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ミステリの祭典

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クライマーズ・ハイ

作家 横山秀夫
出版日2003年08月
平均点7.00点
書評数21人

No.21 5点 みりん
(2023/03/19 21:43登録)
途中からノンフィクションなのかと錯覚させられるくらい重厚なヒューマンドラマでした。
新聞社の描写が非常に克明でへえ〜こんな感じで新聞作ってるんだ〜となりましたが作者の前職業が新聞記者だったと聞いて納得です。 
ミステリ要素はほぼ皆無です。

No.20 6点 パメル
(2021/01/30 10:35登録)
日航の御巣鷹山事故を題材に、群馬の新聞社で繰り広げられるドラマを描いている。つまり、取材し、報道する側のドラマである。作者は実際に事故当時新聞社で働いていたらしく、その時からずっと温めていた題材であることが想像できる。
あらゆる人間ドラマがぶち込まれた全体小説の趣を呈しており、単純に事故の経緯と決着を追うストーリーではない。日航機の事故はむしろ触媒であり、その触媒に触れてあらわになる新聞社の体質、人間の卑小さあるいは尊厳、報道とは何か、新聞社の使命とは何か、人の絆とは何か、そして人間の生命の軽重とは何かなど大き過ぎる問題に真正面から向き合い、そして格闘し続ける。
事故を報道していく中で、全権デスクに任命された悠木はさまざまな試練に、決断に、そして分岐点に直面する。「世界最大の事故」で後輩が活躍することを妬み、妨害する上司、想像を絶する現場に触れておかしくなる記者たち、事故原因に関する抜きネタ、人命の軽重に疑問を投げかける一通の投書。事故原因の抜きネタを打てるか打たないか、つまり群馬の一地方紙が世界を駆け巡る特ダネをものにできるかできないかという未曾有のチャレンジを描いた章、そして悠木が一人の女子大生の投書を紙面に載せるべく記者生命を賭ける章が最高の盛り上がりを見せる。
とにかく、経験者にしか描けないと思わせるディテールが圧倒的で、新聞社の中の組織の壁や自衛隊嫌い、中曽根派福田派といった社内の綱引きなどすさまじい迫真性で読ませる。その中で動き回る悠木の内面描写がまた素晴らしく、彼の思いは状況の変化とともに揺れに揺れるのだが、このリアルな揺らぎを作者は的確に、ダイナミックに描いていく。
ここにさらに、悠木の友人で元・山男、事故直前に倒れて植物人間になった安西、というキャラクターが加わる。彼が残した「下りるために登るんさ」という言葉が彼の頭から離れない。そしてこの安西をキーパーソンにして、悠木の家庭内の問題まで取り込んでいく。少し欲張りすぎとも思えるが、本書はこれにも成功している。日航機事故ストーリーの額縁として現在の悠木の登山エピソードが使われているが、このエピソード中、安西の息子のセリフ「そのハーケン、淳君が打ち込んだんですから」には泣ける。おまけに、大きいだけに収束に時間がかかる日航機事故を扱った物語の締めくくりとして、この登山エピソードが見事に機能している。

No.19 6点 バード
(2019/08/08 23:01登録)
全体的には結構楽しめた。ただし、序盤、中盤、終盤全部を楽しんでたかというとそうでもない。正直中盤あたりは読んでてかなりだれた。(というのも特ダネか!?残念、記事にはなりませんの繰り返し。)

そもそもマスコミは情報を加工して程度の差はあれど偏向報道してるんだから、新聞だって所詮、とてもノンフィクションに近い作り物。その作り物に正義だの真実なんだのを読者に押し付けるのは記者のエゴでしょ。悠木がいかにそれらしいことを吠えても、記者の内部争いを白い目で読んでいた自分がいて、いまいち登場人物に感情移入できなかったのである。だから途中まではイマイチと感じていた。

しかし、望月彩子の投書をめぐっての最後の60ページくらいはお見事。大事な言葉を切らずにそのまま採用した悠木を他の記者たちが庇うのは当然でしょう。最後の最後でようやく登場人物と価値観を共有できて楽しめた。

横山さんの作品は64に続き2冊目だけど、僅差で64の方が好きかな。(10点満点の点数上では同じ点だけどね。)

