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ミステリの祭典

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みりんさんの登録情報
平均点:6.66点 書評数:518件

プロフィール| 書評

No.398 7点 ポオ小説全集2
エドガー・アラン・ポー
(2025/01/05 03:42登録)
『ナンケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』 7点
現代的な叙述トリックを匂わせるような冒頭から壮大な冒険譚が始まる。序盤1/3が船内での反乱、中盤1/3が漂流サバイバル、残り1/3が南極秘境冒険小説。この「漂流サバイバル編」の冷徹さは類を見ません。もう少しジャ○プ漫画のように主人公側に都合の良い展開があっても良いのではないでしょうか。物語が進むにつれてピムの精神が荒廃し、人の死に対する感傷が鈍感になっていく様も読み取れます。
ポオは話の面白さで読ませる作家ではなく、発想力や文章力で黙らせる作家という認識であったがそれは間違いで、本作に関しては話の面白さに引っ張られた。それだけに5時間も夢中にさせといてぶん投げはやめてほしかった。乱歩…夢Q…なぜ短編作家達はすぐに長編をぶん投げるのか…(n=3)
ちなみにSFを大きく発展させた記念碑的な作品でもあるらしい。ほんとか?

『沈黙』 3点
わけわからん。あれか?過ぎたるは及ばざるがごとしみたいな話か?

『ジューリアス・ロドマンの日記』 5点
こちらも冒険譚であるが『ピムの冒険』と比べると大した苦難はなく退屈。そしてこれもほぼぶん投げ。スー族への過剰なる警戒心を読むと、手記者のロドマンは南極冒険の一件を経て成長したピムのよう、その分緊張感は薄れるけどね。この冒険の根源にある動機は353pに明確に記されていて、「未知なものに対する燃えるような愛」、イイネ。

『群衆の人』 6点
趣味は人間観察。今回のターゲットは都会人の罪を背負った老人。孤独を恐れ、群衆に溶け込むことで安心を得る、まさに大いなる不幸。そんな醜悪な人間の心を読み解く方法も価値もない。
それじゃあ、他者の観察を生き甲斐とする語り手もまた罪悪の権化ではないか?
※前読んだのよりコチラの翻訳の方が良さそう

『煙に巻く』 7点
難解な書物をなんでもかんでも深読みする奴へww 残念でした!お前らの期待しているような高尚な中身なんてありませーんwwwwwww
ということか?
ポオ作品も200年の時を経て神格化され、一部が『関係ニヨル、結合ニヨル、又自身ニヨル危害』のような存在になっているような(笑)

『チビのフランス人は、なぜ手に吊繃帯をしているのか?』 7点
パトリック卿の妄想やり取りが大袈裟で面白いし、オチでも笑ってしまった。本作だけでなく、節々にレイシストの気質あるよねポオ。

全集1はイマイチでしたが全集2はポオ唯一の長編『ピムの冒険』や最後2つのユーモア小説が面白くて、満足感の高い仕上がりになっとりました。


No.397 4点 ポオ小説全集1
エドガー・アラン・ポー
(2024/12/30 21:39登録)
ポオはいままでアンソロジー(コレクション?)を中心に読んできましたが、そういうのに載らないようなマイナーな小品を拾う目的で全集に手を出しました。しかし、アンソロに載らないということにはやはりそれに値する理由があるはずで、まあ端的に言えばつまらんのが多いということです。あと古すぎて社会風刺的なお話が刺さらないことや、当時の流行文学に対する当て擦り(例:『ハンス・プファアルの無類の冒険』『エルサレムの物語』)も上手く馴染めないという欠点があります。
怪奇小説、SF風の冒険譚、ジョーク系などが幅広く収録されていますが、やはり純粋に楽しめるのはアンソロ常連の『ベレニス』『リジイア』『使い切った男』『アッシャー家の崩壊』『ウィリアム・ウィルソン』。ちなみに、『アッシャー家の崩壊』が好きな方にぜひぜひ読んでいただきたいのが平石貴樹の『だれもがポオを愛していた』。おすすめです。
『メルツェル家の将棋指し』は特に評価は変わらずイマイチ。まあ小説ではないしな。
初読で良かったのはポオお得意の美女病蘇生ものの『モレラ』、比較対象は土俵にも上がらなければ勝てるという謎の教訓を含んだジョーク小説の『名士の群れ』、対立する名家の破滅、馬と人間の主従の逆転を描いた怪奇小説の『メッツェンガーシュタイン』、誰もが一度は考える金儲け、世の中を賢く生き抜く術の詰まった『実業家』などなど。


