home

ミステリの祭典

login
モルグ街の殺人

作家 エドガー・アラン・ポー
出版日1951年08月
平均点6.21点
書評数24人

No.24 8点 みりん
(2024/05/23 17:22登録)
さーて、最古典のお勉強の時間といくか…
『盗まれた手紙』はなんとも言えなかったし、コチラもどうせ今読んだらそこまでだよなと思いながら、重い腰を上げて読み始めると、、、Ohhh!密室殺人!!そして衝撃の犯人!!! 探偵小説の雛形を考案しただけじゃなくて、ハナからこんなにネジの外れたとんでもミステリを生み出していたのか。すごい、すごすぎるぞポー。
『オリエント』も『アクロイド』も『ABC』もネタバレされたのに、なぜこの作品だけ露知らず読めたのかが不思議である。
始祖への敬意 +1

※ちなみに本サイトのどっかの書評(失念)で、「『モルグ街の殺人』が史上初の推理小説ってのは間違いの可能性がある」みたいな感じのことを読んだ記憶があります。wikipediaみた感じ、E.T.A.ホフマンの『スキュデリ嬢』(1819年)がよく俎上に載せられるらしい。

No.23 5点 じきる
(2020/10/28 12:36登録)
今読んで面白いかは別にして、探偵小説の礎を築いた功績は大きい。

No.22 4点 SU
(2020/09/05 19:13登録)
説明のつかないような事柄に説明がついたように思いこませようとする。探偵の直観による、単なるまぐれ当たりに過ぎないものを推理だという。その典型的な例。歴史的意義を認めプラス1点。  
何か面白いミステリ小説を教えてといわれ、これをすすめる人はいないだろう。

No.21 10点 小原庄助
(2020/04/02 09:55登録)
史上初の名探偵は、オーギュスト・デュパン。世界ミステリ史上に輝く、世界最初のミステリ。ここにミステリの全てがある。
不可思議な犯罪が起こり、警察がお手上げ状態のところに、超人的頭脳の名探偵が登場し、その推理力で解決に導くというミステリのストーリーの基本パターンを確立しただけではなく、「名探偵の活躍を、その友人が記述する」というスタイルも確立させた。
このスタイルを多くの作家が真似をしている。その元祖がポーであることを忘れてはならない。文句なしの10点である。

No.20 7点 ◇・・
(2020/03/07 16:14登録)
記念すべき最初の探偵小説であるが、これは密室殺人の最初であるとか意外な犯人の最初であるともされている。同時に真相があまりフェアでないことも。
しかし注意深く読んでいくと、何が起こったかをデュパンの推理と分析によって再現していく手際はすでに完成されたもので、これは今でも評価に値するし、問題になる窓の施錠の問題も、何故その点が見落とされたかということが丁寧に書かれているので、密室がフェアなかたちで提示されていることがわかる。

