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ミステリの祭典

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天使の耳
別題『交通警察の夜』

作家 東野圭吾
出版日1991年12月
平均点6.33点
書評数21人

No.21 7点 ねここねこ男爵
(2018/05/08 15:37登録)
面白い!粒ぞろいの短編集。
交通警察の夜、となっているが、現場のタイヤ痕や車の破損具合から事故の真相を探り出す…というガチガチの事故ミステリではなく、物語の発端が交通事故に由来しているという程度。

表題作が最もミステリ色が濃く、話の出来も突出している。この話だけでも読む価値あり。
他はミステリというより交通事故にからんだ復讐譚や因果応報話(当世風に言うなら『嘘松』『スカッとジャパン』っぽい)で、ややご都合主義だったりオチが見えすくものもあるが十分に面白い。

No.20 7点 りゅうぐうのつかい
(2016/09/24 17:42登録)
交通事故にまつわる奇妙な話を集めた短編集で、法の裁きに期待できないがための私刑を扱った作品がいくつかある。
ミステリーとしては「天使の耳」が一番、物語としては「通りゃんせ」が一番、「捨てないで」もなかなかの出来。

「天使の耳」
交差点で起こった交通事故で、赤信号で突っ込んだのはどちらの車か、関係者の証言をもとに検証する話。
ユーミンの曲が放送されていた時刻、交差点での信号制御のタイミング、野次馬の撮影した動画の時刻などから、論理的に衝突した時刻が推定されていくが、キーとなったのは、盲目の美少女の「天使の耳」。
ここまででもミステリーとして十分な内容だが、さらに最後にブラックな事実が判明し、唖然とさせられる。

「分離帯」
分離帯を飛び越えて、対向車と激突して亡くなったトラック運転手。
その妻の綾子は、高校生の時に融通の利かない校則のために停学となり、今また、法律では事故の原因を起こした人物を裁くことができないことを知る。
そんな、彼女が取った捨て身の行動とは何か。

「危険な青葉」
人通りの少ない道で、後続車からスピードで煽られ、ガードレールに激突し、一時的に記憶を失った映子。
近辺では、幼児殺人事件が発生していた。
第3章に入る手前で、真相に近いこと(真相よりももっとひどいこと)が予想できていた。

「通りゃんせ」
車を当て逃げした人物から、修理費支払いの連絡があり、さらに別荘に宿泊してほしいとの依頼があった。
別荘にはその人物も来ており、意外な話を聞かされることに……。
ラストの場面はもの悲しく、切ない。

「捨てないで」
前を走る車が投げ捨てた空き缶によって、失明した真知子。フィアンセとともに、犯人を探そうとするが……。
一方、空き缶を投げ捨てた斉藤は、浮気がばれそうになり、殺人を計画する。
空き缶が両者をつなぐ重要な役割を果たし、2つの話が最後に絶妙にリンクする。
タイトルには、空き缶を捨てないで、私を捨てないで、という2つの意味が込められている。

「鏡の中で」
乗用車が交差点の右折中に、対向車線の停止線に止まっていたバイクに突っ込んだ謎。

No.19 6点 斎藤警部
(2015/11/08 09:45登録)
原題「交通警察の夜」と言うだけあって「交通」に纏わる何らかの事件を集めた短篇群。
表題作の、少ない枚数の中での劇的反転真相暴きは感動的。他はちょっと色褪せるが、それでも充分面白い。読んだ方がいい。

というか表題作だけ交通云々枠から大きくはみ出ている感じがしますが。。素材は確かに交差点事故だけど。ちょっと乱歩の「心理試験」を思わす対決モノでもあるね。ってやっぱり表題作ばかり語ってしまう。単体なら8点かな。

No.18 6点 ドクターマッコい
(2013/07/08 13:04登録)
まあ、本当にこの方、色々なジャンルに多彩で作品も粒ぞろいで本当に感心します。

No.17 5点 E-BANKER
(2012/07/26 22:15登録)
1992年に「交通警察の夜」として刊行された作品を改題。
改題前のタイトルのとおり、全編が交通事故をベースにしたミステリーという連作短編集。

