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ミステリの祭典

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zusoさんの登録情報
平均点:6.29点 書評数:228件

プロフィール| 書評

No.188 5点 匣の中の失楽
竹本健治
(2024/03/07 22:18登録)
登場人物の名前がみんな人形からとられているといった遊戯性や、記述の虚実が入れ子のように反転する構造など、極めて意欲的な作品。作者が24歳の時に書いた処女作であり問題作。


No.187 6点 太平洋の薔薇
笹本稜平
(2024/02/23 22:21登録)
灼熱のマラッカ、ベテラン船長の引退航海に、日本の老朽貨物船が謎のテロリスト集団に乗っ取られる。
冷戦時代に開発された、最強のウイルス兵器の謎、荒天の下、男たちの野望と憎しみが錯綜する海洋冒険小説で、複雑怪奇な国際事情が巧みに取り込まれている点も抜かりない。


No.186 6点 パーフェクト・プラン
柳原慧
(2024/02/23 22:18登録)
「身代金ゼロ!せしめる金は5億円!」というそそる文句をキャッチフレーズに、誰も殺さず誰も損をしない誘拐計画を描いた、極めて前衛的なミステリ。
オンライン・トレードやハッキング、代理母などのキーワードがふんだんに散りばめられ、スピード感ある痛快さが最大の特徴。


No.185 6点 午前三時のルースター
垣根涼介
(2024/02/08 22:21登録)
旅行代理店勤務の主人公が、少年のベトナム行きにつきそい、彼の失踪した父親を捜し求める物語。
何者かによる妨害の中、主人公の親友とベトナム人運転手、ガイド代わりの娼婦らとチームを組んで冒険を繰り広げる展開がスリリング。車やバイクのこだわりが渋く、少年と父親の再開後の態度に感動させられる冒険小説。


No.184 6点 雪密室
法月綸太郎
(2024/02/08 22:15登録)
雪の離れで女性が殺されて、足跡は彼女のものと思われる一組しかない、という雪の密室トリックもの。
非常に洗練され最適化されており、ほとんど無駄なものがない。探偵の動きもよく描かれているし、トリックの出し方も際立っている。地味ではあるが、オーソドックスな本格ミステリの魅力が詰まっている。


No.183 5点 九度目の十八歳を迎えた君と
浅倉秋成
(2024/01/26 22:12登録)
主人公が、かつて思いを寄せた同級生が、ずっと十八歳を繰り返し続けているという謎をめぐるミステリ。彼女はなぜ十八歳のままなのか、なぜ周囲はおかしいと思わないのか。
時間SF的な解決が与えられるわけではないが、異常な設定を生かして鮮烈な青春小説とほろ苦い大小の小説が同時に進行する。二つが重なり合う結末が美しい。


No.182 6点 最悪
奥田英朗
(2024/01/26 22:05登録)
それぞれの事情で精神的、経済的に追い詰められた町工場の社長、女性銀行員、パチプロの三人が、物語のある点で交わり、さらなる狂気の世界へと突入する。
三人が出会うまでの、エピソードを一つ一つ積み上げて、一人の人生がほんの些細なところから狂いだし、どんどん壊れていく様を諧謔味をきかせて描く部分もいいが、三人の主人公が出会う中盤以降のオフビートな展開もいい。


No.181 6点 ダイヤル7をまわす時
泡坂妻夫
(2024/01/15 22:59登録)
元刑事が語り手となる犯人当て、貴重なトランプに飾られた死体の謎、同じ名前に惹かれ続ける女性、アトリエの主が殺された事件など、様々な謎をめぐる常識を一段も二弾も超越した論理展開に魅了される。
思わぬ角度からの衝撃は、いまだに色褪せていない。


No.180 7点 背の眼
道尾秀介
(2024/01/15 22:56登録)
猟奇殺人と心霊現象をを等価に置き、ふたつながらに論理で解き明かしていく。京極作品の影響も見られるが、主人公が心霊現象を探求する動機の切実さ、その心霊現象や陰惨な心象風景の描写などには、ホラーとしても読みどころがある。


No.179 7点 プリズム
貫井徳郎
(2023/12/30 22:28登録)
学校の女性教師が変死した事件について、四つの章を通じて、教え子や同僚など四つの視点から真相を探していく。
その過程で彼女をはじめとする登場人物の表面と内面の差異が明らかになっていく様が興味深いし、四者四様の推理も愉しめる。その四つの推理が重なった果てに提示される結末が独特で、しかも相当に衝撃的。


No.178 8点 月の扉
石持浅海
(2023/12/30 22:23登録)
厳重な警戒下にあった空港で発生したハイジャック事件。
飛行機という閉鎖空間を舞台にし、緊迫した状況の中、機内のトイレで乗客の死体が発見される。誰がなぜ、どのようにして。
フーダニット、ホワイダニット、ハウダニットを一冊に凝縮した意欲作。