No.19 6点 弾十六
(2019/11/24 00:11登録)
ここは短篇単独のコーナーですね。(この作品のような「重要な」短篇には単独登録がふさわしいと思います。でも重要って人それぞれですから…)
初出はGraham’s Magazine 1841年4月号。私は創元文庫の『ポオ小説全集3』(丸谷 才一 訳)で読みました。デュパンのセリフの調子がときどき変てこ。親しげな口調と丁寧な口調が入り混じって落ち着きません。青空文庫の佐々木直次郎訳も参照。(直次郎訳のほうが遥かに安定してます。)
Baudelaireがポオを絶賛し、その仏訳も仏文学界やガボリオに大きな影響を与ました。ただしフランスでの初出はla revue socialiste “La Démocratie pacifique” 1847-1-31号のIsabelle Meunier訳。ボードレールの仏訳はポオ小説集Histoires extraordinaires(Michel Lévy Frères 1856)の巻頭に収録。(仏wiki) その前に雑誌掲載あるかもですが未確認。
冒頭、分析力とは?の命題が論じられ、謎めいたデュパンが紹介されます。いきなり考えを言い当てられる「ぼく」の驚きと種明かしの描写は印象的な名場面ですね。(無理筋の推理ですけど。) 分析(=推理)について意識的に書いてるのが「推理」小説の始祖とされる所以です。
ところで私はずっと語り手「ぼく」はフランス人だと思ってましたが、今回読んでみて、異邦人(米国人?)という可能性を感じました。(自己紹介が「18**年の春、それから夏の一時期、ぼくはパリに滞在していて…」「ある目的があってパリにいた」しか書いてないのでフランス人とは限らない) Burton R. Pollinの説も英米人説ですが、初めて会った船員の挨拶good evening(仏訳bonsoir)一言だけで「ちょっぴりヌーフシャフテルなまり」があるのに気づくほどフランス語に堪能なのをみると、やっぱりフランス人という設定か。
新聞記事で事件を知る、という場面があり、やはり探偵小説は新聞の直系の子供です。デュパンの推理自体は貧弱で勘と幸運の賜物ですが、謎の設定自体は不気味さと意外性に満ちています。合理的な解決?が謎に比べて弱いのが大きな欠点ですね。(これは探偵小説の本質的な弱点か)
以下トリビア。原文はWebのPoeMuseumより。今回はフランスが舞台だし訳者がボードレールだし、ということでその仏訳(Gutenberg)も参照してみました。{ }内が仏訳です。Burton R. Pollinの評論The Ingenious Web Unravelled(1977)は調査が行き届いてて面白く、参照した箇所は[BRP]と表示。
作中時間は、センセーショナルに事件を報道する新聞記事から考えて、安売り新聞の先駆けLa Presseの発行(1836)以降の話だと思われます。(米国の安売り新聞は1833年創刊The Sun[New York]が最初。) ヴィドックへの言及があるので少なくとも1828年(回想録出版)以降は確定? ◆Mary Rogers事件は1841年だが『マリー・ロジェ』を読むと6月22日(日曜日)(Sunday June the twenty-second, 18—)という記述があり、直近は1834年。この約二年(about two years)前に「モルグ街の惨劇」なので1832年の事件?閏年の飛びを無視して計算すれば『マリー・ロジェ』1839年、『モルグ街』1837年で丁度良さげだが… (ポオは1年に曜日が1日ずつずれる事しか認識してなかったのか。)
現在価値は、手持ちのが仏消費者物価指数は1902以降有効だったので、金基準1841/1902(1.00797倍)&仏消費者物価指数基準1902/2019(2630倍)で合計2651倍、1フラン=4.042ユーロ=489円で換算。
p10 ホイスト(Whist): 2人×2チーム戦のトリック・テイキング・ゲーム。ブリッジ(1890年代以降)の前身。英国では今でも人気らしい。チーム戦のトランプゲームってやった経験がありません。プライヴェートでは個別主義を好む日本人向きじゃないですね。
p10 ホイルの法則(the rules of Hoyle): Edmond Hoyle(1672-1769) カードゲームのルールブックとして有名。according to Hoyle(=the rules)の慣用句あり。A Short Treatise on the Game of Whist(1742)が最初の教則本で後から色々付け加えてMr. Hoyle's Treatises of Whist, Quadrille, Piquet, Chess and Back-Gammon(1748)となった。そのホイスト本(1742 無料公開あり)を見ると「基本的ルール」(Laws 14条)の他に初心者などが上手にやるためのコツ(Rules 初心者用37、その他8)も書いてるのでrulesの適訳は「教え、教則」か。次の’the book’は「教則本」と訳せば良いですね。なお1862年以降はHenry Jones作Cavendish On Whistが権威となったようです。
p12 名門の出(of an illustrious family)… さまざまの不幸な事件(a variety of untoward events)… 貧苦(poverty)…: 政治体制がナポレオン帝政、復古王政、七月王政と目まぐるしく変動した19世紀前半。1830年以降はブルジョワジー支配の立憲君主制(国王ルイ=フィリップ)で貴族制の廃止、世襲制の廃止、産業革命の進行という時代。まーそれでもデュパンには働かずに食える資産が残ってるのですから上等ですね。
p13 当時ぼくはある目的があってパリにいた(Seeking in Paris the objects I then sought){Cherchant dans Paris certains objets qui faisaient mon unique étude}: the objects(定冠詞+複数形)なので前段の稀覯本探しを指してるのか。仏訳だと「(研究用の)ある物」な感じ。でもここで言ってるのは「読書範囲が広くて、想像力に富んだデュパンとの交際は役に立つ」なので本探しのことじゃないかな。試訳「当時ぼくが探していたものをパリで探すには」(直次郎訳: そのころ、私は求めるものがあってパリで捜していた。) [BRP]はsome mysteroius “objects” never explainedとしています。定冠詞でも前述を受けるとは限らないのか。
