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[ 本格 ]
トレント最後の事件
E・C・ベントリー 出版月: 1950年01月 平均: 6.12点 書評数: 16件

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雄鶏社
1950年01月

東京創元社
1956年01月

東京創元社
1960年01月

中央公論社
1960年09月

東都書房
1962年01月

講談社
1972年01月

早川書房
1981年04月

東京創元社
1993年01月

集英社
1999年02月

東京創元社
2017年02月

No.16 7点 八二一 2022/06/02 19:59
恋愛がプロットに上手く溶け合い、探偵の推理過程でこれが見事に生かされている。最後に判明する真犯人も意外性がある。

No.15 6点 ◇・・ 2020/03/15 17:05
探偵がヒロインに恋愛をしたために、意外な展開を見せる異色作。最後のどんでん返しが見事。すべての可能性を検討すれば、真実に辿り着く可能性は高い。

No.14 7点 弾十六 2019/10/13 13:43
1913年出版。創元文庫(2017新版)で読みました。新訳ではなく1972年大久保康雄さんの訳。
約40年前に一度読んでますが、こんなのだっけ?という感想。(ぼんやり記憶してた犯人が全然違ってました。) 恋愛描写がピュアですなぁ。途中に現れる突然の段差が良いですね。探偵小説としては、いかにも王道でシンプルな筋たてですが、謎解きのピッタリ感が心地よく、とても楽しめました。
本作には本格探偵小説っぽいゲーム感覚(p59,p64など)が明快に書かれていますが、ここで強く主張されてるのは「探偵」と「警察」の犯人探しゲームで、後年に見られる「作者」と「読者」との間のフェアプレーではありません。(まー似たようなモンですが。)
以下トリビア。先に見た原文(献辞付き。献辞の前にハムレットからの引用あり、これは文庫に無し。)は途中に省略があることがわかり、色々探したら文庫の内容に一致する版がありましたが、こっちには献辞やハムレットの引用なし。もしかして英国版と米国版では中身がちょっと違うのか?(最初に見た版では最後のNワードの歌などもバッサリ削除されてました。)
作中時間は、水曜日開催の検死査問会(二日間続いたように読める)の翌日か翌々日の感じで書かれている「6月16日(p168)」、事件発覚の前日は「日曜日(p45)」、作中で言及されてる「三年前のペンシルヴァニアの炭鉱争議(p41)」はWestmoreland County coal strike of 1910–1911(1910-3-9〜1911-7-1)と思われるので年は1913年のはずだが、それだと本書の後段で事件の1年数ヶ月後の風景が描かれてることと矛盾。なので「三年前」を無視して1911年か1912年で6月の月曜日を調べると1911-6-11か1912-6-10が候補。とすると1912年6月10日(月曜日)が事件発覚日か。(1911年6月だとペン州ストが未終結。)
現在価値は英国消費者物価指数基準(1912/2019)で113.27倍、1ポンド=15308円。
銃は「精巧な小型のピストル(A small and light revolver, of beautiful workmanship)」「アメリカから渡ってきたもの(introduced from the States)」「ズボンのポケットに入れて手軽に持ち歩きできる(easily carried in the hip-pocket)」「[米国では]これを“リトル・アーサー”と呼ぶ(This is what we call out home a Little Arthur)」まず、調べた限りではLittle Arthurのニックネームを持つ拳銃は無く、上記の情報だけでは銃の特定は不可能。口径も「同じ」と言うだけで何口径と明記されていません。なので以下は推測です。
この銃は大金持ちの関係者が「今年ここへ来る少し前に買った」もので、店に勧められるまま決めたもの。最新の拳銃で値が高いやつと考えて良いでしょう。銃を知ってるらしい米国人が「ちょっと軽すぎる」と不満げなのでやや小口径の.32口径か。「銃尾を抜いて銃腔をのぞいて(opened the breech and peered into the barrel of the weapon)」は誤訳で「breechを開いて銃腔をのぞいて」が正解。この動作が自然に行えるのはtop-breakの銃に限られます。swing-out式なら光を入れるためcylinder(ある意味breech?)を振出してから、銃口を覗いて銃腔を見るという手順でしょうが、top-break式なら銃を折って銃尾(breech)を開け、そこからcylinder越しに銃腔を覗き込めます。さらに「この型(make)」は米国由来、というのは特殊な構造のことなのでは?1887年にS&Wがポケットに入れやすいHammerless型拳銃を世界で初めて登場させてますが、これのことか。(ヒップポケットに入れるやつ、とも符合します。) 当時HammerlessはIver Johnson(7ドル,20033円)やH&R(6ドル,17171円)でも売り出していた人気モデル。一番高いのはS&W(10ドル,28619円)。という訳でS&W .32 Safety Hammerless 3rd Model(1909-1937)に決定。(あくまで個人の推測です。)
献辞の前、ハムレットから引用 ”... So shall you hear/Of accidental judgments, casual slaughters/Of deaths put on by cunning, and forc'd cause,/And, in this upshot, purposes mistook/Fall'n on the inventors' heads ...” 第五幕第二場終幕近くのホレーショのセリフ。なかなか意味深です。
献辞はThe Man Who Was Thursday(1908)への返礼でG・K・チェスタトンに。「新聞などに目をくれようともしなかった時代」を懐かしんでいます。
p12 たぶん≪スペインの女たち≫の一節でも口ずさみながら(humming a stave or two of 'Spanish Ladies', perhaps, under his breath.): "Spanish Ladies" (Roud 687) is a traditional British naval song.(wiki)チェスタトン作The Garden of Smoke (1919-10)にも登場してました。
