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ミステリの祭典

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よんさんの登録情報
平均点:6.51点 書評数:79件

プロフィール| 書評

No.19 7点 月の扉
石持浅海
(2022/08/02 12:32登録)
ハイジャック+不可能犯罪、無名の探偵による息詰まる頭脳乱打戦に酩酊。閉鎖空間と謎の作り方のうまさが光る。実録犯罪ムードの描写部分とコントのような謎解きの過程がチグハグだが、舞台設定の独創性で欠点を吹き飛ばす勢いを感じた。
極めて精緻な偽の扉。しかもとても強固。細部まで細工され、きっちり騙される喜びを与えてくれる作品。


No.18 6点 ヴェサリウスの柩
麻見和史
(2022/06/28 13:50登録)
法医学教室を舞台にした医学業界情報サスペンス。
解剖用の献体の体内から出てきた不可解なメッセージを起因として、次々と事件を重ねていく筆致は新人離れしている。
犯人の目論見が生み出す恐怖感が、少しずつ事件の関係者を蝕んでいく。その過程に迫真性があり、澱みがないため、最後まで物語は引き付けて離さない。


No.17 6点 カーの復讐
二階堂黎人
(2022/06/28 13:35登録)
この作品は、アルセーヌ・ルパンの蘇りそのもので、あの怪しげな雰囲気が、古城に繰り広げられる秀逸な密室トリックを伴って差し出される。
殺された部下が残した奇妙な暗号、強固な密室、秘密の地下道など楽しい趣向が詰まっている。
幼い頃に「怪人二十面相」に夢中になった人ならば、童心に帰って読みふけること間違いなしの本格ミステリ冒険譚。


No.16 7点 ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女
スティーグ・ラーソン
(2021/12/20 14:12登録)
密室状態の孤島での消失事件を扱ったミステリとしても良く練られているいるが、戦後ヨーロッパの暗部をえぐる歴史ロマンとしても、ネット時代の情報、謀略小説としても、そしてミカエルとリスベットのもどかしい関係をめぐる恋愛ものとしても存分に楽しませてくれる。世界中で売れまくったのも無理はない、破格のジャンルミックス小説。


No.15 4点 午前零時のサンドリヨン
相沢沙呼
(2021/12/20 14:03登録)
文章も登場人物も、ライトノベルのデッドコピーを読まされているような手ごたえのなさ。マジック蘊蓄は楽しかったが、マジックと謎があまり噛み合っていない


No.14 7点 墓地を見おろす家
小池真理子
(2021/11/29 15:07登録)
原因がわからないのに、幽霊も怪奇現象も惜しみなく現れ、一家を追い詰めていくという逃げ場のない怖さが描かれている。
作者らしい繊細な筆致で、生きている人たちの情愛が絡み合い、より切迫感が増していくのも怖い。


No.13 7点 玩具修理者
小林泰三
(2021/11/29 15:00登録)
人間を解体する描写だけでもグロテスクなのに、最後の一行で明かされる真実により、さらなる恐怖に突き落とされる。
クトゥルフ神話が下敷きになっているので、知っていればさらに深く味わえる。ホラーのお手本のような短編集。


No.12 6点 出版禁止
長江俊和
(2021/11/29 14:52登録)
安全地帯にいたはずが、いつの間にか当事者となり命の危険にさらされる。
五感に訴えかける描写が恐怖を煽る短編集。


No.11 8点 火車
宮部みゆき
(2021/09/17 15:36登録)
一つの手掛かりをもとに、少しずつ真相に迫っていく。複雑に絡んだ糸が解けたとき、他人事ではないと感じた。自分の固定観念をまざまざと覆された小説で、「面白かった」とひとことでは言えない考え深い作品でした。特に弁護士の話が印象的だった。


No.10 9点 霧越邸殺人事件
綾辻行人
(2021/09/17 15:27登録)
オカルトや超常現象とミステリの融合。不可解な謎を読者に公正なヒントを提示し、明快な謎解きへと導いていく。
人の抱える闇と不安定さと不条理さとが織り込まれた本格ミステリの傑作。


No.9 6点 七つの海を照らす星
七河迦南
(2021/09/17 15:19登録)
日常の謎に類されるが、子供がつらい状況から必死に脱出しようとする話が多いので、爽やかであっても軽い読後感ではない。
ひとつひとつの短編の謎がやや小粒で、新味が感じられない物足りなさはあるが、やがて浮かび上がる一本筋の通った小説話法は大きく評価したい。


No.8 6点 生霊の如き重るもの
三津田信三
(2021/07/16 17:25登録)
怪奇短編集としてバラエティに富んでいるし、非合理の交ぜ方も効いている
視点人物の記憶やアイデンティティという作品世界全体を揺るがすよりも、刀城言耶という固定的・客観的な視点から歪みを見出す方がホラーとして効果的なのも興味深かった。


No.7 8点 アルバトロスは羽ばたかない
七河迦南
(2021/07/16 17:15登録)
舞台は児童養護施設。デビュー作の縮小再生産と思ったら大間違い。日々の生活への密着度がすごい。
ヒロインが被害者をなぜ深く信頼できたのか違和感があったが、説得力ある解答に唸った。トリックと感動のツボが一体化しているのが素晴らしい。


No.6 6点 靴ひも
ドメニコ・スタルノーネ
(2021/05/24 13:35登録)
空き巣に荒らされた自宅で、夫は40年前の手紙を発見する。昔、家庭を捨てて出奔した際の、妻からの手紙。乗り越えたはずの結婚の危機が再浮上し、夫は妻に隠した別のものを探し始める。
大いなる欺瞞、一回性の生、理想の幸福。平凡な夫婦生活の裏側を暴く。ミステリ度は薄い家族小説。


No.5 8点 贖罪
イアン・マキューアン
(2021/05/24 13:25登録)
きっかけは、手紙を勝手に盗み見してしまったこと。幼稚な正義感から姉の想い人の将来を奪ってしまった主人公が、少女から大人へと成長し、「文脈」つまり世界の機微を学んでゆく過程で自らの犯した罪の輪郭を思い知る。人と言葉の営みのすべてが詰まった傑作。


No.4 9点 寒い国から帰ってきたスパイ
ジョン・ル・カレ
(2021/04/26 12:48登録)
スパイ小説の名作。これでスパイものの世界が変わった。ドラマは東西緊張を舞台にした二重スパイ形式をとっているが、硬玉よりも冷たくならざるを得ない。「男の仕事」が共感をそそる。緻密なスリルが味わえる。


No.3 8点 ドグラ・マグラ
夢野久作
(2021/04/26 12:38登録)
たった一瞬のうちにどれほど厖大なイメージの嵐が通り過ぎるのか。この謎にも異様な興奮をもって訪れる奇抜な構成で解いてみせた。「脳は自分の脳を考えられるのか」といった主題。


No.2 8点 シャイニング
スティーヴン・キング
(2021/04/05 13:19登録)
S・キューブリックの映画化で有名になったが、実は原作の方が凄い。まさしく「恐怖の心理学」をテクストにしたような作品。同一作品の「キャリー」に続い読めばなお一層楽しめるでしょう。


No.1 5点 半七捕物帳
岡本綺堂
(2021/03/12 12:28登録)
評価が高かったので読んでみた。このような古い作品を評価するのは難しいと改めて思いました。刊行当時に読めば、驚いたのだと思いますが当時の人の気持ちになって読むということが出来ませんでした。トリックは子供騙しぐらいにしか思えなかったのが残念です。今後はこのシリーズを読むことはないでしょう。

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