p14 腕を組み合って(arm and arm){bras dessus bras dessous}: デュパンとぼくが夜の散歩へ。(みっちょんさんのWeb「シャーロック・ホームズの世界」にこの件の詳細が既に書かれてました。)
p18◆『截石法』(ステレオトミー)('stereotomy'){stéréotomieステレオトミ}: 当然、原子(atomyアトミー){atomesアトム}を連想するって… するか? 仏訳では更に遠くなってます。 [BRP]ポオの南部方言では-otomyとatomyの発音は同じなので「当然に」連想が行くのだろう。
p19『ガゼット・デ・トリビューノー』の夕刊(an evening edition of the “Gazette des Tribunaux”){l'édition du soir de la Gazette des tribunaux}: 調べるとGazette des tribunaux - journal de jurisprudence et des débats judiciaires (1825-1955)という日刊紙が実在しWebで1851-6-30号などが見られます。副題が「判例と法的議論」なので、お堅い専門紙かな?(現物の内容までは未確認。) 小説のは「夕刊」であり普通の新聞な感じなのでポオのつもりでは「架空の新聞」でしょう。[BRP]nonexistent evening edition of a real newspaper。
p19 サン・ロック区(Quartier St. Roch): Saint-Roch教会のあたりか。◆直次郎訳も同様だがパリ20区(1859年以前は12区)と紛らわしいので「地区」が良いと思う。現実には12区を四つに分ける48 quartierの中にSt. Rochという名は存在しない。この辺りの当時のquartier名はPalais-Royal(2区に所属)。
‪p20 ナポレオン銀貨が4枚(four Napoleons){‬quatre napoléons}: 直次郎訳では「ナポレオン金貨」銀貨(1/4、1/2、1、2、5フラン)も金貨(20、40フラン)もあるけど、ただのNapoleonなら20フラン金貨の様な気が…‪ 20フラン金貨は直径21mm、6.45g、鋳造1802-1815。[BRP]では1812年から流通としています。共和暦12年(=1803年)を誤解?‬
‪p20 金貨で‬四千フラン近く(nearly four thousand francs in gold): 196万円。全部20フラン金貨なら200枚、全部40フラン金貨なら100枚で、重さはいずれも1290g。
‪p21 〔事件(アフェール)という言葉は、フランスではまだ、わが国でのような軽薄な意味になっていなかった。〕(‬[The word 'affaire' has not yet, in France, that levity of import which it conveys with us]) 仏訳ではばっさりカット。これを「ぼく」の挿入句と見るなら語り手は米国人だが… (編集者が入れた注釈のようにも見えますね) フランス語affaireに「情事」という含みは無い。[BRP]「ぼく」が挿入したとして英国人・米国人説の根拠の一つ。デュパンをフランス人(Frenchman)呼ばわりしてるのがもう一つの根拠。
‪p21 洗濯女(‬laundress){blanchisseuse}: 何となくパリっぽい。米国にもいたのかな?
‪p25 ‬犯行現場は四階、扉は内側から鍵(p19)、窓も閉まってる、煙突からの脱出も不可能。立派な密室です。ところで私室に鍵をかける習慣はいつ頃からなのだろう。The first serious attempt to improve the security of the lock was made in 1778 in England. Robert Barron patented a double-acting tumbler lock. (ThoughtCo. The History of Locksより) これ以降なんだろうか。大デュマの小説には結構、私室に鍵をかけるシーンが多い。作中時間は17世紀、これは流石になさそうに感じるけど、大デュマが書いてた時代(1840年代)には鍵のかかる私室は当たり前になってた模様。
‪p28 パリの警察は、俊敏だという評判が高いけれども(‬The Parisian police, so much extolled for acumen…): 過大評価を戒めています。
‪p28 例えばヴィドックは… (‬Vidocq, for example, was a good guesser, and a persevering man. But, without educated thought, he erred continually by the very intensity of his investigations): 無学で行き当たりばったり、と散々です。
‪p29 「…調べるのは楽しいことだろうよ」(楽しいという言葉は、こんな場合に使うのは変だと思った…)(“... ‬An inquiry will afford us amusement,” (I thought this an odd term... )){Une enquête nous procurera de l'amusement (je trouvai cette expression bizarre...)}: ゲームとしての探偵小説ですね。
‪p29 警視総監のG**(‬G--, the Prefect of Police){G..., le préfet de police}: ボードレールは警視総監(préfet de police de Paris)の在任期間が1831-10-15〜1836-9-10であったHenri Joseph Gisquet(1792-1866)のことだと受け取りました。1820-1841の間でGがつくのは他にGuy Delavau(在任期間December 20, 1821 – January 6, 1828)、Louis Gaspard Amédée Girod de l'Ain(August 1 – November 7, 1830)、Gabriel Delessert(September 10, 1836 – February 24, 1848)だけ。(wiki ”Paris Police Prefecture”)
