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ミステリの祭典

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未来

作家 湊かなえ
出版日2018年05月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 zuso
(2024/12/20 22:26登録)
父を亡くした十歳の章子に、二十年後の自分から手紙が届くk。不安定な母を支え、経済的な不安を抱えながらも、手紙を信じて返事を書き続けることで、秋子は未来に希望を持てる気がした。しかし、いじめで学校に行けなくなった彼女を、味方となるべき周囲の大人たちは身勝手に傷つけ、居場所を奪っていく。
彼女が未来へ向けて綴る手紙から、その後も目を背けたくなるような事実が次々と明らかになるが、章子自身の愛する人を守ろうとする気持ちと行動が、彼女の未来に光を灯す。

No.1 6点 猫サーカス
(2023/07/30 18:29登録)
未来の自分に手紙を書いて地中へ埋めたり、海へ流したりする話なら聞いたことがある。でもある日突然、二十年後の自分から手紙が届いたとしたら。主人公の章子は未来の自分に返事を書く。十歳からの四年半に書き綴った手紙を通して、彼女の身に起こった出来事を知り心模様をたどる。少女にありがちなコンプレックス、いじめ、家族の不幸など。悩み傷つき、未来からの手紙など誰かのいたずらで、それに対して返事を書いていた自分の馬鹿さ加減にあきれながらも、前向きに行こうと自分を鼓舞する。だが一方で、未来は多感な少女を操り、悲惨な事件へと導いてゆく。後半は別の三人の視点からそれぞれのエピソードが語られる。未来からの手紙とは何だったのか、と章子を取り巻く因縁と事件の真相が綴られていく。綿密に組み立てられたこの作品は、唸らせ戦慄させる。悪意のない一通の手紙が、さながら呼び水のように大人たちの記憶の底に沈殿する悲劇までも甦らせる。未来とは過去の集積から生まれてくるものだと、思い知らされる。幻想でしかありえない「未来」に翻弄され続ける私たちへの、諦観か警鐘か。作者の叡智に満ちた目は冷徹に問いかけている。

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