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ミステリの祭典

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みりんさんの登録情報
平均点:6.66点 書評数:518件

プロフィール| 書評

No.298 8点 殉教カテリナ車輪
飛鳥部勝則
(2024/06/06 02:24登録)
図像学×本格推理という新機軸を打ち出したという点だけで既に賞賛されるべきです。芸術に疎いので、矢部の図像学的考察と蘊蓄は新鮮で純粋に楽しめますし、絵画『殉教』と『車輪』の最後の解明に関しては、ただの推理小説に止まらない文学的(芸術的)高尚さを齎しています。
しかし、本作の魅力はそれだけではありません。とある工夫で時間的&空間的不可能トリックを成立させています。私は読んでいる途中に、「時間」の方は容易に看破できるように思えました。ただ、作者はそんな読者を見透かしていたようです。

審査員の島荘・綾辻・有栖川が満場一致で選んだというのも納得ですね。これから新人賞は鮎川哲也賞を中心に読んでいこうかなと思うくらい素晴らしい作品でした。288ページ4h41min読了。
この作家の他作品に大いに期待し、一旦8点を。中古価格がすこぶる高く、読めるか不明ですが…

※こちらも「みんな教えて」でお二方が挙げていたので読みました。感謝です(^^)


No.297 7点 犬神博士
夢野久作
(2024/06/05 02:35登録)
1931〜1932年に福岡日々新聞(現:西日本新聞)に連載されていた夢野久作の数少ない長編(多分これとドグラ・マグラだけ)の1つとのことです。てっきり未完なのは連載中に亡くなったからだと思っていましたが、夢野久作の享年は1936年なので、単に執筆が滞ってただけなのかな?夢Qの中では今までで1番読みやすく、エンタメ性も抜群!349ページ4h35min読了。

巻末解説では推理小説でもなければ怪奇小説でもなく、ましてや純文学でもない。何ものでもないことによって、何ものでもある、とかっこよく評されています。
私がどう読んだかというと究極のキャラ萌え小説として読みました。チイ(=犬神博士)がねぇ、ただひたすら愛しくて可愛い。角川のアニメ調の表紙は賛否両論あるだろうけど、私は好きです。この格好で男の子ですよ。夢Qは女装男子萌えコンテンツの特許申請していいと思う。
ちなみにチラっとですがギャンブル漫画のような展開もあります。『賭博破戒録カイジ』の班長戦のようなことを1930年代で既に先取りしていることに感動しました(笑) こちらも特許申請していいと思う。
チイの冒険活劇として始まり、最終的には筑豊炭田の利権争いに関する一件で物語は終わります。未完にしては結構キリが良いのですが、殺人事件の真相やキチガイ博士と呼ばれるようになった経緯など、他にも謎は多く残っているので、続きを誰か書いてください(泣)


No.296 6点 黒牢城
米澤穂信
(2024/06/03 00:21登録)
これは直木賞受賞や史上初のミステリ賞4冠も納得です。
歴史小説のお堅い文体に超苦戦し、443ページ7h45min読了。
安楽椅子探偵の連作短編集みたいな感じですね。1つ目の事件の雪密室、2つ目の事件の意外な犯人(というか被害者?)、3つ目の事件のロジックなど、どれも小粒ながら時代ものを活かした謎解きとなっています。(おそらく)丁寧な時代考証も歴史好き受けするでしょうし、なにより本作のテーマを総括するような黒幕の動機が審査員受けに拍車をかけていると思います。インガハメグル…


No.295 7点 暗闇坂の人喰いの木
島田荘司
(2024/06/01 22:17登録)
嗚呼…島荘より優れたトリックを生み出す作家は此の世に存在しないのだナ…そんな作家に早くも出会ってしまったワタシは不幸者なんだナ…

と『暗闇坂の人喰いの木』を初めて読んだ時は嘆いたものです。しかし同著者のアレや他の著者のアレを読んでから、再読するとまあまあ…いやしかし本作、そこ以外はもう死ぬほど面白い。冒頭から猟奇殺人に死体消失、にわとりが奏でるメロディ、巨人の家、そして人を喰う木。島田荘司は魅力的で神秘的な事象を生み出すと言う才能では群を抜いています。動機も『占星術』『斜め屋敷』よりも表層的でなく深い情念からくるものですし、トリックでは大きく劣っていてもこちらの方が好きだったりします。
レオナとか言う奴を思い出すため&書評残すために再読したけど、かなり時間かかった。671ページ8h44min読了。


