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[ 短編集(分類不能) ]
作家刑事毒島
毒島シリーズ
中山七里 出版月: 2016年08月 平均: 6.25点 書評数: 8件

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幻冬舎
2016年08月

幻冬舎
2018年10月

No.8 6点 斎藤警部 2023/10/24 20:44
「確かにね。でもデビューする前から僕は刑事だったんだよ」

出版界の内部や周辺に蠢くゲスい奴ら(※)が容疑者になったり被害者になったり。 事件を解くのは「元現場刑事/現在は刑事技能指導員兼人気ミステリ作家」の毒島真理(ぶすじま・しんり 本名 まさと)。 現役作家ならではの業界知見と猛獣級の毒舌を武器に、敵味方(?!)双方に煙たがられながら、原稿の締め切りもキッチリ守りつつ真犯人を追い詰める彼は意外と年配だ。

ワナビの心理試験/編集者は偏執者/賞を獲ってはみたものの/愛瀆者/原作とドラマの間には深くて暗い川がある

ゲス野郎共の戯言と毒島さんの口撃に翻弄され凄まじいリーダビリティに流されっぱなしでうっかりしていたけれど何気にミステリ要素もそこそこ悪くないですぜ。。全五作中三作は結構な「意外な犯人」攻めと言えましょう。ただ、中の一作は ‘その前の作’ と犯人の立ち位置が似過ぎでちょっと分かり易かったかな。ヒントとなるキーワードも光り過ぎだし。そこだけちょっと惜しい。 とは言え、この異様なゲス言動vs毒舌の応酬に目くらましを任せた形の真犯人隠匿術はなかなかのもの。 中でも或る一作の犯人設定は、熱かったな。。。。

(※)そうとは言えない感じの人も登場します。

No.7 6点 ミステリーオタク 2021/04/15 20:15
毒島(ぶすじま)という何ともやりきれない名字の作家刑事が、マインドポイズンで犯人を責め落とす様を出版業界を舞台に描いた異色ミステリ風短編集。

《ワナビの心理試験》
ワナビ・・・知らなかったなあ。それにしても痛快、痛快。

《編集者は偏執者》
前作と似たような設定だが、二作目ということもあってか業界論の展開がちょっとダラついた感じでウザかった。

《賞を獲ってはみたものの》
こんな殺害方法があったとはね。しかし終盤の「ツアー」には笑った、笑った。犯人なんか誰でもいい。

《愛涜者》
前三作とは少しニュアンスを変えて、それなりの意外性もあるが「本の出版関連事情」に精通している人以外は、ミステリとしてのカタルシスは得難いのではないだろうか。まあその分野の勉強にはなるが。

《原作とドラマの間には深くて暗い川がある》
出版業界とテレビ業界の交錯が描かれ読み物としては面白かったが、これもミステリとしてはねぇ~。


繰り返しになるが、個人的にはミステリとしてより業界内部事情と毒島のエキセントリックストラテジーを楽しめた短編集だった。

No.6 7点 メルカトル 2020/11/01 22:39
新人賞の選考に関わる編集者の刺殺死体が発見された。三人の作家志望者が容疑者に浮上するも捜査は難航。警視庁捜査一課の新人刑事・高千穂明日香の前に現れた助っ人は、人気ミステリ作家刑事技能指導員の毒島真理。冴え渡る推理と鋭い舌鋒で犯人を追い詰めていくが…。人間の業と出版業界の闇が暴かれる、痛快・ノンストップミステリ!
『BOOK』データベースより。

一読後中山七里やるなと思いました。なかなかここまで突っ込んだ内容の作品は書けませんよ。出版業界の闇と影の部分を鋭く抉っている訳ですが、誰にも忖度せず誰にも迎合せず、アンチが増えることを想定しながらも、読者や作家志望者を揶揄するような皮肉を多分に有し挑発する姿勢には感心しました。ここまでやればむしろブラックと言うより清々しさすら覚えます。それでいてミステリとしても中身がしっかりとしていて、凄く充実しています。最終話ではおそらく氏自身もジレンマに陥ったであろうと想像される、原作と映像化との乖離にも言及していますし、本作でかなり重要人物と目される人間でさえ、容赦なく天誅を下している辺り、並みの作家でないことを自ら証明しているとも言えます。

辛口オトメとか図書館ヤクザとか、どんな人権侵害をしているのだろうかと思いましたが、ちゃんとフォローしているではありませんか。図書館で借りられる境遇にいる人は図書館を利用すればいいし、借りた本に対してどれほどの書評をしようと構わないと言明しています。これは作者の最低限の配慮と良心だと思いますが。

No.5 2点 mediocrity 2019/03/22 19:36
①ワナビの心理試験
読んでいてこれほど不快感を覚える小説も珍しい。最後きれいにまとめたつもりかもしれないが、その程度では消えないレベルの不快度である。ストーリーもつまらなかった。
②編集者は偏執者 
ストーリー上、登場人物をけなすことは必要とはいえ、あそこまで下劣な言葉を並べる必要があるのかと疑問に感じた。読んでいて気が滅入った。毒島の忍び笑いはひたすら気味が悪い。この作品ではしつこいくらい何度も出てくるが誇張抜きで鳥肌物だ。
③賞を獲ってはみたものの 
仮にも新人賞を取った作家の発言が揃いも揃って軽薄なのはフィクションとしても無理があると感じた。それをさておいても、この話の面白さはよくわからない。あと、2作目を書くのに10年かかっても別に良いのではないかと思った。
④愛瀆者
辛口オトメの0点評ですら、上記3作の罵詈雑言に比べると読むに耐える。犯人当てミステリ風だが、犯人がわかりやすすぎるのは難点か。だって3人とも高森がいないと困るんだから。
⑤原作とドラマの間には深くて暗い川がある
意外な犯人のつもりなんだろうけど別に・・・

