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[ 社会派 ]
ネメシスの使者
中山七里 出版月: 2017年07月 平均: 6.00点 書評数: 3件

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文藝春秋
2017年07月

文藝春秋
2020年02月

No.3 6点 makomako 2020/03/15 08:57
中山氏の活躍ぶりは目を見張るものがあります。多作なのに内容が充実している。すごく忙しく執筆しておられると書評に良く書いておりますが、内容が伴わった上での多作というのはなかなかできないものと感心しています。
 この作品も巧みな展開で決して読者を飽きさせません。内容も濃く素晴らしいのですが、私としては岬の息子さんが活躍する作品のほうが好みです。
 この作品は小説として完成度が高いと思いますが、作者の主張が強く反映されており、それが間違っているとは思いませんが、必ずしも全面的に共感するに至らないからかもしれません。
 小説としては素晴らしいと思います。

No.2 6点 HORNET 2018/06/30 09:24
 この作品のメインテーマである「死刑制度の是非」や「犯罪者の更正を主眼にした現在の刑罰」といったことは、しばしば氏の作品内で論じられる。少なくとも中山氏は罪に応じた厳罰を科すべきという考えを持っているように感じる。
 
 残酷な殺人を犯しながら、死刑を回避して懲役囚となり、刑務所に収監されている囚人の家族が相次いで殺害された。現場には血文字で「ネメシス」と書かれたメッセージが。渡瀬警部は、過去の事件の関係者を洗うとともに、その事件の判決に関わった法曹関係者にも目を向ける。すると、「ネメシス」の標的になった過去の殺人事件は、「温情判事」と名を馳せた渋沢判事が判決を下しているという共通点が見つかった。そして、一つの事件では検事側に岬検事の名も。
 家族を殺された被害者による復讐か、それとも義憤を謳う第三者の犯行か。現行司法制度への反逆とも言える犯行に、渡瀬らは警察の威信をかけて捜査にあたる。

 捜査過程で描かれる被害者遺族の慟哭と、渡瀬の煩悶と矜持が作品の柱。一応フーダニットではあるが、読者が手がかりを追って推理をする余地はほとんどなく、真相の意外性という点で楽しむタイプのもの。
 個人的には、渋沢判事が最後に言った「死刑は極刑などではない」という論調にはうなずける部分があった。

No.1 6点 蟷螂の斧 2018/02/01 21:31
初老の女性の刺殺体が発見され、現場には「ネメシス」という血文字が残されていた。彼女は通り魔事件の犯人の母親であった。「ネメシス」とはギリシア神話に登場する復讐の女神である。被害者家族による復讐劇なのか?・・・。死刑制度、被害者家族と加害者家族の問題を扱った社会派色の強い作品。一筋縄で終わらない点は著者らしいが、そろそろエンタメ系の作品を読んでみたい気もする。


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