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ミステリの祭典

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Tetchyさんの登録情報
平均点:6.73点 書評数:1631件

プロフィール| 書評

No.771 6点 十日間の不思議
エラリイ・クイーン
(2010/05/17 21:36登録)
本書の主要人物はエラリイと彼の友人ハワード、そしてその父親ディードリッチにその妻サリー、ディードリッチの弟ウルファートのたった4人である。そんなごくごく少ない人間関係の間で起きる殺人事件だから、必然的にドラマ性が濃くなる。

本書におけるエラリイの役回りは謎の脅迫者を突き止める探偵役、ではなく、このハワードとサリーの2人に翻弄される哀れな使い走りであることが異色。前にも述べたがこういう役回りを配される辺り、国名シリーズ以降のクイーンシリーズはパズラーから脱却してストーリーを重視し、ドラマ性を持たせることに重きを置いているように感じる。特に驚くのは事件の真相が解明するのは一旦落着した1年後であることだ。これほどまでに事件を引っ張ったことは今までなかったし、これがエラリイのに初めて犯人に屈服する心情を吐露させる。

正直なところ、結末が好きではない。
人の命を奪うことは決して許されないこととするならばなぜエラリイは人の命を間接的に奪うようなことをしたのか?これが非常に矛盾を感じたのだった。この結末にはやはりエラリイの、もしくは作者の傲岸不遜さがまだ残っているように思える。非常に残念でならない。


No.770 9点 このミステリーがすごい!’98年版
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2010/05/16 21:31登録)
この年は桐野夏生氏の『OUT』が初ランクインにして1位という彼女にとってターニングポイントとなった年でもある。
また京極夏彦氏が妖怪シリーズに加え、怪談シリーズの第1作『嗤う伊衛門』で2作を10位圏内に入れるという健筆ぶり。
異色なのは『硝子の家』という古典作家のアンソロジーがランクインしたこと。
海外ではフロストシリーズの『フロスト日和』が1位を獲得したが、それよりも『赤い右手』、『カリブ諸島の手がかり』などをランキングに放り込んだ国書刊行会の活躍が印象的。

コラムも継続しているがクオリティが下がり、つまらなくなってきた。
またベテラン作家の評価が低くなり、新人礼讃の傾向が強くなったのもこの頃が起源か。


No.769 10点 このミステリーがすごい!’97年版
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2010/05/15 18:09登録)
馳星周がデビュー作にして1位を獲得するという快挙を成し遂げた年。ずいぶん後になって読んでみたが、それほどか?と思ったが。
国内ではその他東野圭吾と宮部みゆきが復活ののろしを挙げているような勢いがあり、西澤保彦がやっとランクインした。

海外はラヴゼイ、エルロイ、フランシス、クラムリー、ジェイムズ、ル・カレ、キングといったベテラン作家とコナリー、ランズデール新興勢力の鎬の削り合いが見られる非常に贅沢な一年だった。

やっぱりこの頃のミステリ・シーンは面白い。

この年から作家の隠し玉コーナーが始まったのと、巻末に過去のこのミスのランキングがまた載っており、かなりのお得感があった。


No.768 10点 このミステリーがすごい!’96年版
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2010/05/14 22:10登録)
この年の表紙絵はようやく出てきたか!の感のある、いまや本棚探偵の方が知名度が高くなった喜国雅彦氏の手になるもの。

そしてランキングは上位3位に『ホワイトアウト』、『鋼鉄の騎士』、『蝦夷地別件』と冒険小説が石鹸。前年の『ミステリーズ』1位に叛旗を翻すかのようなランキング。
しかしこの後にも『魍魎の匣』、『ソリトンの悪魔』、『狂骨の夢』と1000ページクラスの凶器本が続く。長厚壮大さにますます拍車が掛かっている。

海外はかねてより評判の高かったミネット・ウォルターズの『女彫刻家』が1位。この後マキャモンの『少年時代』、ローレンス・ブロックの『死者との誓い』が続く。この頃はマキャモン、ブロック全盛だったなぁ。2人とも20位圏内に2作入っているし。
変わりどころでノンフィクションの『ホット・ゾーン』が入っているのが面白い。