p14 ルシタニア号(Lusitania): 進水1906年6月7日〜沈没1915年5月7日。まだ悲劇の前、当時は現役です。
p27 バスター… 速力の早い車(the Buster… a very fast motor car of his): 自動車の(個人的な)ニックネームか。ブランド名ではないと思われます。
p27 釜たきで、たかれるほうでもある… 赤帽のうたう歌(I am the stoker and the stoked. I am the song the porter sings.): 調べつかず。
p48 年額数百ポンドの収入(some hundreds a year): 200ポンドでも306万円。(月収26万円) 結構な額です。
p50 三十二(At thirty-two): トレントの年齢。作中時間の推測が正しければ1880年生まれ。作者より五歳若い設定。事件の二カ月後でも「32歳」なので、事件発生以前の誕生日と仮定しました。
p51 ポオがマリー・ロジェ殺害事件でやったこと(Poe had done in the case of the murder of Mary Rogers): 正確に訳すなら「メアリ・ロジャース殺害事件」(『マリー・ロジェ』の元ネタ)ですね。でもポオは失敗してるので、例として本当は不適当。探偵小説への言及は黄金時代の特徴。(ただし本書ではここしかない。探偵小説好きも登場しない。)
p61 春信の版画が数枚(Some coloured prints of Harunobu): 「浮世絵」と訳すのが適切か。
p73 ソーダ水の新しいサイフォン: Soda syphons were popular in the 1920s and 1930s.(wiki) 金持ちなので流行先取り。最初のSparklets syphonは1896年。
p91 メンデルスゾーン イ長調 ≪無言歌≫ 第一主題(the opening movement of Mendelssohn's Lied ohne Wörter in A major): トレントが何か見つけたときの口笛。
p101 銃身を通ったときの傷: ライフリングから使用銃を特定出来る以前の事件です。弾道検査は1925年4月にゴダードらが比較顕微鏡を開発してから。
p123 検死査問会(inquest):「かつてははなやかな役割を演じた検死査問制度… 法規や判例などの制約を受けないその制度が、いかに自由で賞賛すべきものであるかを力説」制約があまりないのか… 今まで儀式っぽい制度という印象でしたが、調べると面白そうですね。
p130 マーク・トウェーンの『ハックルベリー・フィンの冒険』という小説をご存知ですか?(Do you know Huckleberry Finn?): ここは「ハックルベリー・フィンを知ってますか?」と訳さないと次のセリフがちょっと意味不明。ベントリーさんが高く評価し「アメリカ的」と考える小説。
p145 アメリカの産業界では、労働者の不満が、イギリスでは考えおよばぬほどひどい段階に達している: List of strikes(wiki)を見ると意外と米国はストライキ大国。英国労働者にはストざんまいの印象があったので… (このリストはあまり正確ではないようです。日本の国鉄ストも一行だけしか載ってないし)
p150 名探偵ホークショー(Hawkshaw the detective): 当時の米国のスラング(a hawkshaw meant a detective) from playwright Tom Taylor's use of the name for the detective in his 1863 stage play The Ticket of Leave Man. Wikiの漫画“Hawkshaw the Detective”(1913-2-23〜1922-11-1)の頁より。シャーロックのパロディ的な名前かと思ったら、由来はシャーロックより古い! この米国漫画が作者の念頭にあった可能性は出版時期を考えると低いと思います。
p185 四気筒十五馬力のノーサンバーランドという中馬力の自動車(a 15 h.p. four-cylinder Northumberland, an average medium-power car): 架空のブランドのようです。当時の四気筒十五馬力はAustin 15 hp(1908-1910), Mercedes 15/20 hp(1909-14)など。
p191 ヴァルミエラ(Valmiera): 1911年の鉄道開通で要路となり栄えた町らしい。
p243 交響曲第9番の最終楽章の主題… 楽園のとびらが開くときのようなしらべ(the theme in the last movement of the Ninth Symphony which is like the sound of the opening of the gates of Paradise): ハイドン以降をほとんど知らない私ですが、いわゆる「第九」のことで良いんですよね。マーラーの第九(初演1912年6月)は外して良い?(これ聞いたことないので楽園のとびら云々はわかりません。) (追記: リスト編曲のピアノ版ベートーヴェン交響曲全集があるのですね… 知りませんでした。)
p296 黒んぼのじいさん、脚が一本…(There was an old nigger, and he had a wooden leg. He had no tobacco, no tobacco could he beg. Another old nigger was as cunning as a fox, And he always had tobacco in his old tobacco-box.): トレントがはしゃぎ歌う古い歌。Nワードを削ったらヒットしました。There was an old soldier又はThe Old Tobacco Boxという歌。Turkey in the Straw(日本ではオクラホマ・ミキサー)の節で歌われるらしい。某Tubeの“Turkey in the Straw (first version 1942)”で歌ってるのがそれっぽい。
p305 カムデン事件(Campden Case): 1660年に英国で起きた不思議な事件。詳細は英語wikiのThe Campden Wonderを参照。John Masefieldはこの題材で二つの劇を書いた。The Campden Wonder(1907) & Mrs Harrison(1906)