①「天使の耳」=とある交差点で発生した2台の車の衝突事故。双方とも自分は青信号で進行したと主張するのだが、同乗していた全盲少女の「超絶的な聴力」のおかげで事件は解明する。それだけで終わらせないのがさすが東野圭吾・・・。
②「分離帯」=突然右折し逆レーンで衝突事故を起こしたトラック。問題は「なぜ急にトラックが右折したのか?」なのだが・・・。交通事故に絡む法制度の不備を皮肉るラストが尾を引く。
③「危険な若葉」=若葉はもちろん「若葉マーク」のこと。前をノロノロ進む「若葉マーク」にイライラさせられた経験は誰しもあるはずだが、こんなしっぺ返しを食うのはキツイねぇ・・・。まっ因果応報ではあるが。
④「通りゃんせ」=本編の問題は不法駐車。本人は何でもないこと、のように思っているが、一歩間違えるとこんなことになるリスクを孕んでいるということ。こういう計画的な「仕返し」は怖い。
⑤「捨てないで」=本編は「ポイ捨て」がメーンアイデア。ポイ捨てされた空き缶でこんなことが起こるのは予想外だが・・・これもやっぱり因果応報的なラストを迎える。
⑥「鏡の中で」=車とバイクの衝突というとよくある事故っていう感じだが、関係者がオリンピックを目指す女子マラソンチームのコーチというのが異色なポイント。担当の警察官は事故にある違和感を抱くのだが、真相は分かりやすいかな。

以上6編。
「交通事故」というのが共通のテーマだが、登場人物は全て異なっている。交通事故特有かもしれないが、何とかして事故を隠そうとする当事者や、隠せない場合は何とかして自身の罪を軽くしようとする当事者など、人間のエゴがむき出しになるという特徴が窺える。
さすがに東野圭吾だけあって、全編うまくまとめてあるし、サラサラと読めてしまう。
ただ、どれも小品という感じは拭えないかな・・・
(③④あたりが皮肉が効いててよい。①もマズマズ)

No.16 7点 まさむね
(2011/05/31 22:20登録)
交通事故,というか交通マナーをテーマにした短編集。
メッセージ性を包含しつつも,サラリと読みやすいミステリに仕上げてしまうあたりに作者の技量を感じます。読みやすいけど,決して軽さは感じさせない・・ってのは高度ですよね。
これまでに読んだ東野氏の短編集の中ではベストです。

No.15 5点 つよ
(2011/05/03 00:03登録)
読みやすい短編集。

No.14 4点 ムラ
(2011/04/14 16:40登録)
綺麗にまとまった短編集。
東野なので文章も読みやすく、メッセージ性もあるので面白い。
ただやっぱり物足りなさは感じてしまう。

No.13 7点 Tetchy
(2010/05/11 21:53登録)
交通事故という、通常のミステリで起こる殺人事件よりも読者にとって非常に身近な事件にクローズアップしており、それが非常に新鮮だった。従って諸作品で起こる事故が読者にとっても起こりうる可能性が高く感じ、私を含め特に車を運転する人々には他人事とは思えないほどのリアルさがある。

個人的に好きな作品は「分離帯」、「通りゃんせ」、「捨てないで」の3編。特に「捨てないで」は先が読めないだけに最後の皮肉な結末にニヤリとしてしまった。

いやあ、しかし交通事故だけに絞ってもこれほどの作品が書けるのかとひたすら感服。その読みやすさゆえに物語のフックが効きにくく、平凡さを感じてしまうが、実は完成度は非常に高い。この人はどれだけ引き出しがあるのだろうと、途方に暮れてしまう。この軽い読後感が私を含め本書の評価をさほど高くしていないのがこの作家の功罪か。

