home

ミステリの祭典

login
みりんさんの登録情報
平均点:6.66点 書評数:385件

プロフィール| 書評

No.165 7点 しおかぜ市一家殺害事件あるいは迷宮牢の殺人
早坂吝
(2023/08/04 10:46登録)
新刊の書評なのに既に4件!
こういうのはいつも騙されるので幸せな脳です。おもしろかった。


No.164 9点 生ける屍の死
山口雅也
(2023/08/03 20:51登録)
とんでもないのを読んでしまった。
いやこれはすごい。人生何周したらこのシナリオを思いつくのでしょうか??
特にこの作品のあのミスリードは国内最高峰ではないですかね。「なぜ死人が甦る世界で殺人が起こるのか?」動機には無限の可能性があることを示してくれました。そして「永遠」を失った人間がその代償として得た対価について問うエピローグはミステリの域を超えた。"性愛と死は兄弟" たっぷり謎解きを読ませたその先に作品の根幹にあったこのテーマを描き切った作者に拍手を。まさしく傑作中の傑作、大傑作です。

東西ミステリー15位とか10年間のミステリーで1位とか過大評価ではないと思う。審査員ウケも良さそうだし(笑)
は?じゃあなんでお前満点つけねえんだ?って言われると、エンタメ大好きマンにはキツいんだよ特に前半とか。ファストフード大好きな奴がマクドナルド行ったら高級フランス料理出てきたみたいな感じ。十分エンタメ作品ではあるし面白くないわけではないけど"すごい"って感情が勝つ。
なんか作品の重厚さに対して薄い書評になっちゃいました。


No.163 6点 彼女はひとり闇の中
天祢涼
(2023/07/31 22:47登録)
倒叙形式は久しぶりなのでたまにはこういうのも良いね。
表紙もオシャレです。


No.162 5点 少女
湊かなえ
(2023/07/31 03:27登録)
初湊かなえ作品
湊かなえとか東野圭吾とか辻村深月あたりの売れっ子の作家さんってどの方も文章がなめらかでスーッと頭に入ってくるから良いですよね。簡潔で物語を追う以外に一切の無駄がない感じ。

【ネタバレがあります】


テーマは友情(と因果応報)でしょうか。登場する3組の親友関係の中でもダブル主人公である敦子と由紀の脆くて繊細な関係がやはり共感を生む。お互いがお互いをどこか見下しながらも、自己より優れた個性を認めて足りないところを補完し合う。病院でのクライマックスはプライドの高い両者がそれを自覚するエピソードとして無理なく物語に落とし込まれているのではないかと思います。


No.161 6点 不連続殺人事件
坂口安吾
(2023/07/30 14:31登録)
いやあ疲れた。名前持ちの登場人物が33人+α。今までで1番多かった『悪魔の手毬唄』の1.5倍くらいいるんじゃないか?よく多いと言われる『月光ゲーム』の2倍?
「登場人物一覧がない」とみなさんが書評で嘆いているけど、2018年新潮文庫刊行の文庫本にはちゃんと載っていました。登場人物一覧なしで読み進められた方に敬意を表します(笑)

純文学作家が探偵小説を書くって当時の本格ファンは嬉しかっただろうなあ。今なら村上春樹が急にコテコテのクローズドサークル書くようなもんか?


【ネタバレします】


「優れた犯人は心理の足跡がバレるのを嫌って密室なんて作らない」っての良いですね。この自論を主張するだけで終わるのではなく、きちんと即席の殺人による"心理の足跡"が決め手となって全ての謎が解ける構成になっているのも面白いです。

他の方の書評を見て知ったのですが、この作品があの「獄門島」と「刺青殺人事件」を抑えて日本推理協会作家賞ってまーじか。色々凄すぎるなこの1948年。


No.160 6点 此の世の果ての殺人
荒木あかね
(2023/07/29 16:30登録)
江戸川乱歩賞繋がりでこちらも読んだ。
自動車学校の先生と生徒の女性コンビが終末の世界で連続殺人を調査するためにドライブする話。
徐々に仲間が増えていくこのRPG感がたまらない。魅力的な設定に終末を感じさせない女性コンビの軽快な会話、そして骨格は本格ミステリ。読後感もなぜか心地良い。
どうせ2ヶ月後には全てが滅んでしまうのになぜ殺人事件が起こるのか。そのホワイダニットを期待するとわりとありきたりで少し拍子抜けするかも…?
イサガワ先生の苗字がずっとカタカナで何かあると思っていたら何もなかった(笑)