(追記)
クリスティ再読さまの評に全面的に賛成。毎回、素晴らしい感性の評文で、しかも私が狙ってる本(最近ではワイルド伝)を良いタイミングでアップしてらっしゃいます。いつも「やられた!くやしい!」と歯噛みしてるんですよ… 他の方が触れてる「ベントリーがパロディとして…」は後年の評論家が推測してるのしか、今のところ見当たらず、ベントリーさん本人の文章を見てから判断したいのですが、1913年の状況から考えてパロディにしちゃ弱いような気が…

No.13 6点 クリスティ再読 2019/08/06 21:54
本作だと第一次世界大戦直前の作品なんだもんね...ミステリとしてどうこう、というのをあまり気にせずに読むと、甘ったるいのもいいじゃないか。軽妙でユーモアもあって、しかもトレント、紳士というかイイ奴だよ。さっくり読めるヒネリの効いた話を楽しもうか。
作者はチェスタートンの仲間で、マジメに探偵小説を文学的に向上させようと..との狙いで書いたものだから、教養も不足なくって、背景とかキャラとか類型的でないリアルで描く能力がある。冒頭での被害者マスタートンの経歴だって、経済的背景をしっかり押さえて描けてるわけで、ミステリ離れしてるな。それでも黄金期以降の基準だとミステリとしてはフェアじゃないし、恋愛で道草するし..でもお育ちの良さみたいなものを感じて、なんとなく許せる気分になるんだ。
そうは言っても、一応トリックもあってどんでん返しもキッチリ決まる。そのクセに、ミステリを読んだような気が少しもしないのが、不思議な読後感である。別にこれは恋愛要素を取り込んだ云々、という話じゃないんだよ。まあ要するにこの人、ミステリ書くのが性格的に向いてないんだろうね。書かれた時期がタイムリーだったから、有名古典になっているのだけど、外れてたら埋没してたんじゃないかなあ。古典かどうか、ミステリかどうか、とかあまり関係なくて、余裕を持って何でも読める読者なら楽しめるタイプの作品である。

No.12 6点 ボナンザ 2019/06/06 22:05
乱歩が黄金期ベストテンに選出した一作。特に恋愛要素がミステリ要素と融合しているわけではないが、それぞれ上質な出来。流石。

No.11 6点 E-BANKER 2017/06/28 21:15
江戸川乱歩が激賞したことでも著名な歴史的作品。
今回、創元文庫からの復刻版にて読了。
1913年の発表。