No.396 7点 ミステリー・アリーナ
深水黎一郎
(2024/12/24 15:36登録)
笑えた。まず、プロのミステリー読みってなんやねんwみたいなトコロから、「俺みたいな玄人ミステリ読者は分かっちゃうんだよね」と自信満々な早押し解答にも、最後らへんの真相の苦しさにも笑いっぱなし。
「プロのミステリー読み」への痛烈な皮肉を混ぜたメタメタなミステリかと思いきやそれだけではなかった。その皮肉は別のジャンルの文芸にまで及ぶ。司会者の最後の方のセリフが全てでしょう。
本書の構成は面白いけれど、作中作自体に魅力的な謎、トリックがほとんどない(一応密室は拵えてあるけど解答はいずれもしょぼめ)ということが欠点かな。この辺りをしっかり多重解決に盛り込めば更なる傑作になったと思う。
いやしかし、現実のプロミステリー読者はここまで叙述に気を使いながら読むものなのでしょうか。登場するプロ達の先読みの鋭さに感心しつつ、何も考えずに読んで騙されて、多重解決ひとつひとつに驚ける私はまだまだですね。


No.395 6点 雷龍楼の殺人
新名智
(2024/12/20 00:23登録)
「犯人は外狩詩子ただひとりである」という堂々たる読者への挑戦状から始まる意欲作。Amazonレビューにも憤慨コメが多数散見され(笑)、カベホンという前評判で読み進めたので結構楽しんだ。
2つの大きな仕掛けがありますが、1つ目は前例多数のよくある奴。2つ目も前例はありそうですが、効果的な使い方がされているとは思います。真相ではないオチの方はクライマックスに引っ張るまでもなく分かってしまいますよね。まあ「完全密室」は結構好き。ところで、毒殺とかって完全密室に定義されるのでは?


No.394 7点 弁護側の証人
小泉喜美子
(2024/12/18 00:16登録)
どんでん返しの内容そのものに、ややパワー不足を感じるけれども、騙しの技巧や読み返した時の納得感は読んできたものの中でも確実に上位。雪の日さんもおっしゃっているように出版年を考慮して、諸々で7点。

朝起きるとワンペアでニヤリ
実はまさかのスリーカードv(^^)v
(シェリイ・ウォルターズ『砂の館』のレビュー参照)


No.393 6点 楽園とは探偵の不在なり
斜線堂有紀
(2024/12/14 16:49登録)
神や天使の存在意義や天国の有無がどうとか探偵の使命がどうとか、そのへんがあまり乗り切れませんでしたが、2人が死ぬと地獄に落ちる世界でいかにして連続殺人が起こるかという魅力的な特殊設定ミステリで、犯人がここまでするに至った動機などに説得力があり、トリック等も細部までよく練られています。


【以下かなり詳細なネタバレがあるので注意】



私が根本的なところを勘違いしているのかもしれないが、前半の三つの殺人で黒幕が実行犯に自殺を唆した理由がわからない。そのまま放置しておけば、実行犯が焼死して良い感じじゃないか?実行犯がアッチではなく、アッチと判明することで何か不都合があったのか…?


