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[ 本格/新本格 ]
だれもがポオを愛していた
更科ニッキシリーズ
平石貴樹 出版月: 1985年11月 平均: 7.47点 書評数: 19件

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集英社
1985年11月

東京創元社
1997年08月

東京創元社
1997年08月

No.19 6点 レッドキング 2023/08/07 21:27
ポオ見立て連続殺人。「黒猫」に「ベレニス(知らんぞ)」に詩ネタが二編付くが、メインは「アッシャー家の崩壊」の見立て。何で見立て殺人?、をアクの無い二階堂蘭子の様な和人姉さんが、クイーン・有栖川有栖の如きロジックで解読して、その見立Why設定に感服した。「ポオは単なる推理作家ではない」等、子供の頃からサンザ聞かされる耳にタコ話だが、ここでは、耽美ポオより論理ポオに比重が傾いて・・作者はヒロインの口を借りてアリバイめいた言い訳をしているが・・チト残念。あと、せっかくのポオオマージュなんだから「猿密室」も欲しかった(いろいろワガママやね) 
バドワイザー、ハインツ、ナビスコ、ケロッグ、ジョン・ハリスン、ポール、ロン、ヤース・・・警官マスコミ等脇役たちの名前に微(苦)笑 (*^^)v

※ちなみに、ポオねたでは、オムニバス映画「世にも怪奇な物語」の、フェデリコ・フェリーニ「悪魔の首飾り」が素晴らしかった。

No.18 8点 E-BANKER 2021/09/15 20:36
美貌の名探偵・更科ニッキが活躍するシリーズとしては、「笑ってジグゾー、殺してパズル」に続く第二弾となる作品。
創元文庫の復刊フェア2019として再販されたものをようやく読了。
1985年の発表。

~エドガー・アラン・ポオ終焉の地、米国ボルティモアの郊外で日系人兄妹の住む館が爆破され、沼中に潰えた。テレビ局にかかった予告電話のとおり、「アッシャー家の崩壊」さながらに始まった事件は、ほどなく「ベレニス」、「黒猫」の見立てに発展、捜査は混迷を呈していく・・・。オーギュスト・デュパン直系の名探偵がクイーンばりの論理で謎を解く、オールタイムベスト級本格ミステリー~

これは・・・評判どおりの傑作と評して差し支えない作品だった。
一番目を引いたのは、やはり「見立て」の処理方法。
ポオの代表作の見立てどおりに発生する連続殺人。なぜ犯人はこんな手の込んだ「見立て」を施したのか? 読者の興味はそこに集中することとなる。
それに対する解答が・・・実に鮮やか。
これまで「見立て」プロットの作品もそれなりに接してきたけど、ここまで論理的かつ衝撃的なものはちょっと思い付かない(忘れてるだけかもしれんが・・・)
ネタバレになるのであまり詳しくは触れないけど、「計画性」と「偶然性」の混ぜ具合が絶妙。こういうのは料理なんかと一緒で、2つのバランスが悪いと変な味になってしまう。(超想定外の光景を目の前にした真犯人が、やむにやまれず、それでも知恵を絞って施した装飾が「見立て」なのだ・・・素晴らしい!)

フーダニットに関しては正直、意外性は乏しい。「アッシャー家」という段階でまずは凡その背景を予想しながら読んでしまった。ただ、そこに「ベレニス」と「黒猫」が加わるとどうなるのか?
この辺りの処理も秀逸。

巻末解説の有栖川有栖氏は、本作を「新本格」ムーブメント前の前夜の傑作と評されている。
確かに。ちょうど島田荘司が登場し、長らく続いた本格ミステリー不遇の時代から、明かりが灯された時代。
まさに作者畢生の一作といって良い作品。未読の方は是非ご一読をお勧めします。
(登場人物・・・特に警官たちの名前は作者のユーモア(死語)?)

