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ミステリの祭典

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月の扉
座間味くんシリーズ

作家 石持浅海
出版日2003年08月
平均点6.05点
書評数22人

No.22 8点 虫暮部
(2024/11/08 12:38登録)
 ハイジャックのストーリーと不可能犯罪の見事な融合。この作者は悪巧みする側を書く方が筆が冴えるんじゃない? 動機にも、それに伴う結末にも合点が行った。ただ、密室のトリックはイマイチ好みではない。

No.21 8点 zuso
(2023/12/30 22:23登録)
厳重な警戒下にあった空港で発生したハイジャック事件。
飛行機という閉鎖空間を舞台にし、緊迫した状況の中、機内のトイレで乗客の死体が発見される。誰がなぜ、どのようにして。
フーダニット、ホワイダニット、ハウダニットを一冊に凝縮した意欲作。

No.20 7点 よん
(2022/08/02 12:32登録)
ハイジャック+不可能犯罪、無名の探偵による息詰まる頭脳乱打戦に酩酊。閉鎖空間と謎の作り方のうまさが光る。実録犯罪ムードの描写部分とコントのような謎解きの過程がチグハグだが、舞台設定の独創性で欠点を吹き飛ばす勢いを感じた。
極めて精緻な偽の扉。しかもとても強固。細部まで細工され、きっちり騙される喜びを与えてくれる作品。

No.19 7点 パメル
(2021/12/18 09:09登録)
那覇空港二十時発羽田空港行 琉球航空第八便。3人の男女は、静かな決意を胸に搭乗手続きを終えた。仕込まれた刃、巻かれたテグス、飛ばない翼の中で起きる占拠と要求。
「師匠」を最初で最低の舞台に招くため、善人たちの闘いは始まる。だが、閉じていない密室のなかで「敵」が予期せざる死を迎えた時、シナリオは歪み名探偵は突然指名される。威信を懸ける国家、命を懸ける迷い人。悪意は殺意を駆逐し、罠は自らを証明する。論理は間に合うか。奇跡の扉が開くまで。
本書の優れたところは、トイレの殺人以外にもさまざまな謎を設定し、それを見事に解決している点である。例えば、事件の被害者がかつて石嶺らとトラブルを起こしていたり、キャンプで立ち直って人気歌手となった女性がこの便に乗り合わせていたり、といったご都合主義的な部分が出てくるが、その疑問に対する回答は抜かりなく用意されている。
また、ハイジャックされた機内で殺人を犯したのは発作的犯行だと推測できるが、そうすると空港の厳しい検査をすり抜けて刃物を持ち込んだ方法が分からない。一方、計画的なものだとすれば、逆にこのタイミングで実行した点が納得できないという議論もなされるが、そう言った細部に至るまで論理的に検証している点に好感が持てる。
クローズド・サークルでの犯人探しだけでなく、その状況から様々な謎を派生させ、その手際の良さには瞠目すべきところがある。極限状況での論理のアクロバティックがお見事。

No.18 8点 sophia
(2020/04/25 19:00登録)
再読です。超現実的な展開になるであろうことはタイトルが示していますし、本編を読み進めれば尚更なので私は問題ありませんでした。むしろそれと現実的な事件をどう融合させてくるのかを楽しみにしていましたので、よくやったと拍手を送りたいです。なかなかの衝撃的な結末ですよね。被害者クズ過ぎる。柿崎さん自分勝手過ぎる。座間味くんいい人過ぎる。

No.17 6点 メルカトル
(2019/04/18 22:25登録)
沖縄・那覇空港で、乗客240名を乗せた旅客機がハイジャックされた。犯行グループ3人の要求は、那覇警察署に留置されている彼らの「師匠」を空港まで「連れてくること」。ところが、機内のトイレで乗客の一人が死体となって発見され、事態は一変―。極限の閉鎖状況で、スリリングな犯人探しが始まる。各種ランキングで上位を占めた超話題作が、ついに文庫化。
『BOOK』データベースより。

サスペンスと本格、幻想(ロマンティシズム)小説が良い塩梅に融合されている印象。ハイジャックの実行犯と警察の心理戦だけでも結構読ませるのに、それにプラスして機内で殺人まで起こるという豪華さ。しかし、スケール感に対してショボすぎる不可能犯罪のトリックが肩透かしを食らわせます。ただ、座間味くんの緻密な推理と懇切丁寧な説明には頷かざるを得ません。これだけ親切に描写されては、ミステリファンばかりでなく、一般の読者をも引き込むのに十分な魅力を放っていると思います。

