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ミステリの祭典

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密室の鍵貸します
烏賊川市シリーズ

作家 東川篤哉
出版日2002年04月
平均点6.13点
書評数23人

No.23 7点 パメル
(2020/09/12 09:58登録)
タイトルからビリー・ワイルダー監督の傑作コメディ映画「アパートの鍵貸します」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。この作品も映画に負けずユーモアたっぷり。
作者がつくった架空都市・烏賊川市が舞台。主人公の戸村流平は、彼女の紺野由紀にフラれてしまう。その噂を聞いた茂呂に誘われ「殺戮の館」という映画のビデオを持って、家に遊びに行くことになる。しかしその晩、紺野由紀が殺される事件があり、アリバイを証明してくれるはずの茂呂までも殺されてしまう。
軽妙な語り口で緊張感がない、とぼけた感じの作風なので好き嫌いは分かれるかもしれない。ただ、その語り口こそが充分な効果をあげて、大きな仕掛けが隠されているというトリッキーな作品。
個性的な人物造形、周到な伏線の張り方、小道具の使い方も実に巧妙。小難しいことなく、リーダビリティが高い作品なのでミステリ入門書として最適だと思います。

No.22 6点 mediocrity
(2019/03/30 18:13登録)
デビュー作ということで、ギャグは控えめ、お得意の野球ギャグはなし。軽い雰囲気にもかかわらず、ちゃんと本格しているのは後年の作品同様でした。飛び降り現場で茂呂が志木を見て驚いた理由はなるほどと思わされました。殺人の動機にはたまげたなあ、と反応するのが正しいのでしょう。

No.21 5点 ねここねこ男爵
(2017/11/10 15:11登録)
なかなか面白いです。
色メガネで見てしまいそうなタイトル装丁で、文体かなり軽いですが、ちゃんと本格ミステリしています。ユーモアって書くの大変(ギャグ漫画家は必ず病む)なのにあえてこれで行こうとした作者はすごい。一時期、難しい漢字のおどろおどろしいタイトルと文体を用い、中身はミステリより雑学知識多めで黒い表紙の作品が流行り、そういうのが格調高いという出処不明の価値観がありますが、ユーモアのほうがずっと好感が持てます。読みやすいし。
惜しむらくは、長編としてはネタが薄いこと、それを引っ張るためのドタバタ劇になっていることでしょうか。
それから、死体発見時に発見者が自分の首を絞めるような行動を「ついやってしまう」のですが、本筋にあんまり影響無いにしろ、今時の読者にとっては発見者に同情する気持ちより「何やってんだよ面倒くせぇな…」とストレスになるだけなのでやめた方が。

No.20 6点 青い車
(2016/02/26 19:02登録)
『謎解きはディナーのあとで』の、ゆるいユーモアと本格ミステリーを混ぜ合わせた独自の作風で人気を博した東川篤哉氏のデビュー作です。ギャグのほうはすべっているという人もいるそうですが、僕は心の中でにやにやしながら読みました。シリアスを気取って高尚ぶるよりよっぽどいいと思います。油断ならないのは、トリックの伏線がそんなギャグに見事に包み込まれているところです。特に流平の観た駄作映画が重要なファクターだったところには素直に感心させられました。不満は事件そのものが長篇小説を支えるにはやや小粒なところでしょうか。

No.19 6点 名探偵ジャパン
(2015/01/19 17:29登録)
ドラマで観賞後だったため、トリックなどは既知の状態で読んだ。
あくまで本格、あくまでミステリに徹し、そこへ、「少しかけ過ぎ」とも思えるユーモアというスパイスを振った本作は、何とも独特な味わいのある作品となった。
新本格が市民権を得て幾年。その新本格に影響されて書かれた作品に、解説で有栖川が語ったような「本格ミステリを出汁にして遊ぶ」ような作品が多い中、(「脱格」というネーミングはこの手のスタイルを的確に表現している)本作の作者は、数少ない「正当派本格ミステリ書き後継者」と呼べるのではないだろうか。
デビュー作を読んでみて改めてそう感じた。
妙にパーソナリティを持った三人称の語り手(お前は誰なんだよ 笑)も、普通にやっては「ふざけてるのか」と言いたくなるが、東川作品では許せてしまう。
これも有栖川の言葉だが、「ユーモアというのは、作るのが難しい割に、シリアスや浪花節より低く見られがち」で、決して利益率(?)の高い仕事とは言えないのだが、デビュー作からそこに挑戦し、今もそのスタイルを守り続けている作者の心意気は凄い。

