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ミステリの祭典

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第三の時効

作家 横山秀夫
出版日2003年02月
平均点7.68点
書評数50人

No.50 8点 ALFA
(2023/08/29 08:47登録)
6編からなる警察ミステリー。

以前親族にちょっとした事故があって警察署に出向いた時、対応してくれた部署が「強行班」と聞いてギョっとしたが、そうか強行班は刑事の花形部署なんだ。そうするとあの時お目にかかった背筋の伸びたお兄さんは花形刑事だったのか。

この作品、三つの強行班長のキャラが立っていて面白い。それぞれを主役にした三篇がやはりいい。どれも読者が推理する余地はあまりなく、作者のドラマティックなネタ割りを楽しむ作品だろう。中でも表題作「第三の時効」と「沈黙のアリバイ」が読みごたえある。

連城の短編とも比較されるが、あちらがカミソリならこっちは出刃包丁の切れ味。血と汗の匂いがする。乾いた文体もよく似合う。

No.49 7点 八二一
(2023/08/22 20:08登録)
主婦、証券マン、調理師と三つの連続殺人事件が起こった。F県警は巧妙に仕組まれた事件に取り組むが。
刑事らの個性や苦悩、警察内部の覇権争いなど、リアルなプロットで描いた6編の連作短編集。

No.48 8点 みりん
(2023/03/23 07:15登録)
【ネタバレがあります】

沈黙のアリバイ 7点
タイトルの通り否定も肯定もされない沈黙のアリバイと取調室での狡猾な立ち回りが面白い。

第三の時効 9点
殺人事件の時効制度が撤廃された今はもうお目にかかれないトラップ。

囚人のジレンマ 5点
「F県警捜査一課の砂漠には水も緑もあった」
1番警察小説らしい話。

密室の抜け穴 9点
イヌワシと3班・村瀬の策謀・タイトルのミスリード&ダブルミーニングが至高。1番面白かった。

ペルソナの微笑 8点
境遇が似ている主人公と犯人が根本的に同類ではなかったことに気づく。矢代がペルソナの微笑から解放されて欲しかった。

モノクロームの反転 7点
「嘘を納めたタイムカプセル」が秀逸 

同じ横山英夫の短編集の「臨場」と比べても一つ一つの短編の完成度が高いと感じました。

No.47 7点 パメル
(2020/06/26 19:34登録)
一班、二班、三班とチームが3つあり、事件によって担当する班が違う。そして仲が非常に悪い。それぞれの班長もロジカルでクールな朽木、謀略型の楠見、天才的な閃きを持つ村瀬と個性的。班ごとの権力争いに加え、班内での出世争いなどの軋轢もあり、凶悪事件に対処すると同時に内部対立もあるということで、常にストレスを抱えている。
「沈黙のアリバイ」で朽木の読みの深さに唸り、「第三の時効」で楠見の冷血さとシャープさに慄然とし、「密室の抜け穴」で村瀬の深慮遠謀に茫然となる。
それぞれのストーリー展開も凝っており、先が読めないし、どんでん返しがあり、濃厚な人間ドラマがある。警察組織内部の葛藤もあり、それらが渾然一体となって進んでいく。作者が読者をどこへ連れて行こうとしているのか最後までわからない。プロットの巧妙さには驚かされた。

No.46 8点 雪の日
(2020/04/15 15:13登録)
読みがいのある短編集。特に表題作。

No.45 10点 タピオカ
(2019/08/19 23:32登録)
個人的に短編集のオールタイムベスト。

どの短編も面白く読めてハズレがない。

お気に入りは「沈黙のアリバイ」、「第三の時効」
「ペルソナの微笑」。

No.44 8点 斎藤警部
(2018/01/27 23:34登録)
これはなかなかにヤヴァい短編集。連城ファンを警察小説に嵌めるトラップとして激マブ度A+、のブツが六作中三作もあった、それは「沈黙のアリバイ」「第三の時効」「ペルソナの微笑」。中でも最初の二つはキラキラした特別感満載で余裕の8.5越え。他の三つも読み応え充分の良作。それにしてもほんと、連城短篇の「色恋」要素を「警察」に置き換えた(&文章がいい意味で素っ気なくなった)みたいな作品群です。現代人必読(笑)。

