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[ サスペンス ]
歯と爪
ビル・S・バリンジャー 出版月: 1959年08月 平均: 6.30点 書評数: 20件

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創元社
1959年08月

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2010年06月

No.20 7点 クリスティ再読 2020/04/25 16:45
有名な袋とじ本。戸川安宣氏の解説によるとカーの「雷鳴の中でも」とかエリンの「鏡よ、鏡」を引き合いに出しているが、評者どっちもイマイチだった...カーのはそもそも処女作の「夜歩く」が最初結末袋とじだった話があるから、作家生活30年記念作の「雷鳴の中でも」はそれに倣っただけだんだろうね。
で内容的にはサスペンス小説として読む miniさんのご意見に賛成。「クールなウールリッチ」という雰囲気で、ウールリッチがそうであるような「ノワール色」が出てると思う。なかなか雰囲気いいと思うんだよ。この雰囲気に引っ張られて、裁判シーンとのカットバックで、話がどう落ち着いていくかを見守ることになる。手品師の日常とキャリアも物珍しい話題になるし、少ない登場人物を丁寧に描写しているのが好感が持てる。
まあだから「ここまで主人公の人生に付き合ったからには、結末知りたいよね」で、評者は封を破ることになる....いいじゃないか、大したどんでん返しでなくても。パズラーだと思って本作を手に取るパズラーマニアは、作者じゃなくて出版社のトリックにひっかかった、のかもよ。

No.19 4点 レッドキング 2018/06/18 21:26
名作との評判をきいたから読んだ 失望した ハードルが上がっちゃたんだろうな

No.18 7点 斎藤警部 2016/05/30 11:51
マニアだったら「返金用」「保存用」「読書用」と三冊買うモンよ、と先輩に釘を刺されたものです。嘘です。

主人公は何を目的に何を為したのか、に想いを巡らせばその趣きはなかなか独特の深みがあります。嵌められた敵役にむしろ同情を感じてしまうのは。。これも奥の深い味わいってやつなのか?しかし某人物の焦燥だとか懐疑だとか終局になってやっと描写され始めるのは、物語の特殊な構成上仕方無いかも知れないが、裁判の章の、ひいては小説全体のサスペンス感を多少なりとも減速させてやしないかな?これでもっとキリキリするような不安定感を持続して味わえる文章だったら、【ここから一瞬ちょっとネタバレ】ラストが反転の無い収束(叙述による誤認トリックは袋とじ内の早い段階で明らかにされ、更にもう一段の捻りは無い)ってのも全く文句は無いんだけど。
でもやっぱり、主人公敵役それぞれの全く違うラストシーンがどちらも印象的ですね。主人公はこれから一体どうするつもりか。(敵役は、どこかでピン!と来ることは無いのか。。?) 

オールド・ソウルファンにはどうしてもO.V.ライトの名ミディアム・バラード”A NICKEL AND A NAIL”を連想させずにいない“THE TOOTH AND THE NAIL”なる原題は、証拠物件の”歯と爪”以外に慣用句としての”歯や爪さえ使って=なりふり構わず必死で(闘う)”という意味を掛けておりなかなかグッと来る。日本語で喩えれば”猫の手も殺人事件”(ゆるっ!w)みたいなとこでしょうか?殺人現場には切断された猫の手が落ちており、折からのホニャララでてんてこまいの××県警は。。みたいな?? って何言ってんだか。

そうですね、「赤毛の男の妻」ほどではなくも、一読の価値は多いに認められるのではないかと思いますよ。
エルヴィスのデビューに当たる1950年代中盤で”エレキギターのハウリング音”ってのが一般白人にどう響いたのかも興味津々でした。

No.17 6点 あびびび 2016/04/29 08:57
まさか、これで終わり?と、解説のページをめくってしまった。ふたつの話が絶妙に交差するあたりが一番の緊張感…。

ただ、殺人犯人に仕立てられた方は驚天動地の心境だろう。大胆なトリックを期待せず、サスペンスだという認識を持って読めば名作の香りが充満する?

No.16 6点 りゅうぐうのつかい 2016/01/04 18:06
最後まで読んで、「その女アレックス」に似ていると感じた。書かれた時期を考えると、「その女アレックス」の方がこの作品に似ているのだけれど。
奇術師夫婦の出会いからの物語と、裁判の様子とが交互に語られ、一見何のつながりもないように見えるこの二つの話がどうリンクのするだろうか、と興味をそそられる。
さらに、袋綴じの存在が、どんな凄いどんでん返しを用意しているのだろう、という期待をいやが上にも盛り上げる。
期待を持ちすぎると、拍子抜けする。
真相は、凄いどんでん返しではなく、一見何の関係もないような話をうまく結びつけたものだ。
しかし、こんな方法で、本当に主人公は復讐を果たせると思ったのだろうか?

