グリーン家殺人事件 |
---|
作家 | S・S・ヴァン・ダイン |
---|---|
出版日 | 1950年01月 |
平均点 | 6.88点 |
書評数 | 34人 |
No.34 | 7点 | モグラの対義語はモゲラ | |
(2021/07/05 03:12登録) 読んだのは59年の文庫版の34刷り目。 面白かった。陳腐な表現だが普通に面白かった。古い作品だからどうだろうなんて心配は杞憂だった。犯人像を掴ませず展開を右往左往させながら、解くべき犯人の心理やトリックのある事件を重ねていくという、お手本のような本格ものだった。そもそもお手本なのだがら当たり前だが。 特に第三の殺人の種で唸ってしまった。いやそれはベタ過ぎるし狡いだろというトリックだったのだが、作中で示されていた謎を考えたら、そこまでたどり着くのが不可能な後出しでもなかった。ちゃんと推理してないくせに「えそれは狡くね」なんて言ってごめんなさい。でもベタだと思う。まあトリックそのものは過去からの模倣だし。 が、その過去の犯罪者のやり口の模倣と言うのも、歴代の犯罪者たちの知恵の結晶で勝負に出ているという、なんというか少年漫画とかゲームに出てくるような展開で好きだ。まあそもそも古典作品なのだから、この頃からあった物語の方法論を現代のコンテンツも使っているというだけなんだろうが。 面白かったのは間違いないが、誰がやったかは割と分かりやすく、先述のトリック(?)も、どんなに暗示する手掛かりがあったとは言っても、人によっては受け入れ難いタイプのものだと思う。でも古典ということも考えると点数はこれぐらいかなあ。 |
No.33 | 5点 | ◇・・ | |
(2020/03/28 14:04登録) 物的証拠によらない、心理学に基盤を置いた分析的推理法。探偵活動においては、法律無視を平気で行い、事件の過程で自殺ほう助、殺人示唆、犯人に自殺を迫るなど、かなり無茶苦茶なことをしている。 連続殺人事件という全体像もさることながら、一つ一つの事件についても精緻に描かれているのが最大の特徴で細部の謎も解かなければならない。 クイーンの「Yの悲劇」や横溝正史作品にも大きな影響を与えている。 |
No.32 | 5点 | 虫暮部 | |
(2020/03/13 12:03登録) なんとも大胆な伏線だ。 “そりゃ、出て行ったんでしょうね、いま、あそこにいないとすれば” ロジックとしても正しい。そこでもっと追求していれば死ななかったのに。 つまり、犯人は良く考えれば気付ける穴に目をつぶって犯行を強行した、捜査陣は誰もその矛盾に気付かなかった、と。まぁ、“手掛かりが無い”と言う手掛かりは悪魔の証明だから止むを得ないのか。 と言うか――ネタを踏まえて読み返すと、本作は、リスクを承知の上で、分の悪い勝負(殺人に成功するほど容疑者が限られてしまうから)に人生を懸ける、妄執の物語なのである。心情的には犯人の味方になってしまうのである。おいおいそんな証言したら却って怪しまれるって。知ったかぶり野郎の引っ掛けに乗っちゃ駄目だぁぁぁ! |
No.31 | 8点 | バード | |
(2020/01/12 18:49登録) 古き良きミステリで面白かった。個人的にこのプロットで共犯に逃げていない点は高評価。(結果的に杞憂だったが、第三の事件でおいおい共犯か?と眉をひそめました(笑)。) 本作は途中で真犯人が何となく分かった。犯人って何かしら自分の都合の良いように物語を動かそうとするから不自然な言動や行動が増えがちよね。今回の犯人もレックスの証言に後からのっかった件しかり、夫人の脚の件しかりと、各所で墓穴を掘ってるし。 解決編の前にほぼ全ての謎の見当は付けられたが、凶器の消失に雪が絡んでいたのは思い至らなかった。雪は単に足跡ギミック用と思っていたので・・・。 |
No.30 | 5点 | 弾十六 | |
