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ミステリの祭典

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みりんさんの登録情報
平均点:6.66点 書評数:385件

プロフィール| 書評

No.265 7点 瓶詰地獄(乙女の本棚)
夢野久作
(2024/05/08 19:42登録)
この作品を読んでる時、毎回脳内でとある曲が流れる。
「そして僕ら今ここで♪ 生まれ変わるよ♪ 誰もさわれない♪ 2人だけの国♪」ああ…この作品にピッタリな曲ですね。アダムとイブです。ここまで2人を狂わせたのは近親であるからというだけでなく、兄弟である可能性も否定できないと思います。絵的には兄妹の方が映えるのでいいんですけどね。
『瓶詰地獄』は毎度読み終わってから考察系ブログを読み漁ってしまうまでがセット。議論の尽きない作品ですね。
お気に入りアートは圧倒的に53ページ。

『ルルとミミ』『死後の恋』と同じ乙女の本棚シリーズ。チョイスもドストライクだしいいなあこの企画。『キチガイ地獄』も同じように絵本に合いそう(タイトルでBANされるか?) 『木魂』『押絵の奇蹟』とかもぜひやってほしいなあ


No.264 8点 顔のない肖像画
連城三紀彦
(2024/05/06 09:59登録)
連城って長編より短編が圧倒的に有名だけど、ふつうに長編の方が面白くねって逆張りしてた。そんな逆張りの民に読んでほしい1冊。いや、短編も長編もすこぶる面白いということでこの謎バトルは決着。
情緒あふれる悲哀のミステリーを描いたり、情景描写に富んだドロドロ大正恋愛小説を描いたり、本作のようなお得意の叙情性を封印して反転命・本格魂を見せつけてくれたりと、作品ごとに印象がガラッと変わる作家ですね。趣向的には『戻り川心中』や『宵待草夜情』より『夜よ鼠たちのために』に近い感じです。とりあえずしばらくは本作を含めたこの4作が連城短編集四天王になりそうだな

潰された目 7点 反転指数50
アレが目的なら、もっと他に良い方法がありそうなもんだが…んなことはいい。久々の連城ミステリ短編は初っ端から切れ味抜群。どこか湊かなえ感がある。

美しい針 7点 反転指数65
サイコ系でちょい官能的

路上の闇 6点 反転指数30
タクシーでの心理戦は漫才みたいな感じで楽しい。かなり予想はつきやすいオチ

僕を見つけて 9点 反転指数90
特殊な誘拐もので短編にはもったいないほどの出来。いつもの叙情性をプラスして、子供の純情さを訴えかけるような悲劇の誘拐サスペンスドラマとして長編に仕立て上げれば、涙腺がイってたかもしれない。著者は誘拐の新機軸をたくさん生み出していますね

夜はもう一つの顔 7点 反転指数50
ほーこれは逆に短編で良かった。連城がよく使う種類の反転方法だが、オチをバッチリ決めてくれたので良し

孤独な関係 8点 反転指数75
ふんふんこの程度の罠、俺なら見抜けるぜ!って先読みしていた読者の先をいく一撃。脱力系だが、人によっては共感を生むかもね。

顔のない肖像画 9点 反転指数100
ええええ〜そんなのありかよ!絵に限らず収集家という性は時に本質を見失うものですよね。


No.263 4点 あじさい前線
連城三紀彦
(2024/05/05 19:08登録)
連城三紀彦の第8長編 
なぜ1件も書評がないのか疑問に思っていたが読んで納得。ミステリ要素は皆無の完全なる自分探し小説だった(コピペ了)
離婚直後の40歳の女性が日本各地に散らばった元恋人8人に会いに旅立つ日本縦断物語です。連城といえばドロドロした男女関係を描くことが多いイメージですが、本作は全体的に薄味だと感じました。朝子や8人の元恋人の多種多様な人間模様を楽しむ小説なんでしょう。


