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ミステリの祭典

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午前零時のサンドリヨン
酉乃初の事件簿シリーズ

作家 相沢沙呼
出版日2009年10月
平均点5.70点
書評数10人

No.10 7点 人並由真
(2022/04/21 06:10登録)
(ネタバレなし)
 全4編の中短編のうち、最初の2中編の完成度が高いのでそこでいったん、満足感を覚えて読むのをストップ。
 本が手元から離れたのち、久々に短めの第3話とクライマックスの第4話をほとんど続けて読んだら、前半の2本の内容もしっかり布石になっていた。前半の細部を忘れてしまったところもあるので、これならまるまる一冊、一気呵成に読めばヨカッタね。
 これから本書を読む人は、その辺、参考にしてもらえますといいかも?

 全体的によく出来た連作ミステリとは思うが、青春ラブストーリーとしてはあまりに王道な仕上げに、おじさん、いささか赤面。でも気持ちの悪い感触ではない。良い意味でストレートに受け取れる世代の読者の方が、ちょっとうらやましい。

 シリーズ2冊目はどうなるんだろうね。なんとなく方向が窺えるような、そうでないような。
 本シリーズはその現状の2冊目だけで止まっており、ほかの方の『ロートケプシェン』のレビューをちょっと覗くとまだまだ継続できる余地はありそうだが、これだけ時間が空いちゃうと、もう再開は難しいのだろうか。  

No.9 4点 よん
(2021/12/20 14:03登録)
文章も登場人物も、ライトノベルのデッドコピーを読まされているような手ごたえのなさ。マジック蘊蓄は楽しかったが、マジックと謎があまり噛み合っていない

No.8 5点 レッドキング
(2020/06/14 01:04登録)
女子高生マジシャンが探偵役の「日常の謎」短編集。第二話で「ん?青春説教もの?」と若干危惧させるが、第三話で苦い味わいに盛り返し、最終話で一本の長編ミステリへ収束する。ただ、あのワトスン役男子高校生のキャラは・・ま、目をつぶろうかな・・いくら未熟な少年とは言え、あんな感傷垂れ流しはちと耐えがたいのだが。

No.7 5点 ボナンザ
(2018/07/06 21:00登録)
ライトミステリとして楽しめる連作で、最後に連作の意味を見出せる仕掛けがあるのもうれしいところ。

No.6 6点 名探偵ジャパン
(2015/09/24 16:35登録)
「もっと早く、学生時代にこんなものが読みたかった」と感想を持った。
まあ、この作品が出版された時点で私は学生どころか、すでに見事におっさんだったわけですが…。
見当はずれの難点を言えば、おっさんには、本作のような軽快でポップな文章は読み進めるのが難儀でした。
なぜこれが鮎川哲也賞なのか? いや、難癖つけているわけではなく、こういう作品をライトノベル市場にぶち込めば、もっと若い本格ミステリファンを増やせると思うのだ。どこかアニメ化しませんかね。叙述トリックっぽい仕掛けもちょっとだけあるから無理かな。
殺人も起きず、登場人物は高校生ばかり。おまけに主人公の一人称の軽快な文章で、血みどろの殺人劇にすっかり浸かりまくっているおっさんミステリファンには、ページが眩しく感じられました。
されど鮎川哲也賞。この手のいわゆる「青春ミステリ」「日常の謎」系の作品の中では、かなりロジカルで本格ミステリ的仕掛けに納得のいく、「見た目より凄いぜ」的作品だと思います。

No.5 6点 メルカトル
(2014/10/21 23:16登録)
リズミカルな文章が心地よい、片想い+マジック+日常の謎的な内容の学園ミステリの連作短編集。とは言っても、ほとんど長編と言っても良いような構成である。
主人公の須川君はどことなく不器用な雰囲気だが、意外と積極的に片思いの相手である酉乃初にアタックしていて、その辺りがこの手の青春物とは一線を画しているところだろう。だがやはり若さゆえか、相手の気持ちを汲み取ろうと努力はしているものの、細かい心理状態にまでは気付かないのはよくあるパターン。それにしてもこの酉乃初という少女は個性的過ぎて、普通の男子には荷が重いんじゃないのかね。
まあそれはそれとして、真冬の誰もいない水を抜いたプールサイドに腰かけて、足をブラブラさせながらお弁当を広げている少女の孤独感と、その光景の寂寥感といったら、そりゃもう中年のおっさんの心をも捉えて離さない魅力いっぱいである。このシーンはもしかしたら一生忘れないかもしれない。
ミステリとしても良く出来ていると思う。細かいところまで神経が行き届いている感じで、派手さはないが堅実なロジックを繰り広げている。ただ、若干こじつけっぽいのと、想像が多分に混じっている気がしないでもない。