まだまだミステリマニア臭が漂うコラムが豊富だったこの頃。やっぱ面白いね~。


No.767 10点 このミステリーがすごい!’95年版
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2010/05/13 21:49登録)
京極夏彦初登場の年。そして山口雅也が『ミステリーズ』で1位を獲得。さらにもう1作『日本殺人事件』も15位でランクインと山口雅也全盛の年でもあった。

一方海外では平成の一発屋(!)スコット・スミスの『シンプル・プラン』が1位、そしてこの年からマイケル・コナリーとドン・ウィンズロウがランクインと今なお活躍する作家が登場した年でもあった。

いやあ、やっぱりこの頃の『このミス』は面白かったなぁ。


No.766 10点 このミステリーがすごい!’94年版
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2010/05/12 21:58登録)
この年の『このミス』には巻末に過去5年間のランキングがついており、これが後々私の読書に多大なる影響を与えることになった。
このリストこそが私の今の読書の遍歴といっても過言ではない(とはいっても読んでないのたくさんあるけどね)。

この年は以前から評判の高かった髙村薫氏が『マークスの山』で1位を獲った年で、大沢在昌が20位圏内に3作も放り込んで大暴れした年。この年、新宿鮫シリーズが2作も出ている。そんな頃もあったんだね~。

海外では今では絶版のミッチェル・スミスの『ストーン・シティ』が第1位。
トゥローが0.5点差で2位と接戦した年だった。これがトゥローにとっておそらく1位を獲る最後のチャンスだったんではないだろうか。

やっぱり回顧録になってしまうなぁ。


No.765 7点 天使の耳
東野圭吾
(2010/05/11 21:53登録)
交通事故という、通常のミステリで起こる殺人事件よりも読者にとって非常に身近な事件にクローズアップしており、それが非常に新鮮だった。従って諸作品で起こる事故が読者にとっても起こりうる可能性が高く感じ、私を含め特に車を運転する人々には他人事とは思えないほどのリアルさがある。

個人的に好きな作品は「分離帯」、「通りゃんせ」、「捨てないで」の3編。特に「捨てないで」は先が読めないだけに最後の皮肉な結末にニヤリとしてしまった。

いやあ、しかし交通事故だけに絞ってもこれほどの作品が書けるのかとひたすら感服。その読みやすさゆえに物語のフックが効きにくく、平凡さを感じてしまうが、実は完成度は非常に高い。この人はどれだけ引き出しがあるのだろうと、途方に暮れてしまう。この軽い読後感が私を含め本書の評価をさほど高くしていないのがこの作家の功罪か。


No.764 10点 このミステリーがすごい!’93年版
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2010/05/10 21:42登録)
この年の『このミス』が私と『このミス』との出会いである。
大学生協の書店コーナーで見つけたのが最初。
当時まだミステリ初心者だった私は、こんな便利な本があるのか!と驚喜したものだ。
本を開いてみると知らない作家ばかりで西村京太郎とか内田康夫などの名前は一切見当たらないことに驚いた。
それから『このミス』が私の読書の羅針盤になった。

・・・と回顧譚はこのくらいにして、この年の1位は船戸与一の『砂のクロニクル』にレジナルド・ヒルの『骨と沈黙』。
この年の国内2位が宮部みゆきの『火車』で、現在ではこちらのほうが知名度が高い。この頃は宮部みゆきと髙村薫が2大勢力だったなぁ。

この年の表紙絵はなんと高野文子!