23歳でこんなの書けるの尊敬する。同年代でこんなことやってのける人がいるのにエンタメを消費するだけの自分が情けなくなってきます。そろそろ脳内で妄想している「すべてがiになる」を執筆する時がきたか。


No.159 7点 テロリストのパラソル
藤原伊織
(2023/07/28 00:24登録)
これは名作です。


No.158 8点 孤島の鬼
江戸川乱歩
(2023/07/27 01:53登録)
これは名作ですね〜 乱歩良いな乱歩
江戸川乱歩って子供向けなイメージがあって今読んでもつまらないだろ?って失礼な先入観があったんですが、「陰獣」を読んでからイメージが180°変わりました。
「孤島の鬼」では「陰獣」のような粘着質で気持ち悪い文体ではなく、かといって清涼!爽やか!って感じでもなく、どこか不気味で不安感を駆り立てる良い雰囲気でした。

スリラー・冒険・本格・怪奇小説そしてラブロマンス どれも優秀でそれぞれが魅力を打ち消し合わずに、ジャンルが変わっていく面白さを味わえます。


No.157 8点 月灯館殺人事件
北山猛邦
(2023/07/26 00:45登録)
【ネタバレがあります】


怪しげな館に集う7人の本格ミステリ作家。晩餐パーティで起こる罪の告発テープ。連続密室・首無・見立て殺人。
で、登場人物はというと
変な館で変な企画する奴・お嬢様言葉の奴・父親殺されたのに冷静に推理してる奴・明らかに頭悪そうな口調の奴・ストレス発散に斧振り回す奴・バラバラ殺人現場で一晩中探偵小説読む奴。
こんなの現実にいないだろうって奴しかいなくてまさに"人間が描けていない"と揶揄されるであろう小説。そうこれこそが本格ミステリ、大好き。ホントこういうのでいいんだよこういうので…まあこういうのばかりだと胃もたれするけど。本作品のような物理トリックは加賀美雅之の作品くらいしか読んでいない私にとって新鮮でした。

『本格ミステリなんて同じことの繰り返しだ。何処かで見たような設定。何処かで見たような登場人物。何処かで見たようなトリック。何一つ、新しい価値なんて見出せない。』
『本格ミステリは、あくまでアポトーシス的な役割しか持ち得ない。百年前にすでに完成された様式、すでに完成された作品を、美しいまま次の百年へと導くために、あらかじめ死ぬことを約束された細胞の一つ一つでしかないのだ。』

この作品はアンチミステリとして楽しめるだけでなくて、ちゃんと密室の謎解きがあることが素晴らしい。古典作品の焼き直しと自虐しているが、同作者の『瑠璃城』殺人事件は未読だし、他の3つの密室トリックも古典を読んでないので普通に感心(笑) すべてに図が載っていて物理トリックなのにわかりやすいのもありがたい。そしてなによりこの密室動機はマジでぶっ飛んでるしユニークすぎる。
あの有名作を彷彿とさせるラストの1行は「本格ミステリは過去作品の焼き直しだ」というテーマに適したオチだと思います。この作品がアポトーシスにならないことを祈ります。


No.156 6点 11枚のとらんぷ
泡坂妻夫
(2023/07/25 17:04登録)
ロジックよりトリック派の私は断然「乱れからくり」の方が好みでした。

作中作でおお!って思ったマジックは「予言する電報」と「パイン氏の奇術」ですかね


No.155 8点 乱れからくり
泡坂妻夫
(2023/07/24 16:03登録)
せ、1977年刊行!?刊行から40年以上経った今更泡坂妻夫の天才ぶりに驚愕しています。