(2019/05/12 11:23登録) Scribner’s Magazine 1928年1月〜4月分載(雑誌の表紙から判断)、1928年3月24日出版。新訳はまだずっと先のようなので井上 勇さんの創元文庫版で読みました。格調高い翻訳ですね。(p411を新訳でどう処理するのかが楽しみです) 本格ミステリ史に残るベストセラー。Publisher’s Weeklyのリスト(US版)で1928年第4位(翌年の「僧正」も同じ順位) という凄い記録を残しています。このリストに載った本格ミステリは他に「バスカヴィル家」1902年第7位、「カーテン」1975年第3位、「スリーピング・マーダー」1976年第2位くらい。(ミステリ界で目についたのは「レベッカ」1938年第4位&1939年第3位[これも凄い]、「寒い国から帰ったスパイ」1964年第1位、「007は二度死ぬ」1964年第8位、「鏡の国の戦争」1965年第4位、「黄金銃を持つ男」1965年第8位、「ゴッドファーザー」1969年第2位、などなど。デュモーリアが他にも多数ランクイン(なんと1969年まで)、M.R. ラインハートが1910年代から20年代にかけてかなり活躍しています。) なので非常に期待してたのですが、何故これが高い評価を受け、そんなに売れたのか全くわかりません。ヴァンスが手をこまねいて事件が次々と起こる締まりのない構成、起伏に欠けた展開、キャラの描写が下手、推理も貧弱(お得意の「心理分析だけで全部わかる」論はどこ行った?まーそれやると直ちに解決しちゃうからね…) 前二作は実際の犯罪をベースにしてたので要素がヴァラエティに富んでたのですが、作者の想像力が試されるオリジナルストーリーでは、このありさまです。 ところで「私(ヴァンダイン)」の無色透明さ、書記に徹するキャラ設定が気になりました。ここまで自己顕示欲が無いというのはどういうこと?全く活躍しないんですよ… 案外、W.H. ライト氏は、自分が「空っぽな」人間であることを恥じていたのかも。それでペダントリーに逃げる、自分は活躍する価値もない… 第一、二作が良かっただけに期待が大き過ぎてハズレ感が大きいのですが、今後のシリーズもW.H. ライト分析を深めるという意味で楽しみです。(伝記はまだまだお預け) 以下、トリヴィア。 拳銃は、「古い三十二口径の回転拳銃」(p39: an old .32 revolver)、「古いスミス アンド ウェッソン型三十二口径でした。(…)真珠母の柄で、銃身にはなにか渦巻模様の彫刻がありました 」(p75: An old Smith & Wesson .32. (...) Mother-of-pearl handle, some scroll-engraving on the barrel)、15年ほど前に入手ということで、1905年以前(作中時間の設定は日付と曜日と「ベンスン」から1920年11月)を考えると、候補はシングルアクション Model One&a Half centerfire(1878-1892)、ダブルアクション 1st〜4th Model(1880-1909)、ハンドエジェクター(1896-1909)。SAもDAもいずれもトップブレイク(上が割れてシリンダに弾を込める式)で現在主流のスイングアウト式と違っており、その特徴が話に出てこないことからHEが有力。HEの1905年時点の最新式はModel of 1903 (2nd Model) 1st Change、多分これを購入したのでは?3-1/4、4-1/4、6インチ銃身のものがあります。(本作の銃身は短いものという感じあり) p27 [ホールは]真っ暗だったので…: 現在ならすぐ電気をつけるところ。ここでは暗い中を手探りで廊下を進んでいく。しかし部屋には電灯のスイッチがある。古い屋敷なので広い場所は電化されてないのか。(照明はロウソク?ガス?) p45 ふつうのバーニー オールドフィールド(a regular Barney Oldfield): 車の種類のように読めるが、調べるとレーサーの名前で、この名前の車種は無いようです。 p209 私たちは五番街を北にのぼり(…): ヴァンスのニューヨーク観光ツアーがあったら、ドライブコースに確実に指定されると思われる場面。調べていませんが、当時の写真があるともっと楽しいですね。 p405 君のグラッドストン張りの風貌を漫画に(caricature your Gladstonian features): 「君」=マーカム。ヴァンスの発言。顔が似てるということ?なお、ヴァンスはジョン バリモア、フォーブス ロバートソンに似ている。(「ベンスン」に記載あり) p422 神よ、どうか間に合いますように(God help us if we’re too late!): ヴァンスが神に祈ったのは最初で最後とのこと。 