‪p29 リシュリュー街とサン・ロック街の間:‬ Rue de Richelieu‪(1633?-1793及び1806以降)、‬Rue Saint-Roch‪(1630-1744及び1879以降) (以上仏wiki) ‬通りの名前は政変などで結構変わっており、当時サン・ロック街は正式には存在しない。でも一世紀にわたる長い歴史があるので現在のサン・ロック街(当時はrue du Dauphin)が元の名で呼ばれ続けていても不思議じゃない。Google Map(本当に便利。昔はミシュラン地図で調べるくらいしか方法がなかった…)で見ると、両通りは平行に走っており、現在、間には小路が12本程度あります。[BRP] 1836年の地図ではRue St. RochはRue Neuve St. Rochとなっている。モルグ街と思われるあたりの当時の地図をよく見ると、裏路地があり裏窓があるような建物は無い。(全て通りに面していて中庭も無い。) モルグ街の裏側はパリではなくフィラデルフィアみたいな作りだ。
‪p30 ぼくはそれをほうって置くことにしていた(ジュ・レ・メナジュエイ)---どうも英語にはぴったりした言い廻しがない(‬Fe les menageais --for this phrase there is no English equivalent){je les ménageais (car ce mot n'a pas d'équivalent en anglais)}: フランス語を交えて、それっぽく言ったつもりがスペルミス(これは誤植かも)とアクサン抜け。発音はメナジェ(仏語は二重母音なし。例外Noëlノエルなど、二つの母音を別々に発音する記号トレマ付き。) ◆[BRP]ではこの愚痴も英米人説の根拠としてるが、英訳する際につい漏らしたという解釈も可では?
‪p32 ほら、ピストルだ(‬Here are pistols){Voici des pistolets}‪: 1830年代は先込めパーカッションピストルの時代です。pistol France 1830 percussionで結構オシャレなデザインあり。複数形なので決闘用のペア・セットかも。‬
‪p32 君には、[ピストルの]使い方はよく判っているはずだ(‬we both know how to use them){nous savons tous deux à quoi ils servent}: なんで丸谷訳は「君」だけなのか。(直次郎訳: … 二人とも知っているはずだ。)
p32 ぼくは… ピストルを受け取った(I took the pistols){Je pris les pistolets}: 何故か二つとも受け取ってる。後の方でデュパンがピストルを取り出すのですが…(後述p48&50)
p35 超自然的な出来事なんて信じやしない(neither of us believe in praeternatural events): 怪奇小説と探偵小説が分化するポイント。
p35 秘密の出口(secret issues){issue secrète}: 密室殺人にはつきもの。
p36 煙突全体としては大きな猫でも通れない(chimneys... will not admit, throughout their extent, the body of a large cat): 煙突からは明らかに脱出不可能。
p36 頑丈な釘… 差込んであった(a very stout nail was found fitted therein)… 秘密のバネ(p37 A concealed spring): 窓がバネ錠で閉まるのに、さらに釘で止めてある。こういう構造は普通だったのか。(隙間風に対する病的な恐れか。)
p39 フェラード(ferrades): 仏訳も同じ語。ところがフランス語で鎧戸や窓の意味で使われる用語には見当たらないという。◆[BRP]より。
p45 キュヴィエの本(Cuvier): もちろん「野蛮きわまる残忍さ(the wild ferocity)」などという記述は実在しない。[BRP] 実物の1835年版ではa rather gentle…
p46◆『ル・モンド』(Le Monde): ここでは海運業専門の新聞とありますが、当時パリでLe Monde(日刊紙)が1836-1837の1年間(通算350号)だけ刊行されてます。内容は不明。続いて、短命だったパリの日刊紙が二つ、Le Monde - journal des faits contemporains et des intérêts matérieが1845年に5号だけ、Le Monde - revue des mœurs contemporaines : littérature, arts, sciences, types, portraits, caractères, fantaisieが1855年に2号だけ刊行。その後、1860年から1896年まで続いた日刊紙Le Monde (Paris)が刊行されています。なお現在も続く有名な高級紙Le Mondeは1944-12-19創刊。以上、フランス国立図書館gallica.bnf.frによる。(資料のデジタル化が進んでて新聞などのバックナンバーを無料公開、羨ましい!)
p47 マルタ島独特の結び方(this knot… is peculiar to the Maltese): ghoqda(マルタ語でknot)がWeb検索で引っかかりましたが、特殊な結び方かは不明。
p48 ピストルを持ちたまえ(Be ready,… with your pistols){Apprêtez-vous, … prenez vos pistolets}: 「ぼく」への指示。相変わらず複数形。ボードレール訳では二人の会話はお互いにvous(vouvoyer)。親しいtutoyerではありません。◆readyはパーカッションキャップを嵌めるなど、撃発可能な準備をしたまえ、という意味かも。(仏訳は「準備して…手に持って」)
p49 ヌーフシャフテルなまり(somewhat Neufchatelish){légèrement bâtardé de suisse}: ヌーフシャテル(丸谷訳は「フ」が余分)はスイスのフランス側の地方でフランス語圏。wiki「Swiss French」によると用語に違い(70=septanteなど)はあるが、発音はほとんど変わらないらしい。
p50 ピストルを取出すと(He then drew a pistol from his bosom){Il tira alors un pistolet de son sein}: そしてデュパンは「懐中から(直次郎訳、丸谷訳では欠)」第三のピストルを取り出した‼︎
なんスかこれ‪?と思ったけど、当時は銃身が複数ある特殊銃を除いてピストルは単発仕様。(リボルバーが大量生産されたのはColt Walkerモデル1847が初。) なのでピストル2丁あっても2発しか続けて発射できないという訳。用心のため複数のピストルを用意したのでしょう。‬

