ハートフル・ラブ |
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作家 | 乾くるみ |
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出版日 | 2022年12月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 6点 | zuso | |
(2024/09/01 22:48登録) 恋愛にまつわる事件を扱った短編が7編収められている。 主人公への思い込みの隙を突く仕掛けが多く、物語の性格がガラリと変わる瞬間に、愛欲のままならさがまろび出る。 白眉は「数学科の女」。大学の講座で班分けされた五人組のうち、紅一点は美女だった。牽制し合う理系男子たち。予想以上のシニカルな展開が用意されており、作者らしさを感じる。 |
No.2 | 5点 | まさむね | |
(2023/05/29 22:50登録) 掌編1話を含む短編集で、個人的には①と⑦が印象深い。作者らしい作品集とは言えるけれども、全体としては小粒かな。 ①夫の余命:日本推理作家協会賞の候補作。転換が面白い。 ②同級生:設定のわりに結末は中途半端な印象。 ③カフカ的:捻りはあるが、無理もある。 ④なんて素敵な握手会:別アンソロジーで既読だったので驚きはなかったが、掌編としては良質。 ⑤消費税狂騒曲:アンソロジー「平成ストライク」読んだはずだが、記憶には残ってなかった…。 ⑥九百十七円は高すぎる:この設定を用意してこのネタ?という感じ。⑤のテーマとも被る。 ⑦数学科の女:ちょっと無理があると思うのだけれど、色々と強烈。 |
No.1 | 7点 | ことは | |
(2023/03/24 00:11登録) 久しぶりの乾くるみ。 「イニシエーション・ラブ」のシリーズ感を出したタイトルがあざとい。でもシリーズではありませんし、短編集です。 よかったのは、「夫の余命」と「数学科の女」。採点が高めなのは、この2作のおかげ。 「夫の余命」。過去に遡っていく順番で語られる構成が楽しく、最後も決まっている。もちろん、乾くるみ作なので人を選ぶけど、私はこれはそうとう好みです。やられました。 「数学科の女」。乾くるみらしい強烈なキャラがすてき。つっこみどころは色々あるけど、このキャラだけで満足です。「演技なのそれ」「そう」。いいなぁ、この辺の会話。 他も寸感。 「同級生」。既視感のある展開。ミステリでなくても、映画のあれやこれやでも……。どこを見せたかったのだろう? 「カフカ的」。巻末の初出情報によると、「共犯関係」というアンソロジー収録されているので、お題が先にありきなのかな? 乾くるみらしい発想があってわるくない。主人公については、ある点で、もやもやする。驚かせポイントを拾えていないかも。 「なんて素敵な握手会」。ショートショートだけど、きれいに典型的な”あれ”を決めている。 「消費税狂騒曲」。巻末の初出情報によると、「平成ストライク」というアンソロジー収録されているので、お題「平成」が先にあったのでしょう。ちょっとした小咄かな。 「九百十七円は高すぎる」。巻末の初出情報によると、「彼女」というアンソロジー収録されているので、お題「百合」が先にあったのでしょう。「百合」と謎解きがあってない。でも、乾くるみらしい描写はあって、わるくない。まったく楽しめない人も、多そうだけど。 全体の感想としては、香草を使用した料理みたいに、「癖があって、個性的。たまに食べると楽しめる。でも、”うまい!”っていうのとは、ちょっと違う」という感じで、乾くるみらしさが満載。楽しませてもらいました。 |