No.18 5点 蟷螂の斧
(2013/06/27 20:10登録)
烏賊川市の位置が<千葉の東・神奈川の西>が伏線?と頭にこびりついてしまい集中できませんでした(笑)。まあ、地球を一周すれば間違いではないのですが・・・(ほんとに、いかがわし)。密室をメインにしなくても良かったような気がします。つまり、密室作りのため(こじつけ)の殺人で、それが唐突過ぎますね。アリバイ・トリックだけで押し通し、犯人逮捕、そして動機(今までにない?)の判明の方が、インパクトがあったように感じます。本作では、砂川警部は切れ者だったのですね。

No.17 7点 ナノ
(2013/05/21 11:33登録)
本格を地で行く内容に非常に好感を持てました。
確かにトリックに関しては、ミステリの本たっぷり持ち寄れば似通ったものが出てくるのは避けられないものでした。
しかし散りばめられたクスリとくる表現や、戸川×鵜飼と刑事2人のすれ違いなど、全体を通して飽きさせない工夫が為されており、作者の技巧を感じさせられました。

No.16 7点 まさむね
(2012/10/31 21:53登録)
 今更ながら氏のデビュー長編を読了。その後の烏賊川市シリーズは何作か読んでいますが,キャラの印象が微妙に異なっていたりして,逆に新鮮で楽しめました。
 内容としては極めて端正な本格モノ。大仕掛けはないものの,むしろその端正さが好みという同志もいらっしゃるはず。すっとぼけた登場人物やユーモアも効いています。
 ノベルス版のカバー折り返しに書かれたという,有栖川氏のコメントが非常に的を得ています。「ストライクゾーンからストライクゾーンに切れ込む鋭いシュートだ。」確かに,その後の活躍も素直に頷けるレベルの第一長編と感じましたね。6.5点の気持ちですが,切り上げてこの点数に。

No.15 5点 mozart
(2012/09/08 12:04登録)
烏賊川市シリーズの「第1作」をやっと読みました。後作品群を先に読んだ者としては、砂川警部が思ったよりも「まとも」な役割だったのがちょっと意外かも。

動機については・・・・。

まぁ、それに比べれば、戸村君も、その後の「お嬢様」のアタックなど「屁」でもないでしょうね。

No.14 6点 ミステリ初心者
(2012/06/20 10:02登録)
 とても読みやすい ギャグミステリ? シリーズ1作目。 このときは、探偵のボケは薄い気がします。
 タイトルからして密室。 そのトリック自体、そんなにオリジナリティーは感じなかったです。

No.13 7点
(2012/05/28 09:27登録)
作者が読み手に話しかける語り口が気になりました。これは素人作家が奇をてらって採った手法なのか、という感じもしましたが、読み進めていくうちに、ユーモアやギャグを含め、文章的にはすべてを気に入り、その語り口もベテラン風に見えてしまいました。

1つ目のトリックは、よく練られているように思います。このトリックは辻褄あわせが十分でないとうまくいきませんが、それを細心の注意をはらいながら犯人に実行させたことは見事です。
2つ目はどちらかというと許せないタイプの真相ですが、1つ目の事件と整合をとりながらうまく関連付け、きれいにまとめていると思います。お笑いで茶化しながらも、考えつくした、気合の入ったデビュー作という感じがします。

タイトルは本作、次作ともに映画にちなんだネーミングが用いられていて、とても洒落ています。作中に映画の話が出てきますが、作者はミステリー通であるとともに、かなりの映画ファンなのでしょう。このネーミングはもうすこし続けてもらいたいですね。

No.12 6点 こう
(2012/01/21 00:41登録)
昨年このサイトで存在を知って読み始めましたが烏賊川市シリーズは大好きです。独特のギャグ、ユーモアは受け付けない読者もいると思いますが個人的には当たりでした。
 メインプロットもこの世界観の中でしっかり考えられていると思います。ただこのシリーズは笑えればいいと思いながら読んでいるので多分登場人物のやり取りが面白ければ事件がしょぼくとも自分は満足するだろうなあと思います。

