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ミステリの祭典

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玩具修理者

作家 小林泰三
出版日1996年04月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 5点 HORNET
(2024/11/02 20:41登録)
 小林先生が58歳という若さで早逝してもうすぐはや4年。古本フェアでそのデビュー作である本作を見つけ、思わず買った。

<ネタバレ>
 デビュー作である表題作は、正体不明の「玩具修理者」なる者が、修理依頼で持ち込まれたものをバラバラに解体して組みなおすというお話。修理依頼は生き物にまで及び、行きついた先は…人間の解体。描かれている状況とは裏腹に淡々と進められる描写は、いかにもホラーらしさがある。語り手の正体が分かるラストが物語の真骨頂。だが、そこから翻ってみると、語り手の話し方は不自然では…?とも。
 2編目「酔歩する男」のほうが紙幅を割く中短編。いわゆるタイムトラベラーものだが、空想科学の学説的説明がちょっとややこしい。こちらもラストに一作目同様の種明かしがあるが、こちらはほぼ予想していた通りという感じだった。
 自分としてはどちらも小粒な印象ではあるが、久しぶりにホラーを読むとやはり面白い。

No.3 7点 よん
(2021/11/29 15:00登録)
人間を解体する描写だけでもグロテスクなのに、最後の一行で明かされる真実により、さらなる恐怖に突き落とされる。
クトゥルフ神話が下敷きになっているので、知っていればさらに深く味わえる。ホラーのお手本のような短編集。

No.2 6点 パメル
(2021/09/21 08:19登録)
玩具修理者は何でも直してくれる。独楽でも凧でも、ラジコンカーでも...死んだ猫だって。全選考委員の圧倒的支持を得た第2回日本ホラー小説短編賞受賞した表題作と「酔歩する男」の2編が収録されている。
どちらもジャンルとしてはホラーに分類されるだろうが、決しておどろおどろしさで恐怖を煽るタイプのホラーとは異なる。個性的な感性が光る作品集。
「玩具修理者」自分がここにいるのは、どういう理由なのか。ここで思考し、呼吸し、確固たる存在と思っている自分というものは、どれだけ確実なのか。非常に落ち着きのない気分にさせられるこの雰囲気は魅力的。オチも意外性がある。
「酔歩する男」いわゆるタイムトラベラーもの。ただそのタイムトラベルは、連続した時間の過去や未来に行くことが出来ないし、自分自身で制御することも出来ない。その自分で制御の出来ないタイムトラベルには根深いまでの絶望がある。そして自分は何のために存在しているのか分からなくなってくる。その存在に対する不安定な感覚、奇妙な味わいが楽しめる。

No.1 7点 虫暮部
(2020/12/27 13:31登録)
 第2回日本ホラー小説大賞短編賞受賞の表題作。詳細な描写を執拗に重ねて気持悪さを醸し出す技は既に出来上がっている。フィニッシュも鮮やかに決まった。但し、今振り返ると、同作者の初期短編群の中で突出したものと言うわけではないと思う。

 併録の中編「酔歩する男」。以前読んだ時と比べ格段に面白く理解出来た。いや、あの時読んだのは本当にこの本だっただろうか? 勿論、そうでないとしたら私が勘違いしただけのことなのだ。

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