No.17 6点 ミステリ初心者 2021/08/21 20:04
ネタバレをしています。

 雰囲気が大変よく、まるで翻訳物のように楽しめます。魅力的な謎もおおく、ポオ作品の見立て3連続であり、かつ推理小説的要素以外の無駄なものが一切なく、ページ数の割に内容が大変濃かったです。
 挑戦状付きということもあり、メモを取りながら読んだのですが、メモだけでものすごい分量になってしまいました。にもかかわらず、解決編ではそのことごとくが回収され、無駄のなさを再確認できました。
 若い女性が探偵役なのですが、必要以上に漫画的でもない点もいいですね。
 実は、この作品が読みたいために、アッシャー家の崩壊がはいった短編集を買って読みました。アッシャー家の崩壊を事前に読んでおくことで、この作品全体を楽しむだけでなく、”アッシャー家の崩壊を犯罪小説として読む”も面白く読むことができました。

 推理小説部分について。
 非常に細かい論理によって驚きの真相が明らかになります。この、どんでん返し的結末と、論理的な犯人当ては相性が悪いと個人的には思っています。どんでん返しには多少無理がつきものですしね。ちゃんと推理小説として両立しているのが素晴らしいです(しかし、難癖点もあり)。

 私は、いまいち当てられませんでした。
 予想できたことは、作品のあらゆるところから、かなりロバートが事件にかかわっていることがわかりました。さらに、チェリー・ジャックリーンの犯行時刻の矛盾から、共犯的だと感じました。
 小屋の窓が割れていたことから(ペンチ問題も含む)、まずロバートが棺を運び(アッシャー家の崩壊の見立て)、何者かが解錠できないかつドアを破壊できないものが窓を壊して何かし、犯人が黒猫やベニレスの見立てを行った順だと思いました(3人存在した)。窓を割ったのはメアリアンだとも感じましたが、まさか内側で割られていたとは…これには、自分のバカさを呪いましが。
 ロバートが妹を殺すために爆破したわけがないと最後まで思っていて、そこから推理が進みませんでした。小屋の問題(メアリアンが棺に入れられていたこと)がわかれば、メアリアンが死んだと装ったこと、メアリアンが家に戻ったことなどがもしかしたらワンチャン予想できたかもしれません…。

 以下、難癖部分。
 読者から見れば、共犯が3人いるようなものです。しかも、全員が全員、どこかで不幸な偶然や幸運な偶然が起きていて、これでは真相を完璧に予想できるのは不可能と思われます。少ないながらもヒントが出ていて、解決編の真相ならば最も無理なくすべての謎を解決できるとは認めますが。
 難易度的に、”アッシャー家の崩壊を犯罪小説として読む”は解決編前に入れても差し支えないと思うのですがどうでしょう(笑)。ニッキもこれを読んで犯人を当てたようですしね。すこし、真相に触れているので難しいのでしょうかね。しかし、やはり本作品は難易度が高すぎる気がしますよ(笑)。

No.16 9点 おっさん 2020/05/22 16:38
南伸坊のイラストによる、ポオの立ち姿が印象的なカバー・デザインの、懐かしの1990年版・集英社文庫を再読しました(親本の刊行は1985年)。
『笑ってジグソー、殺してパズル』に続く、美少女探偵――殺人事件大好き――更科ニッキシリーズ第2弾の舞台は、海を越えアメリカへ。
エドガー・アラン・ポオ終焉の地、ボルティモアで発生した、さながらポオ作品へのオマージュのごとき一連の犯罪(日系人のアシヤ兄妹の住む屋敷が爆破され、その周囲で、矢継ぎ早に連続見立て殺人が!)の謎を、休暇で同地を訪れていたニッキが、現地警察の「特別補助捜査官」になって解き明かしていく――その経緯を、ワトスン役の警部補(ニッキの父の友人)が英語で記録し小説化したものを、事件の終幕にかかわった「日本の大学でアメリカ文学を教えているW**教授」が翻訳し、オマケとして、ニッキにインスピレーションを与えた斬新な考察をまとめた、「『アッシャー家の崩壊』を犯罪小説として読む」なる、教授自身のエッセイを附したという、まことに凝った設定による……うん、これはやはり、傑作。
素材と表現の、幸福な一致があります。
作者は以って瞑すべしw

擬似翻訳ミステリの体裁をとり、人工的なネーミングのキャラクターを随所に配し(そもそも語り手がナゲット・マクドナルドで、同僚がナビスコ、警察医がペッパーですからね。鳥山明かよww)ユーモアを打ち出すことで、ニッキが事件に介入していく強引な展開を緩和しているわけですが、一見お気楽にも見えるストーリーの背後には、前作同様シリアスで、しかも格段にアクロバチックなプロットが用意されています。
そのぶん、極端な行動を作者に強いられるキャラが少なからずいて、小説として、心理面――動機づけの弱さは否めません。否めませんが、それでも、彼らがそう行動したに違いないことを、客観的データ(ニッキいわく「物質の角度」)から論証し、複雑な事件を解体していく推理のプロセスは、素晴らしいものです。
恒例の「読者への挑戦」もおこなわれますが、本書の眼目は、名指される犯人の意外性ではなく、ニッキの推理の意外性にあります。初期のエラリー・クイーンの傑作がそうであったように。