No.262 5点 残紅
連城三紀彦
(2024/05/03 13:26登録)
連城三紀彦の第4長編 
わりと初期作品(1985年刊行)なのに、なぜ1件も書評がないのか疑問に思っていたが読んで納得。ミステリ要素は皆無の完全なる恋愛小説だった。初期作なだけあって、文学の香りは芳醇。
あとがきによると、実在の歌人である原阿佐緒(1888-1961)の半生を脚色して小説にしたらしい。なので時代は大正。男性優位社会が根付いているこの時代に、魔性の女の悲劇的な半生を叙情あふれる文章で読ませます。恋愛小説ではありますが、心理サスペンス小説といっても良いかもしれませんね。
主人公麻緒は美しいだけでそこまで悪女ではないし、悪いのは完全に男達だけどさあ…いくらなんでもリスクヘッジができてないよ麻緒さん。まあ恋愛小説にそんなこと言い出したら話が進まないのでダメですがね。
"あれほど執着し、そのために泣いた男たちも、所詮は次の停留場まで乗り合わせるだけの客と変わらないのだった"
↑がこの物語の1番大事なところです(たぶん)


No.261 7点 どこまでも殺されて
連城三紀彦
(2024/05/02 08:18登録)
どこまでも殺されていく僕がいる。いつまでも殺されていく僕がいる。
既に七回殺され、今まさに八回目の死を迎えようとしている男。

ここまで書くと誰しもが『七回死んだ男』を連想しますよね??「あっちよりも先なんですね」という書評を目にして、私はてっきり『七回死んだ男』の先行作品なのかと思っていたんですよ。ところがそっちではなくあっちなんですよ!!すごい!連城!すごい!変な部分で感動してしまった。

連城のわりに恋愛色薄め・ミステリ色強めの長編なので本格好きにもおすすめです。


No.260 7点 人間腸詰(角川文庫版)
夢野久作
(2024/04/29 13:58登録)
1936年に47歳という若さでこの世を去ってしまった夢野久作。この短編集は1934〜1936年という晩年に発表された短編を八編収録。蟷螂の斧さんが書評されている『人間腸詰-夢野久作怪奇幻想傑作選』とは収録作品が違うので、新たに登録し、こちらに書評させていただきます。

人間腸詰 7点
『空を飛ぶパラソル』では太陽、『死後の恋』では宝石、『笑う啞女』では月光。夢Qの作品では光の演出によって印象的な(ショッキングな)シーンを魅せることが多い気がします。今作は水銀燈がその役割を担っていましたね。

木魂 7点
再読だがほとんど忘れてた。景色が公理や方程式に見えるほど偏執狂の男が数学的解釈より家族愛を選び取る。短編なのにうるっとくる。当時の数学教育への憤りとかもあったりしたのかな?
初読時より1点加点して7点。

無系統虎列刺 6点
吐酒石は正式名:酒石酸カリウムアンチモニウム(初耳!) で17世紀頃から催吐薬として使われはじめましたが、副作用が強いため、現代ではほとんど使われていないそうです。酒石酸と重曹の組み合わせは中和反応により炭酸ガスが発生するため、発泡剤として用いられています。

近眼芸妓と迷宮事件 5点
連城イズムですね、時系列が逆ですが笑
アンチ共産主義もひとつまみ

S岬西洋婦人絞殺事件 5点
特筆すべき点のない普通の探偵小説。少し唐突な犯人。

髪切虫 6点
宇宙線からメッセージを受け取った髪切虫の不思議なお話。噛み切り虫だと思ってたけど、ほんとに髪切れるんだねこの虫。

悪魔祈祷書 6点
再読。森羅万象は原子からなり、人間の複雑に見える思考というのも所詮は化学反応に過ぎない。と神の存在を否定しつつ、反対に悪が人類を発展させてきたという説。興味深くのめりこんで読んでいるとひっくり返される笑 これも面白い。
ちなみに悪魔の聖書というのは実在するそうですね。