No.294 7点 殺人事件
萩原朔太郎
(2024/05/30 20:18登録)
私の本名はとある文学作家(本サイトの人なら9割は知ってる)の名前がそのまま付けられている。両親は今の名前と「朔太郎」とで迷ったらしい。どうせ同じシワシワネーム(泣)なら、朔太郎の方が良かったなあ…そういう経緯があって「朔太郎」は私の生き別れの双子兄弟みたいなもんだな。
今回、生き別れの双子の書いた『月に吠える』を読んで、1割程度しか理解できなかったのが悔しい。
『殺人事件』の他にも『天井縊死』『死』『酒精中毒者の死』『干からびた犯罪』など、犯罪をテーマにした哀愁漂う詩がありました。乱歩と意気投合するのも必然というわけか。

で結論何が言いたいかというと、いくら好きだからって自分の子供に「乱歩」とか「久作」とか「十蘭」みたいな名を付けると恨まれるよって啓蒙活動で今回は書評させていただきました。

※萩原朔太郎が探偵役の小説から興味を持って『月に吠える』を読んだ。流石にねえよなあと思ってダメ元で作家検索すると、まさかまさか登録されていて感動した。このサイトの守備範囲はすごい(笑)


No.293 6点 死体を買う男
歌野晶午
(2024/05/30 01:46登録)
萩原朔太郎と江戸川乱歩がまさかのコラボ!いいねえこういうの。
この2人を選んだことがなにかメタレベルで機能するのかと思いきや、特にそこまでの意味はなかったように思う。作者が好きなんやろね。朔太郎の詩に見立てた自殺とか月恋病とか、屋根裏の散歩者とか物語の装飾としてきちんと機能しているので、不満はありません。
『月に吠える』を読みたくなった。341ページ3h56min読了。

【以下ネタバレ】




結局タイトルの『死体を買う男』ってなんやねんと思い、ネットで検索すると『遠い過去を慕う』のアナグラムだよ〜と知恵袋にあった。はーなるほど。でもさぁ、『死体を買う男』の方にまったく意味がないから、ちょっとズルいじゃんね。


No.292 8点 夢野久作 あらたなる夢
夢野久作
(2024/05/29 00:59登録)
これはとてもとても楽しい。手元に置いておきたい一冊。
メモに残っていた『猟奇歌』の未発表作品、『ドグラ・マグラ』の草稿、夢野久作の単行本未収録エッセイなど、全集にもないような代物が載っています。『ドグラ・マグラ』の草稿はきちんと読み取れませんが、完成版と結末部分が大きく違うようです。
その他エッセイなどをパラ読みしましたが、やはり目玉は江戸川乱歩の夢野久作評でしょう。夢野久作の一周忌に同氏を偲ぶ会にて、乱歩の講演した内容が記されています。

江戸川乱歩が貶した夢野作品と評
『あやかしの鼓』→ちょっとばかり達者な緞帳芝居のよう
『ドグラ・マグラ』→わけのわからぬ小説

江戸川乱歩が褒めた夢野作品と評
『押絵の奇蹟』→全時代に対するあこがれが満ち溢れて見える。
『氷の涯』→謎の扱い方が独特でチェスタートンを彷彿させる。幕切れも見事な傑作。
乱歩は『押絵の奇蹟』と『氷の涯』が2つ並んで夢Qの最高傑作であると断言していますが、他にも『死後の恋』『瓶詰地獄』『人の顔』『白菊』などにも感心したと言っています。その他、夢野久作の探偵小説観についても軽く触れていました。

ちなみに夢野久作の江戸川乱歩評も読めますよ(青空文庫で)
それによると『心理試験』『D坂の殺人』『二銭銅貨』などは構想や行文の苦心が一つ残らず、西洋人の模倣にしか見えない。今後乱歩は二度と読まないと決心したとクソミソに貶しています(笑)
その後、『白昼夢』を読んでから乱歩の偉大さを認識し、『陰獣』『人間椅子』『赤い部屋』『屋根裏の散歩者』などで評価を上げたかと思うと、『パノラマ島奇譚』『蟲』には失望するなど、夢Q独特のこだわりがあるようでした。江戸川乱歩と夢野久作って「ポオ信者」という共通の信仰対象があるだけで、ふたりっきりになると気まずい関係だったんだろうな(笑)