ついでに乱歩『D坂』での引用「君はポオの『ル・モルグ』やルルーの『黄色の部屋』などの材料になった、あのパリーの Rose Delacourt 事件を知っているでしょう」で一躍有名になったローズ・デラクール事件について。乱歩が資料にしたのはOriginality in Murder [part 1 of 2] by George R. Sims (Strand 1915-10) part 2 は翌月号に発表。実在の事件を扱ったエッセイで、最後にDelacourt事件が紹介されます。
1800年代、パリ、モンマルトルのアパルトマン最上階の一室で、ローズ・デラクールという若い女性が殺されていた。発見したのは管理人と警察。扉も窓も内側からカギがかけられ、煙突はどんなに細い人でも通り抜けることができない状況。仰向けに寝ていたローズの胸にはナイフがマットレスまで貫通しており非常に強い力によるものと思われた。
乱歩の世界(rampo-world.com)「いちかわ」さんの2009年の投稿に詳しいのですが、元ネタはどうやらWashington Post 1912-10-3の匿名記事で、ポオ『モルグ街』から思いついたものらしい。こんな魅力的な事件なのに、どこを探しても、正しい記録が出てこないのですから…
‪ ‬
‪(最後に決定打を)‬
‪これは[BRP]ネタなのですが「人間の体液」ですよね。この説明がつかないと決定的にありえない事件です… (とは言え、私も言われるまで全く気づきませんでした。)‬

