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ミステリの祭典

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作家 麻耶雄嵩
出版日2004年08月
平均点7.06点
書評数49人

No.49 6点 パメル
(2021/05/22 09:27登録)
久しぶりにクローズドサークルものが読みたくなり手にとった作品。オーソドックスな展開とはいえ、閉ざされた館での殺人事件には惹きつけられる。登場人物もそれぞれ怪しげで魅力的。
重層的なトリック、しかも一つ目のトリックを見破った読者ほど、二つ目のトリックに陥りやすくなるという構成が巧妙。一つ目のトリックについては序盤で訝り、中盤でのある二人の会話で違和感を覚える人が多いのではないか。つまり一つ目のトリックは作者が、わざと読者に気付かせようとしているのではないかとも思える。
読者に対する手掛かりと、登場人物に対する手掛かりが必ずしも一致しない、認識にズレがあるということを思いがけない形で顕在化させた試みには唸らされた。仕掛けが犯人特定に直結している点も好印象。
麻耶作品に精通している人にとっては、地味で作者独特の良さが味わえないらしい。その点はあまり気にならなかったが、リーダビリティについては、改善の余地があるだろうと感じた。(ある理由で仕方ないのではあるが...)

No.48 7点 じきる
(2020/12/10 01:19登録)
麻耶にしては地味な感じは否めないが、二つ目のトリックの騙しのテクニックは見事です。

No.47 8点 okutetsu
(2020/09/19 23:52登録)
一つ目のトリックに関してはミステリ読み慣れたら途中で気付けるレベルだと思うし、自分レベルでも見破れた。
それでネタが割れてつまんないな~と読み進めたら最後の最後でどんでん返しにあってびっくり仰天。
ここまできれいに騙されたのは久々である。
まぁこのトリックを使う必要性があったのかは疑問だけど。
共犯者の動機がいまいちわからないし、真相、ラストの展開などは好きではないので減点だけど久々にやられたって感じを覚えたのでこの点数。

No.46 3点 mediocrity
(2020/07/16 18:14登録)
前にもどこかで書いたが、置いてなさそうな所にトリックが置いてあれば、それが大したものでなくても驚けるのだが、間違いなく仕掛けてるのが分かっている所にどんな見事なトリックが置いてあっても「へえ、うまくできてますねえ」で終わってしまう。
この作品はまさにそのパターンだった。もうちょっとトリックのありかをうまく隠せないものかと思う。入念に読んでいれば違和感を感じる箇所が多すぎるのだ。凝っているとは思うんだけど予定調和で驚きが全くない、非常にもったいない作品だと感じた。
エピローグもなんでこんな結末にするのかよくわからない。この方はこういう結末が多いが、私にはワンパターンですべってるようにしか思えない。

No.45 8点 雪の日
(2020/04/15 15:05登録)
麻耶雄嵩の作品で一番好きです。

No.44 6点 レッドキング
(2018/06/09 10:38登録)
「翼ある闇」や「夏と冬の奏鳴曲」のとんでもトリックに目を眩まされるが、麻耶雄嵩って、基本、ロジックの人だと思う。短編のみならず、この作品以降は長編もそうだ。そのせいで「閉ざされた館」「 秘密の通路」「 鍾乳洞」と舞台仕立てはタップリと揃っており、さらに叙述トリックのサービスまで付いているのに、なんか地味だな。

No.43 6点 虫暮部
(2017/03/30 10:16登録)
 イチャモンをつけるなら、これはあまり"螢”って感じじゃないな~。人物、館や楽団の名として繰り返し登場する語だが、作品世界を貫いて象徴するにはイメージがなんか違う。もっとぴったりはまったキーワードがあれば作品に凄みが出たのでは。

No.42 4点 群衆の人
(2017/03/16 23:56登録)
※ネタバレ注意

作者の真面目さが伝わってくる文体で好感は持てた。ただ余り話が盛り上がらない。やんちゃなキャラでも一人いればと思うが、隠し事が多いので難しい所。
人称のトリックは主眼ではないだろう。似た作例は多いし、盗○シーンなど結城昌治の「視○」そのままだ。
やりたかったのは「○○手のみ騙されていない男○」のほうだと思うが、こちらもアイフェンドルフの『愉しき放浪児』(別題『のらくら者』)以来、いくつか作例がある。40代かつ京大ミステリ研出身の作者が知らないわけはないので、犯人限定の手掛かりに活用している点がアピールポイントなのかもしれない。ただそのぶん登場人物の行動が不自然・複雑になっているため(何とマジに男○しているのだ)、評価は微妙。
この作品で初めてこの手のネタを知った人の感動はわかるが、文学の冒険は今に始まったことではない。

