皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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メルカトルさん |
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平均点: 6.04点 | 書評数: 1835件 |
No.19 | 6点 | 叔母殺人事件 偽りの館- 折原一 | 2023/03/09 22:57 |
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煉瓦造りの洋館で起きた驚くべき殺人事件。屋敷には底意地の悪い実業家の女主人とその甥が住んでいた。叔母の財産を狙う甥の殺人計画はいかに練られていったのか。その手記を入手するため、取材者の“私”は屋敷に住み込み、事件を追体験していく―そして明かされる衝撃の真相!!名手の叙述ミステリー。
『BOOK』データベースより。 叔母を亡き者にしようと計画する甥の日記と、その事件があった館に住む「私」の一人称の交互で綴られる折原一の最も得意とするミステリの形。どうですか、如何にも何かの仕掛けがありそうでしょ。匂います、プンプンと。それを承知で何とか作者の目論見を見破ろうと目を皿のようにして、どこかに綻びがないものかと邪推しながら読み進めました。結果、惨敗でした。 まさか読み始めた辺りでこの様なカタストロフィを迎えようとは思ってもみませんでした。 登場人物はそれほど多くないのに、これだけの物語を作り上げてしまうのは流石だと思います。ただ、舞台が固定しているだけに閉塞感は禁じ得ませんが、それもこの人持ち味だと考えれば問題ないでしょう。 尚類似したタイトルの『叔父殺人事件』がありますが、それとは全く趣が違います。どちらがどうとも言えませんが、個人的には『叔父』の方が好きです。 |
No.18 | 5点 | 天井裏の散歩者 幸福荘殺人日記- 折原一 | 2020/08/18 22:11 |
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日本推理文壇の重鎮、小宮山泰三が住む2階建てモルタル造りの幸福荘。そこには古くから小宮山を慕う数多の作家志望の若者たちが集っていた―。幸運にも私はそんな幸福荘に入居することになったが、部屋に残されていた1枚のフロッピーが私を戦慄させた。創作なのか、現実なのか。〈文書1〉から〈文書6〉まで、6つの不思議な連作短編小説を読み終えた私は思わず天井を見上げて…。叙述トリックの名手が、九転十転のドンデン返しであなたに挑む、究極の叙述ミステリー。
『BOOK』データベースより。 叙述トリックの第一人者という事で、身構えながら読み進めましたが、入れ子構造の妙は認められるものの、段々飽きてきます。舞台が固定されて、文書6までの物語自体が意表を突くものではなく、似たような話が続くのにはちょっと辟易してしまいました。叙述トリックもかなりショボく、驚くようなものではありません。 結局フロッピーに記録された文書の作者は誰なのか、最後まではっきりせず煙に巻かれたような感じがしました。まあ私だけかもしれませんけど。 ユーモアを多分に含んだ読みやすい文体は好みです。しかし、それだけで評価を下す訳にはいきません。折原一ならば、もっと驚愕のミステリを書けるはず、それを期待した分裏切られた感が漂います。残念です。 |
No.17 | 5点 | 追悼者- 折原一 | 2019/11/29 22:03 |
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浅草の古びたアパートで発見された女の絞殺死体。被害者は大手旅行代理店のOLだが、夜になると街で男を誘っていたという。この事件に興味を抱いたノンフィクション作家が彼女の生い立ちを取材すると、その周辺に奇妙な事件が相次いで起きていたことが分かる。彼女を殺したのは誰か?その動機は?「騙りの魔術師」折原一が贈る究極のミステリー。
『BOOK』データベースより。 私は知りませんでしたが、実際に起きた所謂「東電OL事件」をモチーフにした作品らしいです。 久しぶりに、ああ、折原ワールドだなとの感慨を持ちました。丸の内OL殺害事件の被害者に関わりのあった知人友人恋人などの証言を基に、真犯人をあぶり出そうという狙いは分かりますが、正直関係者、容疑者が多すぎてとても犯人を絞り切れません。 まるで本物のノンフィクション小説の様な仕上がりですが、読み方が浅いせいかどうにも作者の仕掛けが見抜けず、真相が明らかになってもカタルシスは得られませんでした。ふーんそうなんだ、位しか感想が浮かびません。 個人的には期待していた程面白いとは思えませんでした。途中の叙述トリックはえっとなりましたが、まあ最近のミステリには珍しくもなく驚きも半分って感じ。暇潰しには良いですが、ちょっと長いかなあ。 |