No.18 9点 いいちこ
(2015/10/15 17:19登録)
新聞編集の現場にかかる描写のリアリティ・臨場感については、作者自身の実体験に由来するもので、もとより申し分ない。
そのうえで本作では、事件の舞台として御巣鷹山ではなく一地方新聞社を選択しながら、全く無駄のない磨きあげられた、それでいて情熱がほとばしるような筆致で、凄惨な事故とその影響を克明に描き切っている。
そもそも作者の筆力の高さについては疑う余地のないところ、本作は他作よりさらに一段以上高いレベルの出来栄えと言っていい。
その中で、「報道とは何か」「命の重さとは何か」というテーマを掲げ、組織の論理に翻弄される個人の葛藤、スクープと遺族への共感の間で揺れ動く個人の葛藤を抉り出した。
一方、本作への批判点として、主に以下の2点が挙げられるのではないかと思われる。
まず、主人公の人柄(傲慢な態度、判断のブレが大きい、感情に流されやすい、私情優先等)に感情移入しづらいという点については、本作の主人公として公私にわたって隙のないエリート記者ではなく、暗い過去や人格上の欠点をたくさん抱え込んだ等身大の一記者という人物造形を求めたのだと解したい。
次に、本作の落とし処が安易であるという点については、20年近い会社人生を陽のあたる社会部記者として過ごし、臨時待遇とはいえデスクまで勤めあげた人間にとって、残る会社人生20年にわたる過疎地勤務を受け入れるのは、ある意味では退職するよりも過酷な判断であり、安易なハッピーエンドとは受け取っていない。
以上、瑕疵が皆無とは言わないものの、本格ミステリ以外の広義のミステリとしては満点に近い評価を献上したい

No.17 8点 E-BANKER
(2012/06/05 15:56登録)
1985年に発生した日航ジャンボ機墜落事故。突如発生した未曾有の大災害に沸き立つ地方新聞社を舞台にした、作者渾身の作品。
事件が発生してはや25年以上が経過・・・時の流れは早いね。

~1985年。御巣鷹山に未曾有の航空機事故発生。衝立岩登攀を予定していた地元紙の遊軍記者・悠木和雅が全権デスクを任命される。一方、ともに谷川岳に登る予定だった同僚は病院に搬送されていた。組織の相克、親子の葛藤、同僚の謎めいた言葉、報道とは?あらゆる場面で己を試され篩に掛けられる。作者渾身の傑作長編~

これは熱いねぇー。それ以上に「男くさい」って言うか、「男くささが充満した」作品。
作者自身、日航機事故発生当時は、群馬県の上毛新聞社の記者だったという経緯もあって生まれた作品なのだろうが、とにかく臨場感がハンパではない。
これまで、作者のプロットのうまさ、筆の確かさは他作品で十二分に味わってきているが、本作はそれにプラスして、読者への訴求力とでもいうべき「熱き魂」を感じざるを得なかった。

主人公の悠木は、作者を投影した姿なのだろうか?
とにかく、彼の事件記者という仕事に対する「姿勢」そして「想い」が心に染みた。
内面では、仕事に対しても、家族に対しても自信を持てないのに、それでも自分が信じた「新聞記者」に向かって突き進んでいく姿、そして行動力、汗・・・全てが男の矜持を表しているようで何とも「眩しい」のだ。
やっぱり、男っていうのは己の仕事に「誇り」を持てないようではダメなのだろう。
それを今さらながら思い知らされたような気分。

で、本筋については、ラストが測ったようなハッピーエンドで終わったのが救われたような、ちょっと陳腐なような複雑な感覚。
もう少し余韻をひくようなラストならもっとよかったかとは思う。それが唯一の不満点。
まぁ、決してミステリーではありませんので、評点としてもこの程度に留めますが、「小説」としてなら15点くらいは付けたい作品。
(御巣鷹山がこんな惨状だったのなら、東日本大震災後は一体どんな惨状だったのか? 想像を絶する・・・)

No.16 8点 HORNET
(2011/01/10 11:47登録)
 組織の中で葛藤し,自分の立ち位置を見出すために戦う個人というヒューマンドラマとしては一級品だと思います。ラストのあたりで,皆が「同志」となって結束するくだりは,クサイといえばクサイですが,やはり胸が熱くなるものがありました。「ミステリー」ではないので微妙な評価となりましたが,氏の最高傑作といって差し支えのない出来だと思います。

No.15 3点 江守森江
(2009/10/14 12:48登録)
自分の「広義なミステリーマップ」内に位置できるか微妙な作品で「ミステリの祭典」なので3点にした。
一般小説としてなら作者の最高傑作と評されても納得できる。
映画・ドラマの両方を観てから原作をオサライしたので小一時間で読了した。
当時、一歩間違えば(前日に利用)墜落機に搭乗してただけに生々しい。
※ここから余談
地下鉄サリン事件も一時間違いですり抜けた。
自分の強運に感謝・・・本当に強運なのか?
変な感慨に耽ってしまった。

No.14 5点 yoshi
(2009/08/13 05:31登録)
組織対個人を描かせると実にうまい人ですね。
きっとサラリーマン時代にそればっかり考えていたんでしょうね。
筆力はありますし、描写は細かい。
でも自分の体験したことだからそれは当たり前かな。
結局何が言いたかったのか、よくわからなかった。
それから上司にはせめて敬語を使おうよ。