(アイフェンドルフの長編はかつて何種類もの訳本があり、子供向け文学全集でも読めるくらいの人気作だった。平成になっていきなり消えたのはたぶん孤児・浮浪者ものだからだろう。不具者や癩病患者をネタにした作品が消えるのは仕方ないが、あれは残しておいてもよかったのではないか)

No.41 8点 邪魅
(2017/03/01 07:53登録)
素晴らしいです

人称誤認トリックについてはすぐに気付いたのですが、もう一つの大トリックには気付けませんでした
ミステリに読み慣れている読者ほどもう一つのトリックに驚けるんじゃないでしょうか
それにしてもこんなトリックがあったとは脱帽です

No.40 5点 sophia
(2016/05/28 19:20登録)
陳腐でしかも荒っぽい叙述トリック。読んでいて違和感を感じない人はいないでしょう。○○の主観描写だとすると明らかにおかしなところがいっぱいありますから。もう一つの叙述トリックに関しても、だからなに?という感じですし。これらの小細工は正直言って無い方がよかった。それよりもホラー部分をもっと掘り下げて欲しかったです。
もう一つ、○○が殺人鬼ジョージだったという事実がどうも受け入れられない。そういう裏表がありそうな人物には描かれていなかったので、唐突な感じがしました。

No.39 8点 風桜青紫
(2015/12/29 06:58登録)
設定だけ見ればなんとも地味な作品なんだが、トリックの試みについては実に強烈。一発目のメタトリックについては驚いたものの完全に初見というわけでもないのでそこまでの衝撃はなかった。しかしそれを利用した二発目のメタトリックにはさすがに「ここまでやるか!」と悲鳴をあげたくなるようなショックがやってくる。仕掛けだけで長編を支えられてしまうあたり、さすが麻耶雄嵩といったところ。実際のところ、二つ目のトリックはうまく作中に絡んでいるかは微妙なんだが、この切れ味はそれを差し引いても価値があるだろう。というわけで8点。

No.38 7点 龍樹
(2015/12/17 11:57登録)
基本点:4点
あまり切れはよくないけれど、叙述トリックが二つあり:+1点
「犯人」と「共犯者」の設定に:+1点
消去法で犯人を詰めていくロジックに:+1点
合計:7点

「閉ざされた山荘」ものだが、不可能犯罪ものでも連続殺人(まあ複数死ぬけれど)ものでもない。秘密の通路や隠し部屋、さらには地下鍾乳洞まで出てくるが、豪華な外連味はなく、淡白なサスペンスの味わい。「木製の王子」までの長編の「設定の妙味」から、短編と同じく「ロジック」へと趣旨が移行している。

No.37 8点 ロマン
(2015/10/20 23:23登録)
語り手と某登場人物の一人称に違和感を抱きながら読み進めるも騙された。読者は当然のように知っている内容を登場人物達が知らないがために騙される、という話を事前に聞いていたがこういうことか、と。ラストの場面は、十年前の事件と対応させるならある意味綺麗な終わり方といえるのかもしれない。内容に関していえば後味が悪いが、文章に隠された叙述の罠に注目しながら謎解きをする、という意味では楽しめる作品であると思う。

No.36 6点 ボナンザ
(2015/10/11 11:33登録)
麻耶にしてはおとなしめの作品ではなかろうか。
東野の某作と似たようなトリックでありながら全く違う読了感なのは面白い。

No.35 8点 いいちこ
(2014/12/29 10:52登録)
ネタバレを避けるためには多くは語れないのだが。
1つ目のトリックを敢えて見え見えにさせることで、2つ目のトリックの存在を巧妙に隠蔽。
それでいて、随所でかなりの綱渡りを演じ切っており、誤認強化と伏線配置のバランスが実に巧妙。
2つ目のトリックは、ありふれた手口を単なるサプライズではなく、事件の真相を解明するために不可欠な手がかりとして使用している点、1つ目のトリックとの補完構造になっている点が画期的。
事件の謎自体に意外性が乏しい点が難点だが、焦点はそこではない。
一見すると中盤までは凡作に見えるが、それさえも作者の意図するところ。
敢えて凡庸なローキックを連発し、狙い澄ましたハイキックで一発KO。
作者らしからぬ地味な印象を与えるが、計算され尽くしたゲーム運びはさすがの一言で、再読して良さがわかる作品

