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[ 本格/新本格 ]
上を見るな
南郷弁護士シリーズ
島田一男 出版月: 1955年01月 平均: 6.90点 書評数: 10件

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大日本雄弁会講談社
1955年01月

講談社
1959年01月

集英社
1964年01月

講談社
1973年01月

光文社
1986年10月

No.10 7点 人並由真 2021/07/22 05:55
(ネタバレなし)
 昭和30年前後の東京。「わたし」こと刑事弁護士の南郷次郎は、旧友・虻田弓彦の従姉妹である剣子、彼女の夫の章次の依頼で、九州の長崎に赴く。用件は、弓彦の叔父で剣子の実父である、虻田一族の現当主・一角斎を中心とした家族会議に関わるもので、南郷は体調の悪い剣子と章次の代理として九州にやってきた。だがそこで南郷を待っていたのは、虻田一族内の複雑な人間関係と、自衛隊演習用の海岸地域の接収問題、そして不可解な殺人劇だった。

 昭和30年に講談社の書き下ろし企画叢書「書下し長篇探偵小説全集」の一冊として、『黒いトランク』や『人形はなぜ殺される』などの名作とともに刊行された長編で、島田一男のレギュラー探偵のひとり南郷次郎弁護士のデビュー編。

 大昔に何らかの旧版で本は入手していたはずだが、家の中から見つからず、例によって古書(春陽文庫版)をwebで安く購入して読んだ。

 第一、第二の殺人は「本当に作中のリアルとして、犯人はこれを(中略)でやったのか!?」と呆れる部分もあるが、とにもかくにも全てをぶっとばす豪快な(中略)トリックで、細かい不満が一瞬で消し飛んだ(笑)。
 いや、(中略)しながら、ココにたぶん何かあるのだろうと思ってはいたが、こういう手でくるとはね(嬉&大爆笑)。

 戦後の復員にからむ人間関係の綾、自衛隊に多額の補償金と引き換えに接収される地方の土地の話題など、昭和中期の時代色も濃厚だが、それが物語全体に独特の厚みを授けながら、ミステリ&お話を築いていく重要なパーツとしても活かされている。
 作品総体として、『獄門島』に近しい性質の時代性プラスローカルカラーによって、よくできた昭和ミステリならではの格別なロマンを実感した。
 特にラストシーンのインパクトは、おそらく今後もずっと心に残るであろう。

 前述のように謎解きパズラーとしては雑な面もあるのだが、いろんな部分で濃厚で面白く、得点要素も豊富。
 表向きの評点としては7点にとどめるけれど、心情的にはこっそりと、もう1~2点追加しておきたいような思いもある。

 しかし南郷先生って、すでにこの時点から妻帯者で、助手役の女子・金丸京子ってあくまでビジネス上のパートナーだったのね(シリーズのこの先はわからんが)。私はてっきり助手役のヒロインは、恋愛感情込みの和製デラ・ストリートだと思っていたので、そこはかなり意外でした。
(ついでに言うと南郷が一人称の主人公だったのも、予想外であった!)

No.9 7点 クリスティ再読 2020/04/23 22:53
昔買った春陽文庫で。この本文庫本のクセに二段組だ。でこのサイトだと、家モノで結構盲点でナイスなアリバイトリックとかあって...だから本格になるけど、読み心地としては会話の軽妙な軽ハードボイルドという感覚。泥臭くなくていい。でしかも、自衛隊の演習地に収容する脇筋が、結末に向かって効いている。
短めの長編だが、家モノのこともあって、登場人物がかなり多い。まあ手が回らないキャラもいるが、主要キャラだと三輪子の現代娘っぷりとか、けんか相手の南部刑事とかナイスキャラ。評者あまり島田一男は読んだことないが、なかなか達者な作家だったんだなあ、と思わせる。本作は作劇も佳くてこってりとした味わいで楽しめる。

春陽文庫って時代小説とユーモア青春ものが多いけど、ミステリも結構出してたんだけどね、今はどうかしら....昔は乱歩とか横溝は春陽か角川だったし、乱歩賞受賞作とか結構あったし。けどここのカタログはアテにならないことで有名。漱石芥川だってここから本を出していた、明治11年創業の老舗出版社である。

No.8 6点 蟷螂の斧 2018/08/05 13:06
犯行に係る題名「上を見るな」はあまり効果的ではなかったような。しかし、本書のトリック(1955年)は「点と線」(1958年)を超えている?(笑)。ここは盲点でした。昭和30年代の風俗が垣間見れて楽しめました。

No.7 7点 あびびび 2018/01/23 13:00
島田さんの作品は初めて読んだけど、けっこう本格なんだなと驚いた。犯人のアリバイトリックはすぐに気づいたけど、「結局は誰が得をするのか?」、なかなかおしろい作品だと思った。またちがう作品を読んでみたい。

しかし、当時は長崎に帰るのにも、福岡空港で電車に乗り換えと、時間がかかったんだ?

