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[ サスペンス ]
赤毛の男の妻
ビル・S・バリンジャー 出版月: 1958年01月 平均: 7.17点 書評数: 6件

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東京創元社
1958年01月

東京創元社
1961年09月

東京創元社
1994年11月

No.6 6点 あびびび 2017/11/09 10:45
裕福な男と結婚している女性の前に、以前結婚していた脱走犯が現れた。時代のひずみで離ればなれになったが、ずっと忘れられない、相思相愛、運命の男と女だった。

当然現在の夫は別れを拒否するが、やむなく脱走犯がピストルで殺してしまう。それから始まる逃走劇…。「いずれ逮捕される!」と、二人は覚悟して逃げるのだが、その悲哀、絶望がこちらに伝わってくる。

No.5 8点 斎藤警部 2015/12/02 11:25
アメリカも先の大戦では大変だったんだ そういや、かの国は大昔からマイナンバーあったんだよな 探偵役の刑事が「ぼく」かよ まさか・・ 二州に跨(またが)った二つのカンサスシティがまさか何かの隠喩、またはトリックに使われたりしやしないか・・ 終結に近づくほど章カットのタイミングが絶妙に際どくなって行くじゃないか、いいぞ .. おい、ローハンがだんだんおかしくなって来た! マーシーも時々奇妙なことを言い始めた .. 何かの前振りか? 待てよ あのアクの強いターナーが本当にあれっきりでストーリーから消えてしまうのか? クリスマスが近づく。。その後はニュー・イヤーズ・デイだ。。 おっと、これほど意味深く玄妙な「結婚していなくて良かった」という台詞があるだろうか。。 テュペロと言えば、初めて聴いたジョン・リー・フッカーの曲だ。そしてエルヴィスの生まれた街じゃないか。。 「ぼく」がだんだん認められて、現場を仕切り始めたぞ! 徐々に 題名の暗示する重さがきりきりと 肩にのしかかってくる。 ローハンとマーシーは 結構 離れている時間も 長いんだよな いや 確かに そこに 最終反転の鍵の一つはあった 。。 エンディングを温かく感じてしうまうのは、どこかで 主人公が切り替わったからか。。 いやはや、良い物語でした。 ところでこの作品、原作に忠実に映像化する事は果たして可能だろうか?

No.4 6点 蟷螂の斧 2013/06/26 11:55
逃避行(犯人と妻の心理状態)と、追う刑事(推理・心理)の場面が、交互に語られ、緊迫したサスペンスとなっています。妻の愛情表現方法(物語の中ではある計画となっています)については、やや腑に落ちない点もありますが、こういう方法もありかな?といったところです。ラストの反転は、アメリカ社会をよく知らないと分かりずらいかも・・・。日本人の単純な知識の範囲内でも、伏線はかなり張ってあり、反転は生きていると思います。

No.3 6点 mini 2012/09/14 09:57
* 1912年生まれ、つまり今年が生誕100周年にあたる作家は意外と多い、今年の私的読書テーマ、”生誕100周年作家を漁る”、第3弾ビル・S・バリンジャーの3冊目
多分、今年の生誕100周年シリーズはこれで終りになるかな

「赤毛の男の妻」は私が読んだバリンジャー作品の中では最も人物描写が濃厚で感動と読み応えがあった
ただバリンジャーと言うとどうしても”叙述な仕掛け”がどうのだとかの視点で語られがちなので、ちょっと語ろう
「消された時間」や「歯と爪」は、誰が読んでも作者の狙いというものは読み取り損なうことはないだろう、もし理解出来ない人が居るとしたら、ミステリーを読むだけの自身の理解力の欠如を疑った方がいい
つまり上記2作を読み解くには、別段の特殊知識は必要無いわけだ
しかしだね、この「赤毛の男の妻」に関しては少々の補足説明が必要なんじゃないだろうか
理解するには前提となっているアメリカ社会ならではのある知識が必要で、それが無いと頭が良い人でもラストのオチの意味が分り難いと思うからだ、特に日本人にはね
実際に作中でも”分かる人には分かる”的な書き方がされてるし

* 未読な人でネタバレが気になる読者は以下の文は閲覧しない方がいいかも

異説も有るが、昔からアイルランド人には赤毛が多いという俗説がある、題名の赤毛もこれを意識しているんだろう
さてその昔、アメリカ大陸へ欧州から沢山の移民が海を渡ったのだが、その欧州の国々や人種は数の多少は有れど様々であり当然ながら言語も違う
しかし英国系移民を中心に次第に英語に統一されていくわけだ
もちろん例えばルイジアナ州などフランス系移民の影響力の強い州も在るし、隣国カナダなどはフランス文化の比率は高い
でもやはりアメリカは英語圏なわけだ、そうなるとフランス系、ドイツ系、スペイン系、イタリア系(マフィアや刑事コロンボなんかがそうだよな)の移民などは英語を話す必要に迫られることになる
ところがアイルランド人はケルト民族なので英国人とは人種は違うが、英国とは隣国でもあり、まぁ訛りは有っても基本英語は話せるわけだ
だからアイルランド人は仮に特技が無かったとしても公務員などに採用されやすいという利点が有ったのだ
歴史的にアイルランド系移民はアメリカ社会の中で、消防士や警官などの職に就く比率が高い事はアメリカ社会の定説の一つである、アイルランド人種は背が高く体もがっちりしてるしね
つまり”赤毛=アイルランド系=警官”というのはアメリカ人のイメージの中では当時としては象徴的な図式だったのである
対して○人のイメージはというと、○人=犯罪者みたいな偏見が持たれるのもアメリカ社会である
この「赤毛の男の妻」という作品はそういうことなんでしょ、追う警官と逃亡者との逆転構図オチ
ネット上でも単にラストの刑事のオチだけを論じて”だから何?”みたいな書評をよく見かけるが、赤毛の男と対比しなくちゃ意味無いし刑事の正体だけだと作者の意図を半分も解ってないんじゃないかなぁ

No.2 10点 take5 2011/08/10 22:56
ミステリー小説は、そのトリックや動機云々の整合性の前に、
まず自分の血や肉となるものとして、意味のある小説として読めるか読めないか(多分に好みが関わってくるのでしょうが)だと思います。
私はこれを大人になってから読みましたが、例えば『罪と罰』や例えば『モンテクリスト伯』のように、自分の生き方に意味のある小説として読めました。
時代背景や雰囲気を知るだけでも価値があり、ミステリーとしても意味のある作品だと思います。
民主主義、人種差別、多文化社会について考え、ミスリードを越えて自身の内省について思いを至らす事のできた作品でした。

No.1 7点 こう 2008/05/07 00:06
バリンジャーのカットバック方式がさえた一冊。サスペンスの盛り上げ方も悪くなく歯と爪程の衝撃はありませんが面白かったです。ただガイド本ではサプライズエンディングの最高峰みたいな書き方がしてありましたが今の日本人が読んでもそうでもないと思います。(これはモールのハマースミスのうじ虫も同じですが)バリンジャーは煙で描いた肖像画 、消された時間も同じスタイルで書いていますがとりあえず全てよんでおいて損はないかと思います。但し消された時間はかなり評価が落ちると思いますが。


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ビル・S・バリンジャー
2006年09月
美しき罠
平均:3.00 / 書評数:1
2005年07月
歪められた男
平均:5.00 / 書評数:1
2002年05月
煙で描いた肖像画
平均:5.60 / 書評数:5
1959年08月
歯と爪
平均:6.30 / 書評数:20
1959年01月
消された時間
平均:4.75 / 書評数:4
1958年01月
赤毛の男の妻
平均:7.17 / 書評数:6