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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] スパイよ さらば ジャック・ウィンチェスター名義(のちにフリーマントル名義での新潮文庫版あり) |
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ブライアン・フリーマントル | 出版月: 1982年07月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
文藝春秋 1982年07月 |
新潮社 1989年11月 |
No.1 | 7点 | Tetchy | 2014/09/06 18:41 |
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フリーマントルがジャック・ウィンチェスター名義で発表した本書は実にフリーマントルらしい運命の皮肉に満ちたスパイ物語となった。
これは優秀な二重スパイがいかにして国にボロボロになるまで利用され、果てには国の秘密を保持するために抹殺される運命から逃れる物語である。 たった270ページしかない作品ながら、ここには物語巧者であるフリーマントルによるサプライズが複数用意されている。 まずは主人公ハートマンと息子デイヴィッドとの確執、そしてラインハルト殺害時にハートマンが思わず溢す妻ゲルダに対してのある思い、そしてもう1つは、いやこれは云わぬが華だろう。 妻を強制収容所で慰み者にされ、CIAとKGBに利用され、実の息子にも疎まれ、義理の娘にすら心を開かれず、本書の主人公フーゴ・ハートマンとは何とも報われない星の下に生まれた男だったのか。決して幸せになれない人がいる。そんな男に対するフリーマントルの筆は今回も容赦はなかった。 |