No.763 2点 探偵小説の世紀(下)
アンソロジー(海外編集者)
(2010/05/09 16:40登録)
全ての短編が30年代の黄金時代物だから文体が堅苦しく、実に読みにくかった。
最後の方に若干読みやすく、興味を覚えた作品があったが、果たしてこれらが本格黄金期を代表する諸作なのか疑問が残る。特にシリーズものの短編などは読者に予備知識があるものとして語りかける構成のものもあり、戸惑った。
私にもう少し読書のスキルが必要なのか、それとももはや時代の奥底に葬られるべき凡作群なのかは判らないが、十分愉しめなかったのは事実として残った次第である。


No.762 3点 探偵小説の世紀(上)
アンソロジー(海外編集者)
(2010/05/08 23:38登録)
う~、苦しい読書だ。古めかしさが否めないアンソロジー。
ほとんど古典の勉強のような感じで読んでいる。
印象に残ったのはフィルポッツの「鉄のパイナップル」ぐらいか。
下巻に期待するか。


No.761 9点 深海のYrr
フランク・シェッツィング
(2010/05/08 01:03登録)
上中下巻の三分冊で合計1,600ページ以上!いやあ、長かった!

深海に埋蔵されているメタンハイドレードの氷塊に巣食う大きな顎を持ったゴカイの発現を皮切りに、クジラやオルカたちが人間を襲い、世界中で猛毒性のクラゲが異常発生する。そしてフランスの三ツ星レストランではロブスターがゼリー状の物質に侵食され、人間にも害を及ぼす。
さらにゴカイはメタンハイドレードを侵食し、とうとうノルウェー沖の大陸棚の崩壊を招き、大津波がヨーロッパに起き、数万人もの命を奪う。そして被害の外だったアメリカにも白くて眼のないカニが数百万匹という単位で上陸し、病原菌を撒き散らし、ニューヨークを死の街にしてしまう、と地球規模的ディザスター小説。ハリウッドが喜んで映画化しそうな題材。実際ブラッド・ピットだったかが映画化版権を所有しているらしい。

とにかく色んな情報が詰まった作品で書こうと思えばいくらでも感想が書けるが、ここはそういう場ではないので、やめておこう。

とにかくフランク・シェッツィングが作家として全身全霊を傾けた渾身の一作。長いけれど決して退屈はしない作品。
再読するには勇気がいるけどね♪


No.760 7点 贈る物語 Wonder
アンソロジー(国内編集者)
(2010/05/05 22:07登録)
短編集というと、小説に限った物を想像するが、本書に収められた話は実に様々。勿論小説は中心なのだが、エッセイ風作品もあり、マンガもあり、ちょっと変わった映画評論も収められている。またWonder、つまり編者瀬名氏云うところの「すこしふしぎ」な小説もヴァラエティに富んでおり、ホラー、SFは無論の事、純文学あり、ショートショートあり、変わったところでは絵から想像する物語ありと、広範に渡って収拾されている。

個人選集のアンソロジーとはつまりは選者の読書変遷を表す鏡である事は云わずもがなであるが、上に書いたように非常に多岐に渡っていることから、瀬名氏の読書の幅の広さが窺え、感服する。特に瀬名氏自身が博士号を持つ科学者であることを考えるとこのヴァリエーションの豊富さは驚異的と云ってもいいだろう。そういった意味では実に個性豊かなアンソロジーであり、この一連の『贈る物語』の企画の選者の1人を瀬名氏にした光文社の選択眼の確かさを裏付ける事にもなった。

そしてアンソロジーは作品の選定の匙加減が非常に難しい。自分の読書人生で宝物のように大切にしている話を紹介したい思いが募る分、個人の思い入れが強すぎて、万人向けではない作品を選んでしまいがちだからだ。本書は全5章に沿って評価すれば、2:3の割合で作者の好みが出てしまったようだ。第1章の「愛」と第4章の「恐怖」、第2章は9編中3編、第3章は2編のうち1編が万人向けで、第5章とその他の作品が瀬名氏の好みに特化した物と、私は評価する。ただこのアンソロジーでの収穫は平山夢明氏の作品を選んだ事。平山氏が『独白するユニバーサル横メルカトル』で世に知らされるのはこの4年後だから、正に慧眼である。