‪(追記2019-11-25、上で◆以下は同日追記したもの)‬
‪1932年の映画(主演ベラ・ルゴシ)をちょっと拝見。設定は1845年で服装などがそれっぽい。見世物小屋に進化論風の絵が描かれてるけど『種の起源』(1859)はまだ。‬
‪(Wiki「ダーウィン」に次の記載を発見。「‬1838年3月に動物園で*******が初めて公開されたとき、その子どもに似た振る舞いに注目した。」これ英国の例だけど米国でも評判になったのか。)

(追記2019-12-8)
『マリー・ロジェ』の日付と曜日が正確だとすると『モルグ街』は1832年になっちゃう、と上で書きましたけど、1832年のパリでは春から夏にかけて大事件が発生してました。1万8千人(住民の2.3%!)が死んだというコレラ大流行です。なので1832年説はありえないでしょう。当時、コレラの原因は瘴気説(下水未整備だったパリでは汚水が街路を汚してた)が有力。『モルグ街』で窓を厳重に閉めてたのは悪い空気を防ぐためか?

No.18 10点 モンケ
(2019/08/13 00:21登録)
他に点数の付けようがないです。
※ラーメンの鬼と言われた故・佐野実が「大勝軒」山岸一雄のラーメンは何点か?と訊かれて、
「ばかやろう!相手は神様だぞ。神様に点数付けられるか!」と答えてましたが、それに近いです。

No.17 9点 mediocrity
(2019/07/24 05:59登録)
推理小説を読み始める前にネタバレを食らっていた4作品のうちの1つ。残りの3つは『オリエント急行の殺人』の犯人と『占星術殺人事件』の有名トリックと『獄門島』の「きちがい」ネタ。これは少ない方なのかな?

さて本作品だが、シャーロックホームズよりかなり読みにくい。冒頭から新聞記事が出てくるまでは特に。色々な人の「何語が聞こえたか」の証言の食い違いが興味深い。世界最初の推理小説の犯人がアレだというのは、冷静に考えるととんでもない。推理の過程も想像以上にしっかりしていて驚き。あの犯人だから、もっと冗談めいた小説なのだと思っていた。

No.16 5点 ねここねこ男爵
(2017/11/04 21:52登録)
今の評価基準だと厳しい点数になるでしょう。
読むとミステリの型は誕生と同時に完成していたことが分かります。探偵の変人設定もw

ポーはこの作品をもってミステリの生みの親と言われますが、子は親の想像とは違った道を歩んだような気がします。
手品に例えるなら、ポーは手品により起こる不可思議な奇怪な現象を表現したかったのであり、タネはそれが実現できるものであればそれでよかった(本作の犯人がアレですし)。
ところが後続の作品は現象よりもタネ自体、もしくはタネ明かしの独創性や緻密さに重点が置かれるようになっています。現象に怪奇や独創性は必ずしも求められなくなっています。手段の目的化というやつですね。
もし前者の道を歩んでいたらどうなっていただろうなぁ…と想像しながら読むと楽しいです。歴史的価値を含めて必読でしょう。

個人的に本体よりも前フリの「チェスはより聡明な指し手ではなくより注意深い指し手が勝つ」がお気に入りです。

No.15 10点 斎藤警部
(2016/11/01 23:48登録)
黒光りの宝石ですよね。 

ネタなど知ってるつもりで読んだら、ブッ飛ばされましたよ。

No.14 7点 文生
(2015/03/06 18:30登録)
奇怪な事件、名探偵の登場、精緻なロジック、意外な結末。
世界最初のミステリにしてミステリのエッセンスがすべてつまっているという恐るべき作品で後世に与えた影響は計り知れない。
現代の読者からすれば、本格ミステリーとして純粋に楽しむことはできないかもしれないが、その物語から滲み出る独特の味わいは時を経ても色あせていない。
また、ポーの非ミステリーの代表作である『黒猫』や『アッシャー家の崩壊』などと読み比べてみるのも一興だろう。