No.392 7点 夢野久作全集 3
夢野久作
(2024/12/13 23:43登録)
夢野久作全集3でようやく夢野久作名義の作品が並ぶ。血生臭い『猟奇歌』から始まり、有名所ではやはり『押絵の奇蹟』『鉄鎚』が素晴らしい。他の傑作選には載っていないマイナー作品ながら『卵』『霊感!』も天賦の才を爆発させており、特に後者は私的夢野久作ベスト10に入りそう。ということで、夢野久作の作家としての本領を味わいたい方には、全集1,2を飛ばしてぜひ本作からお読み下さい。

『あやかしの鼓』 7点
改めて再読すると、お得意の独白体形式ではあるものの、この時点ではまだ独特のカタカナ遣いやリズムがなくて逆に新鮮です。「あやかしの鼓」に込められた執念と憎悪が100年間持続し、聞いた者の心を狂わせていくというドラマはまるで『ドグラ・マグラ』に登場する絵巻物みたいですね。持続時間は絵巻物の10分の1ですが。
あとは江戸川乱歩が酷評したことも有名だそうです。SMの話とか如何にも好きそうなのに意外。

『押絵の奇蹟』 8点
これ大好きです。病を患った女性の半生を書簡体形式で流れるように丁寧に描写することで出生にまつわる"奇蹟"が1%でも起こり得そうと納得してしまう。男性視点の独白体だと一種の名人芸のように諧謔的になることが多いけど、女性視点の本作はその清純さに心を打たれる。女性視点の独白体はこれと『少女地獄』以外にあったかな?

『童貞』 5点
恋愛に疎い男性は話しかけられるだけで、相手に好意があると勘違いしやすく、相手のことを盲目的に好きになるけれども、一度拒絶されると魔法が解けるというよくあるお話か。う…はるか昔…身に覚えが…

『鉄鎚』 7点
これも地味ながら面白い。再読して印象に残ったのが、究極のニヒリズムというか傍観主義とでも呼ぶべきなのか、戦局をひたすら眺めて楽しむだけの主人公です。何気にこいつ探偵小説の愛読者なんですよね(笑) 早すぎた虚無への供物。

『怪夢』 5点
「工場」や「病院」はそこそこ好きなんですが、どういう状況なのかはよく分かりませんね。

『ビルディング』『縊死体』『月蝕』『微笑』 採点不能
どれも5ページに満たない短編。『怪夢』と同じく怪奇小説が好きな人は気にいるでしょう。月に女性が宿る『月蝕』が好き。

『人の顔』 6点
怪奇小説と見せかけたユーモア小説。これを読むたびに壁の模様や物音にビビっていた幼き自分を思い出します。

『卵』7点
卵が孵ると幻が現実になる。三太郎は現実を見届けることを放棄し、露子との甘美な幻想世界に閉じこもろうとした。ということらしい。隠れた良作と思う。

『夫人探索』 6点 
夢野久作ってこういう変なことばっかり考えてんだろうな…笑

『奥様探偵術』 5点
男の浮気性はいつの時代も変わりません。実に素晴らしい作戦です。

『霊感!』 8点
他の傑作選などには収録されているのを見たことがないけれど、私的夢野久作ベストテンに入るくらい面白い。まさに顎が外れるほどのオチを堪能あれ!

『悪魔祈祷書』6点
『押絵の奇蹟』で言っていた名人芸のような男視点の独白体はまさかの『悪魔祈祷書』が初出だったようです(笑) 夢野久作といえばコレですね。これを機に『死後の恋』や『人間腸詰』 が生まれたんだなとしみじみ… 悪魔の聖書、真偽はともかく、アイデアの使い捨てはもったいない。

『白菊』 6点
脱獄囚がメルヘンの世界に迷い込むお話。やはりまだこの作品の魅力を完全に理解するには至らないというのが正直な感想。

『髪切虫』 6点
『月蝕』と少し共通点を感じないでもない。

『煙を吐かぬ煙突』 6点
記者がスキャンダルをネタに強請りを続けていると想像を絶する巨悪に遭遇してしまうという記者ならではのお話。たしか『少女地獄』にも収録されていましたね。

