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ミステリの祭典

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新・本格推理03りら荘の相続人
鮎川哲也監修・二階堂黎人編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日2003年03月
平均点7.50点
書評数4人

No.4 7点 メルカトル
(2023/01/24 22:51登録)
本格推理界の新しい旗手となり得るか?いつにも増して優秀な書き手が勢揃いした本書。アマチュアのレベルをはるかに超えた8作品がずらりと並んだ。特に全くの新人から驚くべき鬼才が登場。その才能をぜひ見極めていただきたい。このシリーズを誕生させ、10年間に亘って見守り育ててきた鮎川哲也。本書は氏監修の最後の1冊となった―。
『BOOK』データベースより。

『本格推理』は何作か読んでいますが『新・本格推理』は初めて。投稿者のレベルが上がっていた為か、編集者の二階堂黎人も書いていますが、今回の投稿作がたまたま粒揃いだったのか、予想以上にプロに近い水準だったと思います。特に3編も選出された小貫風樹に触れなければならないでしょう。『夢の国の悪夢』は他に比べると一段落ちる感じですが、『とむらい鉄道』は全作品の中でもトップクラスですね。登場人物が少ない中、どう謎を解明、ではなく解決するのかに焦点が絞られます。ただ途中の余計なトリックは邪魔だったかな。返って品位を落とす結果になってしまった様な気がします。この『とむらい鉄道』と『稷下公案』はトーンが似ています。どちらも陰鬱な雰囲気が漂っていて、余人には書けない作風だと感じます。又『夢の国の悪夢』はトリックは別として根底に横たわる悪意にはゾッとしました。何故この人が専業作家にならなかったのかが不思議です。

しかしそんな中、これらの作品を超えたと個人的に思ったのは大山誠一郎の『聖ディオニシウスのパズル』です。これは飽くまで好みの問題ですが、フー、ホワイ、ハウダニット三拍子揃っていますし、新興宗教と孤島のマッチングが素晴らしいです。『悪夢まがいのイリュージョン』も不可能趣味のサスペンス物で良かったです。イマイチだったのはバカミスの『ポポロ島変死事件』ですかね。途中までは良かったんですけどね、トリックがどうも。

No.3 7点 ボナンザ
(2014/04/09 15:32登録)
鮎川哲也追悼のつもりで何となく購入したのだが、想像を遙かに超えるハイレベルな年だった。

No.2 7点 kanamori
(2011/01/03 15:22登録)
アマチュア投稿マガジン、新シリーズの3年目。
3作入選した小貫風樹氏の「とむらい鉄道」がズバ抜けた傑作だと思います。推理作家協会が選ぶ年間ベストミステリ選集にも入るくらいですから(この方は、その後の消息を聞かないがどうしたんだろう)。
ほかに、青木知己氏「Y駅発深夜バス」、園田修一郎氏「作者よ欺かるるなかれ」など、この年は印象に残る佳作が多く充実したラインナップだと思う。

No.1 9点 Tetchy
(2010/05/02 23:08登録)
一人の作者による複数掲載、しかも3作というからすごい。その作者の名は小貫風樹。その3作に共通するのはダークなロジックともいうべきチェスタトンの逆説や泡坂のロジックを髣髴とさせる悪魔のロジックだ(実際アンケートでこの作者は尊敬する作家の中にこの2者を含めている)。

その他5作でよかったのは「Y駅発深夜バス」が文句なしだ。

その他、前回「湾岸道路のイリュージョン」の続きである「悪夢まがいのイリュージョン」、チェスタトンの「見えない人」に挑んだ「作者よ欺むかるるなかれ」、共に孤島物である「ポポロ島変死事件」、「聖ディオニシウスのパズル」も水準作であるのだが、今回は小貫風樹という1人の天才の前に霞んでしまった感が強い。ロジックに精緻さを感じるものの、心情に訴える魅力を感じなかった。

小貫氏の3作品、「とむらい鉄道」、「稷下公案」、「夢の国の悪夢」を読むだけでも本書を買う価値はある。

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