少女を殺す100の方法 |
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作家 | 白井智之 |
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出版日 | 2018年01月 |
平均点 | 6.33点 |
書評数 | 9人 |
No.9 | 6点 | ミステリーオタク | |
(2024/05/11 14:39登録) 作者の第1短編集・・・かな? 《少女教室》 あれだけの殺戮をやってのけた動機とグイグイ練り上げるロジックが素晴らしい。ただあんな単純なトリックが通用するのかと思いきや・・・ ありえない経歴や、ありえない松葉杖使用・・・ そんな末節はともかくトータルとしてよくできていると思う。 《少女ミキサー》 冷酷極まりない超ソリッドなクローズド・デスゲーム。正直好みのシチュエーション。 この作者らしく汚物や血塗れの臓物まみれの物語だが、展開は思った程コンクな物ではなかった。(人数が一人多いのでは?、それがキーポイントの一つか?、とも思ったが関係なかったようだ) 《「少女」殺人事件》 ふざけた作中作ミステリ。ノックスの十戒への揶揄か? 《少女ビデオ 公開版》 再び汚物、吐瀉物、大腸、残虐創傷まみれの白井ワールド炸裂の話だが、主人公が少女達をどう処理していたのか、なぜ猿を食わせなくてはならないのか、なぜ子供を産ませてはいけないのか、などよく分からないことも多い。 ただ、珍しくわずかばかりの感傷がないこともなかった。 《少女が町に降ってくる》 これは白井作品にしてはエログロが抑えられ、民話テイストを塗した荒唐無稽な特殊設定のミステリ。トリックや推理や真相はゴチャゴチャしているが面白いネタもいくつかあった。 以上本編5編。ここまでで少女が100人ぐらい死んだだろうか。 以下、文庫特別収録掌編 〈ヴィレッジヴァンガードで少女を殺す方法〉 行ったことがないのでよくわからない。 〈ときわ書房で少女を殺す方法〉 まぁ、短いからいいだろう。 〈下狢書店で少女を殺す方法〉 最終作だから少しだけ期待したが正直面白くない。 オマケの3編は殆ど「ルーフォック・オルメスの冒険」だな。 この作者は「鬼畜系特殊設定パズラー」などと称されることもあるようだが、驚くほど細密なロジックを展開してみせることもあり、個人的には「エログロを頻用する摩耶雄嵩」という印象も抱いた。 |
No.8 | 7点 | 虫暮部 | |
(2024/02/09 13:21登録) 鮮やかな色彩感覚が読者の想像力を刺激し、繊細な言語感覚で人間的実在の真実を喝破する。好きな色は赤と黒。作者一流の美意識をこれでもかとばかりに詰め込んだ昇天必至の一冊。神代も聞かず竜田川。平山夢明や小林泰三のファンにもアピール出来そう。 「少女ミキサー」。犯人は何故、“単純に考えるとこうだね” ではない、面倒そうなやり方で切ったのか。“手掛かりを提供する為” としか思えない。 |
No.7 | 7点 | レッドキング | |
(2023/10/28 22:17登録) 5編から成る中短編集。全作に、「サトコ」と言う名の左半身赤痣(あしゅら男爵!)の女が登場するが、連作ではない。 「少女教室」 クラス21人中20人惨殺から犯人1人を特定する、麻耶雄嵩ばり「超」ロジック。 「少女ミキサー」 乙一「SevenRooms」にアニメ「Blood-C」をソースした、おぞましくもロジカルなサスペンス 「「少女」殺人事件」 「超」ロジックは面白いが、「ノックス十戒」全部掲げとかなきゃ、「ふぇあ」でないじゃん。 「少女ビデオ」 目を背け吐き気を催す、グロ・残虐・ヘド・・吉本隆明(古いか)なら「倫理」と表現した程の 「果てまで行っちゃった」描写。ここまで行くと、過激表現と言う以前に、作者の心底に澱んだ 何か、としか言いよう無く、それが・・信じがたいことに・・「救い」ある未来と両立する。 「少女が街に降ってくる」 出ました、十八番のトンデモ「SF」設定・・真相解明、バタバタ立て込み過ぎだが。 文庫本の解説では、1編につき20人殺され×5編でタイトルの「100」だと・・ん?そーか? 全体で(平均でなく) 7点 |
No.6 | 7点 | みりん | |
(2023/10/17 19:27登録) 外で読むときはブックカバー必須の物騒なタイトルですね。周りに引かれないように気をつけましょう。 どうやら傑作『名探偵のいけにえ』は著者の抑えきれない猟奇趣味をなんとか封印して、生み出された奇跡の作品だったようです。今作もあまりに容赦のないグロ描写と+α少女趣味が炸裂しています。が、そんなことは減点材料にならないほど白井先生のアイデアの豊富さに圧倒されます。 【ネタバレがあります】 少女教室 7点 挨拶代わりに20人の少女を亡き者にし、見事な消去法ロジックからの倒叙ミステリ。そして意外なwhyと意外な名探偵。一番作者らしい短編かな? 少女ミキサー 9点 理不尽脱出デスゲームの中に本格の香り。今後忘れられない短編になりますねぇこれは。 腸の強度ってこんなにあるの?? 少女殺人事件 6点 余りにも斬新な犯人特定ロジック。唯一のメタミステリで1番笑えます。 少女ビデオ 7点 これは読んでて気持ち悪くなるくらいグロい。しかし耐えてでも読む価値あるどんでん返し。 ところで、腸の強度って・・・(以下略) 少女が町に降ってくる 8点 横溝&三津田先生の香り+荒唐無稽すぎる特殊設定。 犯人が○○を殺すために、大変回りくどい方法をとるのですが、「アイデアに酔ってたのよ」の一言で解決です。作者の自白が聞こえてきたような気がして笑いました。 |