一方で師匠の存在感が薄く、その辺りもっと深堀していれば更に小説として深みが増したのではないでしょうか。タイトルにもなっている「月の扉」の意味もはっきりせず、なんとなくモヤモヤした感じが拭えません。
まあ、離着陸が麻痺した空港を舞台にしたシチュエーションはイマジネーションを掻き立てますし、それを月と対比すると一層美しさを増し、非常に絵になります。
何だかんだで面白かったです、最後のオチも好みの範疇ですしね。

No.16 7点 nukkam
(2016/07/06 09:13登録)
(ネタバレなしです) 2003年発表のミステリー第2作の本書はロマンチックなタイトルとは裏腹にハイジャッカーが子供を人質にとるという汚い犯罪で幕を開けます。犯人と人質、或いは犯人と警察との対決やアクションシーンを描いたハードボイルドではなく、飛行機内で起こった殺人をハイジャッカーの依頼でアマチュア探偵の座間味くんが(なかなかいい味出しています)殺人犯を探すという本格派推理小説です。舞台設定こそ奇抜ですが謎解きプロットは正統派スタイルで、ハイジャックものとしてはサスペンス不足だと思いますが本格派推理小説としてはこのぐらいが丁度いいと思います。登場人物の考え方には賛否両論あるでしょうが、幻想的で切ない締めくくりはタイトルにふさわしい幕切れを演出しています。惜しまれるのは(多くの方のご講評で指摘されているように)重要人物のはずの石嶺がほとんど存在感がないことでしょう。

No.15 4点 ボナンザ
(2016/03/05 11:38登録)
世評ほど評価はできなかった。
ラストの展開も投げやり。

No.14 6点 505
(2015/09/28 19:29登録)
佳作であり、意欲作。
ハイジャックものとしての緊張感には欠けるものの(この点では致命的)
、事件中に起きた事件として特殊なクローズドサークルという面は実験的であり、趣向を凝らしていると言えるだろう。
何故殺されたのか、というホワイ・ダニットの部分がハイジャック事件と巧妙に絡み、その真相が見え難くしているところがポイント。
誰が犯人なのかよりも、何故その手段を採ったのか。そこの塩梅が実に良い。
ハイジャックを起こした動機面は幻想的すぎて理解が追い付かないが、結末はとても筋が通っており、それ以外の終わらせ方は適当ではないと感じる。ハイジャックと密室を融合させた筆力は疑いの余地は無く、幻想的な話を加味することに成功している

No.13 7点 名探偵ジャパン
(2014/09/22 09:47登録)
キャンプの描写、犯人グループの要求が「釈放ではなく、ただ連れてくること」で、何をやりたいのかは大体分かってしまった。後はこの滅茶苦茶となってしまった状況にどう落とし前を付けるのかを興味に読み進めた。
「終章」はいらなかったかなと個人的に思う。あんなの書かれたら、犯人グループの犯行動機が(いい悪いということではなく、実現可能だったという意味で)肯定されたようなものではないか?「残念だったね、アクシデントさえなければ、大願成就できたね」と。ハイジャックしてでも手に入れたいものが、「確かにあった」のであれば、彼らの行動は無駄じゃなかった、と捉えることができてしまう。
金庫破りを計画実行した犯人がいる。途中で捕まってしまったが、金庫の中身が「本当に大金が入っていた」と「実は空だった」では、犯人の気持ちが違うと思う。「本当に大金があった」のであれば、捕まりはしたが、自分の行動には意味があった、もう少しで大金を手に出来たと、犯人は自己を正当化してしまうのではないだろうか。「犯罪を犯すだけの意味があった」と。本作の犯人なら、「ハイジャックをした意味は確かにあった」ということになる。それは、犯罪行為に価値を持たせてしまうことになるのではないだろうか。結局死亡者は犯人グループとそれに類する人に留まったが、子供を人質に捕られた親は。飛行機が飛ばなかったことで重要な約束、商談をキャンセルした人は。ハイジャックという環境に置かれて心身に悪影響が出た人もいるかもしれない。ずっと犯人に拘束され、多大なストレスを受けたであろう子供に対するエクスキューズが、教祖(あえてこう書く)が頭を撫でただけで解決、というのもちょっとどうかと思った。
フィクションに対してそんな目くじら立てるなと言われるかもしれないが、犯行動機が俗物的なものでなく、異常で危険なものであったため、神経質になったかもしれない。作品自体はハラハラしながら楽しんで読めた。

