皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格 ] シャム双子の秘密 エラリイ・クイーン、国名シリーズ |
|||
---|---|---|---|
エラリイ・クイーン | 出版月: 1958年01月 | 平均: 6.08点 | 書評数: 24件 |
早川書房 1958年01月 |
新潮社 1960年01月 |
東京創元社 1960年03月 |
角川書店 1967年01月 |
早川書房 1978年06月 |
KADOKAWA/角川書店 2014年10月 |
グーテンベルク21 2015年04月 |
No.4 | 7点 | nukkam | 2009/05/08 11:53 |
---|---|---|---|
(ネタバレなしです) 1933年発表の国名シリーズ第7作は国名シリーズの中でも屈指の異色作です。まず「読者への挑戦状」がないこと(とはいえ謎解き伏線はちゃんと張っています)。そして閉ざされた山荘を舞台にして登場人物を限定していること。無駄に登場人物が多くてごちゃごちゃしている過去の作品に比べてかなり読みやすい作品です。秘密主義者と言ってもいいエラリーが早い段階から推理を披露しているのも珍しいです。山火事と謎解きとのサスペンスの相乗効果が秀逸です。 |
No.3 | 7点 | 空 | 2009/02/25 21:35 |
---|---|---|---|
前作が、少なくとも共犯者になり得る人間が2万人もいるというシチュエーションだったのに対して、今回は容疑者の数が最初からきわめて限定されています。迫りくる山火事や二転三転する事件の流れなど、サスペンスに重点を置いた、国名シリーズ中の異色作ぶりは、かなり気に入っています。シャム双子に対する作者の視線が横溝正史などと全く違うのにも、好感が持てます。
次作『チャイナ橙』では、前回は読者への挑戦を入れ忘れていた等ととぼけていますが、そうではないでしょう。真犯人を指摘する論理は、クイーンには珍しく弱いものです。もちろん、その答ですべてのつじつまが合ってくることは確かなのですが、いつもと違い、他の可能性を否定しきっていないのです。 ただし、ダイイング・メッセージと、それから導き出される推理については、初めて中心に据えた長編だけに、凝りまくっていながら最終的に不自然でない形にまとめていて、そこはさすがだと思います。 |
No.2 | 3点 | 響の字 | 2009/02/06 21:12 |
---|---|---|---|
パニック物を採用したクローズドサークル。オカルト的な描写を盛り込もうとして失敗した感があって、ミステリとしては・・・
よく言えば凡庸。 辛く言えば失敗。 クイーンはもっと王道で勝負するべき。 余談だが”綾辻行人の『暗黒館』を読んだ事が無いんだけど読んでみようかしら”と思っている人はその前に是非一度。ささいな処で笑えます。 |
No.1 | 4点 | Tetchy | 2009/01/25 19:18 |
---|---|---|---|
カナダからの休暇旅行の帰りに山火事に出くわし、アロー・マウンテン山頂に聳え立つ館へ避難を余儀なくされるクイーン親子。
そこで殺人事件が起き、警察が来られない事で捜査を一任されるというクローズト・サークル物。 クイーンの国名シリーズでも異彩を放つ本書は、なんと定番の“読者への挑戦状”が挿入されていない。 それでも私は推理に挑戦したが、確かにこれは挑戦状を挟めないなぁ。 クイーン親子が館に辿り着く前半は、怪しげな館の住人たち、道中ですれ違った車の存在を誰も知らないこと、クイーン警視が見た蟹の化け物、などなどクイーンらしからぬ怪奇趣味が横溢してあり、新機軸かと思われたが、それらの謎はいとも簡単に明かされ、その後はオーソドックスなミステリに終始している。 もっと魔物の仕業としか思えない殺され方とか、曰くありげな館に纏わる因習など、カーなら絶対に盛り込むであろうオカルト趣味が持続すればよかったのだが、あまりに平凡すぎるし、エラリーは何度も推理を間違うし、最後の決定打は理論的にも押しが弱いしと、物語が進むに連れてスケールが尻すぼみしていった作品だ。 |