No.16 | 8点 | 冤罪者- 折原一 | 2017/09/10 22:07 |
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これは凄い。文庫で600ページを超える長尺にもかかわらず、ダレることなく最後まで緊迫感を維持する、サスペンス小説の一級品になっています。まさしく折原一の代表作の一つと呼んで差し支えない傑作だと断言できます。
タイトルから受ける印象は、もしかして社会派?と思う人もおられるかもしれませんが、そうした一面もあるものの、それを逆手に取った反転劇と言えるでしょう。確かに登場人物は多めですが、決して混乱するような構成にはなっていないと思います。少なくとも私は頭の中できちんと整理できました。 果たして真相はいかなるものなのか、そして真犯人は誰なのかといった興味を抱きながら読み進めましたが、結局見事に騙されました。真相が明かされた時、久しぶりに寒気がしました。最初はこんなことがあっていいのかと思いましたが、よくよく考えても矛盾するところはなく、全体的に霧がかかったような物語の流れが、一気に晴れて雲一つない青空が広がるような感覚を覚えました。 【ネタバレ】 あとから思えば、真犯人はどことなく影が薄く、疑おうと思えば疑える人物でした。 また、動機の点で疑問に思った部分がありましたが、やや弱いかなという気がしないでもないですね。まあしかし、これだけの傑作の前では些事と言わざるを得ません。 |
No.15 | 4点 | 猿島館の殺人~モンキー・パズル~- 折原一 | 2017/03/01 22:05 |
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再読です。
最近面白そうな新刊がないなあと思いながら、何気なく本棚から引っ張り出してしまった一冊です。しかし、読み返す価値はなかったと言うしかありませんでした。 内容は全く忘れていたので、初読と変わらないにもかかわらず、あまりにも面白くなかった、折原一、こんな作家だったのか?残念です。 一応体裁は本格ミステリ、或いはユーモアミステリの形を取っていますが、正直バカミス以下の取るに足らない作品にしか、私には感じられません。連続殺人事件には違いありませんが、まあ何と言いますか、つぎはぎだらけでストーリーの流れというものが全く見受けられませんし。 「どくしゃへの挑戦」や古の海外ミステリなどのガジェットは、お遊び程度にしか思えず、また大して重要なポイントになっているわけでもありません。黒星警部は動物園から脱走したチンパンジーが犯人だと、本気で信じている様子だし、当然のごとく解決を担うのは一人しかいないことになります。その辺りの完全予定調和感もやや辟易してしまいます。 【ネタバレ】 やはり連続殺人事件というのは、単独犯に限りますね。4人もの死者を出しながら、いずれも違う人物による、殺意のない事故のようなものという真相は脱力ものですね。 |
No.14 | 5点 | グランドマンション- 折原一 | 2016/02/04 20:06 |
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久しぶりに折原氏を読んだが、相変わらず安定した低空飛行ぶりに安心した。
昨今の溢れかえるような叙述トリックに慣れた体質には、いささか刺激が弱すぎたようだ。アッと驚くような目新しさもなければ、裏技的な技巧も感じられない。悪く言えば使い古された叙述ものを総ざらいしたような印象で、世界が反転するような鮮やかさには程遠い。 自他ともに認めるボンクラ(クソ読者)の私には、入り乱れる人間関係や前後する時系列がやや煩雑であったことを認めなければならない。それもグランドマンション1号館という限られた舞台の中での群像劇なので、多分に窮屈な感が否めない。 それでも、単行本刊行の際に新たに加筆された『リセット』と『エピローグ』で、それまでの事件をサラリと振り返りながら読者の頭脳を整理させて、すべての短編を上手く繋げようとする努力は涙ぐましいものがあると思う(ちょっと大袈裟)。 |
No.13 | 6点 | 灰色の仮面- 折原一 | 2014/03/26 22:11 |
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再読です。
初期の作品だけに、活きの良さが際立っている。勿論叙述トリックも然りだし、プロットもらしくていいんじゃないかな。私はノベルズを読んだので、改訂版ということになるらしいが、単行本とは違った結末というか構成になっているとのこと。そちらの方は知らないが、改訂版はスッキリして分かりやすいので、その辺りに筆を入れ直したということだろうか。 また、本作は折原流のラブ・ストーリーとも言えると思う。それもあまり恋愛に免疫がない若者同士の感じがよく出ていて、初々しさがなかなか微笑ましい。そんなにうまくいくものか、という気がしないでもないが、気の合った二人ならまあアリなのかもね。 突出したものがないだけに高得点とはならなかったが、いかにも折原氏らしさが出ていて、初期の代表作の一つと言ってもいいかもしれない。 |