No.177 6点 十二人の手紙
井上ひさし
(2023/12/17 22:09登録)
上京した少女が郷里の弟や親友などに宛てた便り、海外赴任している夫に隣家の異常を手紙で訴える妻など、ラブレター、礼状、文通にメモ、様々な形の手紙で構成される12の物語。
とりわけ、ある修道女の不幸な生涯を公式書類で描き出す「赤い手」に唸らされる。全ての話がエピローグにて結ぶつくのも心憎い。


No.176 6点 魔術はささやく
宮部みゆき
(2023/12/17 22:05登録)
相次ぐ女性の自死に図らずも巻き込まれた日下守は、一連の事件に不審を抱く。本書は彼がその真相に迫る謎解きサスペンス。
展開の妙もさることながら、何より孤独な境遇に置かれた守少年が、事件を通して成長していく姿が感動的。最後の一行の決め台詞がいい。


No.175 9点 楽園とは探偵の不在なり
斜線堂有紀
(2023/12/04 22:11登録)
この作品には天使が登場する。二人殺した者を地獄に落とす天使。この天使が無数に降臨してきた結果、世界は変わった。そんな世界において、ある孤島の館で連続殺人らしき事件が発生する。誰がどうやってこの事件を成立させたのか。島に招待されていた探偵が真相解明に挑む。
解明される論理の面白さとともに、徐々に明かされる探偵の過去も興味深い。そしてこの事件の後の探偵の心も、読み手の心に響く。


No.174 6点 黄色い夜
宮内悠介
(2023/12/04 22:06登録)
エチオピアの隣国が舞台。ギャンブルに支えられたこの国を訪れたルイこと龍一は、カジノ塔の頂上での国王との勝負を目指し、旅で出会った男を相棒に、様々な勝負に挑んでいく。架空の国におけるギャンブルの連続の中で、架空の国を「場」とする主人公の夢、計画が語られる。
現実から浮遊しつつもスリルはリアルであり、ルイの心もリアル。彼の旅と冒険に読者として伴走できたことを喜びたい。


No.173 7点 風神雷神 Juppiter, Aeolus
原田マハ
(2023/11/23 22:22登録)
主人公は、近世でもっとも有名な画家の一人である俵屋宗達。天才少年・宗達は、信長の命令で大正遣欧使節団と共にヨーロッパに渡ることになり、使節の一人であるマルティノと固い友情を築きつつ、数々の名画と出会い成長していく。もちろんそのような史実はないが、実在する名画や画家が多く登場するので、美術が好きな人にはたまらないエンターテインメントだ。
使節団の少年たちにその後、訪れる過酷な運命を想像すると辛い気持ちになるが、信じるものや自分の行くべき道に真摯な彼らの姿に心が洗われた。


No.172 7点 捜査線上の夕映え
有栖川有栖
(2023/11/23 22:14登録)
コロナ禍の大阪、マンションの一室で男が殺された。容疑者は数人に絞り込まれたが、そこからが難航した。各人に鉄壁のアリバイがあったのだ。かくして大阪府警は、火村に出馬を要請する。
捜査、新情報、推理、新たな疑問と基本的にはその繰り返しだが、知的刺激たっぷりで抜群に心地よい。しかもそこに異質な「筋」が織り込まれていたり、旅情や景色といいう魅力もある。もちろんあの伏線があのトリックに結びつき、あの壁が崩されるのかという驚きも味わえる。


No.171 5点 月下美人を待つ庭で 猫丸先輩の妄言
倉知淳
(2023/11/09 23:08登録)
小柄で童顔な猫丸先輩が知人との会話の中などで興味深そうな謎を見つけると、無遠慮に首を突っ込んでいって真相を見抜いていくという短編が5つ収録されている。
ともすれば余計なものと思える饒舌な会話が終盤において伏線に化ける様は、この作品の醍醐味である。


No.170 6点 あなたの罪を数えましょう
菅原和也
(2023/11/09 23:05登録)
作者ならではの痛みの描写能力の切れ味を活かし、読み手の心を刺激的な世界に、密閉された環境で一人また一人と惨殺されていく世界に引き込んでいく。
この模様と並行して、惨劇後の現場で探偵と助手、そして依頼人が事件を発見していく様子も語られ結末へ。それまで観ていた景色が真相を知ると同時に新鮮な形で一変する。あんな真相が判明するとはという驚きがある。


No.169 7点 密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック
鴨崎暖炉
(2023/10/27 23:02登録)
「このミステリーがすごい!」大賞・文庫グランプリ受賞作。
曰くつきのホテルを舞台に、矢継ぎ早に密室殺人を繰り出す。施錠されたドアの唯一の鍵が瓶に封じられて密室内に置かれていたり、ドアの開閉を妨げるように遺体をドミノが囲んでいたりと、高い強度の密室が並ぶ点がまず嬉しい。しかも、その密室ミステリを支える大小さまざまなトリックは、質の面でも高水準。探偵役を務める高校二年生の男女ペアの造形も確かで、謎解きに次ぐ謎解きを素直に愉しめる。

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