戦場 8点
舞台は第一次世界大戦の独逸の戦場。
軍医として最初に学ぶことは自傷の鑑別方法(これほんと?) 戦争の影で蠢く、私利私欲に塗れた陰謀を解き明かすミステリー。反戦をテーマにお得意のナンセンス(轟音のくだりとか)を織り交ぜて、苛烈な戦場の虚無感を描いた夢Q後期の傑作短編だと思われる。第二次世界大戦前に発表されているのがいいね。晩年といっても切れ味は変わらず…もう少し長生きしてほしかったな(泣)


No.259 6点 死後の恋(乙女の本棚)
夢野久作
(2024/04/29 13:47登録)
『ルルとミミ』と同じ乙女の本棚シリーズの絵本です。『死後の恋』のあのシーンを絵で見たいという思いで読みましたが、描かれていませんでした。さすがに乙女には刺激が強すぎると判断したのでしょう。74pの絵が個人的にはベストショットかな。
お子様のいるレビュアーの方はぜひ読み聞かせをしてあげてくださいね(『ルルとミミ』の方がウケ良いかもですが…)

『死後の恋』はこれで5回目くらいだが、何度読んでも飽きない。普段再読なんてあまりしないけど、夢Qって再読性の高い作家だなぁ…


No.258 5点 ネバーランド
恩田陸
(2024/04/28 13:09登録)
恩田陸を読むとノスタルジーにたっぷり浸れる…ミステリじゃないけどいいねこういうの。平日の睡眠時間を削って、ではなく休日にゆっくり読むと更に心地よい。
腐のにおいも少々…


No.257 5点 パニック・パーティ
アントニイ・バークリー
(2024/04/28 01:37登録)
シリーズ最終作!ロジャー・シェリンガム最後の事件!!感動のラスト!!!…とはならずにヌルッと終わってしまいました笑 ドライですねぇバークリーさん…
評点の低さに身構えてしまいましたが、サスペンス小説としてまあまあ面白いですよ。孤島に集められた15人のうち1人だけいなくなると、そこからはパニック小説が始まります。食糧の調達とか住処の確保とかサバイバル要素もあればもっと面白かったかもなあ…
テーマはおそらく極限状態に垣間見える人間の本性という(よくある)ヤツなんだろうな ※自分にはそれくらいしか読み取れず(´-ω-`)
推理できる要素がほぼありませんでしたが、「主催者の目的」についてはわりと納得のいく良いサプライズでしたね。3人ほど血の通ったキャラがいてそこも良し。


シリーズを読み終えて、バークリーの印象は逆張りおもしろおじさんって感じだ。一気読みするには勿体無い作家だったな。王道探偵小説×10→バークリー×1 くらいの配分で読み進めるのが正解だった気がする。なんにせよ黄金期英米ミステリは未読作ばかりなのでこれからが楽しみです。
んーところで、1作目と2作目にだけ登場したワトソン役のアレックって何だったんだろうなアイツ。


No.256 9点 ジャンピング・ジェニイ
アントニイ・バークリー
(2024/04/26 16:25登録)
久々の倒叙ミステリですねぇ
シェリンガムが殺人の証拠をなんとか揉み消そうとあれこれ奔走する作品。序盤は登場人物+扮装姿を覚えるのが辛く、30ページ進めるのに1時間かかりましたが、それを乗り越えると一気読みできるほど面白かったです。今作はシェリンガムが窮地に立たされる!?という展開もあり、検死審問では「こいつヘマすんなよぉ…」と願うほど、ハラハラさせられました。
全体を通してバークリー節が炸裂しており、オチだけでなく過程も全てアイロニカルです。これがロジャー・シェリンガムシリーズの最高作ではないかな?
次でラストか…『パニック・パーティ』の評点を心配しつつ(笑)、シリーズのラストをこの目で見届けることにします。