現行の創元推理文庫版(筆者、未所持です、スイマセン)には、有栖川有栖さんの解説がついているようで、なるほどこの人選はドンピシャリでしょう。でも、もし自分が編集者だったら……解説を依頼したかったのは、都筑道夫センセイですね。どうせ元版は読んでいなかったでしょうし、亡くなる前に、是非これだけは読ませたかった。そして、感想を聞きたかった。若い日本のミステリ作家は、後ろばかり見ているわけではありませんよ。あなたの提唱した「モダン・ディテクティヴ・ストーリイ」が、ここにはありますよ、どうでしょうね、センセイ。

さて。
話を筆者の読んだ集英社文庫版に戻すと、こちらは馬場康雄なる、耳慣れないかたが解説を書いていて、でもこれがまた、本格ミステリへの理解と愛にあふれた、とても良い内容なんですね。パソコンで「馬場康雄」を検索すると、ヒットするのは畑違いの「政治学者」さんなんですが……でも1948年生まれで東京大学名誉教授という、そのへんのデータは作者の平石貴樹と一緒ですから、同僚繋がりで、まず解説者はこの人で間違いないでしょう。創元推理文庫で『だれポオ』を読まれたという向きも、もし古本屋で集英社文庫版を見かける機会があったら、是非、この巻末解説には目を通されることをお勧めします。

さてさて。
鮮やかな論理のアクロバットで事件を解決に導いたニッキですが、ラスト近くで突然、「警察官」(日本での肩書きは、正確には何だっけ――法務省の特別調査官?)を辞めるかもしれないとか言い出します。「あたし、職業にはこだわりたくないんです」。ハイ、もう、好きにして下さいwww

ともあれ。
推理小説愛好家が、生涯に一作でも、こういう遊びに徹した実作を残せたら本望だろうなあ、という、これは、そんなことを思わせる傑作です。先頃、あの山口雅也の『生ける屍の死』の「永久保存版」が刊行されましたが、『だれポオ』も、どこぞで愛蔵版を出して欲しいな。そのときは是非、特別附録として、W**教授訳の「アッシャー家の崩壊」本編も収録をお願いしたい。犯人の指名に役立つから、読者各自、よく読んでおくように――は、さすがにエンタメ読者には不親切ですよお、平石教授wwww

以下、蛇足。
エッセイ「『アッシャー家の崩壊』を犯罪小説として読む」について。ハイレベルな、ミステリ読者あるあるだと思います。あくまで遊びの論であって、アレを真面目に信じてはいけませんよw
そもそも、ポオの「アッシャー家の崩壊」の一人称、あれは記述なのか、語りなのか? なるほど、世にも奇妙な体験をした人物が、それを記録しておきたい、話して聞かせたいというのは、普通に理解できる。でも、仮にエッセイの中で主張されているような、隠された趣向があの話にあるのであれば、「私」は決して、あんなふうに書いたり語ったり、しないでしょう。作者ポオに必然性はあっても、作中人物の「私」に必然性がありません。
トリック(!)も無理無理ww 

No.15 7点 ボナンザ 2016/01/02 20:04
これはすごい。
ポオファン必読の傑作。

No.14 8点 ロマン 2015/10/22 21:15
『アッシャー家の崩壊』、『ベレニス』、『黒猫』と、ポオの名作をモチーフにしたかのような殺人事件が次々と起こる。日本からボルティモアへはるばるやってきたポオファンの女性(少女?)ニッキは、この殺人事件の謎を解こうとするが……。謎解きや展開はもちろんのこと、キャラクターが魅力的に描かれている。先述のニッキはもちろんのこと、やたらコーヒーを進めたがる捜査官、「予期せぬ~」が口癖の女性捜査官など、くすりとさせられるユーモアが効いているのもこの作品の魅力のひとつだろう。しかし寡作なのが惜しい作者だと思う。

No.13 6点 いいちこ 2015/09/25 20:38
強固なロジックで真相を解明するプロセスや、敢えて翻訳調の文体を選択する等、考え抜いて描かれた作品であることは間違いない。
一方、犯人が残した手がかりが少なく謎解きの難易度が極めて高い、ポオの作品をある程度読破していることが作品を楽しむうえでの前提となっている点など、読者に課されたハードルは高い。
パズル性を全面に押す作品構成からしても、読者によって評価が大きく割れる、毀誉褒貶の激しい作品

