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ミステリの祭典

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凍える島

作家 近藤史恵
出版日1993年09月
平均点6.80点
書評数20人

No.20 7点 虫暮部
(2022/05/15 11:55登録)
 語り手の不安定な部分と物語の流れがリンクしているのは大きな強み。生活感の薄い人物ばかり集めたのも、駄目な大人達が駄目な大人達であるが故に起こってしまった事件と言う感じで、だからこそ動機が説得力を持ち、巧みな選択だと私は思う。

No.19 6点 ミステリ初心者
(2021/04/07 19:26登録)
ネタバレをしています。

 島に閉じ込められ、連続殺人が起こる、典型的クローズドサークルです。私の大好物な嵐の孤島系ですが、少々読みづらさを感じました。文の癖がつよいというか、主観や登場人物の癖が強いというか…静香が一番まともに思えました(笑)。
 登場人物紹介や地図がないこと、本名とは違うあだ名がある人物など、読み初めにはいろいろと叙述トリックを疑いましたが、たぶんなかったと思います。なので、普通に登場人物紹介や地図をつけてほしかったですね(笑)。

 殺人事件は3つ起こります。
 奈奈子殺しは密室殺人事件。単純なトリックでしたが、盲点でした。そういえばそうだ…と思える、なかなか良いトリックでした。
 椋殺しは、ちょっとアリバイ面で曖昧で、推理小説的には地味でした。
 うさぎ殺しもすこしあいまいな部分が多いです。守田氏はなぜあやめ以外には殺人が無理だと決めつけたのでしょうか?

 私は、日本刀関連のことと、最後に階段を落ちたことで、鳥呼を疑っていました。しかし、確証は持てませんでした(涙)。

 クローズドサークルものは叙述トリック一本でどんでん返しする作品が多い印象ですが、この作品は全体的に端正な本格推理小説で好感が持てます! しかし、個々の謎がちょっと小さめで地味な感が否めませんでした。

No.18 6点 名探偵ジャパン
(2019/05/06 22:02登録)
作品に直接関係はないのですが、読み始めてまず、文体や登場人物の設定に、90年代トレンディドラマの匂いをぷんぷん感じ取りました。「コーヒー」を「コオヒイ」と表記するなど、長音を使わないカタカナ語の使い方も相まって、実に独特な世界を表現していたのではないでしょうか。(さすがに「モォタァボォト」は笑いましたが。「コーヒー」は「コオヒイ」で長音部分は大文字なのに、どうして「モーターボート」になると同じ長音部が小文字表記になるのか? 作者のこだわりが謎です)

この、ひらひらした世界観を言い訳にして、ミステリ部分も感覚的なもので流されて(誤魔化されて)しまうのかな? と危惧していたのですが、なかなかどうして、ロジカルな解決を見せてくれました。鮎川哲也賞受賞作の面目躍如といったところでしょうか。

No.17 6点 nukkam
(2016/07/06 08:38登録)
(ネタバレなしです) 近藤史恵(1969年生まれ)の1993年発表のデビュー作でシリーズ探偵の登場しない本格派推理小説です。孤島を舞台にした連続殺人事件ものというで私は綾辻行人のデビュー作「十角館の殺人」(1987年)を思い出しましたが全く雰囲気の違う作品です。ちゃんと推理で謎解きしているし、さりげないけど巧妙なトリックなども光りますが複雑な人間関係と心理描写が織り成すサスペンスが持ち味です。カタカナ記述が「テエブル」とか「カアテン」とか独特で、私は大昔の外来語表記はこんなだったねとちょっと懐かしいぐらいに思ってあまり気にしませんでしたが若い世代の読者は違和感を覚えるかもしれません。ちなみに作中時期は真夏なんですがこのタイトルは作品内容によく合致していると思います。

No.16 6点 パンやん
(2016/05/05 06:29登録)
奇妙なカタカナ表記と特異な文体によって構築された世界が、とても不思議な味わいとなり、ヒロインの卓越した心理に翻弄される面白さに溢れている。が、論理的な追及によるミステリーの醍醐味もあるが、どうにもスッキリしないモヤモヤ感も残り、しばし小生も凍える事となる。

No.15 4点 E-BANKER
(2014/01/18 23:53登録)
1993年発表。作者の処女長編であり、第四回鮎川哲也賞の受賞作。
絶海の孤島に集まった男女が順に殺されていく・・・という“いかにも”な設定の本作ですが・・・

~友人と喫茶店を切り盛りする野坂あやめは、得意客込みの慰安旅行を持ちかけられる。行く先は瀬戸内海に浮かぶ無人島。話は纏まり、総勢八名が島へ降り立つことになる。ところが、退屈を覚える暇もなく起こった事件がバカンス気分を吹き飛ばす。硝子扉越しの室内は無残絵さながら、朱に染まった死体が発見され、島を陰鬱な空気が漂う。道中の遊戯が呼び水になったかのような惨事は終わらない。連絡の絶たれた島に一体何が起こったのか?~

こんな紹介文を読まされたついつい期待してしまう・・・
それがミステリー好きの悲しい「性(さが」っていう奴だろう。
ただし、殆どの場合それは裏切られてしまう。そして、今回もその例には漏れなかった・・・
それが率直な感想。

何か妙というか、ちぐはぐな感じなのだ。
もちろんデビュー作だから、プロットや筆使いに多少の齟齬があってもよいのだが、最後まで平板で盛り上がりのないまま終わってしまった感が強い。
中盤までは登場人物ひとりひとりにスポットライトを当て、何とか「人物」を描きたいとの思いがあったようなのだが、結局それも中途半端かな。
密室トリックや連続殺人に至った動機なども、どうも素直に首肯し難い。
そして、恐らく一番の大技であろう最後のドンデン返しも不発っていうか、とってつけたように思えた・・・

