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[ 本格/新本格 ]
古墳殺人事件
「少年タイムス」編集長シリーズ
島田一男 出版月: 1957年01月 平均: 5.50点 書評数: 6件

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和同出版社
1957年01月

光風社
1960年01月

春陽堂
1963年01月

春陽堂書店
1981年10月

徳間書店
1990年08月

扶桑社
2002年11月

No.6 7点 斎藤警部 2024/01/06 12:51
“ここでは逆に、地上にいて海上で味わう地上感を味あわそうという、きわめて不自然な努力と苦心が重ねられているのだった。”
いいですねえ、この逆説舞台装置、商船を模した丘中の邸宅。 一方の舞台『古墳』(多摩の塚原古墳群内)との連携も佳き。 探偵役の旧友である考古学者の撲殺屍体が発見されたのは、この古墳の方。

「いけません。円満にして敏速なる調査のためには、婦人の狂騒は、あらかじめ排除しておかねばなりませんーー」

会話、地の文、古代文学ペダントリ披露どれも濃いわぁ濃すぎ。武蔵小杉と新小岩が総武快速・横須賀線で繋がったのはこの作品の為だったのか。。だが意外とスッキリ最短距離で見通せる短篇的真相かと匂わせる展開もあり、どこまで作為的かはともかく、リーダビリティが停滞する作品と言うのでは総じてございません。

「(前略)とうとう最後までひっぱった。…… 案の定(後略)」

呼び出し暗号、擦れ違いの機敏。 機械的物理トリックと、人情心理トリックの重なり合い。 ブロバビリディの細やかな潰しから一気に攻め入るヒロイック推理披瀝の眩しくもある味わい深さ。 ほんの微かな数学趣向。 そしてやはり、ラストシーンの爽やかな明るさは忘れ難い。

さて本作、別の島田さん有名なアレのインスパイア元のような気はやはりしますね。本作の少し前に刊行された「○○殺人事件」や、十数年前に出ている「○の悲劇」に通ずる要素も検知されました。

ところで kanamoriさんご指摘の「犯人は何もしない方が目的達成」って、、ほんまや!!  でもまあ、悲しむ人を無闇に増やさないという意味はあったかな? (飽くまで小説として、犯人本位ではなく、ですが)

No.5 6点 人並由真 2020/03/30 00:18
(ネタバレなし)
 噂通りに、かつ、予期した以上に正統派のパズラーで軽く驚いた。
 さらに戦後になって司法制度に変革があったなどの時代的な描写や、『カブト虫殺人事件』やら京極作品やらを想起させる過剰なまでのペダントリーによる装飾などふんだんな外連味でなかなか楽しめる。
(ただし物語が1~2日であっという間に終わってしまうことには、悪い意味で驚かされた。探偵役の津田が終盤近くで、とあるそれっぽいことを言うものの、この急ぎ足の作劇自体にあまり意味があったとは思えない。)

 全体の事件の形成には、作中人物の(中略)な心理がからんできて、その辺の作りはなかなか21世紀の現代に至る新本格パズラーっぽい。
「宝石」周辺の新旧作家によって名作・秀作がごろごろ登場していた時代だから、その中に埋もれてしまった? 作品という印象もあるけれど、これがもし2010年代後半以降に書かれていたのなら、けっこう高い評価を受けそうな気もする。

 とはいえ最後の真相。謎解きミステリという物語のなかでならアリではあろうが、まあ現実のリアリティを考えるなら、ここまであの登場人物のような立場の人も(中略)な行動はとらないだろうな、という思いも……。個人的にはその辺は、まあギリギリよしとしますけれど。

No.4 6点 nukkam 2016/05/24 18:01
(ネタバレなしです) 島田一男(1907-1996)は事件記者シリーズや鉄道公安官シリーズや捜査官シリーズなど膨大な作品を残した量産作家です。1948年に発表された本格派推理小説の本書が長編デビュー作ですが、量産作家も初期は重厚で緻密な力作を書いていたという典型です。坂口安吾が「ヴァン・ダインの劣化コピー」と批判したそうですけど、探偵役の津田が随所で披露する学識とそれに振り回される捜査陣(と読者)という展開は確かにヴァン・ダインの影響が濃いですね(でも津田の意外と義に厚い一面も描かれています)。真相は(読者によっては)不満を覚えそうなところもありますが、トリックの着想は(実現性はともかくとして)非常に面白いし、いかにも本格派ならではのどんでん返しの謎解きが堪能できます。

No.3 6点 ボナンザ 2014/05/14 01:20
機械的トリックは斬新だが、結末はややあっけない。
それでも暗号や古事との結びつきなど作者なりの努力の跡が伺える秀作ではある。

No.2 4点 江守森江 2010/06/16 14:10
「ブンヤもの」「鉄道公安官」「南郷弁護士」の各シリーズ作品から島田一男を読み始め、一通り読了した後で初期の本格探偵小説2作に立ち返る形になった。
雰囲気だけは当時の流行な本格探偵物だが、魅力に欠ける探偵役の津田に加え褒められない機械トリックで上記のシリーズ物ほど楽しめなかった。
当時、作者も本格探偵小説の執筆に悩んだらしい事が伺える。
坂口安吾に酷評され本格探偵小説から距離を取り、上記の各シリーズで才能が開花した事を考えれば「この作品」にも意味はあったと思える。
作者の真骨頂であったテンポの良さからくるスピーディーな文体はこの作品では味わえない。

No.1 4点 kanamori 2010/04/21 18:02
多摩古墳盗掘口での撲殺殺人を扱った古典的本格ミステリで著者の長編デビュー作。
古墳近郊に建つ「船を模した館」が出てきた段階で、ちょっと前に読んだバカミスを想起し、いやな予感に襲われましたが、案の定、力技のトリックが炸裂。これは捨てトリックでしたが、真相にはそれ以上に脱力しました。
結局、「犯人」は何もしない方が目的達成できたのではと思いますが。
併録のパスティーシュ短編「ルパン就縛」がまだ、しゃれた出来な分だけ読めます。


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島田一男
1998年01月
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