【ネタバレします】


皆様の書評を見ると、犯人はわかりやすい方なのでしょうか。私はヤツが犯人であると1%も頭に浮かぶことはありませんでした。トリックの緻密さもさることながら、1番感心したのはねじ邸に迷路を作った理由でした。まさか迷路が○○の役割を果たしているなんて… そして犯人の最期のセリフも良いですね。
犯人が財産目的な以上、からくり身上オチにはできないのがもったいないな〜
おもちゃ蘊蓄がちょっと退屈すぎるのが欠点か


No.154 7点 しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術
泡坂妻夫
(2023/07/23 15:39登録)
おおおおこれはすごいな 泡坂妻夫は変態だ。似たような趣向の作品を読んだことある(当然刊行年はしあわせの書の方が先)けれど、こちらの作品の方が大変な労力を必要としそう、たぶん。
小説として面白いかは置いといて、作者の変態的なこだわりに敬意を表してこの点数。



【ネタバレあり】


序盤はまったくと言っていいほど文章が頭に入ってこなくてこの作家とは致命的に合わないかもしれないと思っていたら、それはこの作品のギミックによるものだったのかもしれません。


No.153 4点 アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
フィリップ・K・ディック
(2023/07/22 17:55登録)
こういう古典の金字塔的作品に低評価をつけると己の教養と読解力が浮き彫りになりますね。

放射線が降り注ぐ終末的な世界観に火星からアンドロイドが逃げてくるという SF要素。
で、なぜか動物を飼うことがステータスとなっている世界(これもよく分からん)で主人公は電気羊を飼っている。うん、ちょっと世界観が独特すぎるな。よう思いつくわこんなん。
オペラ歌手に扮したアンドロイドを処理するところまではついていけたんだけど、そこから置いてけぼりにされた。自分は「星を継ぐもの」みたいにわかりやすく謎の解明がないと楽しめないらしい…

テーマは電気動物→動物 アンドロイド→人間(とイジドア)の対比を描写する事でアンドロイドと人間には果たしてどこに差異があるのか、人間固有の特性とは何かを問いているっぽい。たぶん。"電気羊の夢"=本物の動物になることを指しているとすると「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」というタイトルは「アンドロイドは人間と同じになれるのか?」という解釈で良いのか?


No.152 8点 アミュレット・ホテル
方丈貴恵
(2023/07/21 01:14登録)
敬愛する方丈先生の新シリーズ。『竜泉家の一族シリーズ』がどれも馬鹿みたいに面白かったので楽しみにしていました。楽しみにしていると言っても連作短編集なのでそこまで期待はせずに購入したけど、これまたエンタメの極地ですな。

〜あらすじ〜
そのホテルは犯罪者たちの楽園。
一、ホテルに損害を与えない
二、ホテルの敷地内で傷害・殺人事件を起こさない
2つの絶対規則を破ったらホテル探偵が必ず追い詰めます。

いや〜良いねこの犯罪者ばかりなのに殺伐としていない雰囲気のホテル。『竜泉家の一族シリーズ』はミステリとしては優れているものの探偵役の魅力がイマイチないな〜と思っていたのですが、本作の名探偵とアレを兼ね備えた主人公はかなり魅力的ですよ。主人公だけではなくホテルのオーナーや「一見さんお断り」に登場する語り手など愛らしいサブキャラも。

ここからネタバレ

「アミュレット・ホテル」ではお手本のような詐術。見事!

「クライム・オブ・ザ・イヤー」では主人公以外犯行不可能に思える状況で事件が起こり、主人公の過去や役職に就いた経緯などが明かされる。てかクライム・オブ・ザ・イヤーって…(笑)

「一見さんお断り」では愛らしい語り手がホテルに潜入すると人間消失事件が。二重リングのもたらす効果が素晴らしいです。これが1番お気に入りかな。

「タイタン」では金属探知機のある部屋にどうやって凶器を持ち込んだかが鍵となるド直球の本格ミステリ。しかし凶器のすり替えをどのタイミングで行ったのかがよくわからん。「タイタンの間」が1人になった時に凶器取り出したんだよね?その時はすでに被害者の周りに人がいっぱい集まってるはずだからいつすり替えられたんだ?再読の必要あり。

作者のことを鬼贔屓してるとは言え「孤島の来訪者」と同じ8点はさすがに甘すぎか… でも新作は1人の評価がそのまま作品の評点になるので甘めに(笑)