『涙のアリバイ』 5点
手だけで表現した映画を文字に書き起こすというよくわからない手法でありながら、内容自体は至って普通の探偵小説。

『黒白ストーリー』 4点
「なまけものの恋」はまあまあ 他は明日には忘れてそう。


No.391 7点 盲獣
江戸川乱歩
(2024/12/07 15:01登録)
『乱歩殺人事件 悪霊ふたたび』を読んで乱歩欲が高まり、さっそくいわくつき(?)の本作を…
視覚の世界では醜悪であっても、触覚の世界では美麗に変わる。「美女と盲獣」であったものがいつの間にか「盲獣と盲獣」に変わるという触覚史上の価値観は理解し難いが、何かしら惹きつけるものはある。
『蜘蛛男』に明智小五郎が登場しないバージョンだなとか「触覚芸術論」は『人間椅子』や『芋虫』の着想に通ずるものがあるなあ…とか。本サイトの評価はすこぶる低いけれど、地味に重要作な感じがする…?ので『人間椅子』『地獄の道化師』などには及ばないとは思いつつ、同じ7点にしておく。
少年探偵団シリーズで乱歩に興味を持った当時の少年達が、親の目を盗んで読んでいたりしたのかな?


No.390 7点 虐殺器官
伊藤計劃
(2024/12/06 08:54登録)
罪の意識が極端に低い主人公クラヴィスが虐殺を引き起こすポールと言葉を交わし、はじめて自由意志で選んだ行動。それは決して世界を守るためなどという単純な利他精神ではなく、結局は戦場を利用した母への贖罪という究極の利己主義的選択であると思う。
人類にとって言語は生まれながらに備わっている正得的能力なのか、環境で習得する後天的な能力なのか。種の存続のために人間が得た虐殺能力は時を超えて今も眠っているのか
結末も含めて、なかなかに危うい作品を読んでしまった。こんな物凄い作家が既に亡くなっているとは…


No.389 8点 乱歩殺人事件――「悪霊」ふたたび
芦辺拓
(2024/11/30 12:57登録)
さて、先日TVで放送された某推理アニメ『乱歩邸殺人事件』を視聴した方はいますか?まあ、本サイトの方で見てるのは私くらいであろうから、【ややネタバレ】しておくと、「いや乱歩ほぼ関係ないんかい」という拍子抜けの真相でしたね。
気を取り直して『乱歩殺人事件』を読むことにしました。江戸川乱歩作品は有名作をちょこちょこ読んだ程度のにわか読者の私ですが、中絶作『悪霊』を読むと確かに『孤島の鬼』級の畢生の大作になりそうな雰囲気がありますね。当時の読者が完結を待ち望んでいたことが容易に想像できます。
序盤の密室殺人、異様な猟奇殺人、奇妙な暗号、乞食の謎、記述の不可解さなど広げすぎた風呂敷のほぼ全てに辻褄を合わせるだけでなく、乱歩の嗜好を真相の核に持ち込み、尚且つ『悪霊』の真の中断動機を荒唐無稽ながら提示しています。半端なデキでは許されなかっただろうし、恐ろしく高かったハードルを芦辺先生は見事に飛び越えたのではないかと率直に思います。
大作家の中絶作に90年の時を経て挑むという偉業と偉大なる大作家へのリスペクト精神に8点。


No.388 7点 アリス殺し
小林泰三
(2024/11/29 16:33登録)
『不思議の国のアリス』に登場するキャラを下敷きに、原作の破天荒さとナンセンスに脈絡の不明な会話などもしっかりオマージュ。半分は工学部の研究室が舞台ということも超嬉しい。これは工学系のラボ所属経験のある人が書いてるなと確信して調べたら、やっぱり著者は工学部出身なのネ(^^) メルヘンと残虐趣味を組み合わせ、ファンタジィ一歩手前の綱渡り的な本格ミステリ。力技2発にシビれた。


No.387 5点 不思議の国のアリス
ルイス・キャロル
(2024/11/29 16:28登録)
元ネタ学習のため、超有名作をいまさら読む。破天荒な少女が空想的な世界でふしぎな生き物と出会い、ふしぎな現象に見舞われ、それでも持ち前の奔放さを発揮していくメルヘンファンタジー。当時の流行歌や詩、言葉遊びは廃れても、この無邪気さが時を超えて永遠に愛される所以か。 挿絵も素敵。