No.255 7点 地下室の殺人
アントニイ・バークリー
(2024/04/24 03:07登録)
モーズビー警部視点による警察捜査小説のような感じで新鮮でした。これまたなかなか楽しい(^^)
そしてついに、シェリンガムの小説家としての実力が第二部「ロジャー・シェリンガムの草稿」にて発揮されます。「シェリンガムさん、これで終わりですか。残念だな。ちょうどおもしろくなってきたところなのに」とモーズビー警部が嘆いてますが、大変共感です。私もローズランドハウス校ストーリーをもっと読みたかったですね。

【以下結末を仄めかすような記述あり】


警察捜査小説という新たな趣向意外で今作1番の見どころは、犯罪心理の追求>>>物的証拠の追求 というシリーズ共通(?)のテーマを長編第八作目にしてようやく達成できたところではないでしょうか。シェリンガムの心理探偵っぷりがやっと実を結んだのではないかと思います。今回は被害者がそこまで悪者とは思えず(描写不足か?)、結末にもやもやした感情が残ります。



解説は『最上階の殺人』に引き続き真田啓介氏。ちょうど同氏のバークリーについてのブログで↓の弾十六さんが紹介されたことでタイムリーな方!30ページほどあり、バークリーへの愛が溢れています。
バークリー作品では"ストレートが逆に変化球"  良解説でした。


No.254 7点 最上階の殺人
アントニイ・バークリー
(2024/04/22 03:23登録)
くぅ〜毎度毎度よくもまあ真面目な探偵小説読者をコケにするようなプロットが思いつくねぇ(褒めてます)。まさに笑劇の結末!!まあシリーズを通してワンパターンではあるんですが、演出の勝利です。今回もロジャー・シェリンガムがド派手にやってくれます。モーズビーとの勝負は今のところ大目に見て引き分けということで

今年の2月に刊行された創元推理文庫の方で読みましたが、『第二の銃声』と同様にフォントサイズが小さすぎて発狂しかけました(怒)
解説の「バークリーvsヴァン・ダイン」では2人の作家の両極性について述べられてて、非常に興味深かったです。この2人はバリバリ同年代の作家みたいです。ヴァン・ダインってE.Qに影響与えてるくらいだから、もっと古い作家(ポー・ドイルの次くらい)だと勘違いしてたよ…笑


No.253 7点 第二の銃声
アントニイ・バークリー
(2024/04/21 17:01登録)
う…すこし期待しすぎたか?

【色々ネタバレ注意】




草稿なんていくらでもひっくり返せるからなあ。
先にやったのは向こうみたいだが、フェアさや犯罪心理を掘り下げるエピローグなども含めてこちらの方が圧倒的に好みではある。その作品とはまた別の有名なアレとかアレとかが思い浮かんだが、この頃の英米ミステリでは夜神ライト的思考が流行していたんですかね?
大ネタに隠れて、名探偵へのアンチテーゼ部分もあり。また、今後の探偵小説では数学的進化が廃れ、心理学的な要素、すなわち人間性の謎について焦点が当たるという将来的展望もあり。このままバークリーを読み進めていくと、パズラーにハッキリと見切りをつける瞬間が訪れるのでしょうか。楽しみです。

※まあ、少なくとも国内の本格は21世紀を迎えても未だ数学的進化を遂げているようで安心ですよ笑


No.252 7点 絹靴下殺人事件
アントニイ・バークリー
(2024/04/20 19:53登録)
ロジャー・シェリンガムという探偵の性格上、いまひとつ緊張感に欠けるこのシリーズですが、今作は比較的シリアスな雰囲気が漂っていました。アレックもアントニイも不在なのが一つの要因だと思います。しかしラストのユーモア溢れる仕返し!!待っていました(+1点) 前作『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』を読んでからのほうが確実に楽しめるでしょう。
ロジャー・アレックコンビが恋しいなあ…戻ってきてくれい!

※ん、そういえば本作(シリーズ4作目)の次が『毒入りチョコレート事件』なのか。てっきり「犯罪研究会」とやらがシリーズを通じて徐々に結成されていくもんだと思ってたな・・・ちと残念。てかそれなら『毒チョコ』に出てくるあの6人目の探偵は一体誰??

