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ミステリの祭典

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シーマスターさんの登録情報
平均点:5.94点 書評数:278件

プロフィール| 書評

No.78 6点 シンデレラの罠
セバスチアン・ジャプリゾ
(2008/05/06 20:31登録)
こんなんだったっけ・・・・・・・・・・・

短いから許せるけど読みにくいね・・・・・
翻訳が恐ろしく拙劣なのかとも思ったが、それ以上に原著自体が途轍もなくトッチラカった文体で、訳者は何とか意味が通じる日本語に置き換えるのに目が青くなるほど苦労したが段々メンドくなり直訳羅列・・・・・・・・んなわけないか。

今ではこの程度のヒネリは何てこともないが、本作を本家取りしている綾辻氏を始め、ドンデンが売り物の現代ミステリ作家の少なからずが、こういう作品の影響を受けてるんだろうね。


No.77 6点 そして誰もいなくなる
今邑彩
(2008/04/25 21:32登録)
かの名作を読んでいた方が楽しめるかもしれないが、未読でも普通に楽しめると思う。作者が(悪戯心から)わざとキワドイ表現をしている所もあるが、それだけにネタバレはないはず。(たぶん)

内容に関してチョコっと苦言を呈させて頂くと・・・
「見立て殺人」なんて噂が出たら、2人目までは止むを得ないにしても、本件では(見立てを採るなら)それ以後のターゲットが明白なんだから、警察や学校が(半信半疑であったとしても)非常事態として、そして何より家族が彼女達を聖火を守るが如くガードするのが普通ではないか?
実際に何人か死んでいるわけだし、如何なる理由があろうと1人で外出させたり家に残したりはしないんじゃないかと思うがね。(でも、そうしたら本作はできないけどね)

まぁ硬いことは抜きにしても、読みやすい上に小振りながら捻りも結構入っているので、余剰時間の消費には適した本と言えそう。


No.76 6点 栄光一途
雫井脩介
(2008/04/18 21:36登録)
柔道は割と好きだし、試合場面などは読み応えあるが、メインはドーピングの調査で地味な展開なので終盤までは中々読み進まず。
ドンデンもさほどではない(というか唐突な感じが強い)ので、興味が薄い人にはあまりオススメできない。(東野氏の野球や鳥人のようにはいかない)

主人公が本件のような仕事を背負わされること自体、不自然感が否めないが(これは話の流れ上、目を瞑るとしても)こういう競技は基本的に男子と女子は別物ではないだろうか。女子部の女性コーチが男子の選考試合の審判をしたり指導に関わることってあるのかな。

末節だけど、スポーツジムにしてもアスリートが利用するような施設で、プールがないとか夜10時過ぎには誰もいなくなるなんて・・・・あり得ない。
また主人公がペンチプレス台に縛られ120キロのバーベルを持たされるというリミットエクスキューション・・・に文字通り必死で耐えるシーンは超不謹慎ながら笑ってしまった。(ちなみに私は挙がります・・ってくだらん自慢するな)

【以下ネタバレ】



柔道界のトップエリートの中に、こんなに異常者がいるというストーリー自体受け入れ難いものがある・・・五輪出場権を逃したことを逆恨みして主人公の家にネジ込んでくるドーピング選手、これだけでも十分異常なのに、その他に自らの精神高揚のために行きずりの他人を柔道技で殺傷する通り魔が2人もいて、挙げ句の果てに訳の分からない動機で片方が他方を刺殺・・・・・・・ちょっと酷過ぎやしないか・・・

結局(薬物汚染+)サイコサスペンスだったというわけだが、国民的英雄のようなお方が選手にドーピングさせていたなんていう話まで出てくると、全柔連関係者が読んだら激怒ものだろう。(いや、笑い飛ばすよね)


No.75 4点 クライマーズ・ハイ
横山秀夫
(2008/04/04 23:07登録)
400ページ以上ある割りにはペロッと読めてしまうので、新幹線や「飛行機」なんかで読むには最適かも。

ただ、ドキュメンタリータッチにしては結局何が言いたいのかよくわからない。
「報道の理想と実情」や「家族・仲間の絆」などがテーマなのだろうが、記者である主人公自身が、広告掲載を忘れたり、スクープを逃がしたり、部下を死なせたりするくせに、やたらと鼻っ柱が強く上司にもすぐ逆ギレするだけでなく、新聞作成において報道の常識や客観性よりも私情に走ったり・・・・・何か中途半端でリアリティも損ねている。
田舎の新聞社ではこういうのも通用するのかな? 最終処分も「田舎⇒温泉地勤務」という厚待遇。