No.12 6点 メルカトル 2014/01/21 22:27
再読です。
なるほど、これは玄人受けする作品に違いない。だから私のようなど素人には、あまり心に響いてこなかった。しかも元来頭の出来が悪いので、理解が及ばない部分も多々あったのは隠しようのない事実だ。
本書を読むに当たっては、出来ればポオの『アッシャー家の崩壊』『べレニス』『黒猫』を事前に読まれることをお勧めする。少なくとも『アッシャー家』だけはじっくり読んでおいた方がより楽しめるのは間違いないと思う。だからと言って、読んでなくても、腰を据えて読み込むことによって、自分が探偵になった気分を味わいながら、作者の挑戦に応えることも可能である。
それにしても、舞台がアメリカというだけで、なぜこのような翻訳調の文体になってしまうのか。おそらく、この人は普通の文章を書こうと思えば書けるはずなのに、わざわざ読み難い文を書いてどうする。もっとスラリと書いてサクサク読めるようにしてもらえれば、バカな私にもそれなりに理解できたと思うと残念ではある。
決して万人受けするとは思わないが、やはりマニアは必読の書だと考えられるので、少々の読み難さは我慢して一読してみるのもいいだろう。

No.11 5点 蟷螂の斧 2014/01/16 18:02
トンビが油揚げをさらったような印象です。プロット自体があまり好みではありませんでした。ポオを読んでいれば、もう少し楽しめたのかもしれませんが・・・。伏線の回収がロジック的とのことですが、重要なダイイングメッセージ「ユーラルーム」も解決篇を読んでもよくわかりませんでした(苦笑)。動機をあえて排除し、物証のみでの推理・展開なので、物語としての深みを感じることができませんでした。残念。

No.10 9点 まさむね 2014/01/12 09:25
 創元推理文庫版で読了。
 本編の読書中には,多少の混乱というか戸惑いもあったのですが,解決編では何とも言えない爽快感を頂戴できました。
 加えて,コクのあるエピローグも素晴らしい。
 有栖川氏も解説のタイトルにしている「新本格前夜の傑作」との評価も頷けます。

No.9 8点 測量ボ-イ 2011/08/12 14:57
確かにこれは良作ですね。
本格色が強く、読者への挑戦があり、関係者のアリバイ表で
登場人物の整理もしやすい・・・これは僕の嗜好にかなり
近い作品です。
謎解きも一発トリック系ではありませんが、確かなロジック
で犯人を絞り込んでいく過程は破綻がなく、納得のいく結末
です。
あえて難点を挙げると、謎解きの難易度が高すぎる(これだ
とヒントが欲しい)くらいでしょうか。

読了してみると、この題名にもなんとなく余韻があっていい
ですよね。
エドガ-・アラン・ポ-・・・この名前は僕達推理小説を愛
するものにとっては独特の響きを持つのでしょう。

No.8 10点 rinku 2011/07/20 11:35
埋もれた傑作!!

No.7 4点 Tetchy 2011/07/14 20:46
全てのモチーフがポオの作品に繋がっていた。そんなポオ尽くしの奇妙な事件。本書は数あるガイドブックで時折取り上げられる作品。それほど評価が高いのであれば食指が動くというもの。どれどれといった感じで読んでみた。
しかも“読者への挑戦状”付のど真ん中の本格ミステリ。久々にこの挑戦状を見た。だが哀しいかな、この頃には私は既にこの作品に対する興味を失っていた。

みなさんかなり高評価だが、私はもう単純にこの世界観にのめりこめなかった。作中で繰り広げられるポオの作品に擬えた犯罪の数々と登場人物が折に触れ語るポオ作品との関連性に逆に辟易としてしまった。
こういった作品とはやはりモチーフとなるものに読者もある程度の造詣を持っていないと、乱痴気騒ぎを窓の向こうから見ているような冷めた目線で読んでしまいがちだ。それはある種その仲間に入っていけないものにとってパーティとは騒音以外なにものでもなくなってしまうのと同様に、作中で出てくるポオ作品のモチーフの数々が作品の進行を妨げているようにしか、思えなかったのが辛い。