No.43 9点 文生
(2017/10/30 16:36登録)
警察小説としての重厚な人間ドラマに本格ミステリのようなトリッキーな仕掛けが絶妙なバランスで配合された連作ミステリー。完成度の点でいえば数ある横山作品の傑作群の中でもこれが最高峰でしょう。

No.42 8点
(2016/03/31 10:26登録)
強行犯係の刑事だからといって、正義感だけで仕事をするのではない。面倒なヤマが回ってきた、貧乏くじを引いた、というような感じに、刑事をその辺にいる会社員みたいに描写してあるところが面白い。
作品全体には陰鬱感が漂っている。刑事たちは会話が刺々しく、みな柄が悪い。そもそも横山作品には清涼感のある人物が登場しないのかも。
でも、だからこそ、涙を誘うような場面がなくても、ときおり些細な優しさが描写されるとオアシスのように感じられ、効果抜群となる。
最近読み始めた誉田哲也の警察ミステリーとは真逆の位置づけだが、エンタメ作品として甲乙つけがたい。

6編の中では、ラストがお気に入りの『囚人のジレンマ』、反転が見事に決まる『密室の抜け穴』が好み。他作品もみな技巧的で、ミステリーとしてハイレベル。もれがないので代表短編集として人に薦めることは多い。

一般的にベスト短編集として本書を押すファンは多い。好みだけでは『動機』、『臨場』が上位だが、総合的には本書がベストか。未読の短編が数冊、長編は多く残っているので、これからも楽しめそうだ。

(これだけ褒めながら、変な話ですが・・・)
横山短編全般にいえることだが、いま読むと、かならずしもベストではない。横山作品が再読に向かないのか、作風に新鮮味を感じられなくなったのか、自身の嗜好が変わってきたのか。

No.41 7点 いいちこ
(2014/04/07 17:19登録)
文章は決して上手い方ではない。
しかし、非常に短い各センテンスが訥々とした独特の語り口で読ませる。
各話ともプロットは緻密で合格ラインを超えているが、とりわけ最終盤で二転三転する表題作が抜群のデキ。

No.40 7点 まさむね
(2013/10/19 22:14登録)
 評判どおりの高水準短編集。一気読みでした。
 個人的ベストは,やはり表題作。タイトルが直接的に示す事項についても「へぇ~」的な驚きがあったのですが,これはまだまだ序の口。その後の重層的反転が実にお見事。事件関係者の心理描写がこれまた見事で,短編とは思えない厚みを感じます。
 一方で,最終話は(あくまでも他の収録作品に比してですが)ちょっと落ちるかな…との印象もあり,総合的にこの点数とします。

No.39 6点 take5
(2013/08/18 21:28登録)
短編がこれだけ秀一ならば
時代を経て何かのランキングの一位も
納得です

No.38 7点 simo10
(2013/06/17 00:25登録)
F県警強行犯シリーズ。F県警刑事部の三人の無敵の班長達が主役です。以下の六話で構成されます。

①「沈黙のアリバイ」:強制自白を促す取調べ問題を逆手に取った知能犯を一班班長、通称「赤鬼」、理論派の朽木が執念で追い詰める。
②「第三の時効」:二班班長、通称「冷血漢」、謀略の楠見が活躍。周到かつ冷徹に罠を張り巡らしています。
③「囚人のジレンマ」:強力過ぎて制御不能な三人の班長達を部下を抱える刑事部長のジレンマのほうがメインかな。
④「密室の抜け穴」:三班班長、通称「天才」、閃き型の村瀬が登場。登場した時点で既に解決していたようなので閃き型の真髄は伝わってこなかったです。
⑤「ペルソナの微笑」:一班所属の若手刑事矢代が主役。最後の容疑者とのやり取りがシビれました。
⑥「モノクロームの反転」:一班朽木VS三班村瀬の競争捜査。タイトルの内容に関して東野氏のガリレオっぽいとこがあるが、作風に合わない気がします。

