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ミステリの祭典

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硝子の葦

作家 桜木紫乃
出版日2010年09月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 よん
(2022/09/06 12:50登録)
さまざまな人間関係が交錯しながら、それぞれの愛と憎しみの形が増幅し、カタストロフに至るまでを描いていく。
主人公の内面描写を極力排し、感情を抑制した静謐で味わい深い文体は、ハードボイルドにも合致するだろう。そして内容は桐野夏生の「OUT]を想起させる。

No.1 6点
(2014/06/16 18:37登録)
直木賞作家だが、個人的には縁のない作家さんだと思っていた。
本作文庫版の帯には「傑作ミステリー」とあったから読んでみた。
「ミステリータッチ」でも、「ミステリー風」でもなければ、「サスペンス」でもなく、しっかりと「ミステリー」と書いてあった。どんなものかと、裏の解説も読まずに臨んだ。

序章で事故で死んだ主人公らしき節子の、死に至るまでの経緯を、読者に想像させるような、その程度のミステリーだと思っていた。そういうふうに想像しながらの読書は、ほどほどに楽しめた。
序章のあとの、事故発生までを描いた本編は、ラブホテルを経営する節子の夫が交通事故を起こし意識不明になるところから話が始まる。そして一方では、主人公の短歌仲間の親娘との交流話も始まる。どうも重要な人物らしいがよくわからない。わけがわからないまま本編の終盤に来てやっと話がはっきりと動く。
そして終章で、本作が「ミステリー」であることの謎が解ける。
一部の登場人物の人間関係は複雑。尋常ではないが、当たり前のようにごく普通に描いてある。ただこの関係はミステリーにはそれほど関係がない。

本格ミステリーではないが、ただのサスペンスともちがう。たしかにミステリーにはちがいない。実はジャンルとして適切なものがあるが、それを開示してしまうとネタバレになるかなと思い、サスペンスとした。

とにかく陰気くさい小説だった。直木賞受賞作『ホテルローヤル』の評を見ても、暗いというキーワードが見つかる。
本作の場合、最後まで読めば暗いのにはわけがあるという感じがしないでもないが、この暗さはもうすこしなんとかならんのかなぁ。

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