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ミステリの祭典

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刺青殺人事件
神津恭介シリーズ

作家 高木彬光
出版日1951年01月
平均点7.74点
書評数38人

No.18 7点 E-BANKER
(2012/01/09 21:43登録)
江戸川乱歩の推薦を受け、1948年に発表された作者の伝説的処女長編。
名探偵、神津恭介の初登場や、日本家屋での密室殺人など様々な形容詞を伴って語られる作品ですが、今回はハルキ文庫版にて読了。

~東大医学部標本室に残された100体もの刺青を施された人皮。中でもひときわ目を引くのは、極彩色に彩られた妖術師「大蛇丸」
の妖艶かつ不気味に浮かび上がる刺青であった。そして、この刺青こそかつてそれを巡っての、怪しくも狂おしい一連の殺人事件を引き起こしたものに他ならなかったのだ。巧緻に仕組まれた密室の謎が紡ぎ出す奇怪な惨劇に名探偵・神津恭介が挑む。日本推理小説史上に燦然と輝く不朽の名作!~

今さら私なんぞが書評するべき作品でもないとは思いますが・・・
読了してみて、やはり歴史的な意義の大きい作品であることは間違いと再認識させられました。
もちろん、2012年の現在から見れば、齟齬や不満点もあるにはあるのですが、それを指摘するのは野暮というものでしょう。

(とは言いつつも・・・)
まず「密室」ですが、浴室を舞台にした機械的(初歩的だが)トリック。説明文を読んで一応は納得したが、正直感心はしなかった。まぁこれについては、多くの方が指摘しているとおり、物理的効果を狙ったものではなく、「心理的効果」を狙った密室なのだというロジックでまずは納得。
個人的には、本作一番の白眉は「密室」ではなく、「胴体のない死体」とアリバイトリックとの連動性だと思います。
更に、「双子」と「刺青」という要素も絡んでくるわけですし、ラストで神津によって明かされる「逆転の発想」が後世に与えた影響は大きいと思うなぁ・・・
(個人的には、島田荘司「出雲伝説7/8」のトリックを思い出してしまった・・・)
ヴァンダインの向こうを張った「心理試験」が、囲碁と将棋というのも日本的で何か好感を持った。

「刺青」やら「三すくみ」といった不気味な装飾を施して煙に巻いていますが、真犯人の造形を含め、本作の骨子或いはプロットは非常にシンプルなものではないかと思います。
いずれにしても、紹介文のとおり、日本推理小説史上に欠かすことのできない作品という評価は否定できないでしょう。

No.17 4点 好兵衛
(2011/04/23 20:07登録)
人形~の作者だったのと、
ここのサイトの評価がいいので期待して読みました。
(昭和国民文学全集20大下宇陀児 高木彬光集)

刺青の描写や文体が綺麗で、
殺害現場も奇抜、古い作品ですが文体も読みやすいです。
高木氏特有のヒントもおしみなく、
掲示されて居るところもよいですね。

なので、ヒントを細かく読んでいくと
大体の大本の謎は解けていきます。
犯人以外は。

作者の挑戦状はとてもありがたくて好きなのですが。
作者の挑戦状を仰々しくつけて本格を仰ぐのであれば、
ヒントの提示は、
読者と探偵は公平でなくてはならないはずです。
でないと、挑戦状にならないんです。

解答部分で実は〇〇だったという新事実、
よって犯人は〇〇。
では、真剣に挑戦状前で止めて、推理した読者は
どうなるのでしょうか?
後、一人称の地の文が
アンフェアすれすれかな。

それでいいのであれば、苦労して謎を作っている
推理小説家が報われません。

欲をいえば、浴室の地図や模写をもっと細かくして欲しいです

トリックや話が奇抜なだけに大変に残念。

No.16 8点 VOLKS
(2011/04/03 15:30登録)
60年も前に書かれた作品とは思えない。
今でも十分に楽しめる「心理的密室トリック」凄い。

No.15 8点 isurrender
(2010/12/01 02:37登録)
心理密室トリックは見事に騙されました
国内古典の名作ですね

No.14 7点 kanamori
(2010/07/29 18:37登録)
現在の読者だと、硬質な文体とか大袈裟に読者を煽る表現が鼻につくかもしれませんが、純粋な密室ものの本格ミステリとしてよく出来ていると思います。
心理的密室のトリックが一番のキモだと思いますが、機械的密室のカラクリも当時はそれなりに面白いと思いました。