No.759 7点 新・本格推理05九つの署名
アンソロジー(国内編集者)
(2010/05/04 21:14登録)
今回のアンソロジーで際立っていたのは投稿者の文章力の向上。ほとんどがプロと比肩して遜色がない。いや、名前を伏せて読めばプロ作家のアンソロジーだと勘違いしてしまうだろう。これは神経質なまでに原稿の字組から指導した編者二階堂黎人氏の執念の賜物だろう。ただプロとアマとの大きな隔たりがあるのは否めない。それは過剰なまでの本格どっぷりに浸かったパズル志向である。その最たるものは「水島のりかの冒険」と「無人島の絞首台」と「何処かで気笛を聞きながら」である。

そんな中、傑作といえる作品が「コスモスの鉢」、「モーニング・グローリィを君に」、「九人病」の三作品。

このアンソロジーを読むことは決して無駄ではなかった。特に二階堂氏に編者が代わってからのこのシリーズの充実振りは目を見張るものがあった。このアンソロジーからデビューした作家が私の今後の読書体験の線上に上る事を願おう。


No.758 4点 新・本格推理04赤い館の怪人物
アンソロジー(国内編集者)
(2010/05/03 22:39登録)
今回は退化した印象は否めない。全体的に小粒というか二番煎じのような印象を受けた。というのも今まで採用された作者の作品が載っているのだが、それらの作品の傾向が前作と似ており、アレンジが違うだけとどうしても思ってしまった。どの作品も諸手を挙げて絶賛できるものでもなく、何らかのしこりが残るので、カタルシスまで届かないのだ。

選者二階堂黎人がちょっと趣味に走ってきた感じが今回はした。前作で面白くなるだろうと思っていただけに残念だった。次回はどうだろう?


No.757 9点 新・本格推理03りら荘の相続人
アンソロジー(国内編集者)
(2010/05/02 23:08登録)
一人の作者による複数掲載、しかも3作というからすごい。その作者の名は小貫風樹。その3作に共通するのはダークなロジックともいうべきチェスタトンの逆説や泡坂のロジックを髣髴とさせる悪魔のロジックだ(実際アンケートでこの作者は尊敬する作家の中にこの2者を含めている)。

その他5作でよかったのは「Y駅発深夜バス」が文句なしだ。

その他、前回「湾岸道路のイリュージョン」の続きである「悪夢まがいのイリュージョン」、チェスタトンの「見えない人」に挑んだ「作者よ欺むかるるなかれ」、共に孤島物である「ポポロ島変死事件」、「聖ディオニシウスのパズル」も水準作であるのだが、今回は小貫風樹という1人の天才の前に霞んでしまった感が強い。ロジックに精緻さを感じるものの、心情に訴える魅力を感じなかった。

小貫氏の3作品、「とむらい鉄道」、「稷下公案」、「夢の国の悪夢」を読むだけでも本書を買う価値はある。


No.756 7点 新・本格推理02黄色い部屋の殺人者
アンソロジー(国内編集者)
(2010/05/01 22:56登録)
期待値が高い中、8編中、傑作と思ったのは2編。「窮鼠の哀しみ」と「『樽の木荘』の惨劇」の2編だった。
その他6編中、佳作だと思われるのは「湖岸道路のイリュージョン」ぐらいか。

前巻がよかった分、読み手の要求するハードルの高さは高くなった。だからこそ次はどんな作品、トリック、世界を読ませてくれるのかが非常に気になる。プロの作品の出来を求めないよう、こちらも気をつけなければならないのか。それとも商業として成り立つべき最低ラインをクリアしていなければならないと厳しい目で見るのか。難しいところだ。


No.755 8点 ハル
瀬名秀明
(2010/04/30 23:14登録)
各短編、そして幕間で挿入される掌編「WASTELAND」、これらに共通する1つの軸とも云うべき存在がある。それは鉄腕アトムである。マンガの神様手塚治虫が創作した人型ロボットこそ、日本のロボットの研究の始まりであり、究極形であり、ロボット研究者が至る道だという風に瀬名氏は述べている。