No.12 | 5点 | 鬼頭家の惨劇- 折原一 | 2014/03/04 22:15 |
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再読です。
ミステリとしては非常に弱い、ジャンル的にはサスペンスだろうか。でも、それなりに楽しめた。なんだか似たような作品があったような気もするが、気のせいなのか。 オチはどこにでも転がっている、使い古されたパターンだが、見抜けなかった。再読なのにね。やっぱり、読み直してみると分かるが、10年も前の作品だと、すっかり忘れている作品もあれば、ところどころ憶えているのもあったりする。その時の精神状態や、読んだ時の状況がかなり影響してくるものだと思うね。 本作は、結局何が書きたかったのかよく分からないが、取り敢えず氏独自の仄暗さや、シチュエーションを楽しめばいいのではなかろうか。 前に書かれている諸氏の評価が低いのは、折原という作家に対する期待の高さの表れなのだと解釈したい。 |
No.11 | 6点 | 仮面劇- 折原一 | 2014/01/14 22:34 |
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再読です。
第一幕から第三幕までの三部構成で繰り広げられるサスペンス。取り敢えず全編を通して、トリカブトによる保険金殺人事件を扱ったものだが、それぞれ少しずつ味付けが異なっており、スパイスがピリッと効いてはいるものの、やや小粒な印象を受ける作品である。 まあ折原氏らしい仕掛けが各所に見られて、ファンにとってはそれなりに楽しめるとは思う。みなさん、結構厳しい採点になっているけれど、私はそれほど悪くない出来だと感じた。 勘のいい読者には真相を見破るのはそれほど難しくはないかも知れないが、二度目なのに、私は騙されるべきところでもれなく綺麗に騙された。それにしても結構あっと驚くような仕掛けが施されているのに、これほど内容を忘れてしまうものだろうか。普通、読んでいる途中で、ここはこうなって、あれはああで、という具合に部分的にも思い出してくるものだが。 まあいい、それだけ初読の時同様楽しめたわけなので、良しとしよう。 |
No.10 | 5点 | 覆面作家- 折原一 | 2013/11/17 22:21 |
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再読です。
そうねえ、まあ折原氏らしいと言えばそうなんだろうが。どうもいまいちインパクトに欠けるというか、盛り上がらないんだよね。 トリックというか、覆面作家の正体を明かされても、はあそうですか、くらいの感慨しか浮かんでこなかった。そうだったのか!とか、一杯喰わされたとか、とにかくやられた感がほとんどないので、全体が霞んでしまうのだろうかね。 多重構造はお手の物の作家だから、今更驚かないし、こちらも身構えて読むから、この結果にはいささか拍子抜けしてしまう。 残念だが、読み返す必要もなかった。折原氏の作品の中でもどちらかというと精彩を欠いた仕上がりに思えてならない。 |
No.9 | 6点 | 倒錯のロンド- 折原一 | 2013/09/17 22:15 |
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再読です。
いかにも折原氏らしい作品。しかもまだ若い頃なので脂が乗っているのが筆の勢いで感じ取れる。 終盤で「これからどんでん返しが起こります」と宣言しているが、私にはそれ程のものかという印象だった。勿論叙述トリックが仕掛けられているのだが、これがそんなに鮮やかに決まっているとは言い難いと思う。 やられた感がないんだよね、ああそうなの、って感じで。 一番の謎は、この作品で作者が乱歩賞を受賞できる自信がどこから来ていたのかに尽きる。 どう考えても、こうした作風は乱歩賞にふさわしくないでしょう。 残念ながら、最終選考に残っただけでも大したものだと納得するしかないのではないだろうか。 まあでも、サクサク読めるし、それなりに楽しめるのは確か。ではあるが、ちょっと捻くりまわしすぎの感は否めない。 |
No.8 | 5点 | 水底の殺意- 折原一 | 2013/02/19 21:50 |
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再読です。
てっきり読んでいないと思っていた、私の中で完全に忘れ去られた作品。 殺人リストに次々と名前が書き加えられていくというアイディアはなかなか面白いと思うが、いかんせん内容が伴っていない感は否めない。 この作品に関しては、折原氏得意の叙述トリックもなりを潜めているようだし、サスペンスもいまひとつ効いていない気がする。 従って、折原ファンの一人として高得点は付けられない。 |
