home

ミステリの祭典

login
songpu guさんの登録情報
平均点:5.69点 書評数:13件

プロフィール| 書評

No.13 6点 獄門島
横溝正史
(2013/06/20 19:08登録)
舞台設定や醸し出す雰囲気がなかなか素晴らしい。海賊と流人の末裔たちの閉鎖された孤島「獄門島」、こういった序盤から独特の情緒を感じさせてくれる岡山物が、金田一シリーズの中でも一際高い評価である道理が本作でも窺えます。
トリックについては連続殺人になったのが個々の殺人事件が偶然成立した結果であったり、見立てについても直接にはあまり意味も成さなかったりとちょっと冴えなかったです。金田一についても自らが悔やんでいたように見落とし部分が随分多く、戦友の血を吐くような訴えが何も意味を成さなかった(姉妹を1人も助けられなかった)のは残念ですね。
そんななか怖かったのが殺人の動機です、これはちょっと奇怪過ぎます(結局無駄でしたし・・)。


No.12 5点 海野十三集 三人の双生児
海野十三
(2013/06/19 21:16登録)
前半部は良かったが段々気分が悪くなる作品。ですから当然のごとく、後味についても余りよろしくないです。まあ探偵役が実験と称して命を弄んだり、詐欺行為に及んだ似非私立探偵が最期まで罰せられず、その過程が事後報告だけって言うのも自分は受け入れられないですね。(盛り上がる箇所なので勿体無い気もします)

タイトルについても読んでいけばすぐ謎が解けるかと思います。


No.11 6点 ABC殺人事件
アガサ・クリスティー
(2013/06/12 19:12登録)
今や「ABCパターン」とまで言われるほどの名トリックを生んだことで知られるクリスティの著作。しかし現在では、後続作でこれをなぞられた出来物も多く、今日ではあまり新鮮さを感じはしないかもしれません。ただ登場人物や伏線が単純さからであることから物語を容易に把握しやすく楽しめ、今では入門書としての一面をも兼ねてるかと思います。今後もクリスティのトリックを応用した良作が多く出ると思いますけど、どれだけ出たとしても本作品の評価を下げる理由にはならないでしょうし、それが彼女の名声をより高めるものになるかと思います。


No.10 5点 本因坊殺人事件
内田康夫
(2013/06/06 00:20登録)
意外性はそれ程ありませんでしたけれど、囲碁界を舞台とした背景には独特の雰囲気はありました。まあ読みやすさについても概ね良好です。
本作においては名探偵浅見光彦の登場はありませんが、以後のシリーズ外観についても窺える一作になるかと思います。


No.9 7点 八つ墓村
横溝正史
(2013/05/31 18:07登録)
津山30人殺しを題材とした横溝正史の長編作。戦国期に不実な裏切りで殺され8つの墓に葬られた落人の偽りの呪いを装い、次々と殺害される多治見家縁の人々、そして謎の見立てメモ。黄金伝説に纏わる長大な鍾乳洞と、そこにありしかつての母の過去と思い出。複雑な人間関係を紐解くうち結末に向け段々と明らかになる犯人の動機・・。

この作品における主人公は語り部でもある寺田辰弥であって、金田一はほとんど脇役であり、その出番の少なさからも、シリーズ作として捉えれば淋しい限り。ただし本作は事件の怪奇性やスリル、日本家屋を舞台とした独特の雰囲気など作者の本領が発揮され、小説自体は本格ミステリと言うに遠く及ばなくとも、余人には真似の出来ない、いかにも著者らしい作風を感じさせてくれる一作かと思います。


No.8 5点 密閉教室
法月綸太郎
(2013/05/28 17:05登録)
状況証拠に頼ることも多く、真犯人が二転三転、曖昧な結末に終わった最後。探偵役が道化と化し締まらないラスト。
と言った感じで、しっくりこない部分が少なくありませんでしたけれど、デビュー物として考えれば悪くないかと思います。ただタイトルから「密室殺人」を当然連想しますけど、密閉絡みのトリックはほとんどおまけみたいなもので、あまりそちらに期待して読まないほうが良いかと思います。


No.7 6点 怪奇探偵小説名作選〈7〉蘭郁二郎集-魔像
蘭郁二郎
(2013/05/16 17:54登録)
作者は海野十三と並ぶ科学空想物の先駆け的な人物。そして本作は偏執的な写真愛好家、水木舜一郎の歪んだ趣味を描いたスリラー調の作品。

水木の行動に怖さもありましたが、彼が求職中の主人公寺田へ親切にも自らの助手として住処を申し出、好きな撮影生活を二人で送りながら最終的に彼を騙し、被写体としての彼の身体を求めたという結末には、前振り等から至極当然な感もあります。それより彼の以前から撮りたかった願望が腐乱した男女の遺体だということのほうが衝撃で、それも少しづつ腐っていく姿を日々ゆっくりと撮影したいとか、そういった非人間性の方により恐怖を覚えます。彼のこういった作品への執着もまた凄まじく、モデルとして優れていれば何の躊躇いも無く行商人の女を殺めたり、旧友を陥れたり、短いながらもその種の彼の狂気には読むべき価値があるかと思います。