あとエッセイの中では医学者・養老孟司の『ドグラ・マグラの科学』が大変魅力的でした。作中で提唱される「胎児の夢」「脳髄論」が当時としては正鵠をいており、現代の生物医学の予言までも含んでいることを説明しています。それだけでなく、養老孟司は『ドグラ・マグラ』の主題は時間であり、時間について論理的かつ具体的に思考し、苦しんだ結果生み出されたのが傑作『ドグラ・マグラ』であると言います。確かにあの物語は時計で始まり、時計で終わる。『ドグラ・マグラ』という小説の新たな読み方が垣間見えた気がして、また読み返したくなった。
言いたいこと全部書くとキリがないのでこのへんで…


No.291 7点 ○○○○○○○○殺人事件
早坂吝
(2024/05/28 18:57登録)
解決編で爆笑した。悔しい。
※文庫版はことわざ推理の意義に関するまえがきと殺人事件が1つ(+ことわざ当て練習問題)追加されてるので文庫版でぜひ


No.290 4点 ロウフィールド館の惨劇
ルース・レンデル
(2024/05/28 04:22登録)
この前に奥田英朗を読んでいたせいか、もうとにかく読み辛い。文字を追っては戻っての繰り返し。全然惨劇も起こらない。しかしここで引き返すわけにはいかないと意地で読み終えた。286ページ4h46min読了。

どうやら原題には"館"も"惨劇"もないらしい。『ロウフィールド館の惨劇』などというCC厨をそそらせるような題名で釣っておいて、その実サイコサスペンスを喰らわせるあくどい商法だと思う(笑)
"ユーニス・パーチマンがカヴィデイル一家を殺したのは、読み書きができなかったためである"という冒頭の一文が強烈ですが、ジョーンに出会ったせいでは?と思わんでもない。
デュ・モーリアの『レベッカ』と同様に私がこの作品を楽しむにはまだ早すぎた。数十年後くらいにこういう心理サスペンス系ばかり読み漁る時が来るのかもしれない。

※「みんな教えて」で気になって読んだ作品です。
HORNETさん、恩を仇で返すようなことしてすみません( ; ; )あの恩は『鍵のかかった男』で返せれば…


No.289 6点 町長選挙
奥田英朗
(2024/05/27 20:41登録)
1日でシリーズ3作読み切ってしまった。269ページ2h49min読了。
今作は伊良部先生の治療がおまけ程度。表題作『町長選挙』を除いてどれも特殊な人物に焦点が当たっており、『空中ブランコ』よりさらに共感性に欠ける部分が多い。それでも読んでいて楽しいのは変わりないが。1番はやはり表題作『町長選挙』で、限界集落島の特殊な事情に板挟みになる公務員の四苦八苦と伊良部の傍若無人な性格が絶妙にマッチしている良作。奥田英朗の他ミステリ作品も気になったので必ず読みます。
今までミステリに微塵も興味がない人に勧める作品がなかったのだが、これからはこのシリーズを堂々と勧めようと思う。


No.288 7点 空中ブランコ
奥田英朗
(2024/05/27 04:34登録)
シリーズ2作目は患者たちの症状がよりディープになり、前作にあったような普遍性を少し欠いている印象。なので、個人的には『イン・ザ・プール』の方が好きですが、こちらも十分楽しめました。282ページ2h24min読了。
なかでも『女流作家』が1番良かった。強迫症まではなくとも、作者自身にも似たような経験があったのかなって邪推してしまいます。出版不況、映画離れなどエンタメの多様化による弊害はこの頃から既に…

※小説家って本当に大変ですね… 神経をすり減らして絞り出した物語を数時間で消費された挙句、作品の真価も読み取れない批評家気取りのクソガキに7点とか付けられる職業なんですよ、、、全ての小説家に対して敬意を忘れないようにします。


No.287 7点 イン・ザ・プール
奥田英朗
(2024/05/27 00:20登録)
人間の身体や脳髄こそが至高のミステリー。精神科医・伊良部が患者に仕掛ける魔法のようなトリック(治療方法)を5編楽しめる。と、無理やりこじつけたが、やっぱりこれは非ミステリー。エンタメ小説としては無類の完成度を誇る最高に楽しい一冊。279ページ2h15min読了。

水泳しないと生活に異常をきたすほどの水泳依存症やメールで1日200回やり取りする携帯依存症の患者が登場するが、私もスマホを開くたびにこのサイトを更新して新着書評がないかを確かめるほどの「ミステリの祭典依存症」になってしまっている。伊良部先生に見てもらわねば。