No.7 | 6点 | タイムカプセル- 折原一 | 2012/11/03 21:51 |
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栗橋北中3年A組の有志で卒業式の日に埋められたタイムカプセル。
その中には誰も会ったことのない不登校の不破勇の小説も入れられた。 そして10年後、謎の郵便配達人から「選ばれ死君たち」宛の不気味な案内状がメンバー達に次々に届く。 そこから様々な出来事を経てついにタイムカプセルが開かれるのだが・・・。 タイムカプセルが開かれるシーンは例によって袋とじになっており、興奮を盛り上げるのに一役買っているが、これはあってもなくてもどちらでも良かったような気がする。 全体的にスピード感は感じられないものの、サスペンスはそこそこ効いており、最後まで飽きることなく読めるように工夫されている。 メイン・トリックは手垢塗れのものだが、まんまと騙された。このトリックは注意深く読んでいれば、比較的簡単に見破れると思う。 ジュブナイルだが、大人の読者でも普通に楽しめる作品ではないだろうか。 |
No.6 | 6点 | 逃亡者- 折原一 | 2012/03/30 22:00 |
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ある理由から殺人を犯したごく普通の主婦の逃避行の物語。
前半から中盤にかけては、さながらトラベルミステリの様相を呈している。 全国各地を転々とし、整形手術を受け、顔を変えて逃げ続ける女の足跡を追う描写は、なかなかのサスペンス振りである。 ところが後半予想もしない展開が待ち受けていて、どんでん返しも鮮やかに決まっており、最近の折原氏の作品の中では出来は良い方ではないだろうか。 若干長いのが気になるが、決して退屈する事はない。 なかなか読ませてくれる。 |
No.5 | 5点 | 黒い森- 折原一 | 2011/01/21 23:52 |
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ミステリ・ツアーと称しての、樹海を彷徨う独特の雰囲気はなかなか楽しめた。
全体を覆う陰鬱なムードは、まさに折原氏の独壇場で、サスペンスとしての出来は悪くないと思う。 しかし、袋とじの必然性がまったくないと感じるのは、決して私だけではあるまい。 あまり意味のない、凝った構成はほとんどその効力を発揮していない。 全体的に内容が薄いし、ミステリとしてはかなり弱いと感じられるのは残念な限りだが、個人的にはそこそこ楽しめた。 |
No.4 | 6点 | 倒錯の死角−201号室の女−- 折原一 | 2010/10/22 23:30 |
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ダークな雰囲気、やや粘着質な文体、多重構造、叙述トリック、どれをとっても折原氏らしい作品である。
がしかし、期待通りの出来かと問われると、疑問視せざるを得ない。 また、最後の袋とじには全く必然性を感じない。 むしろ蛇足といってもよいかもしれない。 |
No.3 | 7点 | グッドバイ 叔父殺人事件- 折原一 | 2010/06/15 00:53 |
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この作品も折原ワールド全開とはいかず。
しかし特筆すべきはなんといっても、ワゴン車で集団自殺に向かう道行の圧倒的な緊迫感である。 まるで自分がその場にいるかのように錯覚させるほどの臨場感は、息詰まるほどであり、その描写力だけでこの点数を献上したい。 尚、叙述トリック及びオチはあまり期待しないほうが無難であろう。 |
No.2 | 6点 | 行方不明者- 折原一 | 2010/05/29 21:49 |
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折原ワールド全開とはいかないが、安定感はいつも通り。
しかし、その安心感が中だるみを生み出すのと、一家4人殺害事件の動機が弱すぎるのがマイナス要因となる。 全体を通して可もなく不可もなし、と言ったところ。 折原作品にしてはやや緊迫感に欠けるのは残念だが、並行する二つの事件を上手く収束しているのは流石である。 |
No.1 | 7点 | 疑惑- 折原一 | 2010/05/03 23:41 |
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らしさが随所に出ている短編集。
特に最初の二篇がお薦め。 やはり表題作が最も面白いが、それ以外にも捻りの効いた折原節が炸裂する。 ただし、叙述トリックは控えめ。 |