No.15 5点 ボナンザ 2014/04/08 21:31
悪くはないが、驚天動地のラストなどは存在しない。
そこを期待すると著しく評価が下がる。

No.14 6点 2013/11/01 10:06
奇術師のリュウは、ニューヨークでタリーという名の女性を助けた。その女性を奇術の助手にし、やがては妻にする。そして・・・、しだいに復讐物語へと進んでいく。
こんな話と、とある殺人事件の法廷サスペンスとが交互に展開する。

解説からはリュウが主人公であろうことが推測できるのだが、法廷には登場しないし、いったいどうなっているのだろうか。
後半にいたっても2つの話のつながりはわずか。謎は謎のまま終盤へともつれこんでいく。

本作はカット・バック手法を最大限にうまく利用したベスト・ミステリーと言えます。
わけのわからない2つの話を終盤にいたるまで引っ張られると、いい加減いやになるはずですが、本作は少しちがうようです。2つの話はわけがわからないなりに、独立して(特にリュウのパートが)ほどほどに面白い。とにかく、抜群のストーリー・テラーぶりでした。
プロット、トリック、語り口の3拍子がバランスよく整った、上質なサスペンス作品だと思います。

No.13 8点 蟷螂の斧 2013/07/06 07:35
(ネタバレあり)”最後の一撃”を期待すると、拍子抜けかもしれません。最後ではなく途中で真相が判明することが、ラストの衝撃を薄めてしまったということでしょう。トリック的には、先駆的作品(1955年)であると思います。既読の中では、フランスのK氏(1957年)、日本のK氏(1963年)がありました。サスペンスのお手本のような作品で、十分楽しめました。ラストでは、被告に「誰だ?、誰なんだ?」と言わしめる・・・。主人公・奇術師としての本領発揮です。

No.12 6点 あい 2013/03/13 17:45
本の紹介文に書いてあった文章が大袈裟だった為、大きなトリックに期待していた分最後は拍子抜けしてしまった。しかし話の展開や構成が良く出来ていて、サスペンスとしては面白い作品。

No.11 5点 mini 2012/07/05 09:57
* 1912年生まれ、つまり今年が生誕100周年にあたる作家は意外と多い、昨年と来年が生誕100周年の作家は割と少ないので、1912年はミステリーにとって縁有る年回りだったのかも、日本でも戦前の大阪圭吉がそうだ
今年の私的読書テーマ、”生誕100周年作家を漁る”、第3弾ビル・S・バリンジャーの2冊目

「歯と爪」という作品は従来から本格中心の読者に手に取られてきたように思う
それも無理からぬ話で、やれ結末のサプライズだの叙述トリックだのと、本格しか読まないようなタイプの読者に向けたような宣伝がされてきた経緯が有るからね
まったく創元の惹句は不適切なのが多いな
「歯と爪」は基本サスペンス小説であり、本来はサスペンス小説のファンにこそ読まれるべきなのだが‥
でも今の日本では本格しか興味無い読者は全ミステリー読者の九割強位占めているんじゃないかと思えるし、残り一割弱が冒険アクション小説系統中心の読者だろうし、つまりサスペンス小説中心の読者自体が殆どいないんだろうしなぁ
「歯と爪」はどうしても本格としてどうかとか、ラストのサプライズがどうのという観点で読まれがちだが、これは良くない風潮だと思う
「歯と爪」は結局のところ元々が”どんでん返し”みたいなのを狙ったものではなく、カットバック手法の並行して語られる2つの話がラストでどのように結び付くかという事が主眼だと思う
もっともそれもあくまでも仕掛けの観点での問題であって、それよりも読みどころは途中経過、つまり人生の哀愁というのがバリンジャーの持ち味なんだろう
当サイトでも空さんやkanamoriさんの御指摘通りで、意外性やトリックよりも、プロット勝負なんでしょうね

No.10 7点 toyotama 2011/04/07 19:36
なんでここで袋とじ?
って思いましたが、すぐ次のページに裁判シーンと独白シーンを結ぶ謎が出てたんですね。
被告の正体を包み隠して進めてるんでしょうが、扉の解説文の書き方を考えてくれないと、謎が薄くなる。

No.9 6点 E-BANKER 2011/02/20 21:22
袋綴じミステリーとして有名な作品。
先駆的叙述トリックを味わうことができます。
~彼の名はリュウ。生前、彼は奇術師だったが、フーディニらができなかった一大奇術をやってのけた。第一にある殺人犯に対し復讐を成し遂げた。第二に自分も殺人を犯した。そして、第三に彼はその謀略工作の中で自分も殺された・・・奇才バリンジャーが仕掛ける驚くべき前代未聞のトリック~