No.151 6点 赫衣の闇
三津田信三
(2023/07/20 04:11登録)
むむ…どうやら物理波矢多シリーズの読む順番を間違えたらしいが特に問題はなし 

戦後の日本の闇市などがのさばる退廃的な雰囲気を存分に味わえました。どれだけ忠実に描かれているかはわかりませんが。物理波矢多シリーズはその時代のレトロな雰囲気と主人公の置かれた状況が魅力的です。刀城言耶は放浪してるだけなので…(笑)

そして切り裂きジャックや赫衣などは怪談としていつもより想像に容易くて怖いが、今回の殺人現場は三津田作品史上1番怖い(というかグロい)。動機はかなり攻めてるな〜という印象。ということで、作品の雰囲気やホラーは素晴らしいが、肝心の謎解きがほぼホワイダニットだけだとちょっと物足りなさを感じました。


No.150 7点 白魔の塔
三津田信三
(2023/07/18 23:07登録)
物理波矢多シリーズ第2弾  ミステリ度低め
前作で炭鉱夫として活躍した物理波矢多が今作では灯台守に転職し、そこで灯台長の長い怪異譚を聞くことになる。その怪異譚はなぜか物理が島に来てから体験した怪異と酷似している。
いつもよりホラーが控えめで退屈に感じていたが、とある真実が明かされた時に前述の絡み合った謎が繋がり、真の恐怖が待っていた。最後の最後に白魔の塔が現れるところがこの目に浮かぶほど良いシーンです。
幻想小説ってこういうのを指すのかな…?


No.149 7点 黒面の狐
三津田信三
(2023/07/17 22:11登録)
おお〜刀城言耶シリーズ以外の三津田先生の作品の中では最もミステリ度が高いのではないでしょうか。
戦後の炭鉱という視覚的にも社会背景的にも薄暗い舞台で密室殺人が立て続けに起こる。その動機はとある手記を読むまでは全く想像だにできないが、なかなかハードで社会派的要素を多分に含んでいます。
ラストでは、そこまでばら撒かれていた伏線やミスリードすらも丁寧に拾う物理並矢多の多重推理が刀城言耶を彷彿とさせます。


No.148 9点 私という名の変奏曲
連城三紀彦
(2023/07/17 00:12登録)
こ、これは美しい…… 最終章は何度も読み返すことになるだろう。
【ネタバレします】



「なぜ犯人だと思い込んでいる人物が7人も存在するのか」という魅惑的な謎の解答は読んでいる途中で薄々見え隠れするが、トリックが本題ではない。何もかもが偽物で虚飾の世界に閉じ込められた一人の女性が奏でる変奏曲を作者の流麗な筆致に酔いながら最期まで見届ける作品である。
連城三紀彦のミステリ長編はあと何作品未読なんだろうと少し楽しみが減ってきた寂しさを感じています。


No.147 7点 わたしを離さないで
カズオ・イシグロ
(2023/07/15 23:51登録)
おお……これは手離しで面白いとは思わなかったけど心に残る小説だ。
夢野久作の作品もそうだったけど、100ページ読むのに2時間ほどかかってしまった。やっぱり現代的でライトな文体で殺人事件が起きないとなかなか読む手が進まないらしいw

「介護人」である女性の生涯がどこか淡白で諦観したような独白体で語られる。微笑ましい少女時代から始まり、読むごとに不気味さが増していくが、作者はこれをもったいぶらずにたった100ページ程で主人公世界における最大の謎が明かしてしまう。ミステリでは大オチに持ってくるところだけど、生命倫理や理不尽な運命に対する各々の姿勢が主題なんだろうね。ラストのマダムのキャシーに対する言葉は沁みる。


No.146 7点 禍家
三津田信三
(2023/07/13 23:28登録)
これは面白い!
両親を亡くした主人公が祖母と引っ越しするが、なぜか近所の反応がおかしい上に怪異が主人公の身に降りかかる。その現象を探るべく街の歴史から調査していく主人公とヒロインだが…………
純然たるホラーとして読みましょう

385中の書評を表示しています 221 - 240