最後になりますが、映画「グリーン家の惨劇」が見たい! --- (2020-4-21追記) クリスティ再読さまが映画のアドレスを教えてくださってることに昨日気づいて早速みてみました。怪しいロシアのサイトですが…(なかなか面白そうなのがアップされてます) さて映画の内容ですが、全編字幕なしの英語のみ、なのでセリフは2、3割の理解です。でも冒頭の感じに顕著なのですがサイレント映画の演出っぽい感じが残ってて映像に語らせるテクニックが上手、しかも大体の内容は原作を読んでるのであーあの場面だな、とわかりやすい映画でした。今、1924年ごろのハメットを読んでるので映像資料としてもぴったり。確かに原作のエッセンスを過不足なく嵌め込んだ上手い脚本だと思います。俳優も良い感じ。銃が良く見えないのが唯一の不満。(←注目ポイントはそこかい!) まーハメットが観たら絵空事で楽しいね、と切り捨てられるような内容でしょうけど… こーゆー古い映画の需要ってあんまり無いのかなあ。私は今の殺伐とした映画よりずっと面白いと思うのですが… クリスティ再読さま、情報ありがとうございました! |
No.29 | 6点 | レッドキング | |
(2018/06/26 20:36登録) この「グリーン家殺人事件」と「アクロイド殺し」「Yの悲劇」「陰獣・孤島の鬼」「ドグラ・マグラ」「虚無への供物」・・・これらは中学生の頃から今に至るまで何回かの引っ越しを経た後でも廃棄することなく古本状態で本箱に残されいる。(ま 「ドグラ・マグラ」なんて実際に読んだのは二十歳すぎてからだけど米倉斉加年のあの表紙画本が本箱にあるだけで何か貴重な物持ってる気がしてた) いまさらこの「グリーン」を評価する人なんていないだろうけれども やっぱり自分にとっては思い出の一冊で「本格物とはかくあるべし真犯人はこうあるべし」の基本書のような一冊 だから2点ほどオマケつき |
No.28 | 4点 | クリスティ再読 | |
(2018/01/05 23:30登録) こりゃもうダメだろ..というのが正直な感想。小説として長さを支え切れていない感じである。「僧正」だとホラーの要素がストーリーの牽引力になっていたのに比して、本作だとゴシックロマンスの要素がちゃんと生かし切れていない印象が強い。 先行する初期2作が何やかんや言って20年代アメリカの「今」を描写していたのがイイところなのだが、本作はおそらく出版時点でもブルジョア家庭の内幕小説めいた「退嬰的」な内容だったように感じる。退嬰は退嬰なりの魅力があるのだが、ヴァン・ダインの筆力だとそこらはちゃんと描き切れていないのでは。「僧正」と比較してもキャラの印象が薄いと思うよ。執筆時点でも「古臭い」ものだったのを、日本では何か勘違いして評価したのではなかろうか? 古典ミステリのガジェットが羅列されている以上の内容を、評者は見つけられなかった。「家モノ」の過大評価は日本特有のものだろうなぁ。 あと言うとヴァン・ダインというかライトというか、著者はスティーグリッツの同志みたいな人なのに、絵画と写真を比較してグリーン家を論じるあたり、話の狙いはわかるんだけど、写真論として保守的でつまらないのはどうしたものか.... ちなみに評者はついでなので映画も見たのだが、評判が悪いはずの映画の方が、「ゴシック」としてのグリーン家をちゃんと「絵」にできていて、それはそれで面白く観れた。挿絵にあるグリーン家の外観図を、映画はちゃんと立体的なセットにしているのが感動的。これが本当にゴシックの雰囲気が濃厚に出ている。原作のくだくだしい描写を簡潔に交通整理したシナリオは、決して不出来ではない。考えてみれば乱歩も正史も虫太郎もみんな観た映画なんだよね... 後記:弾十六さま、私が見たのはネットに上がってる英語版です。こんなのとっくにパブリックドメインなものですからね。ググるといくつか出ますよ。たとえば https://ok.ru/video/298376891043 でいかが。今見たら杉浦康平デザインの創元の旧カバーがないじゃん。僧正と色違いでオシャレなので、書影追加します。 |
No.27 | 6点 | いいちこ | |
