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ミステリの祭典

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ストロボ

作家 真保裕一
出版日2000年04月
平均点7.20点
書評数5人

No.5 7点 よん
(2022/08/02 12:40登録)
初老の人気カメラマンをめぐる数奇な人間関係劇で、作品を追うごとに年代が若返っていくところが特徴。現在から過去へと彼の人生の軌跡を遡り、その生き様を再検証していく趣向で、ハードボイルドなキャラクター造形に一層深みを増している。

No.4 7点 zuso
(2022/01/11 22:44登録)
写真家を主人公にした連作で、フィルムを巻き戻すように人生を振り返る。第五章「遺影」から始まり、第一章「卒業写真」で終わる仕掛け。
情感豊かな逆成長小説・青春小説であり、さりげない夫婦愛の小説としても良く出来ている。

No.3 7点 E-BANKER
(2016/07/31 22:10登録)
~走った。ひたすらに走り続けた。いつしか写真家としてのキャリアと名声を手にしていた。情熱あふれた時代が過ぎ去った今、喜多川はゆっくりと記憶のフィルムを巻き戻す。愛し合った女性カメラマンを失った四十代。先輩たちと腕を競い合った三十代。病床の少女の撮影で成長を遂げた二十代・・・夢を追いかけた季節が蘇る~
2000年発表。

①「遺影-50歳」=ベテランカメラマンの喜多川に母親の撮影を依頼に来た娘。訪ねてみると、母親は病床にあり撮影は明らかに遺影だった・・・。喜多川の過去を知るという女性そのものが本編の謎。なぜ彼女は喜多川に頼んできたのか?
②「暗室-42歳」=かつて愛し合った美貌の女性カメラマン。袂を分かち合った彼女が挑んだのは、世界の高峰での危険な撮影だった。彼女の名誉を守るため、喜多川と盟友・仁科は暗室へこもる。そして、喜多川の妻の行動が・・・。女性って・・・そうなんだな・・・
③「ストロボ-37歳」=かつての師匠・黒部と久しぶりに再会した喜多川。しかし、黒部はもはや過去の男だった。かつての自身と黒部との関係が、今現在の喜多川と弟子の関係にシンクロするとき・・・。親の心、子知らずではないが、師匠の心、弟子知らずってことかな。
④「一瞬-31歳」=カメラマンとしてようやく独り立ち始めた喜多川。そんなとき、ある雑誌社の取材で美貌のライターと出会う。彼女の心を振り向かせるため、喜多川はひとりの病床の少女と向き合うことに・・・。これも先輩・守口がいい味出してる! でも女って・・・
⑤「卒業写真-22歳」=世は学生運動華やかなりし頃、という時代設定。大学の写真学科に在籍していた喜多川は、ひとりの友人と仲良くなる。しかし彼は学生運動の渦中へ自ら進んでいくことに・・・。何ともノスタルジックな話だな・・・

以上5編。
お分かりのとおり、本作は現在から過去へ遡る形式。
全編、喜多川光司というカメラマンを主人公としているが、ひとつひとつの話は独立する連作短編の形をとっている。
あとがきで作者も触れているが、全編にある種の謎が設定されてあり、ミステリーとしてもよくできている。

しかし何より、なんとも“いい話”なのだ。
っていうか、正直こんな人生うらやましい!
刺激に満ち溢れ、栄光と挫折を繰り返す人生。それでも天賦の才能を抱えているからこそ、前向きにチャレンジできる・・・
登場する女性もなんとも魅力的。
男って所詮、どれだけいい女に巡り会えるかで人生が決まるのかもしれない・・・そんな思いにさせられた。
(やっぱり、二十代の頃っていいよなぁ・・・。若いけど、可能性に溢れてて・・・ってジジイか!)

No.2 9点 ぬくい
(2005/04/26 08:12登録)
好きな作品です。
読後に感じるノスタルジックな余韻が何とも言えません。
最後に落ち着く場所が、結局は〜であるというところも味わい深いですね。

ただ、男性向きな所が強い点(女性には理解し難い?)とミステリとは言い難いという点で、ここでの評価は−1。

No.1 6点 由良小三郎
(2002/07/15 20:52登録)
僕の中の線引きでいえば、この作品はミステリでないと思いました。日常の謎があるといえばあるのかとも思うのですが、これはもう普通の小説で、ミステリの外だとおもいました。小説としては、よめます。

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