No.13 9点 E
(2009/06/10 23:11登録)
自分の中で横山秀夫氏最高作です!!
新聞記者の葛藤が生々しく、スピード感溢れて描かれています。ミステリー・・・として読むものではないですが、面白い!!記者で(だった)なければ書けないでしょうね。
自分の「信念」を貫けなかった部分も現実味が増して凄かった。小説だったら格好良く貫かせる所なのに・・・
記者の視点から見た「戦後史上最大の航空機墜落事故」の物語。
凄い、です。

No.12 6点 spam-musubi
(2009/06/03 16:30登録)
とても面白い小説だと思います。
が、謎解きといえるのは、友人が死んだ理由を
突き止めるくだりくらい。
それも、社内の人間関係の醜さを際立たせるための
設定に過ぎず、謎解き自体がこの本のテーマでは
ありません。
このサイトにあるべき小説ではないのでは?

No.11 6点 白い風
(2008/10/11 20:29登録)
初めての横山さんの長編作品でした。
映画化もされていたし、ちょっと期待が大き過ぎたかな。
日航ジャンボ事件を軸に同僚安西の事故が絡み、導入部分はワクワクドキドキ。
で、読み進めていくうちに「あれ?これミステリ?」
これ、狭義で云うとミステリじゃない気がする…。
主人公の行動も結局ほとんど空回りだった気がするし…。
読み終わった後、「よく映画化したな」と思いました。
逆に映画ではどのようにアレンジしてあるのかが興味ありますね。

No.10 7点 あびびび
(2008/04/06 14:23登録)
主人公があまりに傲慢なのでは。なんやかんやで正当化してしまうが、組織の中であれほどわがままが通せるか疑問。ただライブ感覚で楽しめるのは確か。

No.9 4点 シーマスター
(2008/04/04 23:07登録)
400ページ以上ある割りにはペロッと読めてしまうので、新幹線や「飛行機」なんかで読むには最適かも。

ただ、ドキュメンタリータッチにしては結局何が言いたいのかよくわからない。
「報道の理想と実情」や「家族・仲間の絆」などがテーマなのだろうが、記者である主人公自身が、広告掲載を忘れたり、スクープを逃がしたり、部下を死なせたりするくせに、やたらと鼻っ柱が強く上司にもすぐ逆ギレするだけでなく、新聞作成において報道の常識や客観性よりも私情に走ったり・・・・・何か中途半端でリアリティも損ねている。
田舎の新聞社ではこういうのも通用するのかな? 最終処分も「田舎⇒温泉地勤務」という厚待遇。

新聞は「インテリが書いてヤクザが売る」などと揶揄されることがあるが
「チンピラが作って・・・」という気さえ・・・

感動?の部分は、いかにもっていう感じでドラマっぽくて微笑ましい。
読後感も「まぁハッピーエンドでよかったね」

No.8 8点 itokin
(2008/03/21 18:36登録)
数ある横山作品のなかでもぐいぐいと最後まで引っ張る力は特筆です。そして、最後に感動のある終わり方は余韻が残って好きです。

No.7 9点 naotooo
(2008/02/10 01:51登録)
一気に読ませる筆力に圧倒されます。仕事、家庭、人間関係に悩みを抱えつつ懸命に生きようとする主人公に、同世代の日本人の多くが深い感銘を受けるはず。ミステリのカテゴリに入れていいかどうか疑問ですが、小説としての出来栄えは文句なしです。

No.6 6点 akkta2007
(2007/07/22 16:41登録)
横山作品の中では今までのものと少し感じが違うかな・・・
しかし作品自体はとても充実したものであった。
記者の経験を元に書き出される内容は読者を引き付けるものがありスムーズに読むこともできた。
ストーリーの中で、二転三転ではないが・・・
あればもっと良かったのでは・・・と思った。

No.5 9点 ひこうき雲
(2007/05/26 01:13登録)
1985年夏の群馬県御巣鷹山へ日航ジャンボ機墜落事故時の地方紙の記者を中心に描かれた物語ですが、著者がこの事故時群馬の地方紙の記者ということだけあって、実に内容がリアル。
この時の新聞社組織内部との紛争、全国紙とは戦い等、もちろん内容はフィクションですが、ノンフィクションのように思えてしまう程のものがあります。そして、人間くささがいい。最後は感動が待っています。

No.4 9点 sophia
(2005/05/09 16:18登録)
これが横山秀夫の最高傑作でしょう。
元新聞記者じゃないと書けない作品ですね。

No.3 9点 ふぇでら
(2005/01/25 19:10登録)
冒頭から山場の連続で息つく暇が無い、これだけ物語に引き込まれたのは何年振りだろう。
高村薫氏「照柿」に次ぐ暑さ・・・夏に読めば良かった。

No.2 8点 どんたま
(2004/11/04 23:11登録)
読ませますね。泣き所もあるし、ただ汗臭い、華がない。まあそれを言っちゃあ身も蓋もないか...

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