(2017/01/06 11:50登録) 多くの方が指摘されているとおり、本作の「意外な犯人」が現代の読者にとって非常にわかりやすいのは事実だが、これは本作の着想があまりにも優れていたが故に、多くの作品に模倣されたことの何よりの証左と言えるだろう。 ところが、登場人物を皆殺しにするプロットを選択したことで、この着想を十全に活かせておらず、この点でまず大きな減点。 また、犯人を隠蔽するトリックにおいて、物理的な手段のみならず、化学的な手段も使用しているが、これは失敗してしまう蓋然性が高く、犯行プロセスのフィージビリティと合理性の点から、やはり大きな減点。 その他、足跡、拳銃消失、物理的なアリバイトリックは凡庸な水準で、最終盤のドライブに見られるように、登場人物の行動が合理性を欠く点は否めない。 以上を総合して6点の下位 |
No.26 | 8点 | makomako | |
(2016/09/13 21:22登録) この作品を始めて読んだのは40年以上前のことです。当時グリーン家は異常な人物ばかりが出てきてアメリカ人というのはこんなにゆがんだやつばかりなのだろうかと、アメリカに対する幻想が打ち砕かれてしまった(我々の世代ではアメリカは素晴らしいと教え込まれていたのです)。さらに探偵のファイロヴァンスも本筋に入る前にやたらに長い余談を話し続けたり、変な人物のおかしな話を面白がって聞いていたり、相当に変なやつといった印象でした。 今回再読しようと古い本を探し出したらあまりに汚いのできっと新訳が出ているに違いないと新たに購入したところ、なんと40年前と全く同じ。古い本は活字も小さく老眼になり始めているものにとってはせめて最近の本のように活字だけでも大きくならないものかと思っていたのですが、なんと92版という骨董品的新品本でした。 推理小説ファンとなって久しい現在の感想としては40年前よりはるかに面白かった。つぎつぎと事件が起こり、登場人物がどんどん殺されてしまい最後には犯人の資格があるのは2人ぐらいとなってしまうのですが、でもやっぱり真相は分からない。犯人はさすがに見当はつくのですがね。 こういった古典的小説を読んでみると現在大量に発行されるものはだいぶん薄味であることがよく分かります。 しばらくいろんな古典的小説を読みなおしてみようかな。 |
No.25 | 9点 | 青い車 | |
(2016/01/28 19:55登録) 館ものというのは今やかなり古風なガジェットですが、その礎の本作はミステリ好きなら必ず通るべき道でしょう。トリックやロジックの弱さは否めませんが、グリーン家の面々が次々と殺されていくサスペンスの構築は現在でも光るものがあり、『僧正』と並び模倣が多く生まれたその偉大さは誰にも否定できない筈です。最大の弱点は現代の読者からは犯人が見え見えなところですが、この「意外な犯人」のパターンも本作が確立したものであることを考慮したら9点は堅いと思います。 |
No.24 | 8点 | ロマン | |
(2015/10/20 14:38登録) この推理小説は「犯人は誰か、何のために」を論ずる物ではない。閉鎖的な家で登場人物が次々殺されていく中で分かってしまうから。重要なのは如何にしてヴァンスが矛盾なく推理して行くか、その過程が面白い。謎を残さず全て解明していくので読者は読み終わった後すっきりする。86年前書かれたとは思えない面白さがある。 |
No.23 | 9点 | 蟷螂の斧 | |
(2015/05/27 10:13登録) 国内外の作品に多大な影響を与えた古典の名作(1928)。国内では「殺人鬼1931」「黒死館殺人事件1934」「本陣殺人事件1946」「犬神家の一族1951」、海外では「Yの悲劇1933」「そして誰もいなくなった1939」などへの影響。最近では、影響とは言えないが、十角館でのヴァンの登場やガリレオの口癖「実に面白い」など(これは探偵ヴァンスの口癖)。 本作は、「東西ミステリーベスト100(1985版)」で22位にランクインしていたが、「同2012版」ではランク外となってしまっている。もはや歴史的価値さえも評価されなくなってきたのか?・・・。本作に対抗?して書かれたとされる「Yの悲劇」は相変わらず人気が高いのだが。しかし、ヴァン・ダインもエラリー・クインも英米では全く人気がないのは残念なこと。「史上最高の推理小説100冊」(英1990)、「史上最高のミステリー小説100冊}(米1995)では2人のランクイン作品はゼロです(涙)。 本作を高評価とするのは歴史的意義(館もの、連続殺人など)はもちろんですが、犯人設定の巧みさですね。序盤でかなりヒントを与え、犯人であろうと予想される人物を中盤で犯人ではないのでは?