警務課を主に舞台に描いてきた著者が描く刑事モノですが、非常に面白かったです。刑事モノも一級品ですね。③、⑥やや物足りなかったけど、他はどれも好きです。唯一、三班の村瀬の天才ぶりがイマイチ描き切れてないと感じたのが不満点かな。

No.37 5点 ドクターマッコい
(2013/03/27 10:31登録)
ミステリー要素、ストーリー的には素晴らしいものの記述の仕方が自分と合わないのでしっくりこない点が残念。

No.36 7点 蟷螂の斧
(2013/03/08 17:00登録)
連作短編集。F県警捜査一課の3人の班長(笑わない男「朽木」、冷酷無情「楠見」、直感の鬼「村瀬」)が、それぞれ個性的に描かれていて楽しめました。お気に入りは、やはり表題作ですね。内容的には、かなり重たい話なのですが、冷酷無情の楠見が見事に解決してくれます。よって重さより、スッキリ感の方が勝っていて後味はよいです。

No.35 7点 concon
(2012/01/02 22:37登録)
こんな熱い男たちがいたのかと、本当にいるのかなあ、というのが最初の印象。
日本の警察がこれほどに自分の仕事に誇りとプライドを持っていたなんて、いや、いるかもしれないなんて、実際頼もしい。
登場人物が多士済々で、うまく書き分けられていてわかりやすかった。

No.34 7点 りゅう
(2011/07/23 21:00登録)
 警察小説で、読者が謎解きをするような作品ではありませんが、プロットが緻密に構成されていて、良く出来た短篇集だと思いました。「第三の時効」、「囚人のジレンマ」、「ペルソナの微笑」が個人的には面白く感じました。
「第三の時効」
 ラストのどんでん返しの連続が秀逸です。クリスティーの某作品を連想させました。どんでん返しを成立させるための仕掛けが見事で、楠見班長という冷ややかな人物の登場が重要な構成要素となっています。
「囚人のジレンマ」
 囚人のジレンマという概念が、作品中で重層的に活かされています。
「ペルソナの微笑」
 矢代の推理はちょっと強引ですが、真相は事件の表向きの様相を反転させる意外なもので、「戻り川心中」のような味わいを持っていると感じました。矢代の幼少期に植え付けられた過酷な記憶が事件の解決にうまく結びついています。

No.33 7点 misty2
(2011/06/17 23:07登録)
失礼ながら、横山先生の作品を初拝読させていただいた。
短編集が苦手な小生は、2話が始まった瞬間落胆したが、並の短編集ではない。たいへん満足した。
評判通り、流石。
登場人物名の覚えが苦手な小生。組織図があると助かった。

No.32 6点 メルカトル
(2011/06/08 21:31登録)
表題作は確かに面白かったし、ミステリ的な仕掛けも施されていて楽しめる。それ以外の短編は微妙だが、警察関係者のアクの強い個性豊かな人物が目白押しで、その意味では読者を惹きつけて離さない。
特に第二班の班長、楠見は非常にリアリティがあってよい。
だが、警察小説としてはよく出来ているとは思うが、本格志向の読者にはお薦めできない。
なぜなら、オチや捻りが今ひとつと感じられたから。

No.31 10点 haruka
(2011/05/29 12:05登録)
自分の中では横山秀夫のベスト。警察小説の第一人者が満を持して刑事を描いた短編集。個性的な刑事たちの熱い人間ドラマ。意外な結末。どれをとっても満点。

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