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ミステリの祭典

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贈る物語 Wonder
瀬名秀明編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日2006年11月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 Tetchy
(2010/05/05 22:07登録)
短編集というと、小説に限った物を想像するが、本書に収められた話は実に様々。勿論小説は中心なのだが、エッセイ風作品もあり、マンガもあり、ちょっと変わった映画評論も収められている。またWonder、つまり編者瀬名氏云うところの「すこしふしぎ」な小説もヴァラエティに富んでおり、ホラー、SFは無論の事、純文学あり、ショートショートあり、変わったところでは絵から想像する物語ありと、広範に渡って収拾されている。

個人選集のアンソロジーとはつまりは選者の読書変遷を表す鏡である事は云わずもがなであるが、上に書いたように非常に多岐に渡っていることから、瀬名氏の読書の幅の広さが窺え、感服する。特に瀬名氏自身が博士号を持つ科学者であることを考えるとこのヴァリエーションの豊富さは驚異的と云ってもいいだろう。そういった意味では実に個性豊かなアンソロジーであり、この一連の『贈る物語』の企画の選者の1人を瀬名氏にした光文社の選択眼の確かさを裏付ける事にもなった。

そしてアンソロジーは作品の選定の匙加減が非常に難しい。自分の読書人生で宝物のように大切にしている話を紹介したい思いが募る分、個人の思い入れが強すぎて、万人向けではない作品を選んでしまいがちだからだ。本書は全5章に沿って評価すれば、2:3の割合で作者の好みが出てしまったようだ。第1章の「愛」と第4章の「恐怖」、第2章は9編中3編、第3章は2編のうち1編が万人向けで、第5章とその他の作品が瀬名氏の好みに特化した物と、私は評価する。ただこのアンソロジーでの収穫は平山夢明氏の作品を選んだ事。平山氏が『独白するユニバーサル横メルカトル』で世に知らされるのはこの4年後だから、正に慧眼である。

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