この作家の本は初めて読むが、どうも自分と笑いのツボが違うようでほとんど面白さを感じられなかった(解説の後の3行もウケ狙いなのだろうが全く笑えなかった)。
それ以上に「毒」がほとんど「罵詈雑言」にしか聞こえないのはいかんともしがたい。
①0点!(by辛口オトメ)②1点③2点④2点⑤3点 平均1.6点てことで

No.4 6点 蟷螂の斧 2019/02/11 09:34
(ネタバレあり)
5篇の短篇集。ミステリー的には、完全なアリバイものと意外な犯人ものが楽しめた。共犯は好みではないが、共犯を逆説的な観点から捕らえた物語は新鮮に感じられた。また、サイン本の仕組みや、初版、第2刷版が作家にとってどういう意味を持っているのか等の専門的なディテールから真相を導き出す作品もあり、勉強になりました。なお、本作は「毒島」の名の通り、全篇ブラックユーモアに満ち溢れています。ある女性書評家が登場。彼女は書評なるものを始めたが至極簡単で、自己顕示欲を満足させられる。現実の世界では自分の意見を聞いてくれる者など誰もいない。しかしネット書評でベストセラーをこきおろす時だけは世界の女王になったような優越感を味わうことができる。点数をつけるのは裁判官になったような陶酔を覚える。しかも図書館から借りているので投資額はゼロだ。耳が痛い(爆笑もの)。

No.3 8点 名探偵ジャパン 2019/02/03 14:27
タイトルが表すとおり、全編「毒」にまみれた作品です。
作家志望の素人、編集者、新人作家、読者(ネットの書評サイトに酷評を投稿している人含む 笑)から、実写化を手掛けるテレビ局プロデューサー、脚本家まで、ありとあらゆる「文芸」に関わる人たちをことごとく斬り、読む人をも汚染していく毒です、この本は(笑)
これと同じものをそこらの作家が書いたら、「何だこれ」となるところですが、超人作家、中山七里が書くことで俄然、異常な迫力と具体的な説得力を得ることとなります。
この本を読めば、中山七里に限らず、コンスタントに作品を出し続けている職業作家たちが、いかに常人離れした怪物であるかが分かります。

正直、ミステリとしての部分だけを取り出すと特に見るべきものはありませんが(ミステリになっていない話もありますし)、描かれた出版業界の内幕があまりに面白すぎるので、この点数を献上せざるをえません。

あと、この本によれば、プロ作家はこういった書評サイトなど見ないそうです。ちょっと安心しました(笑)

No.2 8点 makomako 2018/12/14 19:37
 これは面白い。とんでもない作家志望連中が大量に出てきて、しかも彼らはプライドが高く自分が無能なことを全く分かっていない。
 こんな奴が文学賞に応募してきたり、自作を出版社に持ち込んだりしたら対応が大変です。当然不採用となるのだが、当の本人は自分の才能を信じて疑わず作品を不採用としたことはけしからんとのたまう。
 文学賞への応募作品は大量にあるのだから、これを全部読むということはほとんど不可能なのでしょう。下読みといった人に読んでもらい、その中からよさそうなもののみを予選通過とする。従って下読みはとんでもない小説を大量に読まされることとなる。落とされた当人は最高の作品と思い込んでいるので、憤懣やるかたない。結果むちゃくちゃのねじ込みやこの小説にあるように殺人まで起きるということとなる。いやー、大変ですな。どうなることかと思っていると、作家刑事の毒島が快刀乱麻に解決する。めちゃくちゃ意地悪でプライドのみ高い作家たちを完膚なきまでにやっつける。
 とっても爽快。
 毒島は解説の知念さんの言葉からしても作者自身が色濃く出ているようです。さらに最後のページにはこの作品は完全にフィクションです。でも状態は悪化の一途をたどっていますと書かれています。すごいことですね。

No.1 7点 HORNET 2017/09/16 10:15
 犬養隼人の元先輩であった毒島は、ある事情でいったん退職し、なんとミステリ作家となったが、兼業という形で刑事として再雇用された。
 出版業界の人間が苦手な犬養は、業界にからんだ事件を相棒の高千穂と毒島にことごとく振る。本作はそんな毒島と高千穂を主とした連作短編になっている。

 一編ずつフーダニットのミステリになってはいるが、初めから容疑者は数名に絞られ「犯人はこの中の誰?」という、オーソドックスな展開。作品の面白さはそれ以上に、毒島のまさに「毒」のあるキャラと、出版界に関わる人々や人間模様の酷さにある。
 「中学生の作文」のような作品を大作と信じて疑わず、賞への応募作を落とす審査員を逆恨みする作家志望者。新人賞を獲ったはいいが、自身の文学観とやらをこねくりまわずだけで一向にその後の作品が出ない「巨匠病」の新人作家。作家への偏執的なストーカー・・・等々、そうした人たちを、笑みを浮かべながら飄々と糾弾する毒島の物言いが痛快で、笑わずにいられない。
(因みに、「いっぱしの書評家よろしく書評サイトに投稿するネット書評者」というのも登場するのでなかなか耳が痛い(笑))

 ミステリとしての書評なので、これでも抑えめの採点。読み物としてはサイコーに面白かった。

 最後の、奥付のページ(「この物語はフィクションです・・・」のくだり)を是非見てほしい。爆笑必至です。


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