No.13 4点 バード
(2013/08/14 14:06登録)
内容に関しては意外な展開ではあったものの別に面白みも無くふーんといったもの、言い方は悪くなるがまあ都合のいい解釈や展開だった。

だから現代の作品との相対評価では低評価とせざるをえないが、ミステリの原点の作品、やはり抑えておかなくてはならないとは思う。古典ミステリの教科書と思って読破しました。

No.12 5点 songpu gu
(2013/05/11 19:31登録)
世界初の推理物、初の探偵デュパンの登場と、何とも初物尽くしの本作ですが、そういったことより推理への組み立てを確立し、それを発展させてくれた作者エドガー・アラン・ポーの貢献を自分に思い起こさせてくれる一作です。

トリックについての感想はちょっとフェアじゃない気もしますけど、犯人が犯人なんで、今なら愛嬌めいたものも感じて可笑しくないでしょう。まあどっちにしてもミステリ好きなら当然一度は読むべきものかと個人的には思います。

No.11 4点 ムラ
(2013/03/02 11:08登録)
想像していたよりも本格的な推理小説で面白かった
主人公の考え方も好き
この作品がミステリ界に与えた影響はとても点数に出来るものじゃないが,純粋に面白さだけみて点数つけるとこんな感じ

No.10 6点 蟷螂の斧
(2012/12/07 20:18登録)
(東西ベスト100・既読分)友人から「ポー全集」を借り読んだのが始まり。こんなのありなの?が第一印象。発表年代など知らなっかたので致し方ない。推理小説の元祖とのことで+2

No.9 5点 あびびび
(2011/09/04 15:17登録)
死体が暖炉から煙突の奥に詰め込まれ、頭皮からはがれた髪の毛の束が散らばっていた…という所から犯人は想像できた。

しかし、これが世界最初のミステリ小説とされるなら、なかなか凝った演出ではないか。「黒猫」はおぞましいだけの小説だったが、こちらは十分に楽しめた。

No.8 5点 HORNET
(2011/02/13 14:42登録)
 世界初の推理小説としてあまりにも有名で「犯人」も知っているので,デュパンがどのように推理を進めるのか,最初の推理小説とはどんなものなのか,が興味の中心でした。
 各証言が箇条書きのように並べられ,それを付き合わせたデュパンの推理の部分がそのあとに続く構成ですが,余分な描写や場面展開がなく,ある意味読みやすく感じました。(冒頭のデュパンの人となりを紹介する部分はその逆ですが・・・しかし「探偵」という人物が登場する初めての物語だったことを思うとこういうものでしょう)。
 事件と「犯人」だけを聞くと,「何だそりゃ」と笑ってしまいますが,読んでみると犯人特定のための筋道だてた推理はちゃんとされていて,納得もしました。

No.7 7点 frontsan
(2010/12/16 14:49登録)
最近の複雑で凝り過ぎた作品より、シンプルで面白かった。

No.6 5点 江守森江
(2010/03/27 08:15登録)
再読するまで「歴史的価値以外に評価すべき点が無く、現在視点では陳腐極まりない」と書評し「盗まれた手紙」の書評と対比させる予定だったのだが・・・・・。
確かに、犯人像なんか知れ渡り、その部分だけをピックアップすると陳腐ではあるが、そこに至る過程は正しく本格探偵小説の原点だった。
それでも読んで面白い(私的評価の第一義)か?と問われれば微妙としか言えない。
私的な評価基準では、書かれた時代を考慮はするが「現在視点で読んでも面白みや‘納得’があるか」に重点を置いている。
この作品の意義や影響について知りたい方は沢山評論があるので自分で勉強して下さい(私的に評論を幾つか読んだが疲弊しただけに終わった)
※ボヤキ
趣味で楽しむ為の読書が学生時代に強いられた勉強みたいでは堪らない。
それでも息子に「勉強しなさい」と言ってしまう自分がイヤになる。

No.5 6点 dei
(2008/11/24 18:50登録)
多くの古典作品と同じように今読むとそれほどの面白さはない
が、ホームズなど、歴代の「名探偵」に影響を与えたと考えながら読むと
なんとなく懐かしい気持ちになれた(笑)

24中の書評を表示しています 1 - 20