フランス警察とイギリス警察の違いなどもなかなか興味深く…
つーかシェリンガム完全レイシストだなこれ。ドイツになんの恨みが…あ、第一次世界大戦か


No.251 7点 ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎
アントニイ・バークリー
(2024/04/19 09:56登録)
いやあ痛快、痛快!
現代ではありふれていますが、ロジャー・シェリンガムがたどり着いた○○○○トリックは、本作が探偵小説史上初の試みなのでしょうか?? そうだとすればバークリーの発明であり、もし私がコレを世界で初めて考案できたならば、膝をついて歓喜し、堂々と世に出すことでしょう。

【以下未読の方は読まないことを推奨】



しかし、バークリーは易々とソレに飛びつくほど、甘くはありません。発明とも言える○○○○トリックを惜しげもなく犠牲にして、メタ・ミステリに昇華させます。あぁ…なんてアイロニックな作家なのでしょう… ますます好きになってしまいます。しかし、『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』などという微妙なタイトルよりも『○○○○』にした方が良かったのではないでしょうか。nukkamさんもおっしゃっているように名を残せたかもしれないのに…


No.250 6点 ウィッチフォード毒殺事件
アントニイ・バークリー
(2024/04/17 21:04登録)
突然ですが問題を出しましょう。
クリスティ(17) クロフツ(12) ヴァン・ダイン(4) クイーン(5) カー(0)とするとバークリー(?)←このカッコの中に入る数字は何でしょう。(国書刊行会『レイトン・コートの謎』の巻末解説より引用・改題)






「77」と正解できた方、バケモノです。尊敬します。()の中の数字は長編第一作が邦訳されるまでに要した年数とのことです(カーはや!)。 なんでこんな問題を出したかというと、このシリーズのレビュー数がこんなに少ないのが不思議だったからですが、ようやく分かりました。このシリーズを日本語で追えるようになったのはつい最近のことだったんですね。その幸せを噛みしめながら、これからも続きを拝読いたします。

ロジャー・シェリンガムは私にとって大変魅力的な探偵です。読者に隠し事をしないのもそうですが、ロジックや物的証拠より人間の心理を重視する探偵ってのも珍しいです。決め手は結局証言なんかいってツッコミは置いておきます。2転3転した先の真相は脱力系ではありましたが、言われてみるとたしかに盲点でした。あと、他の方も触れておられますが、本筋以外の最大の注目点はシェリンガムの尖りすぎた女性観でしょう。エクスキューズも用意して保険バッチリです笑

珍しく誤植っぽいを見つけたので指摘(初版なので、版によっては治ってるかも)
晶文社(ハードカバー) p293の最後の行 
× アレンは暖炉のそばで〜
○ アレックは暖炉のそばで〜


No.249 7点 レイトン・コートの謎
アントニイ・バークリー
(2024/04/15 16:59登録)
こちらも面白かった。やや拍子抜けの密室をバチっと決めてくれていたら8点以上でした。
ロジャーとアレックの軽快な会話がずっと楽しいです。ホームズ、ポアロ、レーン(くらいしか知らない笑)の推理のもったいぶり具合にイラっとする私のような読者におすすめです(国内だとこういう系の探偵代表は御手洗か京極堂?) 最後に全て明かされた方がカタルシスは増大するので一長一短ではあります…
本作は最後の推理が最も衝撃的だったので、一長の方でしたね。
あと、単行本182ページあたりの『少なくともあの女は兄さんだって言ってたね』ってユーモア部分がよく分からなかった。


【ここからネタバレ】



誰も不幸にならないラストは素晴らしいですが、今後もこの2人のホームズワトソンコンビは継続してくれるのでしょうか。それを祈るばかりです。


No.248 6点 空を飛ぶパラソル
夢野久作
(2024/04/14 19:19登録)
収録作は『空を飛ぶパラソル』『いなか、の、じけん』『復讐』『ココナットの実』『怪夢』『キチガイ地獄』『老巡査』『白菊』からなる8編。怪作『白菊』は読むたびに評価が上がる。未読の5編を書評。