と覆す方法(現在では常套手段となっている)。前に読んでいるので、なんとなく犯人は見当がついていたのですが、それでも迷わされました(苦笑)。事件を絵になぞらえ「この絵には『狂った同族主義』という題をつける」などと表現したりし、美術への造詣が深いところを垣間見せています。この辺の薀蓄は趣味と一致していたので許せる!(笑)。 トリックについては、『予審判事便覧』(ハンス・グロス)~実際に起こった事件集~からとっている。この方法はフェアでリスペクトしたい。なお、コナン・ドイルの短編「○○橋」もこの便覧を参考にしている。 二人の評論を見つけたので参考に。「・・・最上級の作家と見られるのはアガサ・クリスチイ、次にヴァン・ダイン、次にクイーンというような順で、クリスチイは諸作概して全部フェアであり、ヴァン・ダインでは「グリーン家」が頭抜けており、クイーンでは「Yの悲劇」が彼の作なら(江戸川氏からおうかがいした)これは探偵小説史の最高峰たる名作だ。・・・」(坂口安吾氏) 「・・・『Yの悲劇』『ブラウン神父の童心』『グリーン家殺人事件』『曲った蝶番』『毒入りチョコレート事件』これらの五作品はすべて、私が中学生の時に読んだものだ。ミステリを読むのが面白くてならなかった蜜月時代のなつかしさが、選択の際にいくらか影響していることは否定しはしない。だけど、どの作品もまぎれもなく傑作である。・・・」(有栖川有栖氏) |
No.22 | 10点 | 斎藤警部 | |
(2015/05/18 12:41登録) 中学に入った頃、ちょっと背伸びで創元推理文庫の本作(緑の手の美しい表紙)に手を伸ばしました。 犯人も、あのトリックもかなり早い段階でピンと来てしまいましたが、そんな事より物語のあの独特な暗闇の中で白光りするようなムードが強烈で、一種のサスペンスというか恐怖小説としてすっかり魅了されてしまいました。今でもあの屋敷の中のイメージはしっかり頭の中に残っています。もしグリーン家を再現したテーマパーク乃至アトラクションがあったら是非訪れてみたいですね。 さて中学に入ったばかりの当時、家にあったりした大人向けの推理小説を(小学校の図書館で借りた子供向けの延長で)何冊か読んでいましたがなんだか小難しくて、惰性でゆっくり斜め読み(!)する感じで結局ストーリーもよく分からないままおしまい、という消化不良が多かったのですが、、初めて自分で選んで買った二冊(もう片方はカナリヤ)は実に読みやすく面白く、読んで大満足だった事をよく憶えています。 美しい記憶頼りの高評価の様で恐縮ですが、やはり10点(9.8超)を付けざるを得ません。 (カナリヤはもうちょっと低いけど) |
No.21 | 6点 | アイス・コーヒー | |
(2014/11/25 20:09登録) 前二作を上回る好評を持って迎えられた長編第三作。異常な憎しみ合いの渦中にあるグリーン家で起こる連続殺人事件という設定は、「ベンスン」「カナリヤ」とは打って変わった派手さがある。また、それらの作品に比べると「心理学的探偵法」の要素は薄れているものの、本格としての完成度は維持されている。 1928年の作品だからやむを得ないが、正直「意外な犯人」の設定もさして驚きはなく、その他のトリックも現代人の視点からするとかなりお粗末。その代り犯人があるものをトリックに利用した事の方が衝撃だった(後述)。 犯人に至る推理はまずまずというか、あれだけ容疑者が絞られると多少ゴリ押しでも何とかなってしまうのが残念。一方、ある場所でのみ聞こえた銃声の件など、犯行が起こったときの奇妙な状況についてのホワイダニットは中々だった。 後の世に伝えていきたい作品ではある。 (ネタバレ) 犯人が「過去の犯罪で使われたトリックを使う」という真相によって、トリックの使いまわしを開き直ったのは衝撃的だった。 |
No.20 | 6点 | ミステリ初心者 | |
(2014/07/20 14:00登録) ネタバレがあります グリーン家内の雰囲気が、よくある旧家もののようでおもしろく読みやすかったです。元祖なのかな?。横溝物のような。 第3の殺人で機械仕掛けの殺人があったり、最後らへんで医者の判断が誤っていたり、その辺が不満です。 |
No.19 | 7点 | 初老人 | |
(2014/04/18 05:45登録) 僧正殺人事件と比べると、やはり数段落ちるといった印象。それでも当時は作品全体を覆う暗く陰鬱な雰囲気に浸る事が出来、意外な犯人に驚かされもした。只使われている足跡トリックやアリバイトリックが、借り物で二番煎じな感は否めない。 |