No.6 10点 フランコ 2018/01/10 15:39
なんとも魅力的な導入部、深まる謎、怒涛のエンディング、探偵役と助手のいい感じの関係。entertainmentとして最高です。短くて無駄がないのも良いです。

No.5 8点 斎藤警部 2017/04/30 18:12
クリスティか、ディヴァインか、島田一男の「上を見るな」か。

親族会議の必要は無くなりました。。。 それでも何や彼やで主人公、南郷弁護士には留まって欲しいと言う”彼”。。 「そんなに沢山仕事かありそうですかね?」

さあ、その殺人に、動機と言う名の帰還点は?! 或る重要登場人物が死ぬタイミング。。シビレさせていただきました。
結末へにじり寄るに連れ、予想外の圧縮が八方から抱きすくめに掛かります。 すげえアリバイトリック(ブラウン神父のアレの思い切った応用篇だ)。。。。でありながら、その!?!? ソ連だかアメリカだか。。 この周到にして鉄壁な犯人隠匿魂は、、まさか数年あとのD.M.なんとかさんに影響与えてないか?? 或る事の動機には「レーン最後の事件」にも通ずる清冽さが。。

脆弱な憶測を爆砕する瞬間冷凍の迫撃ラストと、それを冷静に見下ろすかの様な表題の機微、あるいは意味、または発言権! 本作をアガサかD.M.の翻案だと騙されて読んだら真犯人当てたかも知れない、そんなハッタリふかしといて結局は騙されるに違いない、猛毒含んだ意欲作。本は薄いが中味は分厚い!!

No.4 5点 nukkam 2015/07/26 21:20
(ネタバレなしです) 島田一男のシリーズ作品で主人公の個人名が付いているのは意外と少なく、その中では8長編と13短編で活躍する南郷弁護士シリーズが有名です(弁護士作品といっても法廷ミステリーではありません)。このシリーズは半分が本格派推理小説、半分が軽めのハードボイルド小説という評価のようですが、1955年発表のシリーズ第1作である本書は前者に分類されています。戦中戦後の混乱による二人妻、二人夫の悲劇の話など時代を感じさせる描写がそこここにありますが、文章は都会風に洗練されていてそれほど古めかしくはなくてまずまず読み易いです。結構アイデア豊富ではありますが、緻密で重厚な「古墳殺人事件」(1948年)や「錦絵殺人事件」(1949年)と比べると推理やトリックの粗さが目立ってしまうのは読み易さと引き換えの弱点と言えるかもしれません。物語の締めくくりが異様なまでの迫力に満ちていたのには驚かされました。

No.3 6点 ボナンザ 2014/04/08 00:36
さくさく進む。中々よくできており、島田一男の代表作と呼べるのではなかろうか。

No.2 6点 T・ランタ 2010/01/17 07:22
何と言いますか、序盤で旧家での事件との事で横溝正史風なのかと思って読んでいればトリックが結構独特な気がしました。
細かいパズルを解く必要はありません、タイトルこそネタバレですと言う事です。
それと名前に関するトリック(?)に関しては今ではちょっと考えられなく、戦後立ち直り始めた頃にはこんな事もあったりしたのかと思ったりもしました。

No.1 7点 江守森江 2009/05/25 16:13
これも大量にあるシリーズ作品の一つ。
弁護士が主人公なのでミステリー色が強い。
今でも綿々と受け継がれる貧乏弁護士が事件に巻き込まれる設定の原点。
テンポよいハードボイルドが楽しめる。
女助手との微妙な距離感(恋愛)がシリーズとしての、もう一つの読み所で、やり取りが楽しい。


島田一男
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1959年01月
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1958年01月
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1957年01月
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