~アメリカ実業界の巨人マンダースンが、イギリスにある別邸で頭を撃たれ殺害された。突然の死を受け、ウォール街をはじめ世界の投機市場は大混乱に陥る。画家にして名探偵のトレントは懇意の新聞社主に依頼され、特派員として現地に赴いた。そこで彼は最重要容疑者である美しき妻メイベルと出会うのだった。推理小説を旧来の型より大きく前進させ、黄金時代の黎明を告げた記念碑的名作~

紹介文のとおり、いろいろと“冠”や“形容詞”の付く作品ということで、心して読書にかかった今回。
読む前は、『赤毛のレドメイン家』と同じくらい“恋愛要素”が混じっているのかなという予想だったのだが、結果は「思ったほどではなかったな・・・」
『赤毛・・・』では探偵がヒロインに振り回される役所だったけど、本作のトレントはそこまでではなく、冷静な推理を展開する。
そういう意味でも、ごく普通のオーソドックスなミステリーとも言えるだろう。

若干違和感があるのは「構成」。
巻末解説で杉江松恋氏も触れられているが、全十六章から成る本作において、半分に達しない時点でほぼ全ての手掛かりは提出され、登場人物への事情聴衆も終了してしまう。後の半分の章について、冒頭からトレントの推理が披露されるのだが、それ以降、物語は迷走を始める。
迷いや離脱、そしてメイベルとの恋愛模様など、ミステリーの本筋からは些か脱線という具合に・・・
そして、ラストに、まさに、唐突に知らされる本当の銃撃犯!
これは現代風にいえば、「大どんでん返し」或いは「サプライズ」になるのだろうか?
(終章のタイトルが「完敗」であり、ラストシーンが「乾杯」なのはダブルミーニングなんだろうな・・・)

割と辛口に書いてるけど、別段レベルが低いわけではない。
評論家的にいえば、黄金期への橋渡しとしての役割を担った作品だろうし、楽しめる作品には仕上がっていると思う。
何より、第一次大戦前という時代に、ここまで洗練された物語を書けること自体、さすがは大英帝国ということだろう。

No.10 6点 りゅうぐうのつかい 2016/04/06 07:17
探偵小説と恋愛小説との融合であることに意味があったし、「最後の事件」であることにも意味があった。事件の状況づくりに工夫が凝らされているし、二転三転するストーリー運びも面白い。真相につながる証言が、さりげなく盛り込まれているのには感心した。
ただし、トレントの推理は、ある人物に特殊な能力があることを知らなければできないので、それを知らない読者には無理。その人物が最後に行う供述の一部は、判明している事実を無視したものなので、おかしいことに気づくのは容易。
アンチミステリーとしてみれば、面白い作品。

No.9 6点 ロマン 2015/10/20 18:16
タイトルからいくつかの結末を予想して読み進めていったのだけれど、見事にやられてしまった。発表年を考えると、「えっ、この時代にもうこういうのがあったんだ」という驚きがある。探偵小説に初めて本格的に恋愛要素を導入した作品、という前情報もある意味誤導になっていたものらしい。ひっくり返しの回数やタイミングもバッチリ、じつにスマートで小気味よい読後感になっている。この手の古典としてはなかなか愉しい作品だった。

No.8 9点 斎藤警部 2015/08/04 06:31
とても若い時節に読み、「こ、これは特別な傑作推理小説だ!」と感服したものです。
どうしてそう思ったのかは、再読してみないと正確には分からないが。。結末の反転に、それ迄の読書経験に無い異様な美しさを感じ取ったのは思い当たる要因の一つです。
今も心の片隅で仄かな光りを放ち続ける一作です。

No.7 9点 蟷螂の斧 2015/06/09 10:32
江戸川乱歩氏が選んだ「黄金期のベスト10」のラスト1冊として拝読。マイ評価は下記のとおりとなりました。
             当サイト平均点 マイ評価
1位「赤毛のレドメイン家」  6.10    5 
2位「黄色い部屋の謎」    6.48    7 
3位「僧正殺人事件」     6.55    5 
4位「Yの悲劇」       8.14    8 
5位「トレント最後の事件」  5.00    9 
6位「アクロイド殺し」    8.15   10 
7位「帽子収集狂事件」    6.20    5 
8位「赤い館の秘密」     5.79    6 
9位「樽」          7.08    6 
10位「ナイン・テイラーズ」 6.20    8 