No.286 7点 ずっとお城で暮らしてる
シャーリイ・ジャクスン
(2024/05/26 18:29登録)
翻訳物だからか?ミステリではないからか?すげえ時間かかった。262ページ4h29min読了。
所詮有象無象の悪意なんてものは、生来的純粋な悪意には到底敵わないということだろうか。
超常現象や怪異が襲ってくるようなホラーしか読んだことがなかったので、これがモダンホラーというやつか、、、と新たなジャンルに巡り会えて少し感動。夢野久作『ルルとミミ』とかに近い。

ちなみにこの作品はAmazonで「ギフトとしてよく贈られる商品 第3位」らしい。おめえ狂ってるぞと伝えたい方が多いのだろうか。


No.285 6点 クビキリサイクル
西尾維新
(2024/05/25 18:33登録)
初西尾維新。文章が超読みやすい。551ページ5h35min読了。
孤島、天才、人生哲学、その他もろもろ森博嗣から影響を受けてる(メフィスト賞作家だし)のかな?間違いだったらすみません。

なんとなく加点法で
2次元の平面密室 +0点 まあそうですよね…
3次元の空間密室 +2点 いいよねぇこういうの
4次元の時間密室 +0点 これは真相からすると仕方がないヤツ
首切りの動機 +3点 2つ目と重なるが、圧倒的に素晴らしい
殺人の動機 +2点 どんでん返しにも繋がるが、この世界観であるからこそ…と言う謎の納得感あり。
天才の描き方が全国模試1位系の表現方法でチープ -1点

なにやらいーちゃんと玖渚友には過去が色々あるらしく、今後シリーズを読み進めると明かされていくのかな。1作目ということで西尾節はこれでも抑えられている方らしい。


No.284 7点 アッシャー家の崩壊
エドガー・アラン・ポー
(2024/05/24 02:35登録)
幻想的な館ものですね。途中で『早すぎた埋葬』と印刷ミスってないか?と不安になった笑
自分の好きな新本格の館系作品をトリックやプロットをそのままにして、ポーがリライトすれば、文学的価値の付与された隙のない作品になっただろうなあと意味のない妄想に耽ってしまった。


No.283 7点 黒猫
エドガー・アラン・ポー
(2024/05/24 02:31登録)
怪奇小説・・・と見せかけた異常心理犯罪小説。短編でここまで嫌悪感を覚えさせるキャラクターはそうそういないでしょう。


No.282 6点 赤死病の仮面
エドガー・アラン・ポー
(2024/05/24 02:29登録)
これがゴシックホラーってやつか。捻りの効いた皮肉なオチがいいね。


No.281 6点 黄金虫
エドガー・アラン・ポー
(2024/05/23 20:51登録)
こちらはかすかに読んだ記憶があった。
この作品がポーの存命中では最も人気な作品だったらしい。確かに暗号嫌いな人なんていないよねぇ…
ポーすごいなあ、なんでも生み出してんじゃん。
昨今の複雑すぎる真相や暗号に親しんできた人こそポーを読むべきなのかもね

※ところで、ポーは短編単体での登録が結構あるっぽいけど大丈夫なのかな?? 始祖ポー(と乱歩)だけ特別枠?


No.280 6点 お前が犯人だ
エドガー・アラン・ポー
(2024/05/23 20:41登録)
「犯人はお前だ」って決め台詞もこれが初なのかな。始祖ポーは陳腐な使い方をせずに、演出が派手で面白いね。ポーってなんだか楽しい人だな。


No.279 8点 モルグ街の殺人
エドガー・アラン・ポー
(2024/05/23 17:22登録)
さーて、最古典のお勉強の時間といくか…
『盗まれた手紙』はなんとも言えなかったし、コチラもどうせ今読んだらそこまでだよなと思いながら、重い腰を上げて読み始めると、、、Ohhh!密室殺人!!そして衝撃の犯人!!! 探偵小説の雛形を考案しただけじゃなくて、ハナからこんなにネジの外れたとんでもミステリを生み出していたのか。すごい、すごすぎるぞポー。
『オリエント』も『アクロイド』も『ABC』もネタバレされたのに、なぜこの作品だけ露知らず読めたのかが不思議である。
始祖への敬意 +1

※ちなみに本サイトのどっかの書評(失念)で、「『モルグ街の殺人』が史上初の推理小説ってのは間違いの可能性がある」みたいな感じのことを読んだ記憶があります。wikipediaみた感じ、E.T.A.ホフマンの『スキュデリ嬢』(1819年)がよく俎上に載せられるらしい。

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