No.18 | 6点 | ボナンザ | |
(2014/04/09 14:57登録) 今では使い古された手だが、最初に読んだときは意外だった。 グリーン家の雰囲気も相まって個人的には僧正よりも好きだ。 |
No.17 | 8点 | メルカトル | |
(2013/03/14 22:27登録) 『僧正殺人事件』と共にヴァン・ダインの代表作とされる名作と呼んでも差し支えないのではないだろうか。 まさに古き良き時代の、端正な推理小説と言った風情である。 多くの手掛かりを列挙し、そこから事件を検証し真犯人に迫る推理法は圧巻と言えよう。そこには作者の矜持が色濃く表れているような気さえする。 しかし、ヴァン・ダインと言えばこの2作が超有名だが、残りの作品との出来の差が激しすぎるきらいがあり、読者は注意が必要だ。 なので、正直他の作品を敢えて読む必要性はかなり薄いと言わざるを得ないと思う。『僧正』と『グリーン家』が抜きんでているためであるというべきなのだろうが。 |
No.16 | 2点 | mini | |
(2011/09/20 09:53登録) 近日に国書刊行会からジョン・ラフリー著「別名S.S.ヴァン・ダイン~ファイロ・ヴァンスを創造した男」が刊行される MWA評論賞を受賞したヴァン・ダインに関する評伝である 今では本国アメリカでも忘れられた作家で、私も特に思い入れのある作家では全然なくてごく一部の作品しか読んでいない しかしながら人気の凋落振りは悲しいが、ミステリー史において一時期には一世風靡し人気の絶頂期が有ったのも事実として認めざるを得ない 日本で妙なマニア人気が有るロジャー・スカーレットみたいな、終始マイナー作家だったわけでは無いのだ 現代では歴史に埋没した作家ではあっても、ヴァン・ダインがそれまで優勢だった英国勢に対抗出来た初のアメリカ勢として歴史的には重要作家の1人であったのは間違いない ヴァン・ダインと言えば一般的に2トップと見なされているのが「グリーン家」と「僧正」だろう 世の各種ネット書評でも当サイトに於いても、「グリーン家」のまあまあな評価に比べて「僧正」の評価が相対的に低いのが目立つ しかし私は断然「僧正」支持派なのである 元来が私はお屋敷もの館ものという舞台設定に何の魅力も感じない読者だし様式美というものが嫌いなので、「グリーン家」の館ものという舞台に魅かれない 強いて言えば館ものという舞台をカントリーハウスから大都会のど真ん中に持ってきたという目新しさが手柄かもしれないが 中心トリックがホームズの某短編のパクリなのは大目に見るとしても、作者が過去のミステリー小説を読破して方法論を理解していた事からも、全体的に古典的なスタイルの総集編と言うか、従来の手法を纏め上げただけという感は否めない、要するに古臭いのだ 新しい何かを提案しているという意味では内容的にはイマイチでもまだ「ベンスン」あたりの方が歴史的意義があるし、「僧正」には現代ミステリーに通じる要素が有る 「僧正」の評価出来る理由については「僧正」書評時に譲るが、私にとってはヴァン・ダインの代表作と言ったら「グリーン家」なんかじゃなくて絶対に「僧正」なんである |
No.15 | 7点 | HORNET | |
(2011/01/10 18:21登録) 「二十則」に代表されるように,純粋な謎解きを信条としていたヴァン・ダインだけあって,不要な伏線も少なく推理主体の,ミステリファンにとってはうれしい作品でした。バウチャーの批判などもあり,賛否両論のある作者ですが,私は少なくとも「推理」小説ファンの欲を現在になっても満たしてくれる作風は好きです。何よりも,作者自身が,(作家になった経緯を聞くにいたっても)ミステリのこの上ない愛好家なのだな,と感じます。 本作品については,「手がかりになるいかなる言動も見過ごすまい」と思って読んだので,ファイロ・バンスのペダンティックな物言いを読み続けるのに結構疲れてしまいました。最後にあんなふうに事件のあらましを整理してくれるくだりがあると分かっていれば,適当に読み流したのに・・・。そこが,評価がイマイチ挙がらない原因です。 まぁしかし,こんな探偵もまた,現代には登場しにくいキャラだと思うと,改めて本格黄金期のよさに浸ってしまいますね。 |