクトもかなりのもので、それだけでも十分に読む価値があるのですが最大の特徴はプロットの逆転ではないでしょうか。最初は普通に犯人探しをしていたロジャー・シェリンガムがある理由から解決でなく未解決に向かって奮闘する、とんでもない展開になります。果たしてどう決着するのかは読んでのお楽しみです。 |