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ミステリの祭典

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あやかしの鼓―夢野久作怪奇幻想傑作選
死後の恋・瓶詰地獄・悪魔祈祷書・支那米の袋・難船小僧・幽霊と推進機・怪夢・白菊・いなか、の、じけん・木魂・あやかしの鼓

作家 夢野久作
出版日1998年04月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 みりん
(2023/10/04 02:11登録)
夢野久作の傑作選にはとりあえず『死後の恋』『瓶詰の地獄』は入れておけという風潮があるほどには両者とも傑作だと思います。『死後の恋 夢野久作傑作選』とだいぶ選出がカブっているのもあって、今回未読作だったのは『難船小僧』『幽霊と推進器』『あやかしの鼓』の3つのみ。いや〜でも『死後の恋』は見かけるとつい読んでしまいます(^^)

『難船小僧』 6点
伊那一郎が乗り込んだ舟は必ず沈没してしまう。科学的にはそんな事はありえないという理由で実験的にその少年を同伴させた船長とその事に阿鼻叫喚の船員達が描かれる。
たぶん「難船小僧のナンセンス」っていう親父ギャグが言いたかっただけだと思うけど、登場人物の冷淡さもなかなか強烈。

『幽霊と推進機』 5点
これまた『難船小僧』と同じ怪奇海洋奇譚。船という閉鎖空間にやな奴ばかり出てくるのも似通っている。だがこのオチはだめだろうw

『あやかしの鼓』 8点
音を聞くと呪われるという「あやかしの鼓」 夢野久作処女作の短編という事で1番楽しみにしていましたが、期待を裏切りませんでした。
特に100年越しの『あやかしの鼓』演奏描写。愛する人に裏切られた時の憎悪。生きながらにして死んでいた男が鼓に込めた情念。鼓が奏でた音の怨みの響き。小説という媒体ではやむを得ず音を文字に変換する必要があるが、ここまで鼓が奏でる音の呪いに説得力を持たせる作者の筆力には鳥肌が立ちます。著者はデビュー作から怪奇幻想小説家として異彩を放ち、注目されていたことが想像に容易い。

あと初読時は普通だと感じた『白菊』の持つ妖しい魅力に気づき、再評価路線。

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