2002年時点でのロボット工学の最新技術を取材し、それから類推される人々の生活への影響、意識の変化などをしっかり足が地に着いた物語を紡ぎ、ロボットを扱った作品にありがちな人間がロボットに支配される社会を描くデストピア型の作品を書いていないところが素晴らしい。しかしそれでもロボットが発展する上で直面するだろう云い様の無い畏怖を抱くこともきちんと描いている。

2002年に発表された当時、瀬名氏はこの頃既にロボットは人間生活に入り込み、無くてはならない物と想像していたようだが、2009年の今、残念ながらこの予見はまだ先のことになりそうだ。果たしてここに語られるような未来は来るのか、まだ先は見えないが、こんな未来はまんざら悪くないなぁと思わせる、心温まる作品群だ。


No.754 7点 新・本格推理01モルグ街の住人たち
アンソロジー(国内編集者)
(2010/04/29 21:42登録)
前シリーズは鮎川氏が全て読み、その時の気分で作品を選んでいたような玉石混交のアンソロジーの様相を呈したが、今回は他の新人賞のように予め複数の審査員が下読みをし、その1次予選を突破したものを二階堂氏が読んで選考するというスタイルに変わった。また、制限枚数が50枚から100枚へと倍になった。
結論から云えば、このことはかなり大きく作品の質を向上させた。選考スタイルの変更は作品の出来のバラツキが少なくなり、かなりレベルが高くなっているし、枚数の倍増は物語がパズルゲーム一辺倒になりがちだった作品群が中心となるトリック・ロジックを肉付けする物語性を高め、推理「小説」として立派に成り立っている。

そんな様変わりを経た中で選ばれた8編の中でも特に印象に残ったのは「水曜日の子供」、「暗号名『マトリョーシュカ』」、次点で「風変わりな料理店」であった。
その他の5編も悪くない。というよりも以前のシリーズの中では1,2位を争うものばかりだろう。

このシリーズに至り、ようやく最近新勢力の本格ミステリ作家の作風、趣向、原点が見えてきた。光文社は二階堂黎人を編者にしたことで幸せな結婚をしたと思う。


No.753 5点 絢爛たる殺人
アンソロジー(国内編集者)
(2010/04/28 21:57登録)
編者は鮎川氏が監修となっているが実質芦辺氏が95%は掲載作品を決定しているであろうアンソロジー。兎にも角にもマニア垂涎という形容がぴったりの濃厚な内容で、逆に自分が本格ミステリマニアでないのを知った次第。

収録された作品は5作。まずペダントリー趣味溢れる「ミデアンの井戸の七人の娘」、宮原龍雄氏、須田刀太郎氏、山沢晴雄氏三者による合作「むかで横丁」、「ニッポン・海鷹」、「二つの遺書」と「風魔」。
最後の2編がそれぞれベストと準ベスト。

しかし、これら昭和初期の本格推理(探偵)小説を読んで意外だったのは、真相が名探偵によって暴露されるのではなく、犯人の独白や手記によって暴かれる事。
これは欧米の名探偵ホームズ、ポアロ、ブラウン神父などがあまりに神がかり的に事件を看破することに対する彼らなりの問い掛けなのか、それともそれら有名な名探偵たちに対する遠慮なのだろうか?その辺の言及が編者から一言も無かったのが悔やまれる。


No.752 5点 本格推理⑮さらなる挑戦者たち
アンソロジー(国内編集者)
(2010/04/27 22:18登録)
『本格推理』シリーズも今回が最終巻。
15冊も巻を重ねて、その中には目を見張るもの、プロ顔負けの巧さが光るもの、素人の手遊び、独りよがりのものと玉石混交という四字熟語が相応しいシリーズだった。

で、今回はといえば、はっきり云って小説として読めたのは石持浅海氏の「利口な地雷」のみだったという印象が強い。もうこれはこの時点においてプロの筆致である。題材も対人地雷禁止条約をプロットに絡ませるなど、他とはオリジナリティが群を抜いており、読み物として非常にコクがあり別格の出来映えだ。
その他には読み物として「六人の乗客」が読み応えがあった。

シリーズ最後で有終の美を飾れなかったというのが正直な感想である。

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