海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
スパイたちの遺産
ジョージ・スマイリーシリーズ
ジョン・ル・カレ 出版月: 2017年11月 平均: 4.00点 書評数: 2件

書評を見る | 採点するジャンル投票


早川書房
2017年11月

早川書房
2019年11月

No.2 4点 クリスティ再読 2022/05/05 16:41
「寒い国」と「ティンカー・テイラー」の裏話&後日譚...なんだけども、う~ん、今更? 最大の問題は、本作の「年代」が実は不明、ということなんだと思う。発表年度なら 2017年になるから、スマイリーの生年月日からみたらもう100歳近いはず(生年再設定前なら優に100歳を超えてしまう)だ。ギラム=ル・カレとみれば、ギラムだって87歳だ。なので、せいぜい 2000年近辺にすべきなんだろう...だと「壁」崩壊からはまだ10年。ちょっとまだ「ナマ」過ぎるか。

やはりル・カレにとって一番輝いていたのが冷戦を背景にした手段を選ばぬ「冷たい戦争」なエスピオナージュだったわけである。もちろんスパイ活動の「道徳性」というものには、最初から疑惑含みのものであることを承知してなきゃ、やってられない。ル・カレはグリーンでもアンブラーでもない。

サーカスは法を破ることが人生の使命だと思っている偉そうなゲイの集団だから

と作中でもギラムが自虐ギャグをカマすわけで、今更の良心っぷりを見せられても、出し遅れの証文みたいなものだ。そういうギラムの疑問について、スマイリーが「自分がすべての責任を取るから」と弁解したところで、何にもなるわけがない。

いやいや、こんなものを書いてしまうル・カレの方こそが、老いて状況判断ができなくなったのだろうか。
(小説としても、くだくだしいばっかりで退屈で尻すぼみ。プロット的な決着は何もない。関係者がみな長命のようなのは、ご都合主義というものでは)

No.1 4点 2018/09/06 05:52
 南仏ブルターニュの農場で引退生活を送る老齢のスパイ、ピーター・ギラムは突如古巣の英国情報部に呼び出される。冷戦時の対東側諜報作戦〈ウインドフォール〉の犠牲者、アレック・リーマスの息子が、情報部を相手取り訴訟を起こす構えだというのだ。その過程でギラムと彼の師である伝説的スパイ、ジョージ・スマイリーは、主犯として追及されるという。
 「影の巡礼者」で読者に決別の挨拶を送ったスマイリー、21世紀を20年近く過ぎてまさかの再登場。ストーリーは「寒い国から帰ってきたスパイ」の語り直し。なんですがアレですね。蛇足というか、微妙というか。
 のこのこと情報部に出頭したギラム。到着するや否や早速スマイリーと共謀して当時のファイルを隠し、予算をちょろまかしてジジババばかりで怪しげなセーフハウスを運営していた事を追求されます。
 都合の悪い所はボケたふりして誤魔化そうとしますが、そんな手が通じるわけもなくエレガントに首を締め上げられ「ちゃっちゃと吐かんかい」という扱いを受けるギラム。そんな彼に原告であるリーマスの遺児、クリストフが直に接触してくるのですが・・・。
 うーん。イマイチ乗らない。結局、前に取り上げた「メグレの回想録」に近い"あの人は今"的な内輪ネタ作品なんですが、語り手はスマイリーではなくピーター・ギラム。結構ページ数あるのにワトスン役が自分語りを延々やってるだけなので締まらない事おびただしい。トリがお前かよというか何というか。そのつまんなさを支えるだけの、意外性を持って構築されたプロットがあれば別ですが、そんな事もない。内容的にもロンドン側から見た「寒い国から帰ってきたスパイ」及び「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」の補足のみ。
 過去の回想も前フリが3/4余りで、肝心の「転がる石(ローリングストーン)作戦についてはちょっとだけ。クソコテのクリストフ君も最後にヘタレて、結局訴訟沙汰はウヤムヤに終わるという。これをそれなりに余韻のある終わり方と取るか腰砕けと取るか。なんだかなあ。
 カーラが南米で拳銃自殺したとか、サースグッド校長が父親同様妻子を捨ててホモの恋人と夜逃げしたとか、後日談が色々ありますが、「寒い国から・・・」もスマイリー三部作も完璧に近い終わり方なんだから、ハンパなもんなら付け加えて欲しくないかなと。
 海外書評とかAmazonとか、賛辞が大半なのはちょっと疑問。あくまで私見ですが、別に読まなくていいと思います。


キーワードから探す
ジョン・ル・カレ
2023年02月
スパイはいまも謀略の地に
2021年12月
シルバービュー荘にて
平均:6.00 / 書評数:1
2017年11月
スパイたちの遺産
平均:4.00 / 書評数:2
2017年03月
地下道の鳩
平均:6.00 / 書評数:1
2016年10月
われらが背きし者
2014年11月
繊細な真実
平均:6.00 / 書評数:1
2013年12月
誰よりも狙われた男
平均:4.00 / 書評数:1
2011年12月
ミッション・ソング
2008年11月
サラマンダーは炎のなかに
2003年12月
ナイロビの蜂
平均:5.00 / 書評数:1
2000年12月
シングル&シングル
1999年10月
パナマの仕立屋
1996年05月
われらのゲーム
平均:6.00 / 書評数:1
1994年07月
ナイト・マネジャー
平均:6.00 / 書評数:1
1991年12月
影の巡礼者
平均:6.00 / 書評数:1
1987年04月
パーフェクト・スパイ
1983年11月
リトル・ドラマー・ガール
平均:8.00 / 書評数:1
1981年05月
スマイリーと仲間たち
平均:9.00 / 書評数:2
1979年07月
スクールボーイ閣下
平均:7.00 / 書評数:3
1975年01月
ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ
平均:7.50 / 書評数:2
1974年01月
ドイツの小さな町
平均:6.00 / 書評数:1
1966年01月
高貴なる殺人
平均:6.67 / 書評数:3
1965年12月
鏡の国の戦争
平均:6.33 / 書評数:3
1965年01月
死者にかかってきた電話
平均:5.00 / 書評数:3
1964年01月
寒い国から帰ってきたスパイ
平均:7.60 / 書評数:10