どうも批判しか思いつかない感想になったけど、褒めるところがないのだから仕方ない。
こういう“いかにも”な舞台設定をセレクトするなら、やはり余程の見せ場がないと逆に苦しいなという感じ。
紹介文だけに惹かれているなら、そのままスルーした方がよいと思う。
(鮎川哲也賞受賞作には期待してるんだけどねぇ・・・)

No.14 5点 makomako
(2009/08/30 09:08登録)
 雰囲気は詩的でカタカナの変な表現さえ我慢すればまず良いほうだと思う。孤島のなかで事件が次々と起きるというのは本格好きのものにとってありがちの話といわれてもやっぱり食指が動く。
 ただ私としてはこのどんでん返しは理解不能でした。どうして殺人までした上に心臓までとるほどの残虐なことをしたのか。真相を突きつけられているときに退屈になったりするのか。
 これが変人の集まりとして書かれていればまだ納得できるのですが、登場人物はなかなか素敵な感じの青年たちとして描かれているのが違和感を生じる原因かもしれない。普通の青年にはふとしてこんなニヒリズム風の感情を抱くことはあるとは思いますが、だからといってこんな残虐な手段で実行に移すとなるとちょっとね。
 採点は初めの部分を入れてであって、最後まで読んだときはこんなのあり?という感じが強く私としての評価はもっと悪い。

No.13 6点 vivi
(2009/08/13 00:19登録)
孤島もの、クローズドサークルということで、
期待して読み始めたのですが、
ちょっと思い描いていたのと違う展開だったです。
揺らいだ結末は、論理が通ったもので終わってよかった。

登場人物たちの希薄さは、少年期特有のものかもしれませんが、
25にもなってそれは・・・と、ちょっと引きました(笑)
生活感が無い、モラトリアムな群像自体が、
ミスリードなのだとは思いましたけど。

No.12 6点 シーマスター
(2008/03/12 23:05登録)
孤島の連続殺人・・・この触れ込みだけで食指がムズムズ。

絶対に「ー」(伸ばし棒?)を使わない文字表記などはともかく、感性に任せて書いたような主観が強い情景表現が性に合わず、前半は中々読み進まず。

自分的には2人死んだあたりからエンジンがかかり、3人目、つまり残り5人になってからようやく「欲しかった感覚」が湧いてきた感じ。
(しかし『誰が殺したんだ。責めないから言ってみろ』には笑った)

終盤での「もしかして超アンフェア?」とも思わせる意外な展開などで、途中までの入れ込めなさも挽回していただき、ミステリとしては楽しめた。

この作品の何年も後に『この島でいちばん・・』のような半端な孤島モノを書いている辺りは何とも不思議な作家だと思う。

No.11 5点 VOLKS
(2008/02/06 01:00登録)
どなたかの書評にもありますが、無人島・連続殺人・・・という設定は綾辻作品を思い起こした。が、文章の作り方は全く異なり、個人的にはあまり読みやすくなかった。
殺人に至る経緯、また登場人物たちには魅力が感じられず、その為か読後感も良いとは言えなかった。

No.10 7点 トレノ
(2004/11/06 04:37登録)
構成や、主人公の感情に共感が持てる点がいいですね。ミステリ+青春小説。もう少し漢字を使った方がいいかも?

No.9 9点 パブロピカソ
(2004/08/14 02:18登録)
確かに島は凍えてるようだ。この小説の空気は氷点下の曇天のように、冷たく湿っている。それは底冷えのするような寒さだ。何だって彼らはこんなところで生きるのか?
こんなところでしか生きる事の出来ない人間もいるのです。
身を引き裂かれるような気分になるが、それがまた物語の余韻を引き出す。

No.8 5点 884
(2004/08/02 09:52登録)
 作者の描く群像に共感をさっぱり持てないので、この作品を批評する権利はないと思われます。正直こういう思考回路の人たちの考えてることはわかりません。僕、あまのじゃくだけど、スタンダードな思考しかしませんので。
 ただオチは納得いきにくい。ある意味オーソドックスだけど。

No.7 8点 ほっとプレート
(2004/03/31 20:59登録)
おもしろかった。どんでんものはやっぱり好きだ。
まあ、少し無理があるとこもあったけど。

No.6 9点 なな さんいち
(2004/01/18 16:29登録)
こういう雰囲気、好きです。
「切なく美しい推理小説」って言葉が、どんぴしゃり。

No.5 9点 パブロッティ
(2003/12/08 22:04登録)
話としてもしっかりしてるし、ミステリとしても良い。
切なく悲しいお話、こういったハッピーでないものを書かせたらなかなかですね。

No.4 7点 ギザじゅう
(2003/02/11 21:40登録)
複雑に絡み合った恋とどこか冷めたような空間。
切なく美しい推理小説。

No.3 10点 のぞ
(2002/07/05 12:03登録)
大切な大切な作品です。今でも読むと泣きそうになります。
極端ではあるけど意味犯人の心理がよく分かるし、登場人物がそれぞれに好きでした。人にはすすめませんけど。

No.2 9点 しゃん
(2002/06/19 18:11登録)
文章は好きです。幻想的で。
殺人の動機は不思議な不思議な動機。理解できないけど、ぞっとするけど、美しい。

No.1 6点 由良小三郎
(2002/06/09 13:32登録)
この作品は、僕の好きな近藤さんの世界ではありませんでした。孤島の別荘、連続殺人という本格ミステリの道具立ては、綾辻さんのを読んでるみたいでした。デビュー作ですが他の作品を読んでファンになってから読むほうがいいと思います。

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