No.34 8点 アイス・コーヒー
(2014/05/11 13:12登録)
十年前に大量殺人が起こったとされる山奥の館「ファイアフライ館」。螢をイメージしたその館で、殺人事件が発生する。事件の裏には凶悪殺人犯のジョージが関わっていた。

麻耶雄嵩のノンシリーズ長編。中盤ではかなり地味な展開で、少し退屈していたが…、本作も麻耶雄嵩にしか書けないミステリだった。
全編を通して「館」シリーズのような印象を受ける。学生たちが集まった奇妙な館で殺人が起こる、典型的なパターンだ。従って、中盤までは既視感とわざとらしさで退屈に過ぎていく。
しかし、終盤に差し掛かると「意外な事実」が次々と判明し怒涛のクライマックスへ…。奇怪な幕切れも見どころである。
本格ミステリとしてはかなり複雑な部類に入る。読了後もよくおさらいをしないと、真相を理解することはできない。なぜなら、真相とトリック、物語が密接に関係しているからだ。「論理の為の物語」であり、「トリックの為の論理」であり、「物語の為の論理」になる円環構造はかなり特殊だ。
難点は、「難解であること」、「螢と本編の関係性が薄い事」、そして何より「中盤までが退屈なこと」。また、メルカトルのような超越的存在が登場しないというのも残念である。しかし、本作が傑作であることもまた事実だ。
(以下ネタバレ)


本作には二つの叙述トリックが使われている。一つは語り手の誤認に関するアレだが、これは比較的簡単に気付くことが出来る。麻耶氏は、このトリックによって長崎の人格崩壊を描写したかったのだろうか。
もう一つはいわゆる逆叙述。著者が著者だけに警戒はしていたが、それでも不意打ちだった。伏線はいくつかあるが、最大のものはイニシャルだろう。(登場人物のイニシャルがS・S=佐世保佐内、H・H=平戸久志となっている中で松浦のみがM・C=松浦千鶴となっていた事。松浦将之だとM・Mになる。)苗字の共通点(長崎か石川の地名)とこれには気づいていたが、まさか手がかりだったとは。
また、本書が加賀螢司の交響曲と同じ展開だったことも著者のこだわりある演出の一つだろう。

No.33 5点 あのろん
(2014/03/04 15:11登録)
読みにくい文章で、やっと読み終わった感があります。
あやしいなぁ、と思ったところは、やっぱり!という感じで楽しませてもらったのは確かです。
でもラストはどうかなぁ…

No.32 6点 蟷螂の斧
(2013/11/24 14:38登録)
プロローグの2月17日朝刊「26日遺体発見」が矛盾しているで、どういうトリックを使うのか?で頭を使ってしまいました。本文で26日は16日の単なる誤植だったことが判明(苦笑、この時点でかなり興ざめ)。女性の存在(目次には載っているのですが・・・)は、物語の流れ・雰囲気を変えてしまったように思え、第2弾の興ざめとなってしまいました。ただ、2つの叙述は面白い試みであると思いました。エピローグでの一人とは、2つの事件が相似形であることより、○名(所在地)より判断すると○○であり、かつ○人であると推測しましたが、さてどうでしょうか・・・。

No.31 6点 smk
(2013/10/07 23:19登録)
一人称だか三人称だかよくわからず混乱する文章手法。
平戸氏がつねにちゃちゃを入れるとあるのに、それがないのはちとアンフェアかな。
○別誤認トリックは必要性はあるんだろうか。確かにいまどきボクっ娘かよとは思いましたが。
最後の終わり方は嫌いではない。

No.30 9点 kowai
(2013/07/28 10:18登録)
地味なミステリだなと思いながら、なんか違和感あるあるナーと。どっちも見抜けません、というか気がつきませんでした。。からくり判明後要所要所を再読。。地味どころかえらいアクロバットですな。。。

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