というのが本作の「紹介文」ですが、「驚くべき前代未聞のトリック」というのはやっぱり大げさかなぁ。
いわゆる「カットバック」の手法については、さすがにうまい具合に使われてます。終盤までは、リュウの身の回りで起こった事件を語る場面と、ある法廷の場面が交互に書かれ、それがどのように絡んでくるのか読者には分からない。そして、終盤、2つの場面が急速に接近し、サプライズのラストへ・・・
最近の叙述系作品では何度となく読んでいるプロットではあります。
特に、折原が本作にかなり影響を受けたことは有名ですし、今回読んでみてそれがよく分かりました。
まぁ、サプライズを期待する読者にとっては、やや喰い足りないかもしれませんが、シンプルかつ洗練された文書を味わってみるのも悪くはないでしょう。
(今回、ブックオフで袋綴じがそのままの状態で購入。ということは、売った方は結末を読んでないということ? 勿体無い!)

No.8 6点 yoneppi 2010/08/06 21:29
叙述ものの有名作品と聞いていたのですごく期待していたのだが…。驚愕の結末ではないけど全体的に内容は面白かった。

No.7 6点 kanamori 2010/07/23 18:01
返金保証付き一部袋とじミステリ。
魅力的なタイトルとサスペンス充分のプロットで、途中で投げ出す人はまずいないでしょう。
紹介文で煽る程の意外性は感じませんでしたが、奇術師の行動と法廷場面をカットバック方式で描く手法は新鮮で、トリックよりプロットで読ませる良質のミステリだと思いました。

No.6 8点 測量ボ-イ 2009/05/31 16:41
僕も袋とじ文庫版を買って読みました(20年以上前ですが)。
袋とじ部分を読まずに返本するとお金を返しますという当時
も今も滅多にお目にかかれない企画でした。結果は・・・や
はり袋とじを破って最後まで読みました(笑)。
ミステリ慣れした人なら、結末は大体想像つきますし、帯にあ
った「衝撃の結末!」というのはいささかおおげさな気はしま
すが、良質のミステリだと思います。

No.5 6点 ポセイドン 2009/01/29 00:05
ミステリー史の中にたくさんある記念碑的な作品の一つ。

現代の作品と比べるとさすがにちょっと苦しい。
ミステリの良し悪しは意外性とトリックの質と論理性だろう。
そこが他の小説との違い。

No.4 7点 2009/01/20 21:57
他の方も書いていますが、私もやはり結末の意外性は全然感じませんでした。結末ではなく袋とじ前には、2つの話の結びつけ方に意外性があるとは思いますが、それも想定範囲内に留まる程度です。原書初出版当時でも、徹底したカットバックの手法は珍しかったかもしれませんが、驚愕の結末ということはなかったのではないでしょうか。
しかし、意外性だけで小説の良し悪しが決まるわけではないでしょう。奇術師パートの展開がおもしろく、最後はかなり感動的でしたし、その後の暗いつぶやきのリフレインも、読了直後には不要だと思ったのですが、後々まで印象に残ります。

No.3 6点 シーマスター 2008/10/06 23:17
当時は、無関係に見える2つの話が並行して交互に進みやがてリンクされてくる展開様式(そう、あの『慟哭』型のカットバック)が斬新だったのだろうし、それを利用した叙述トリックは衝撃的なものだったのでしょう。

それにしても半分ネタバレしてから袋綴じ、というのは如何なものだろうか。折角の仕掛けがもったいない・・・
しかしもっと驚いたのは、何の驚きもないラストでした。

No.2 6点 マサトメ・J 2008/10/06 20:11
元祖・袋とじミステリと聞いて読んでみました。
今、コレで出したら「・・・??」でしょうが、当時は驚愕ミステリだったんですかね。

No.1 8点 こう 2008/04/24 00:56
 いわゆるカットバック方式で書かれた名作。長さも手頃で叙術トリックの本の中では最高峰の一冊と思います。今では文庫で簡単に手に入る様なのでお薦めです。折原作品とは違う驚きがあると思います。ただし国内作品で同じトリックを使用している作品もありますし現代では驚けない方もいるかもしれませんが自分が読んだ時はこれかカサックの殺人交叉点くらいしか手に入らず初読時の感動を評して10点です。
 追記ですがやはり再読すると10点ものではないと思い直しました。2点減点しました。やはり新本格にすれる前に読んでいただきたい作品です。


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