新聞は「インテリが書いてヤクザが売る」などと揶揄されることがあるが
「チンピラが作って・・・」という気さえ・・・

感動?の部分は、いかにもっていう感じでドラマっぽくて微笑ましい。
読後感も「まぁハッピーエンドでよかったね」


No.74 6点 ミステリアス学園
鯨統一郎
(2008/03/30 23:27登録)
(ストーリーはともかく)ミステリの入門解説書として初心者向けの講義がふんだんに盛り込まれているが、自称中級者の自分でも勉強になるのみならずニヤリとさせられるヤリトリも多く、それ以上の方でも楽しめると思う。

最終章は何か既視感があるなーと思ったら、この人「文章魔界道」の作者だったんだね。(そんな本誰も知らねぇって)

最後の「意外な犯人」・・・作者が用意したこの正体の二歩手前、一歩手前まではミステリ論として聞いたことはあり想像範囲内だったが、最後に提示される「犯人」・・・これは前代未聞。

しかし、それ以上に度肝を抜かれたのが巻末の「本格ミステリ度MAP」・・・何と(現代の)国内作家が論理度とミステリ度からなる座標図に大胆にマッピングされている。

それについては何とも言えないが、全てのミステリファンが一度は目を通す価値がある本と言ってもいいだろう。


No.73 6点 13階段
高野和明
(2008/03/29 00:59登録)
ミステリとサスペンスに跨る作品だが、前者としてはそこそこ、後者としてはかなり面白いと思う。

死刑囚が陥る無限の恐怖、執行関係者を襲う底知れぬ重圧とトラウマなどが生々しく描かれ、更に死刑制度が孕む人間の根幹にも関わる様々な問題点が登場人物達を介して如実に焙り出されている。
死刑の是非などは未来永劫に渡り決着されることはないと思うが、廃止論に関しては個人的には「被害者遺族が唱える廃止論」だけが説得力があると思う。
それ以外の廃止を主張する法律家や人権擁護派に関しては、少なくとも「あなたの奥さんや娘さんがレイプ殺人され両親が焼き殺されたとしても、その犯人の死刑に反対しますか?」という問いに対し、家族の前で堂々と「イエス」と答え得る人のみが廃止論を展開する資格があるのではないだろうか。

少々脱線したが(本作は死刑廃止とは関係ない)本編に戻ると、殺人が被害者・加害者の家族に齎す生涯に渡る絶望的な物心両面の重荷もリアルに描写されているが、特に2人の父親の姿は最近の理不尽な殺人事件関連の報道とダブるものがある。

全体の流れとして、かなりのところまで『○の△』のパクリかとも思わせられる辺りは、作者の意図したものか訊いてみたいところ。


No.72 6点 メドゥサ、鏡をごらん
井上夢人
(2008/03/19 22:21登録)
確かに、これは如何なるジャンルに属する話なのかカテゴライズが難しい。
純なミステリやサスペンスでないことは明らかだが、ホラーかと言われると所謂ホラー映画のような怖さがあるわけでもない・・・・・まあ強いて言えばやっぱホラーかな。ってか分類する必要もないか。(何をグダグダ・・・)

結局、数々の不思議な出来事、終盤の△★?#$@な展開は何だったのか・・・

自分は、この作品は先入観を持たずに入ることができたので、冒頭から最後まで「どんな展開になるんだろう」という気持ちを抱き続けることができ、読んでいる間は楽しめた。(それで十分)
読後感は、全然違う系統だけど『2001年宇宙の旅』を見終わった後の感覚と少し似ていた、ことに後で気がついた。(A.C.クラークさんのご冥福を心からお祈り申し上げます)


No.71 6点 凍える島
近藤史恵
(2008/03/12 23:05登録)
孤島の連続殺人・・・この触れ込みだけで食指がムズムズ。

絶対に「ー」(伸ばし棒?)を使わない文字表記などはともかく、感性に任せて書いたような主観が強い情景表現が性に合わず、前半は中々読み進まず。

自分的には2人死んだあたりからエンジンがかかり、3人目、つまり残り5人になってからようやく「欲しかった感覚」が湧いてきた感じ。
(しかし『誰が殺したんだ。責めないから言ってみろ』には笑った)

終盤での「もしかして超アンフェア?」とも思わせる意外な展開などで、途中までの入れ込めなさも挽回していただき、ミステリとしては楽しめた。

この作品の何年も後に『この島でいちばん・・』のような半端な孤島モノを書いている辺りは何とも不思議な作家だと思う。


No.70 6点
麻耶雄嵩
(2008/03/09 00:54登録)
はじめからの少し変な叙述に、「コレは仕掛けだな」と大抵(この本を読むくらいの読者なら)感じると思うが、途中あるものが使われるため「ん?」と混乱させられるところは面白い。
もう1つの「驚くべき」トリックは、「驚くことに驚かされる」という非常にユニークなもの・・・これが成功したのか否かは読む人によるだろうが、その斬新な試みは高評価に値すると思う。