No.386 7点 法廷占拠 爆弾2
呉勝浩
(2024/11/29 16:19登録)
実名を開示した前代未聞の立て篭もり犯は何を求めるのか?共犯の2人の関係性をあえて詳細に描写しないことで、ラストに劇的な効果を齎していると思う。法廷で立て籠るまでがわずか30ページとこの疾走感は前作以上であるし、サスペンス・本格・警察小説、どれも高い水準を満たしており、エンターテイメントかくあるべしというお手本のような作品でした。


No.385 8点 幽玄F
佐藤究
(2024/11/14 08:51登録)
傑作
戦闘機に魅入られて自衛隊に入隊した主人公透。透は自衛隊に入隊し、あれほど夢見た戦闘機を操縦することになるが、音速飛行における原因不明の窒息に悩まされる。
自衛隊を辞職し、観光用フライトのパイロットに転職した透。なぜ戦闘機に心を奪われたのかと改めて自問する。透は重力や地上のしがらみの束縛を断ち切り、血の補色である空を切り裂く力が欲しかった。領土の奪い合い(戦争)が水平的であれば、それを脱してはじめて垂直的。それが少年期に夢見た自由な飛翔。あの窒息は地上(水平)のしがらみにまみれた「護国の空」の息苦しさからくるものであった。フライトがただの仕事と割り切れるほどに、自分を見失っていた透は、バングラデシュで様々な人物に出会ったことで、とある転機が訪れる。結末は…まさにこれ以外ない!!!

ミステリか疑わしいが、純文学寄りのアクション系エンターテイメント作品として逸品。三島由紀夫が好きな人や戦闘機に詳しい人は更に楽しめると思われる。私は知らなくても楽しめた。


No.384 6点 QJKJQ
佐藤究
(2024/11/12 01:20登録)
純文学で勝負した『サージウスの死神』にはなかったエンタメ性・ミステリ要素が付与されて、それでもミエミエな展開なのはハナから織り込み済みか、最後はやはり純文学に終わる。どうもこの作者の作品には薬物中毒者のような世界観が広がっていて、読んでいると誇張抜きで頭痛や眩暈に襲われているような感覚になる。いや、たまたま体調不良だっただけか?ともかく、楽しい読書ではない…が…今まで読んできた優等生の権化のような江戸川乱歩賞作品とは一線を画す。ミステリの賞を与えるべきかどうかはともかく、この作者が新人離れした(当然か)とんでもない作家であることは間違いなさそう。


No.383 7点 天狗の面
土屋隆夫
(2024/11/10 17:18登録)
先日読んだ『猫は知っていた』と乱歩賞を争った作品だったのですね。
あちらと違って、こちらは語り口にいささか古さを感じさせますが、閉塞的な因習村の風土を味わうにはピッタリでした。こういう作風で読者への挑戦状の如きものがあるのには違和感がありますが、読者に挑戦しても問題なさそうなくらいフェアプレー精神です。半分当たって嬉しい。
実現可能か不可能かその狭間にある、いやむしろ宗教と風土を活かしたリアリティのあるトリックと同情の余地のある動機が私には新鮮で、定期的に補充していきたいところ


No.382 7点 丸の内魔法少女ミラクリーナ
村田沙耶香
(2024/11/10 00:06登録)
魔法少女ごっこは幼児退行でなく処世術。決して、偽善や怒りの捌け口にしてはいけない真剣なパトロール。ミントスプラッシュ!
初恋という幻想の決壊『秘密の花園』
性愛を否定するこれこそ真愛『無性教室』
性格の伝染に対する警鐘『変容』 「エモい」とかいうワード嫌いなんだろうな。唱えたくなるパブリック・ネクスト・スピリット・プライオリティ・ホームパーティ!
荒唐無稽な設定と破茶滅茶な展開に笑える短編集。


