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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] 空白の記録 |
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ブライアン・フリーマントル | 出版月: 1988年02月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
新潮社 1988年02月 |
No.1 | 7点 | Tetchy | 2016/03/21 01:30 |
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今なおアメリカ人にとって歴史上の汚点とされるヴェトナム戦争には曰くつきの逸話が残されており、またソシオパス(人格障害者)を数多く生みだした暗い歴史を孕んだ、まだ記憶に新しい史実であり、調べれば調べるほどおぞましい話が出てくるのだろう。恐らく兵士の数だけ忌まわしい話があるに違いない。
そして通常このような戦争に隠された真実を暴く物語ならば、その作戦に関与していた生存者たちは口を閉ざし、頑なに秘密を守ろうとし、そのため全てを明るみに出そうとする主人公に対して危難が襲い掛かるのが定型だが、フリーマントルはそんな定石を踏まない。 なんと物語の中盤では孤児救出作戦に関わり、戦死したと思われた元グリーン・ベレー隊員4人はヴェトナムで捕虜として生存しているが判明し、その救出作戦にかつて同じ任務に就いていた生存者2人を採用するのだ。つまり記録の空白の原因だと思われた2人は隠された事実に固執せず、実は目の前で4人が亡くなるところ目撃したために自ら真実を暴こうと積極的に関わるのだ。 この辺の身の躱し方がフリーマントルらしいと云えるだろう。 レイ・ホーキンズに一連の救出劇の生存者たちの証言が実に都合よく捻じ曲げられた真実であったかを悟らせるきっかけが実に見事だ。 しかしホーキンズが真実を知りたい大きな動機が真実をきちんと伝えなければならないという自身のジャーナリズムよりも次期大統領候補の夫人を愛するが故に離婚させようとする不純な愛欲にあるところがフリーマントルらしくひねくれている。 安定と混迷。真実を暴くことで正義はなされるがそれによって国が被るのは大きなダメージ。大人になればなるほど後々の結果を考えて予定調和を目指して敢えて真実から目を背けようとする。そんな苦い結末を見せるとは。う~ん、なんて現実的な人物なんだ、フリーマントルは! |