殺人事件としては「それでオマエが殺すか?」の類だが、まあこれも十角館などと同様に動機を云々するような話ではないだろう。


No.69 6点
荻原浩
(2008/03/01 22:31登録)
夜さんとほぼ同じ感想。
噂ほどの衝撃はなかった。

猟奇殺人を舞台に、警察機構の一歯車として靴をすり減らし続けるヤモメ刑事、彼の中で葛藤する娘への思いと(妻を亡くしてから抑え込んできた)最前線への執着、後家刑事とのコンビ活動、7,8年前の渋谷の女の子達・・・・・・などがリアルに描かれていて読み物としては面白い。

事件に関しては、ガジェットが全てOOOで片付けられるのはイマイチだが、本格ミステリのつもりで書かれた話ではなさそうだから、そこを不満とするのは筋違いかもしれない。


No.68 6点 扉は閉ざされたまま
石持浅海
(2008/02/22 23:01登録)
クローズド系の倒叙・・・・これだけでも珍しいので新鮮味を期待したが・・・

読み物としては十分面白い。
印象としては『そして扉が閉ざされた』の内と外を入れ変えた感じ・・・特に後半において(2人だけの「対話」以前の)議論がしつこく空回りするあたりは既視感タップリ。
前半の同窓会での会話も読んでる方が恥ずかしくなってくるヤリトリが満載・・・・

終盤の「対話」は「頭脳明晰な探偵役(この人は本当に怖い)によるロジック・チェックメイト」と言えるが、この殺人の動機に納得できる普通の大人が一体どれほどいるのだろうか。
これなら東野圭吾のデビュー作の方がまだ分かると思う。


No.67 8点 首無の如き祟るもの
三津田信三
(2008/02/19 23:36登録)
基本的に旧家だとか祟りだとかは苦手だし、神社の~堂や~塔などの構造もうまくイメージできなくて結構キツイものもあったが、文章そのものは読み易いこともあり、何とか完読・・・・・・した価値は十二分にあった。

メイントリックは決して斬新なものではないが、「それ」の暴露によって、数多くの不可思議な謎が一気にクリアされる構図は見事というほかない。
特に「婚舎の集い」での連続殺人における「who? why? how?」に対する「それ」の効用は奇跡的ですらある。
また最後の方で炸裂するドンデン連射も実に楽しい。

ただ、冷静な視点に立てば、いずれのトリックも推理もチョット厳しいなぁというトコロが少なからず引っかかるのは如何ともし難い。
・・・が、それらに目をつぶっても「組み立て方、見せ方」において「勝ち作品」と言えると思う。


No.66 6点 クラインの壷
岡嶋二人
(2008/02/08 23:07登録)
読み物としては面白い。
ただ、文字通りゲーム感覚、平たく言うと暇つぶし的な面白さだった・・個人的には。
「バニラ・スカイ」なんていう映画なんかとも似たテイストだと思うが、ヴァーチャルリアリティがテーマのミステリとなると、細部はともかく大局的にはこういう展開しかないのかなー。
結末ももっと捻れば・・とも感じたが、キリがないしね。
20年ぐらい前の作品だから的外れかもしれないけど、キャラ設定なんかもなんとなくベタ。


No.65 7点 しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術
泡坂妻夫
(2008/02/05 20:12登録)
作者の芸人魂に心から敬意を表します。


No.64 6点
麻耶雄嵩
(2008/02/01 23:48登録)
(若干ネタバレ・・かも)


この話の主要なトリックは
 ①「ある感覚」の特性
 ②精神要因
 ③叙述によるミスリード
・・・・の3つだと思うが、①は「ああ、アレね」 ②は「またソレかよ」であり、③には驚いた向きも多いだろうが折原一なんかの作品では腐るほど蒔かれているタネであり、いずれも単品では(特に前2つは冴えない)カバーでしかない。

しかし、それらが作者が創造した1つの閉ざされた特殊な世界に組み込まれることにより、斬新で味わい深いミステリであり完成度の高い物語のパーツとして、憚ることなく生かされている・・・この辺りにこの作者の真の意味での鬼才ぶりが発揮されているのではないだろうか。


No.63 6点 インシテミル
米澤穂信
(2008/01/23 23:42登録)
設定は「そして誰も~」と「そして二人~」と「クリムゾン~」を足して3で割ったような感じで、個人的には大いにそそられた。