No.12 4点 ミステリ初心者
(2014/05/18 01:43登録)
ネタバレをしています。

 座間味君の怒涛の推理?が面白かったです。

 以下、好みではない点。
 殺人するつもりではなくて、偶然が絡んで殺しになった。
 ピタゴラスイッチ系密室(機械仕掛け?)だった。
 クローズドサークルのドキドキ感があんまり感じられなかった。設定は変わっていたけど、生かされているような気が、あんまりしなかった。
 犯人当てが、やや予想しやすかった。
 後味が、すこし、悪かった。

 裏表紙に、かなり評判がいい感じの紹介文が書いてありました。そのせいで、ハードルが上がってしまった感があります。

 

No.11 5点 yoneppi
(2011/12/27 20:49登録)
オチはいまいち納得いかないところもあったが、やっぱり死んでもらわないとどうしようもなかったんだろう。たまたま居合わせた座間味くんは凄すぎ。

No.10 6点 まさむね
(2011/07/16 22:09登録)
 当時各種ランキングで高評価だった作品。特殊な閉鎖空間におけるロジカルな推理とくれば,まさに作者の真骨頂。確かにその点は楽しめましたね。
 しかし,動機がイマイチ(あくまでも個人的見解)という,もう一つの作者の特徴も如実に表れています。「石嶺師匠」の凄さは良く分からないけど,登場人物のみならず作者までもが彼に頼りっぱなしでしたねぇ。

No.9 8点 E-BANKER
(2010/05/28 23:52登録)
作者の第2長編作品。
発刊当時「このミス」でも上位にランクインした作品。久しぶりに再読。
「ハイジャックに遭った航空機の中という特殊な閉鎖空間」で起こる不可思議な事件・・・作者得意のプロットです。
個人的には、座間味くんが展開するロジックたっぷりの推理に一番感心しました。
特に、最後のドンデン返しに関する「動機」については賛否両論あるでしょうねぇ・・・石嶺某に心酔しているからこその動機なのですが、その辺読者にはあまり共感できるように書かれていないため、ちょっと唐突感はありました。
評価はちょっと甘めかもしれませんが、作者の長所がよく出た良作じゃないかと思います。

No.8 5点 モグ風
(2010/03/27 23:01登録)
序盤から中盤にかけてのストーリー展開としてはいいと思うが
終盤のオチが納得できず、リアリティーがかけるというか作品を台無しにしてると思いました。

No.7 4点 江守森江
(2009/05/24 06:49登録)
設定の妙をとるか、本格ミステリをとるかで評価が割れる作品。
私は本格色重視の評価にした。
ラストが宗教的幻想小説になるのが受け付けない。

No.6 5点 結奈
(2009/05/19 15:40登録)
途中までは引き込まれて読めたのですが、
肝心な終盤(解決)が、個人的にはあまり好みではないというか、納得できなかった。

No.5 7点 りんちゃみ先輩
(2009/03/13 19:48登録)
ストーリー、トリックに納得いかない点は有ったのですが、なぜか引込まれるものがあった。この作家の本は初めて読んだのですが、今までにない雰囲気がある。SFのような感じ?他の作品も読んでいこうと感じました。ただし小説内の出来事とはいえ、この物語の動機は危険です・・絶対に美化してはいけない!

No.4 5点 abc1
(2008/12/29 13:06登録)
石嶺に、思わず読者も引き込まれていくような描写がされていたらよっと良かったと思います。それより気になったのはトイレの仕掛け。上手く行っても行かなくても、誰が仕掛けたかはミエミエなのに、犯人に保身の感情はなかったのでしょうか。

No.3 6点 こう
(2008/05/25 02:42登録)
 石持作品は初期長編四作は奇抜な舞台設定でかつ警察の介入のない閉じられた環境にして探偵役が犯人を暴くスタイルです。個人的には石持浅海は最近の作者の中では一番好きですがそもそも舞台設定と謎解きの雰囲気がそもそもあっていない点とロジックを解き明かすスタイルなのにどちらかというとこの人物はこうするはずだという確率論的な予想の様な推理になりがちで好き嫌いは分かれそうです。個人的にな謎解きの過程が昔ながらで非常に好きです。
 月の扉は犯行グループの性格設定、ハイジャックの動機など変だと思いますが石持ワールドと思えば不思議はないかなと思います。
 例によって読者が真相を当てるのは難しいと思いますが相変わらず読みやすく、探偵役に提示された謎の真相とそのプレゼンテーションに納得できる方にはこの本も含めてどれも面白いと思います。 

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