No.381 8点 だれもがポオを愛していた
平石貴樹
(2024/11/09 11:13登録)
『アッシャー家の崩壊』『ベレニス』『黒猫』『アナベル・リー』を予習し、楽しむ準備万端。
人間より物質、心理より論理、物語よりパズル。1985年の作品なのにド直球の本格推理小説!
アメリカ文学専攻の東大教授だったら、もっと衒学趣味に彩られたポオづくしの作品にしてもいい所なのに、真相に関わる最低限の情報だけにとどめるあたり読者への配慮が伺えます。
かなり飛躍気味で唯一性に欠ける気がしなくもないが、壊れた窓を起点とする論理はよく練られていますし、見立て殺人の必然性もあって大満足でした。なにより『アッシャー家の崩壊』の読み方を根底から覆す衝撃的な新説が事件の真相に密接に関わっている点に感動しました。どんでん返しもトリックもほぼない作品に珍しく8点を(^^)
しかし悲しきかな、私は『アッシャー家の崩壊』を3回以上は読んだはずなのに、ポオの真の狙いを1ミリも読み取れていなかったということか…………。
不満点は読んでいるとお腹が空いてくること。あと、女探偵には「お前が犯人だ」で決めて欲しかった!


No.380 6点 ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人
エドガー・アラン・ポー
(2024/11/09 11:09登録)
某理由から『ベレニス』を再読したくて、どうせならと登録しました。本サイトのサ…(以下略)
実はちょっと前に一読している短編集なのですが、初読ではお話についていくので精一杯だった覚えがあります。新潮文庫ミステリー編と比較すると、詩を含めてマイナーなのが結構載っています。
記憶薄めの感想をいくつか

『告げ口心臓』
前も思ったけど、被害者と犯人はどういう関係?読み飛ばした? その時は罪悪感のある等身大の人間だなんだとか書いたが、ふつうに異常な感覚神経の持ち主ですね。

『ベレニス』  【ネタバレ注意】
ポーこそが死者蘇生のモノマニアではないかというくらい鉄板ネタ。偏執狂の語り手はベレニスに対する恋慕の情はなく、あくまで分析対象であることが強調されているのがポイントか。1835年の作品なので、何気に犯罪小説などを除いて○○が犯人の元祖だったりする??

『詐欺-精神科学としての考察』
どの国どの時代にも巧妙な詐欺を考えつくやつはいるもんですね。

『楕円形の肖像画』
ドッペルゲンガーを扱った『ウィリアム・ウィルソン』と同じく、短編ながら前衛的というか着想が凄いですよね。

残りの80ページくらいに作品解題とポーの用語集あり。満足度アップ。


No.379 7点 アッシャー家の崩壊/黄金虫
エドガー・アラン・ポー
(2024/11/08 02:36登録)
某理由から『アッシャー家の崩壊』を再読したくて、どうせなら新しい訳で読もうということで登録しました。本サイトのサルガッソー海をさらに荒らす私は海の藻屑です。

ただ、ポーに振り落とされずに余裕を持って楽しめる小川高義さんの翻訳はなかなか良いぞよ。愛する女性との死別を描いた『アナベル・リー』『ライジーア』『大鴉』が3作並んでいて比較しやすい所も超ナイス。
『アナベル・リー』と『ライジーア』は愛する女性の名がそのままタイトルになっているだけでなく、語り手の思慕の情も似通っています。例えば引用すると↓

「夜空に星が出るたびに
美しきアナベル・リーの輝く星が見えている」
「ライジーアの美しさが私の精神に染み込んで美神が居を定めたようになってからは、現実界に存在するさまざまなものを見るにつけ、あの大きな明るい双眸が私の内部にもたらす感覚と似たものを呼び起こされていたのだった-(中略)-望遠鏡で天の星を眺めていても、その一つか二つにはそんな感想を抱いた」

などです。詩と小説で表現媒体は違えど、同一のテーマでしょう。『ライジーア』は更に意志の超越や死者蘇生(ポー愛好)が加えられますが。『大鴉』に登場する大鴉の定型句「ネバーモア」は『ポー詩集』の阿部保訳では「またとない」と翻訳されていましたが、こちらでは「もはやない」となっています。死別に対する冷徹なアンサーであることを考えると、「またとない」の方が適していそうです。
この次が『ヴァルデマー氏の真相』。これまた生死の境界の曖昧さが催眠術の例を用いて説かれている。しかしこちらは上3作と違って、意志の強さや情は絡んで来ず、怪奇小説風味な終わり方となっています。

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