空を飛ぶパラソル 6点
米澤穂信『王とサーカス』の先取りで、ジャーナリズムへの警鐘。2編を通して主人公がまるで成長していないというナンセンスユーモア(?)も夢Qっぽくてイイ。
『死後の恋』に通ずるような猟奇描写もあり
"その途中の処々に鶏の肺臓みたようなものが、ギラギラと太陽の光を反射しているのは脳味噌であろうか" 角川文庫p10より

復讐 7点
予想がつくベタなオチだがそこに至るまでの過程がかなり面白い。この時代の精神病の扱いについて再認識できる。

ココナットの実 4点
エラ子がかわいい。萌える。

キチガイ地獄 8点
お得意の独白体。とある男のドラマティックな半世だけでも楽しめるし、狂気を感じさせつつ少し笑ってしまうようなオチも秀逸。途中で「誰もさわれない〜♪ 2人だけの国〜♪」という歌詞が頭の中で流れた。これが1番!

老巡査 4点
夢Qにしては超平凡なお話。うだつの上がらない老巡査のサクセスストーリーです。


No.247 7点 スタイルズ荘の怪事件
アガサ・クリスティー
(2024/04/14 11:56登録)
個人的にはABCに匹敵するくらい面白かったです。
国内の有名古典にも同じものがありますが、本作はこういう系のトリックの元祖として、ABCと同等クラスの評価をされるべきなのでは…?と思いました。


【以下トリックのネタバレあり】



それとは別の時間差毒殺ケミカルトリックの方ですが、すごくユニークな発想ですね!こういうの好きですよ。ですが、底に溜まった沈殿物を無警戒に飲み込んでしまうものなのだろうかと少し気になってしまいました。どういう状態の液体か分からないのであまりなんとも言えませんが…
あと、ラストの決定的証拠の隠し場所についてですが、食べた方が良いと思います(追記:と思ったら他の方が全く同じことを指摘していました笑)

と不満点が2つほどありましたが、全体的には処女作と思えないほどハイクオリティな本格であり、大小さまざまなプロットやお手本のようなミスリードが楽しめる良作で間違い無いでしょう。


No.246 3点 金閣寺
三島由紀夫
(2024/04/13 17:41登録)
三島由紀夫が登録されているなんて知らなかった。クライム/倒叙で合ってんのかな?
昔はジュンブンガク楽しめねぇ…こんなのよりミステリー読もうぜ!って感じだった
でも今読むと・・・・

ジュンブンガク楽しめねぇ…だった( ; ; )

【以下ネタバレ。少年漫画『進撃の巨人』のネタバレもガッツリあるので要注意】


読了後の感想としては「こいつエレン・イェーガーじゃん」である。で、他に同じ感想を抱いた人がいないかを検索して確かめると、見事にとあるブログ(面白かったのでおすすめ!)がヒットして感動した。
『進撃の巨人』の主人公エレンは「外の世界」を未開の理想郷、ひいては自由の象徴と信じて、それを原動力に進み続けます。しかし、物語中盤で外の世界では同じように人間が住んでいることが明かされるのです。最終的にエレンは外の世界を平らにする「地鳴らし」を選択し、壁外人類の大量殺戮を決行します。エレンはその恐るべき過程を眺めながら「これが自由だ ついに辿り着いたぞこの景色に」と呟くのです。そう、これと似たようなシーンが『金閣寺』にもあります!!

自由→美  壁→吃音症  外の世界→金閣寺  地鳴らし→放火
にそれぞれ置き換えると、あら不思議!『進撃の巨人』のエレンが『金閣寺』の溝口に変わります!ちなみに嘘です。どうやら溝口が金閣寺を放火した理由はそこまで単純じゃないみたいですね。見どころは金閣寺の美の本質とされる"虚無の予兆" 。よく分からないのにカッコいいです(誰か解説して!)

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