本を読む資格というのがあれば私はこの本を読む資格はなかったのかもしれないが、一般に書店で売られて誰でも手に入れる商品であるから一般に開かれている作品であるのでそんな物は関係ない。
だから面白かった!と賞賛している人たちには申し訳ないけど、論理は整然としているが、謎は全く魅力的ではなかった。

No.6 7点 touko 2011/04/17 22:09
ロジックに特化した作品。

確かにロジックは素晴らしいんですが、古典的名探偵ものへのオマージュなんでしょうけれど、日本人の女の子がアメリカ警察の捜査にいきなり協力することになる設定の強引さやネーミング等、中途半端に作り物めいているところが気になりました……きわめてしまっていれば、それはそれでそういう世界と思えるんだけど。

ポーの作品をモチーフにして、小道具も色々出しているわりに、パズル、推理クイズって感じが全面に出すぎて無味乾燥になっている面もあるので、ニッキの主観を排した論理性と事件の幻想性・おぞましさが対比されていればよかったのに……とないものねだりをしたくなりました。

No.5 9点 テレキャス 2010/07/30 21:15
新本格以前の隠れた傑作として逆に著名な今作品。
文章や台詞回し等が翻訳小説風なのが東大英文卒の学者さんならではで芸の細かさを感じます。
そして、クイーン張りのロジックは完璧。
派手さはないものの伏線も張り巡らされ、ミステリの醍醐味を堪能出来ます。
探偵役のニッチのキャラもお気に入り。

No.4 10点 パン粉 2009/09/13 01:08
埋もれた傑作とはこのことだね。
こんなにロジカルに徹底した作品は、さすがのアリスも真っ青。

ところで、読者挑戦物(笑)って何?
これだから国内しか読まない人は……。

No.3 8点 江守森江 2009/05/24 04:10
前作と違いタイトルの雰囲気を纏った傑作。
これも清張の社会派に抑え込まれた本格ミステリ不遇時代に書かれた読者挑戦物でロジカルなフーダニット。
時代の流れに埋もれてしまうのは勿体無い作品。
未読で入手可能なら是非ともお薦めしたい。

No.2 7点 こう 2008/10/08 01:13
 本格ミステリの醍醐味が味わえる作品でした。最近まで知らなかったのですが数年前有栖川有栖氏のエッセイで激賞されていたので手にとってみましたが新本格以前にここまでこてこての本格が書かれていたのが驚きです。
 設定もいかにも「昔の本格」という感じですが作風は違いますがやはりクイーンをほうふつとさせる作品です。
 アメリカのボルティモアでポオの作品を模倣した日系人「アシヤ家」を襲う連続殺人事件が起こりたまたま日本からきた大学を卒業したばかりの女性刑事「更科丹希」が名探偵役で全ての謎を解き明かす作品です。
 いわゆる大技系の作品ではないですが数々の伏線がありそれらが真相として意味を持ってくる作品でクイーンの国名シリーズに一番近い出来だと思います。(激賞していた有栖川氏の国名シリーズ以上に)また昔ながらの読者への挑戦も入っておりいうことありません。読み手として繰り返し戻って推理する習慣をなくしてしまったため更科丹希の推理にただ感心するだけでしたがそういった推理しながら読む方には最高の作品だと思います。推理しながらクイーンを読んでいた高校時代に読みたかったなあ、と思います。
 そもそも日本の若い女刑事が探偵役という設定も現実にはあり得ないのですがこのいかにも本格の作品ではありかな、と思いますしキャラクターも魅力的で本格らしからぬ探偵役だと思いました。
 ポオの作品を読んでなくても楽しめますが個人的には20年ほど前中学か高校のときアッシャー家の崩壊を途中で挫折し全く覚えていなかったので読んでおけばよかったと少し後悔しました。難点は大技ではない点と謎への興味が読者によっては薄い可能性がある点くらいでしょうか。丹精な本格としては本当に国名シリーズ並みの出来です。

No.1 9点 ロビン 2008/09/08 23:02
クイーン張りのロジック炸裂!「何故徹底的に指紋を拭い去ったのか?」「何故犯行をポオの小説に見立てるのか?」その論理が的確に犯人像に結びついていく。
自分は『モルグ街』しかポオ作品は読んだことはなかったんですけど、十分楽しめました。

ただ、あまりにもパズル性を重視しているため、物語として盛り上がりにやや欠ける。
あとは個人的なわがままですけど、名探偵による推理ショーが好きな自分としては、ラストが三人称による犯行シーンの描写だったことが残念かな。


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