No.11 6点 いいちこ
(2011/12/23 08:34登録)
メイントリックはよく考えられていて、ユーモアを交えたストーリーテリングも水準以上。
しかしこれだけ周到に準備した犯人が2番目の殺人ではかなり雑な印象であること、動機の脱力感(著者一流のユーモアだが)が減点要素

No.10 7点 yoneppi
(2011/09/10 09:02登録)
文体はちょっと気になるが、良質のミステリとしてかなり楽しめた。
第2の犯人もこの登場ならセーフか。動機が一番驚いた。

No.9 6点 seiryuu
(2011/01/17 16:07登録)
読みやすくユーモア感があって
登場人物も生き生きとしてる。
でも上から目線の文体と表現の青さが少し気になりました。
トリックは強引なところもあるけど発想が好き。
烏賊川市(いかがわし)という地名も好き。

No.8 6点 nukkam
(2010/08/06 11:40登録)
(ネタバレなしです) 有栖川有栖が「ユーモア本格派のエース」と激賞した東川篤哉(ひがしがわとくや)(1968年生まれの)の2002年発表のデビュー作です。派手な爆笑よりもくすくす笑いを誘うようなユーモアを特徴とし、すれ違いや勘違いを随所にばら撒いて読者を混乱させながら謎解き伏線を巧妙に配置する手腕は確かなものです。もっとも探偵役に「僕らはヴァン・ダインとは違うのだし」と言わせるほど珍しい真相の捻り方はアンフェアだと感じる読者がいるかもしれません(横溝正史の某作品にもこの真相パターンがあったような記憶が...)。それさえも軽妙な文体のおかげで、まっいいかと思わせてしまうのですが。

No.7 6点 メルカトル
(2010/06/16 21:45登録)
密室とアリバイトリックの豪華二本立て、しかし全体の印象は地味である。
前半のまったりした雰囲気の描写の中に、ほとんどの伏線が張られているので要注意、うっかりしていると作者の術中に嵌る事になる。
最初の殺人の動機や二番目の殺人の真相はやや疑問視せざるを得ないが、今時珍しいユーモアテイストの本格ミステリであり、良心的な作品と言える。
謎の解明も細かい点までよく練られているし、警察、探偵共に一応の面目を保ってエンディングを迎えている点も好感が持てる。

No.6 6点 E-BANKER
(2010/04/16 21:34登録)
作者の処女長編作。
烏賊川市シリーズの第1作目。
タイトルからは「密室トリックもの」が想像されますが、実際は”凝ったアリバイトリックもの”という方がしっくりきます。
メイントリックについては、まさにアイデアの勝利という感じで、よくある趣向には違いないですけど作者なりの味付けに惹かれます。
ただ、動機や2つ目殺人?はどうですかねぇ・・・ちょっとムリヤリ感が強かったので、そこら辺がデビュー作っぽい部分かもしれません。
有栖川氏の推薦文「ストライクゾーンからストライクゾーンへ鋭く曲がるシュート」というコピーはなかなか「言い得て妙」だと思います。

No.5 7点 いけお
(2010/01/02 01:30登録)
地味なトリックだがなかなか。
異なる視点からの展開は楽しめる。

No.4 7点 makomako
(2009/08/23 09:21登録)
 これはしっかりした本格推理小説なのでしょう。きちんと伏線も張ってあり複雑な推理もあってなかなか面白かった。おどろおどろしい雰囲気として本格好きをひきつけることも出来る内容なのに、ユーモア仕立てとしたところが作者の個性なのでしょう。こういった雰囲気は嫌いではない。
 登場人物が少ないのも、人の名前を覚えるのが苦手な小生には好感がもてる。ただ私は後のシリーズを読んでいたため、怪しげな人物が犯人でないことが分かっており犯人探しとしてはちょっと興ざめであった。この作者の作品を読むなら、まずこの作品からはじめるべきでしょう。
 なお違う作品に作者はプロットやトリックを考え抜いてから書き始めるのではなく書きながら作っていくほうだといっているが、この作品を読むかぎりよほど考え抜いてから書いたとしか思えないのですがね。

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