No.4 6点 アイス・コーヒー
(2014/10/06 11:35登録)
鮎川哲也賞を受賞した日常の謎系学園ミステリ。乙女チックな要素が満載のボーイ・ミーツ・ガールストーリー。
相沢氏は魅力的で洗練された独特の文章が特徴のようだが、個人的には中々クセになる文体だった。迷いつつ、悩みつつも励ましあう須川君と酉乃さんのラブストーリーが読みどころで、特に終盤の展開がかなり気に入った。彼らのその後が気になる。
ただ、選評にもある通りいじめや自殺といった「学園もの」の要素が適当すぎる部分もあり、少し残念だった。このあたりは今後改善していくのだろうか?
正統派日常の謎らしく連作短編の形式で、構成は最初の三篇で伏線を張り、ラスト一編で回収という定番パターン。そのあたりも器用にまとめているあたり優等生らしさがうかがえる。
私的には、本棚の論理から発展させていく「空回りトライアンフ」の謎ときが面白かった。ラスト一編の「あなたのためのワイルド・カード」も見事だが、少しストーリーを詰め込みすぎてる気がする。
もう何作か追っていきたいと思った。

No.3 7点 HORNET
(2011/04/24 17:56登録)
 学校では無口で人を寄せ付けない美少女,酉野初は実は凄腕マジシャン。一目惚れした須川くんの周りに起こる学園内の不思議な出来事を,初が見事に解決していく。
 他愛もないラブコメのように見えて,それぞれの場面での言動があとになって意味をもってくる。事件解決を前面に打ち出して物語が進行する本格推理物と違って,わざとらしさがないため,そうした手がかりや伏線がうまく物語にもぐりこんでいて余計に面白い。最後の,物語のメインとなる謎についても同様に,上手にそれまでに手がかりが散りばめられていて感心した。ただ,コンピュータ,ネットにかかわる知識が絡んできたのは少し難解だった。
 個人的には八反丸芹華がキャラ的にも,人間的にも好き。作品としても,受賞の名に恥じない名作だと感じた。

No.2 6点 まさむね
(2011/02/28 19:34登録)
 緩さが気になりつつも,高校男子一人称の軽快な語り口とヒロイン酉乃初のキャラクターに引っ張られ,たまには青春恋愛モノも悪くないか…などと読み進めていった訳ですが…。
 最終話でなるほどと思わされましたね。最終話に至る話はすべて伏線といっても差し支えない。伏線の張りっぷり,そして回収具合はなかなかです。私は完全にトラップにはまってましたし…。
 ラストでまたまた「青春恋愛モノ」に戻してくるところも,オジサンは嫌いでないです。
 ちなみに一人称の君!気持ちは凄くよく分かるが,太腿に対して弱すぎ。この弱点って一生克服できないから気をつけないと…って書評と関係ないか。
 最後に,「トリノ ハツ」って焼き鳥由来じゃなかったんだぁ。江守森江さん,重要情報(?)ありがとうございました。

No.1 5点 江守森江
(2009/11/27 15:19登録)
文章が老成しているが表面はラノベミステリ青春ラブストーリー風な連作短編集。
この手の作品が本格の代名詞である鮎川哲也賞を受賞した辺りに本格ミステリの主流の変遷が伺える。
前3編は、細かな気付きに見所はあるが非常に薄味なミステリで、こんな単なるラブストーリーが受賞作か?と疑問に感じる。
しかし、それも作者の手で、前3編は伏線としての捨て駒で、最終話での細かな気付きと伏線の回収は(東京創元社の短編集らしい構成で)シッカリした本格ミステリだった。
但し、私はマジックを扱うミステリでストーリーに絡んだマジックに関しネタワリしないのは反則だと思っているので減点する(-1点)
ネタワリがポリシーに反するならミステリのストーリーにマジックを絡めないでほしい。
読まされたマジックの謎が解決しない侭読了なんて消化不良は断じて嫌だ!!
※余談
名前と作風から受ける印象と違い、作者が男性なのが「乾くるみ」と並ぶ最大の叙述トリックだろう!
※更に余談
主人公の名前を焼鳥屋で思いついたと考えていたら、ニュートリノが元ネタだと作者がインタビューに応えていた。
焼鳥のハツのが馴染み易いのに・・・。

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