No.6 7点 黒猫館の殺人
綾辻行人
(2013/05/14 21:16登録)
話の時系列は相変わらずです。まあ慣れれば何てことは無いですけれど独特です。今回は「鏡の中の住人」という博士自身自らを評した言葉がキーワードになって、館のトリック解明の手がかりになりましたが、「どじそん」についてはちょっと失念して気付きませんでした。ただ謎が思っていた以上に壮大なもので、月並みな感想で申し訳ないですが、いつも通り驚かされました。

少し短かい出来物で不満もありますけど、全体的に読みやすかったのも好印象だったかと思います。


No.5 5点 四つの署名
アーサー・コナン・ドイル
(2013/05/13 21:23登録)
「緋色の研究」に続くドイルの長編で、さるインドの王族が有していた宝石箱を巡るといった第2作。

ホ-ムズ自ら変装してオーロラ号の所在を突き止めたりテムズ川での追跡などから、推理物というより冒険小説といった趣がある。事件解決までに偶然性もそこそこ強く、犯人の1人が木材の防腐剤として用いられるクレオソート油にたまたま足を浸してしまうことで捜索が可能になるやら、彼らの追跡が困難になった波止場で義足の男の情報を得たり。何かここぞと言うところでは推理と言うより、そういった思いがけない無いところから犯人へと道筋がみえるといった記憶でした。(真相についても検証なしの自白がほとんどだったと)
それより事件後のワトスンとモースタン嬢の結婚。当時のアジア人に対する「醜い」やら「あさましい」やら偏見、というか当時の英国人の国民意識など、本編よりも側面的なことで印象に残る一作だったかと思います。


No.4 6点 火星の魔術師
蘭郁二郎
(2013/05/11 19:58登録)
当時としてはちょっと倒錯的で彼らしい科学物といった趣の一作です。とはいえ染色体について述べる箇所などは空想をテーマとしつつも著者らしいものでした。
ここでいう「著者らしい出来」とは実現可能な部分を残すといった手法にあるかと思います。元々著者が科学小説へと転向したのが、国力=科学力と信じ、将来未来を担う子供達にこれからの重要な国の担い手として平易に科学知識に興味をもつてもらうことができるようと執筆し始めたことにあり、当時としては発想が突拍子のようなものでも、現実的な路線をあまり踏み外さない、ファンタジー化しないといったことがそれに該当するかと思います。

本作はそんな著者の中でも「火星」という惑星を想定し、全てが巨大化したといった、なかなかユーモラスとスリラーっぽさを兼ね備えた科学物になるかと思います。


No.3 5点 モルグ街の殺人
エドガー・アラン・ポー
(2013/05/11 19:31登録)
世界初の推理物、初の探偵デュパンの登場と、何とも初物尽くしの本作ですが、そういったことより推理への組み立てを確立し、それを発展させてくれた作者エドガー・アラン・ポーの貢献を自分に思い起こさせてくれる一作です。

トリックについての感想はちょっとフェアじゃない気もしますけど、犯人が犯人なんで、今なら愛嬌めいたものも感じて可笑しくないでしょう。まあどっちにしてもミステリ好きなら当然一度は読むべきものかと個人的には思います。


No.2 6点 心霊探偵八雲1/赤い瞳は知っている
神永学
(2013/05/11 01:40登録)
死者の魂を見ることが出来るという「赤い瞳」を身に宿した探偵、斉藤八雲を主人公としたシリーズ第1巻。シリーズでは珍しく「開かずの間」から「死者からの伝言」までの3つの短編で構成され、友人からの勧めで大学B塔裏手にあるプレハブ小屋において、ヒロイン春香と邂逅する場面から物語は始まります。

この八雲、まあ愛想無くて、ふてぶてしく、猫のように丸まって学校の施設で寝起きしているという変わったお方ですけど、当初から困っている人をみたら放っておけないといった美質を持ちます。そして回を重ねるごとに彼の「人となり」そして「知られざる過去」が明るみになっていくことになります。

話としては一応ミステリが指標なんでしょうけど、超自然的な力「死者からの伝言」を事件解決に用いるとのことで純粋な意味では推理物ではないかもしれません。しかし八雲の真の武器がそういった特別な力でなく、彼のその推理力と洞察力にあることが、項を重ねるごとに読めば分かっていくかと思います。まあ本作は一応その原点になるでしょう。


No.1 5点 吸血鬼
江戸川乱歩
(2013/05/11 01:05登録)
乱歩の長編物ですが、文代と人形の取替えや、天井から短剣を投げ、胸に2度とも上手く刺して絶命させる類のトリックには少し粗さを感じざるを得ません。
それに犯行現場での隠し部屋や抜け穴などが2・3多用されている点や、宝石事件の完全な後付けなどは推理物としてそれほど感心できるものではないですね。まあ文代さんと小林少年の活躍は多少楽しめましたけど。

13レコード表示中です 書評