No.5 | 6点 | ぷちレコード | |
(2023/02/11 22:22登録) タイトルに偽りなく二十数人の少女が惨殺される5作品が収録されている。私立の女子中で1クラス全員が射殺され、執拗に顔をつぶされる「少女教室」は、現場の状況から丹念に推理を積み重ねて真相を導き出す終盤が圧巻。巨大なミキサーに入れられた少女たちが、脱出の方法を模索する「少女ミキサー」、金持ちに斡旋され、商品価値がなくなると殺される少女の死体処理をしている男を主人公にした「少女ビデオ公開版」は、着地点が見えない展開も、周到な伏線から浮かび上がるどんでん返しも鮮やか。 人間の尊厳が奪われた本書の少女たちは、紛争地域で無慈悲に殺されたり、大人の食い物になったりしている現実の少女と重なる。残酷な描写は深いテーマ秘めているのである。 |
No.4 | 4点 | HORNET | |
(2018/12/30 22:29登録) とりあえずこの作者らしくグロい。スプラッタな内容でありながら、登場人物がそれにすぐ順応して、フツーにアリのような雰囲気で話が進んでいくやり方も「らしい」。 自分はミステリというか、仕掛けられたトリックとしては「少女ミキサー」が一番よかったかな。その次は冒頭の「少女教室」。 第二編以降、半身があざの「サトコ」という少女が通して登場してくるから、それにまつわる仕掛けがラストの話にあるのかと思ったけど…そうでもなくて残念。 総じて、グロさで彩っているけど、ミステリの仕掛けとしては小粒な感じ。 |
No.3 | 6点 | まさむね | |
(2018/09/04 23:10登録) タイトルどおり、たくさんの少女たちの死体が遠慮なく登場する短編集。作者らしいグロ鬼畜系の作品が揃っていますが、ミステリーとしてのバリエーションは意外に豊か(?)で、心に一定の壁を作って読めれば、楽しめるのではないでしょうか。でも、決して万人受けするとは思えないので、ご注意ください。我慢して読んでいくうちに慣れるという面もありますが。 ①少女教室 いきなり21人の少女が殺され、ある意味で圧倒されます。しかし、全短編読了後に振り返ってみると、この作品が最も王道路線だったような気もします。 ②少女ミキサー もう、タイトルから嫌な予感がしますよね。荒唐無稽な設定すぎて、絶対に人を選ぶ作品です。何が謎なのか、ちょっと判らなくなったりもします。ああ、ミキサー自体は謎じゃないのね…って感じ。 ③「少女」殺人事件 個人的にはこれがベスト。別に人が死ななくてもいいような気はするけど、メタミステリとして面白い。「ノックスの十戒は作者が守るルールであって、読者が守るルールじゃありません」…という台詞は名言。 ④少女ビデオ 公開版 作者らしいエログロが全編にわたって展開されます。白井ワールド全開で、好き嫌いは相応に分かれると思いますね。 ⑤少女が町に降ってくる これも、荒唐無稽すぎる設定。ああ、少女が空から降ってくること自体は、謎ではないのね…って感じ。 |
No.2 | 7点 | はっすー | |
(2018/01/28 23:57登録) タイトルはもちろん帯もエグいので気にせず堂々と本屋で購入し読破できる人はかなり限られるでしょう ただミステリ好きなら読まなければならない問題作だらけの短編集ですのでエログロ耐性がある人は是非 特にミステリの有名な訓戒を利用してアンチミステリ作品を書ききった『「少女」殺人事件』と白井にしか書けないであろう異色作『少女ビデオ 公開版』は必読です |
No.1 | 7点 | メルカトル | |
(2018/01/23 22:37登録) 今最注目の作家、白井智之による様々なジャンルの短編集。 白井氏の新作とあっては黙っていられない私は、早速読みました。面白かったです。ただしグロ耐性のない方はご遠慮いただきたいという作品ですね。 『少女教室』 密閉された教室で14歳の少女が20人殺されるという異様な事件が発生。真相は穴だらけ、矛盾も多々見られますが、一応推理には筋が通っており、それらに目を瞑れば納得できます。何より21人の少女の中から犯人を指摘して見せる剛腕は凄いと思います。 『少女ミキサー』 タイトルで嫌な予感がした通りのグロい作品です。簡単に説明すると、巨大な人間ミキサーに毎日14歳の少女が裸で放り込まれ、生きた少女が5人になると自動的にミキサーが稼働し始めるという、滅茶苦茶なストーリー。 そんな状況の中殺人事件が起こるという、これまた前代未聞の問題作、でしょうか。 『「少女」殺人事件』 ノックスの十戒を遵守したというか、逆手に取った推理がバカバカしいながらも、どこか憎めない作中作。広義のメタミステリと言えると思います。緻密なロジックには程遠いですが、なんだかんだで無理やり解決してしまう感じです。 『少女ビデオ 公開版』 これぞ作者の真骨頂。エログロ全開で絶好調です。 衝撃の結末に唖然とさせられます。まさかこれほどグロいのに、根底には愛が息づいているとは、なかなかに心憎い演出ではないでしょうか。 『少女が町に降ってくる』 文字通り、ある村に毎年八月十六日に少女が20人空から降ってくるという、これまた奇妙奇天烈な設定。なぜか途中から一人増えて21人になりますが、そんな中殺人事件が起こります。 終盤やや煩雑で理解しづらいのが残念です。 |