No.12 6点 ミステリー三昧
(2009/07/11 14:08登録)
<講談社文庫>交通事故をテーマとした作品集(短編/1991)です。
テーマ範囲は狭いですが堅苦しさは感じさせず、どの作品も印象深いです。「犯人は誰?」「トリックは?」などの意外性ではありませんが、どの作品もラストに急展開があり、ブラックな結末の意外性を演出していました。
同作家の短編『犯人のいない殺人の夜』と雰囲気が似ているので気に入ったならば、それも読むことを強くオススメします。

No.11 6点 こう
(2008/08/02 02:00登録)
 交通事故を扱った作品集でどれも小振りだと思いますがよくできていると思います。
 「分離帯」は結末が予想しやすいと思いますが、個人的には気にいっています。

No.10 4点 COBRA
(2008/06/13 14:27登録)
なんかテーマ的に道徳的過ぎて、退屈。

No.9 6点 シーマスター
(2007/12/12 22:05登録)
交通問題を題材あるいは端緒とした小ミステリ集。

表題作は・・・緻密な構成だが予想と違ってちょっと残念。
その他もあまり読後感が宜しくない作品が多い・・・が、溜飲が下がる部分があることも確か。
個人的には『捨てないで』がまあ面白かったかな。(冴えないダブルミーニングだが)
最終話の『鏡の中で』は周辺事情から殆ど見えてしまった。(実際にありそうな気がしないでもない)

信号無視、路駐、煽り、ポイ捨て・・・やっぱいけないよね。

No.8 5点 いけお
(2007/10/16 19:43登録)
だれにでもありそうな感じの「日常の謎」系。なんとなくこの作者の作品っぽくない。長編のプロットの一部が集まったような一冊。

No.7 8点 akkta2007
(2007/07/22 19:50登録)
東野作品の中でもわずかな・・・?短編集の集まりである。
題名にもなっている
 天使の耳
 分離帯
 危険な若葉
 通りゃんせ
 捨てないで
 鏡の中で
の6部構成となっており、正直どれもこれも楽しめる作品ばかりである。
全短編すべて交通事故を題材とした、身近にも起こりそうな作品の集まりであるが・・・
自分としてはやはり題名にもなっている「天使の耳」が一番印象的であった。
深夜の交差点で衝突事故が発生。どちらの車が信号無視をしたのか?目が不自由である、ドライバーの娘が事件解決の鍵を握る・・・
まさに日常的に起りうる交通事故を題材としたすばらしい作品である。ぜひ読んで頂きたい!

No.6 6点 綾香
(2004/08/20 23:34登録)
免許とってから再読しました。車を運転すると良さがわかる作品。

No.5 7点 k−t
(2004/01/29 20:26登録)
東野作品の中でも短編集なら1番じゃないかな。やっぱ短編うまいと長編もうまいよね。

No.4 7点 うめ
(2003/12/07 20:35登録)
ゾッとしました。特に「通りゃんせ」。自分的には「捨てないで」が良かったです。

No.3 7点 ろん
(2003/08/22 09:38登録)
それぞれの物語にキチンとしたトリックがあり、なるほどと思える面白い作品ばかりです。個人的には交通警察を題材にした本を読んだのがこれが始めてであった事で、余計に面白く感じたのかも知れません。

No.2 9点 テツロー
(2002/05/07 23:19登録)
 ミステリの面で言えば、ほとんどの話が、偽りの証拠品や証言がまかり通ってしまう展開になっている。全ての真実が白日の元に晒されるという話ではなかった。
 こういう欺瞞を仕掛けた側が勝つスタイルのミステリは、そもそもは好みではないのですが、この短編集に限っては例外的に認められる。それは、偽証・欺瞞を仕掛けた側が、押し並べて交通被害者で、信号無視、路上駐車、ポイ捨て、車道横断等、確実に他人に迷惑をかけているのに罪に問われにくい側を罠にかけるという、ほとんどの話がこれで統一されているからである。(何か低次元で喜んでますが)
 しかし、「天使の耳」は、その欺瞞が非常に凝っていて良かったです。BGMが「リフレインが叫んでる」なところも良し。

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