展開は、かなりゾクゾクするところもあったが全体的には期待したほどの盛り上がりは感じられなかったなー
また、もう少しケレン味があってもよかったのでは、とも思うが、インディアン人形などを鑑みても、「使い古されたコケオドシなんか使わないよ」という作者の意図があったようでもある。

不明点や不満点もチラホラ残るが、現時点におけるクローズドサークルの一つの到達点(言い換えれば限界点)を示す作品かもしれない。


No.62 6点 戻り川心中
連城三紀彦
(2008/01/20 23:41登録)
個人的には好みとは言えないが、客観的には素晴らしい文芸ミステリだと思う。

大正から昭和初期の退廃的な世情を背景にして、詩情溢れる流麗な文体と水墨画あるいは印象派の画風で描いたような情景に彩られた殺生劇。
ミステリとしても、某人気作家Hの某作品Ⅹを思わせるようなネタもあったりして、どの作品も動機の意外性、切なさは秀逸。
ただ表題作は芸術家気質に偏りすぎ。


No.61 6点 回廊亭の殺人
東野圭吾
(2008/01/19 21:08登録)
意外な真相や強烈なエンディングは面白いと思うが、それまではありがちな山荘系ミステリという感じで正直退屈。

この作品は(僭越ながら)主人公がラストまで正体を明かさない形で『ある閉ざされた・・』タイプの視点交代型ストーリーにしたら、最後の驚きが増すだけではなく、〈謎の毛髪、不審な足跡、不可解な絞扼痕〉なども相俟って、全体的にももう少しスリリングな展開になったかもしれない。


No.60 5点 第三の時効
横山秀夫
(2008/01/14 19:43登録)
リアルっぽい警察物に本格っポイ仕掛けをくっつけた点が斬新さを感じさせないでもない作品・・・が並んだ短編集。 
同僚の足を引っ張ってでも手柄をゲットすることに執念を燃やす刑事達の熱い物語。

 〈沈黙のアリバイ〉 トリックは月並みだが、取調べの攻防や人間性の暴き合いはまあ面白い。
 〈第三の時効〉 タイトルの意味については「ふーん、そんなこともあんのかねー」としか・・・・その辺の事情には疎いもので。   この話のボス刑事は大したものだと思うが、犯人側のトリックは目新しいものでもないし、本筋と無関係な情話を中途半端に織り込んだあげく、それを本編と絡めて強引に纏めようとしたりするのも△
 〈囚人のジレンマ〉 捜査一課の赤裸々な内情やマスコミとの微妙な関係などは興味深いし、犯罪ストーリーとしての構成もなかなか。 オチでもある仄かな人情劇も悪くないが、この顔触れでやられても砂漠に無理やりオアシスを造った感じは如何ともし難い。
 〈密室の抜け穴〉 ホシを取り逃がした後の捜査会議において、責任の擦り合いからチンピラ張りの怒号と罵声の応酬乱舞・・・これは楽しい。トラップもイケてるが、トリックは古臭い。 「奴に花を持たせるぐらいなら手抜きをする」刑事にも飽きた。
 〈ペルソナの微笑〉 ある刑事が自分のトラウマとダブる事件を追う・・・ヘラヘラ人間にも2種類あるらしい。    
 〈モノクロームの反転〉 このネタは江戸川乱歩級のクラシカルではないかね。 
上司に背いてでも相手に競り勝つことしか考えていない2人の班長刑事は相変わらずだが、あるものを見た片方がようやく「捜査は被害者のため」であることに気づき・・・・・・・
だが、どうせなら最後に2人で盛大に殴り合いでもすればよかったのに。 


No.59 6点 殺人症候群
貫井徳郎
(2008/01/08 21:15登録)
症候群3部作の最終章にして最重量作。

少年法の壁の前になす術がない被害者遺族は、どう生きていけばいいのか。  一生、絶望的な悲恨と鬱屈の布団に包まって生き続けるしかないのか。

法が裁かない極悪犯を駆除することは悪なのか?
悪というならそれは何故か?・・・社会秩序に反するから?
法律は誰のためにあるのか?  正義とは何か?


表面の事象の割りに長すぎる感も否めないが、殺す者、殺される者、肯定する者、否定する者・・・・それぞれの心情、人間観、生き様を渾身の筆致で描いた所産であり、この問題に対する作者の思い入れが身を切られるほどに伝わってくる大作である。
誰にでも薦められる作品ではないが、本日、飲酒運転事故の判決を下した福岡地裁の裁判官には是非読んで頂きたい。

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