本作がこのサイトでは低評価なのに驚き!(笑)。現在風に言えば「アンチ・ミステリー」として書かれたもののようです。ベントリー氏いわく「これが探偵小説というより、むしろ探偵小説を揶揄したものであることは、あまり気づかれなかったようだ」とあります。つまり、いままでの短編小説(ドイル氏など)に登場した超人的な探偵ではなく、人間味のある探偵を描きたかったようです。恋と事件の真相で苦悩する姿など、その意味では多いに成功していると思います。歴史的評価が高いことが、充分うなずける1冊です。「最後の事件」とした皮肉も効いていますし、物語の展開(二転三転)も当時としては中々のものであると思います。最後の行「この秘宴の勘定を、あなたに払っていただくことにします」は、大のお気に入りになりそうです。

(追記)海外著名ミステリ作家26名のお気に入りの作品でレジナルド・ヒル氏(英作家)ピーター・ストラウブ氏・ジャック・バーザン氏(米作家)の3名が本作をベスト10に選出しておりホッとしています。

No.6 4点 nukkam 2014/08/13 19:10
(ネタバレなしです) 英国のジャーナリストであるE・C・ベントリー(1875-1956)が発表した本書は歴史的傑作として評価の高い作品なのですが、kanamoriさんのご指摘の通り、普通のミステリーにしか感じられず何が凄いのか私にはさっぱりわかりませんでした。多分発表された1913年では相当モダンな作品だったのでしょう(1900年代から1910年代にかけてのミステリーの中では洗練された文体だと思います)。当時としては型破りであろう結末、そしてシャーロック・ホームズやそのフォロワーである古典的名探偵とは違う探偵役を登場させたというのが画期的だったんでしょうね。でも現代の読者が発表時代順にミステリーを読むわけではないし、むしろ現代ミステリーから手をつけるのが普通でしょうから、歴史的価値は認められても現代水準で評価すると平凡な作品という位置づけに留まってしまうかもしれません。

No.5 5点 TON2 2012/12/09 19:06
集英社文庫「乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10 ⑤」
(ネタバレ)
 恋愛とミステリーの有機的結合が成功した作品として、近代ミステリーの開祖ともされる作品です。
 早い段階での謎解きが、最後に見事に覆され、あらたな真実が提示されます。
 アメリカの大富豪が、自分を愛さない妻への復讐として自殺という手段をとろうとするでしょうか?あまりにピュアすぎる。

No.4 6点 2010/11/05 21:14
本格派黄金期の幕を開ける作品だとか、謎解きと恋愛の初融合だとかいう歴史的な評価が高い作品ですが、どうなんでしょう。だいたい余計な恋愛を否定したヴァン・ダインの20則は本作発表の10年以上後のことです。実際には創元版解説でも引用されている作者自身の「推理小説を皮肉ったもの」という言葉がぴったりくると思います。黄金期を迎える少し前に現れたひねりのきいた異色作という歴史的位置づけの方がいいのではないでしょうか。
要するに構成がかなり変なのです。恋愛要素もこの風変わりな構成にはうまくはまっています。また最後は一応伏線があるとは言え、おいおいと言いたくなるようなどんでん返しです。
名探偵トレント「最後の」事件というのも、なんだかこじつけめいています。この点ではクイーン中期の作品も思わせるところがあったりして(全然深刻ではないですけど)。

No.3 5点 kanamori 2010/07/21 21:29
本格ミステリに恋愛を持ち込んでプロットの綾としたという事ですが、現在読めばごく普通のミステリ。
とりたてて、優れたアイデアはありませんでした。

No.2 6点 測量ボ-イ 2010/05/19 20:56
トリックは確かにありきたりで古めかしいですが、書かれた
時代を考慮すれば、やむを得ませんね。
何といっても黄金時代の直前の作品ですから。
最後のドンデン返しはミステリ初心者には新鮮かも。

No.1 4点 Tetchy 2008/08/14 12:05
論理一辺倒という左脳的文学の本格ミステリに恋愛という情の右脳的要素を盛り込んだことで歴史的の価値のある本書。
しかし21世紀の今、何かを期待して読むと、かなり辛いものがある。
登場人物の微妙な綾まで書かれているので、私にしてみれば、一つ一つの事実を拾うより、行間を読むことで犯人が解ってしまった。


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E・C・ベントリー
2000年06月
トレント乗り出す
平均:6.50 / 書評数:2
1950年01月
トレント最後の事件
平均:6.12 / 書評数:16