No.13 5点 seiryuu
(2010/07/16 18:18登録)
刺青の描写が出てくるたび なんだか体が痛くなる気がした。
逆転の発想のトリックは面白かったです。

No.12 9点 メルカトル
(2010/05/04 00:09登録)
私をミステリの世界に引きずり込んだ、個人的に記念碑的作品。
本当は満点付けたいところだが、今読み返したらどうかと考えると、この点数に。

それにしても、「心理の密室」は見事なトリック。

No.11 7点 STAR
(2010/02/18 11:07登録)
賞を争った坂口安吾の「不連続殺人事件」よりはおもしろいと思います。
刺青の説明などは長すぎると思います。

No.10 7点 itokin
(2009/12/12 19:39登録)
長編では処女作と聞く、その為か文章の硬さとか、さらに恐怖が先にあるとかの表現が気になるが、トリックと連続殺人の必然性など構成は一級品で良くできている。

No.9 8点
(2009/09/04 21:26登録)
現在、本作は1953年に約2倍の長さにまで大幅加筆訂正した版だけでなく、乱歩に送ったというオリジナル版も改めて出版されているそうですが、皆さんはどちらを読まれているのでしょうか。私自身が読んだ加筆訂正版は、次作『能面殺人事件』に比べると作家として円熟味が出てきてからの手直しだけに、小説としての充実度は高くなっていると思います。
やはり高木彬光が最初期に最も影響を受けたのはヴァン・ダインからなのでしょう。『カナリヤ殺人事件』と同じ性格判定が取り入れられています。機械的密室構成方法も原理はヴァン・ダインの別作品そのままですが、戸に鍵穴などのすきまがない状況をどう切り抜けるかのアイディアが光ります。しかし、作中で神津恭介も指摘するとおり、その後のアイディアの方がメインなところが、本書の最大の読みどころでしょう。
近年のミステリではだましの定番になっているあるトリックも、すでに使われています。

No.8 9点 だい様
(2009/06/03 22:38登録)
神津恭介シリーズ第1弾

双子の姉妹、不可能といわれた日本家屋での密室殺人、そして刺青の存在とこの雰囲気すごくいいです。
物理トリックと心理トリックの兼ね合いがまたお見事。

No.7 9点 江守森江
(2009/05/22 09:48登録)
神津の後に神津なし。
これが安吾の「不連続〜」に賞レースで負けた作品とは思えない(初稿のデキは不明)
機械的密室に関しては読者挑戦前にネタ割りしてるので問題ない。
心理的密室や作風が神津物らしさ全開で素晴らしい。
※増補改稿された光風社版(約三百ページ)を読んだ。

No.6 8点 白い風
(2009/05/10 23:40登録)
神津恭介デヴュー作ですね。
全然神津さんが出てこないのでドキドキしちゃいましたけどね(笑)
まずはテーマの”刺青”がいい、完全に私好みでした。
内容は「密室&アリバイトリック」だけど、作中神津が言っているように心理トリックですね。
単純な「密室&アリバイトリック」でなく、動機等を含め大いに楽しめました。

No.5 8点 測量ボ-イ
(2009/05/04 10:18登録)
スト-リ-や謎解きの過程は申し分なく面白かったです。
ただ、密室トリックの解明はできれば図に書いて説明し
て欲しいです(文章だけで説明されるの苦手です・・)。

No.4 9点 E
(2009/03/28 11:17登録)
初の高木彬光氏作品。
密室トリックは自分にとって驚愕度が突出。
刺青を巡る殺意と奸計。
ある写真に隠された真実などは読み応え有り。

No.3 8点 dei
(2009/03/12 20:47登録)
人形~に続いて2作目の高木彬光作品。
こちらも人形にはやや劣るが、それはあちらのレベルが高すぎるだけで、
この作品も十二分に良い作品でした。

呼んでソンなし。

No.2 8点 あい
(2008/04/27 17:58登録)
この当時にしてこの作品のできは素晴らしい。今読めばトリックは分かりやすいが・・・

No.1 8点 vivi
(2008/03/05 01:01登録)
高木作品の初期の傑作ですね。
坂口安吾氏の『不連続殺人事件』と賞を争ったわけですし・・・

天才・神津恭介の推理をバシバシ楽しめるのが読みどころです。
密室トリックに関しては、機械的云々言われてますが、
これはその部分だけがメインでなくて、
刺青に関する心理的なトリックもあるのでレベルは高いです。

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